道化の愉快な仲間たち   作:UBW・HF

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ラスボス襲来

 

ネタバレ注意?であってるのかは分からないですけど、一応。

これはベルくんが学区に潜入した後の時系列の話です。

つまり、半年後のベルくんの様子やステイタスなどが含まれています。

ご注意ください。

 

あの、本当に申し訳ないんですけど、すんごい個人的な話になるんですけど、就活や大学の課題がヤバくて…。

忙しすぎて次に更新できるのがいつになるか本当に分からなくて…。

書き切れるかどうかも不安になってきたので、取り敢えず一番書きたいところや、読んでくださる方が一番気になるであろう箇所などは書けるうちに番外編って形で上げていきたいと思います。

 

それが嫌だって方はブラウザバックお願いします。

 

本当にごめんなさい。

 


 

都市全土を巻き込んだ戦争遊戯が終わり、古代の因縁に決着がつき、ベルとヘルメスの学区侵入から始まる一連の騒動まで終わった時のこと。

迷宮都市を彷徨うように歩く女性がいた。

顔はローブを目深に被っているのでよく見えない。

ただ、たまに覗く肢体や顔の輪郭は美の女神もかくやというほど美しい。

だが、彼女に話しかけようとする存在は一人もいない。

彼女から発せられるその圧に、誰も何も言えない。

 

「………チッ」

 

苛立たしげに舌打ちをし、不機嫌であることを隠そうともせずに彼女は歩き続ける。

自身の宝に手を出したゴミクズと、宝に群がっているであろう雌犬共を探して。

一人都市を歩き続けている。

 

「見つけたぞ」

 

不意に、背後から声が聞こえてきた。

彼女にとって聞き覚えのある野太い男の声。

振り返ってみると、そこにはやはりと言うべきか見覚えのある男がいた。

 

逞しい筋肉と、獣の引っ掻き傷のような深い傷跡がついた顔。

厳つく、見るものを圧倒するそれらの風貌に反し、服は至って普通の農民のそれだ。

だが、その背には服装には不釣り合いだが風貌には見合った黒い大剣が背負われている。

なんともチグハグな格好だが、それでも様になっているから不思議なものだ。

 

「もう追いついてきたか」

 

「テメエな…。人様を縛ってモンスターの巣に放り込みやがって…。俺じゃなかったら死んでたぞ!?」

 

「お前らがあの程度で死ぬか。ゴキブリ並みの生命力がお前らのウリだろう?」

 

「そんなもんウリにした覚えはねえ!」

 

皮肉のような軽口を叩きあう二人。

緊張感は段々と高まっていく。

 

「まだ邪魔をするつもりか?」

 

「散々言っただろうが。少しはあいつの事情や心情も考えてやれ。あんな状況になっても俺達に何も言ってこなかったのは、確かに少し思うこともあるだろうが、それでもあいつがそうすると決断してケリを付けたんだ。今更蒸し返すな」

 

「私も言ったはずだ。私は私の宝に手を出すゴミクズを許すつもりはない。あのアバズレも、その眷属も、ついでに手を出そうと発情している雌犬共も。すべて等しく粛清対象だ」

 

「……お前、本当に人の話聞かねえな」

 

「こちらのセリフだ」

 

苛立つ女につられて、男の方も声に苛立ちが含まれていく。

背中の大剣をいつでも抜けるように手をかける。

そして、最後の話し合いに臨む。

 

「一応聞いておくが、止まる気はあるか?」

 

「ない」

 

「そうかよ…。じゃあ、仕方ねえ」

 

殺気立つ二人。

ただ事ではないことを察した周囲の人々は離れていく。

あるものは出来る限り遠くの方に逃げていく。

あるものはガネーシャやアストレア・ファミリア達を呼びに。

あるものは面白いものを見るかのように酒を煽りながら野次を飛ばす。

 

この都市では冒険者などの喧嘩は日常茶飯事だが、これから行われるのはそれとはレベルが違う。

正真正銘、世界最強の魔導士と剣士の喧嘩だ。

 

この都市を揺るがす大喧嘩は、鐘の音と共に始まった。

 


 

「エイナさん、おはようございます!」

 

「あ、おはよう、ベルくん。それに、ファミリアの方々も」

 

「おはよう、お姉ちゃん」

 

「おはよう、ニイナも一緒?」

 

「うん!これからベル先輩たちと一緒にダンジョンに行くの!」

 

ギルドを訪れ、エイナに挨拶をするベルたち。

そして、彼らの中には学区の生徒であるニイナも一緒にいた。

学区に潜入?侵入?編入?したベルと冒険を繰り広げたニイナはすっかり彼の虜になっているようだ。

ヘスティア・ファミリアに入ることを目標に交流と交渉をした結果、なんとか一緒にダンジョンに潜ることまで漕ぎ着けた。

目を輝かせながら、嬉しそうに姉に報告する姿は微笑ましいが、エイナとしては笑えない状況だ。

 

「ニイナ?一応話はついているとは言え、学区の生徒として自覚を持って行動してね?ベルくんたちに迷惑をかけないように、それとちゃんと距離感と節度を持って接するようにね!?」

 

妹が自分と同じ人を好きになるという頭の痛い状況に陥っているエイナは、言葉を濁しながら精一杯釘を刺す。

その効果の程は分からないが、やらずにはいられない。

 

「ところで、今日はどうされたんですか?ニイナのことを伝えるためだけにわざわざ?」

 

「いや。私が改宗するにあたってギルドに提出し忘れた書類があってな。それを出しに来た」

 

「出し忘れた書類?ああ、移動届ですか」

 

「手紙の遣り取りをするような相手はいないし、私の改宗は周知の事実であるから不要だとは思うが、念の為な。手間を掛けて悪いが、処理を頼む」

 

「はい、承知しました。では、お預かりしますね」

 

ベートから書類を預かったエイナはそれに目を通して不備がないことを確認すると、それを大切に保管する。

処理は後にして、今はベルたちとの話を優先させるようだ。

 

「ベルくん、今日は何階層まで行く予定なの?」

 

「ニイナもいるので、今日は20階層辺りを。連携の確認や雷霆の剣の調整をしていこうかと思ってます」

 

「そっか。ローガ氏たちがいるから大丈夫だとは思うけど、あんまり無理しすぎないようにね」

 

「はい!」

 

無理と無茶を重ねてここまで来たこの少年にはどれだけ言っても足りないだろう。

だが、それでも祈るように彼に言葉を投げかける。

 

「よっし、じゃあ行くか―――って、あ?」

 

「ヴェルフ様?どうかしましたか?それにベル様たちも」

 

ヴェルフが意気込んで声を上げたが、その言葉が切れる前に戸惑うような声が上がる。

急に驚いたような表情でとある一方向を見つめており、ベートやベル、リューも同時にその方向を見つめている。

 

「これは…、アイズ殿ですね」

 

「アイズだけじゃない。ティオネ、ティオナ、ガレスもだな。この分だとフィンやリヴェリアも一緒だろう」

 

「? 何かありましたか?」

 

「戦ってるんだよ、あいつら。しかも地上で」

 

「はあ?」

 

都市最高峰のLv.7の冒険者たちが地上で戦っているという事実を聞いたリリ達は、戸惑いの声を上げる。

大抵の冒険者など、今の彼女たちにとっては相手にもならない。

故に、地上で“戦う”など、ほぼありえないのだ。

道化行進(スキル)】による共鳴でそれを知った彼らも、戸惑っている。

 

「何と…、いや、誰と戦ってる?あいつらが大喧嘩でもしてるのか?」

 

「そういった感じではないような気が……」

 

「嫌に焦ってますね。…少し様子を見に行きますか?」

 

「どうする?ベル」

 

「そうですね……。」

 

ベートに尋ねられたベルは少し悩む。

正直、アイズ達が集まって戦っている以上自分が必要とも思えない。

今の彼女たちに勝てる存在など、この都市にいないのだから。

だが、それでも伝わってくる彼女たちの感情は嫌な予感を刺激する。

 

「一応見に――――」

 

「ここにいたのか」

 

見に行きましょう、と言い切る前にとても明るい声が響いた。

嬉色に満ち溢れた美しいその声はよく響き渡る。

声がした方向を見てみれば、白い腕の美女が満面の笑みでベルたちの方を見つめていた。

 

「探したぞ。入れ違いにならなくて良かった」

 

「……え?いや、―――え?なんで?」

 

「久しぶりだな、ベルよ。一年ぶりか。ほら、もっとよく顔を見せてくれ」

 

その美女は両手を広げながらベルの方に歩いてくる。

名前までハッキリと呼んだのだ。

彼女はベルの関係者で間違いない。

そして、当然ながらその事実を知った周囲の女性陣は大いに動揺する。

 

「おい、ベル。呼ばれてるぞ?」

「すんごい美人だな。どういう関係だ?」

 

「ベル様!誰ですか、あの人!?」

「ベル、彼女とはどのような関係なのか、説明してください。私は今、冷静さを欠こうとしています」

「た、ただならぬ関係の美女…?まさか、将来を誓い合った―――キュウ」

「春姫殿―――!?」

 

「ちょ、ベルくん!?どういうこと!?」

「ベル先輩!?」

 

冷静に尋ねるヴェルフとベート。

焦りながら問いただすリリとリュー。

衝撃の事実に沸騰して倒れる春姫と、それを介抱する命。

動揺しながら二人を交互に見るチュール姉妹。

 

騒然とする周囲を置いて、ベル自身も驚きを隠せない様子で小さく呟く。

 

「お……」

 

「「「「「「「「お?」」」」」」」」

 

「お祖母ちゃん―――!」

 

「「「「「「「「…………は?」」」」」」」」

 

お祖母ちゃん。

ベルはたしかに、そう呼んだのだ。

眼の前で満面の笑みを浮かべながら両手を広げる見目麗しい若い女性を。

そのままの勢いでベルを思いっきり抱きしめる美しい女性を。

 

「ああ、可愛い可愛い私のベル。愛しい私の孫よ。大きく逞しくなったなぁ」

 

「え!?ちょ、待ってください!」

 

「この方が、お祖母様!?いやいやいや、若作りとかそういうレベルじゃないでしょう!?」

 

「百歩譲ってお母さんなら分かるけど…、え!?」

 

女性自身がベルを孫と呼んだことで余計に混乱が巻き起こる。

今すぐにでも説明してほしいが、ベル自身混乱して状況が飲み込めていないようだ。

 

「ちょ、なんでいるの!?」

 

「何故と…。どこぞのアバズレにお前が手籠めにされそうになったと聞いたからに決まっているだろう?」

 

「いや、あれ三週間くらい前のことだよ!?」

 

「すぐに駆けつけてやれずにすまなかったな。あの人を探して辺境まで行っていたせいで、事態を知ったのは全てが終わった後だったんだ。しかし、お前も人が悪い。一つ手紙を寄越してくれれば、あんな雑魚どもすぐに蹂躙してやったものを」

 

「そうなるのが嫌だったから連絡しなかったんだよ!?ていうか、待って。お祖母ちゃん一人で来たの?お義母さんは!?」

 

「アルフィアだったら、この都市に残ってるあのアバズレの眷属共を血祭りに上げると息巻いていたぞ?」

 

「お義母さん!?何言ってるの!?なんで止めないの!?おじさんは!?」

 

「あれだったら、やめろだの何だかんだと口うるさいから、アルフィアが黙らせた後に手足を縛ってモンスターの巣に放り込んでいたな」

 

「おじさぁぁぁぁん!?」

 

「心配するな。腐ってもあの人の眷属(こども)だ。あの程度では死なん」

 

「そういう問題じゃないよ!?」

 

「大丈夫だ。流石にアルフィアに神を手に掛けるような真似はさせん。あのクソビッチは私が直々に送還してやる」

 

「やめてください!?」

 

ベルは女性に詰め寄っているが、その会話の内容も聞き捨てならないものばかりだ。

フレイヤをアバズレと呼んだり、フレイヤ・ファミリアを雑魚と呼んだり、普通の人間の発言ではない。

神かとも思ったが、その証である神威は感じられない。

いや、そう言えば大神や一部の神々は神威をゼロに出来ると、レフィーヤが――――

 

ベートがそこまで思い出したその時だった。

ギルドの扉は勢いよく開かれ、一人の神が飛び込んでくる。

 

「ベルくんはいるか!?大変だ、街でアルフィアが――――ギィャァァァァァァァ!?」

 

「チッ、孫との時間を邪魔しおって。まあいい。貴様にも用がある。分かるな?ヘルメスのクソガキ」

 

「な、なんで――!?」

 

ギルドの扉を破って入ってきたのは神ヘルメス。

緊急事態なのか焦った様子の彼は、叫びながらベルを探していたが、その叫び声は悲鳴に変わった。

ベルと話していた時の優しげな雰囲気を霧散させ、ロキやフレイヤすら超えるほどの神威を撒き散らしながら女性…否、女神はヘルメスに近づいていく。

 

「ベルに不埒な事を吹き込んだ件、ベルを貴様の下らん策略に巻き込んだ件、夫の逃亡を幇助した件。その他にも貴様の余罪は数え切れんほどある。さあ、どれから追求されたい?」

 

「いや、ちょ――――」

 

「ちょっと待って、お祖母ちゃん!」

 

「ベルくん―――!」

 

ヘルメスに詰め寄っていく女神を、ベルは静止する。

ベルを見てヘルメスは希望を見出したような表情をするが、別にベルはヘルメスを助ける気などない。

ただ、聞かなくてはいけないことがあるから、聞けるうちに聞こうとしただけだ。

 

「ヘルメス様!街で何があったんですか!?お義母さんが何やったんですか!?」

 

「え?」

 

「早く答えて!」

 

「ま、街でアルフィアが暴れてる…。ザルドやオッタル、ロキ・ファミリアの面々を巻き込みながら、盛大に――――グッフっ!」

 

言い終わる前にヘルメスを投げ捨て、一瞬だけ祖母の方を振り向く。

 

「お義母さんを止めてくるから、お祖母ちゃんはここにいて!!」

 

「ああ、分かったとも」

 

「え!?ちょ、ベルくん待って――」

 

「雷霆よ」

 

女神に怯えっぱなしのヘルメスだったが、彼を置いてベルは飛び出ていった。

並の冒険者では目で追えないほどのスピードだ。

雷霆の剣を使っているのだろう。

瞬間的な加速力なら世界一だ。

 

「さてと、ヘルメス。話をしようか」

 

「ちょ、待って…!皆、助けて!」

 

「行っちまったな…。どうする?」

 

「取り敢えず追うぞ。事情を知る必要があるのもそうだが、団長を助けるのも団員の役割だ」

 

女神に詰め寄られ、顔面蒼白になりながらヘスティア・ファミリアの面々に助けを求めるヘルメスだったが、誰も一切聞こうとしない。

助ける気など、サラサラない。

 

「君達!?お願いだから―――」

 

「この前の獅子の一件、私達が許したとでも思っているのか?貴様に対する私達の評価はゴキブリ以下だと思え」

 

「今更どうこう言うつもりはねえけどさ、アンタもちったあ痛い目見たほうが良いと思うぜ?」

 

「私達やベルを散々弄んでおいて、今更助けてくれは虫が良すぎるでしょう」

 

「リリ達がヘルメス様を助ける義理なんてありません」

 

ベル並みにお人好しの春姫や命はそれでも助けようとしているが、他の四人に止められてしまっている。

チュール姉妹は、別にヘルメスのことなどどうでもいい。

というか、それよりも別のことが気がかりになっているようだ。

 

「さてと、では行きましょうか。って、ニイナ殿?どうかしましたか?」

 

「いや、アルフィアって名前、どこかで聞いた覚えがあるような……」

 

思い出せずに首を傾げるニイナだったが、その答えは姉であるエイナの口から出てきた。

 

「三大冒険者依頼(クエスト)の一つ。海の覇王『リヴァイアサン』にとどめを刺したヘラ・ファミリアの大幹部が――【静寂】のアルフィア。たしか、学区の授業ではそう習ったけど……」

 

「お母さんって言ってたよな、ベルの奴」

 

「「「「「「「「……………。」」」」」」」」

 

ヴェルフのつぶやきに誰も答えられず、沈黙が場を支配する。

だが、いつまでもこうしているわけにもいかない。

 

「追うか…」

 

「そうだな…」

 

これから待ち受けているであろう珍事を覚悟しながら、ヘスティア・ファミリアの面々はベルの後を追う。

 


 

「だ~か~ら~!!いい加減にしろよ、お前!!」

 

「こちらのセリフだ。いい加減沈め」

 

戦闘が始まってすぐに吹き飛ばされた傷の大男――ザルドは広場に場所を移して戦いを続けている。

相対するのはオッドアイの美女アルフィア。

高位の冒険者であっても一発受ければ戦闘不能になるアルフィアの魔法を喰らってもなお、ザルドは平気な顔をして立ち上がり、アルフィアに向かっていく。

話を聞こうとしないアルフィアに苛立ちを隠せない様子で、叫びながら斬り掛かっていく。

対するアルフィアも、苛立った様子で魔法を放ち続ける。

 

周囲にいた人々は突然の戦闘に逃げ惑っていく。

人々が離れていくことでアルフィアもザルドも周辺の被害を気にすることなく戦うようになるので、戦闘規模はどんどん大きくなっていくばかり。

誰しもが恐れ慄く中、一人の女神が彼らに向かって怒号を浴びせる。

 

「君達、何やってるんだ!?こんなところで暴れるんじゃない!!」

 

「あ”あ”?」

 

「おい、そこの女神。悪いことは言わんから早く逃げろ。とばっちり喰らうぞ?」

 

「バイトしてる屋台があるんだよ!君達のおかげでジャガ丸くんは何個か駄目になったし、そもそも屋台が壊れたらどうしてくれるんだ!?」

 

そう、その女神こそ、ジャガ丸くんを司る神であるヘスティアだった。

屋台が壊れた場合、絶対におばちゃんに怒られる。

借金が増える。

強迫観念じみたそんな思いで、彼女は精一杯の静止に務める。

だが、そんなものに斟酌するアルフィアではない。

 

「黙れ。私は今苛立っている。これ以上私の前で耳障りな雑音を奏でるな」

 

「なんて言い草だい!?大体、君達が暴れてるのがすべての――――って、あれ?その言い回し、どこかで聞いたことがあるような……」

 

「何を言ってるのか知らんが、ホントに早く逃げろ。弁償だったら後でしてやるから」

 

「いや、そういう問題じゃ――――」

 

「そこまでよ!!」

 

ザルドの物言いに苦言を呈そうとしたヘスティアだったが、その前にまた別の声が響く。

声がした方を見てみれば、堂々と決めポーズと取っているアリーゼと、一緒にされたくないのかその一歩離れた場所に輝夜とライラがいた。

うんざりした様子で、アルフィアはため息をこぼす。

 

「次から次へと…。今度は何だ?」

 

「よくぞ聞いたわね!私こそ清く、正しく、美しいLv.5、アリーゼ・ローヴェル!アストレア・ファミリアの団長よ!バチコーン!」

 

「……………。」

 

「………それ、自分で言うことか?」

 

「誰も言ってくれないから自分で言ってるのよ!」

 

「……………。」

 

「………そうか」

 

溢れ出る残念さ加減が半端ないアリーゼに対し、呆れ果てるアルフィアと可哀想なものを見るような目で見つめるザルド。

とはいえ、それで気が抜けるほどアルフィアの苛立ちは軽いものではない。

 

「はぁ…。失せろ、小娘共。怪我をしたくなければな」

 

「そこの女神を連れて下がっててくれ。お前らじゃ相手にならん」

 

「そんなことないわよ!…って、言いたいところだけど、本当に無理そうね。ていうか、あなた達何者?」

 

流石にアルフィアたちとの力量差を悟ったアリーゼは冷や汗をかきながら問いただす。

ふざけた空気を続ければどうなるか分からないので、いつにもまして真剣な様子で。

一方、アルフィアとザルドは何者かと問われ、なんと返答するべきか迷った。

バカ正直に答えると余計面倒なことになるので、二人揃って取り敢えずお茶を濁すことにした。

 

「「―――ただの保護者」」

 

「何の保護者!?」

 

「あ?あ~…。あれだ、あれ」

 

「愛くるしい白兎の保護者だ」

 

「そうそう。兎の保護者だよ」

 

「飼育員じゃなくて!?」

 

すぐにシリアスが霧散してしまった。

というか、この二人からは怒りや苛立ちは感じても殺意を感じないので、アリーゼたちもイマイチ本気になりきれていないのだ。

攻撃でもされれば話は別だが、今のところはそんな様子もないし。

 

「ほら、疑問には答えたしもういいだろ?下がってろ」

 

「そういう訳にもいかないでしょ…。あなたたち、街を壊しまくってるし」

 

「それは悪いと思ってるよ。というか、意図的に壊してるみたいに言うな。基本的にはあいつが壊してるし、そもそも結果的に壊れてるだけだ」

 

「ふざけるな。元はと言えば貴様が先に喧嘩を売ってきたんだろうが。私は売られた喧嘩を買ったに過ぎない」

 

「お前が話を聞かないのがそもそもの原因だろうが!気持ちは分かるが、あいつの迷惑も少しは考えろ!」

 

「黙れ。下半身で思考している貴様らに私の気持ちが分かってたまるか」

 

「それは一部の連中とあのクソジジイだけだ!俺みたいにマトモな奴だっているわ!」

 

喧嘩が止まらない。

一応武力行使から言い争いになっているので物理的な被害こそないが、かなり見苦しい。

いつまでもこの調子でいさせるわけにもいかないので、少し卑怯だがアリーゼは奥の手を使うことにした。

 

(ライラ)

(なんだよ、アリーゼ)

(二人が言い争いしてる間に、ロキ・ファミリアまで行って幹部を何人か連れてきて)

(は?外部に協力要請すんのかよ?)

(四の五の言ってる場合じゃないわ。これ以上続けられても被害が大きくなる一方だし、何者かは分からないけどあの二人相当強いわよ?Lv.7じゃないと勝ち目がないわ)

(ヘスティア・ファミリアの方にも行ったほうがよろしいですか、団長殿?)

(そっちの方は多分大丈夫。さっき神ヘルメスが走って行ってるのが見えたから。輝夜は私と一緒に残って)

(分かりました)

(小言言われたらなんとかしろよ?)

(分かってるわよ)

 

神ロキにあとからどんな対価を要求されるか分からないので極力こんな真似はしたくないのだが、そうも言ってられない。

ライラもそれを悟ったのか、すぐに跳ね上がり屋根の上を辿って最短距離を走り出す。

アルフィアにとってはそれすらもどうでもいいことなので、一切気にかけることなくザルドと言い争いを続けている。

だが、その状況も一転することになる。

 

「なぜ貴様がここにいる、ザルド…!」

 

「あ?お前、フレイヤのところのクソガキか」

 

名を呼ばれたザルドは呼ばれた方を振り向くと、そこにいるのは都市最強の冒険者オッタル。

ダンジョンにでも行っていたのか、防具と武具を身に纏っている完全武装状態だ。

本来であれば状況が好転する最高の援軍なのだが、今回ばかりは最悪の援軍になりかねない。

 

「丁度いい!お前も手伝――――あ、やっぱ止めろ!お前今すぐどっか行け!」

 

「それに【静寂】も……、なぜオラリオを追放されたはずの貴様らが!?」

 

「いいからどっか行けって言ってんだよ!!火に油どころか火炎石投げ込むような真似しやがって!!見て分かれよ!!」

 

ザルドは叫びながらアルフィアの方を指差すが、全てが遅かった。

アルフィアは先程以上に血走った目で、明確な殺意を持ってオッタルを睨んでいる。

 

「【福音(くたばれ)】――!!」

 

「ほら見ろ、このクソバカが!!」

 

アルフィアの魔法を喰らいながらも何とか耐えたオッタルは武器を構える。

だが、状況を理解しきれてないのか、ザルドに問いかける。

 

「ザルド、なぜ今になってこのような真似を――――」

 

「お前らが原因だろうが!!」

 

「15年前追放したことを……!?」

 

「そんなクッソしょうもないことで今更こんな真似するか!!どうでもいいわ!!」

 

「なら――――」

 

「いつまで喋ってるつもりだ?私の宝に手を出した罪、その全てで贖え。【福音(ゴスペル)】―――【サタナス・ヴェーリオン】」

 

詠唱とともに、アルフィアはパチンッと指を鳴らす。

すると、同時に5発の魔法がオッタルに向かって炸裂した。

一発でもギリギリだったのに、それを5発動時に喰らってしまったオッタルは吹き飛ばされ、瓦礫の中に埋もれていった。

 

「この役立たず!おい、そこの娘ども!早く女神連れて逃げろ!」

 

「言われなくても退避するわよ!」

 

アルフィアの雰囲気が更に重いものになり、流石にマズいと判断したアリーゼは大急ぎで安全圏まで退避する。

そして、そのタイミングで援軍たちもやって来た。

 

「ちょ、アリーゼ!これ何の騒ぎ!?」

 

「アーディ!ちょうど良いところに!あのオジサマにだけスキル効果がかかるようにいい感じに距離保って!」

 

「なに!?どうなってるの!?ていうか、無茶言わないで!!」

 

無茶と言いながらも、アーディはなんとかアリーゼの言葉通りにしようと行動を起こす。

 

「【目覚めよ(テンペスト)】!!」

 

「剣姫ちゃん!ナイスタイミング!」

 

それと同時に、他よりも一足先にこの場に到着したアイズはアルフィアに斬りかかる。

一歩遅れる形で到着した他の面々も、次々に攻撃したり臨戦態勢を整えていく。

だがその中で、ロキ・ファミリアの三首領は二人の姿を見て、驚きのあまり固まってしまう。

 

「な!?待て、なぜ貴様ら―――」

 

「そのリアクションはさっきクソガキがもうやってたわ!あとで事情説明してやるからとっとと戦え!」

 

「なぜ君達が――ゼウスとヘラの生き残りがここに!?」

 

「ベルからお前さんが生きておることは聞いておったが、なぜアルフィアまで?」

 

「いいから戦え!すぐに―――って、あ?」

 

攻撃が来るかと思ったが、来なかった。

アルフィアは駆けつけた援軍の中で、アイズ・ティオナ・レフィーヤをマジマジと見つめながら目を細める。

不愉快そうに、何かを疑うようなその視線に、アイズたちも警戒心を剥き出しにする。

 

「金髪…二つ結びのアマゾネス…エルフの小娘…。ロキ・ファミリア…。ああ、なるほど、貴様らか」

 

「……なにが?」

 

「よし、死ね」

 

一瞬の静けさは嘘だったかのように、また攻撃が再開される。

主にアイズ達を狙ったその攻撃に、リヴェリア達は怒りを向ける。

 

「貴様…、アイズたちに何の恨みがある!?」

 

「黙れ。貴様らに話す義理などない」

 

「お前は…!なんで、こんな真似すんだよ!?少しはあいつの人間関係や事情も考えてやれよ!!」

 

事情が分からずにいるリヴェリアたちに対し、唯一事情を知っているザルドはアルフィアに叫ぶが、そんなものを意に介すアルフィアではない。

 

「私はメーテリアの時に学んだ。私の宝に群がる発情した犬共は、一匹残らず駆逐すべきだと」

 

「極論過ぎるだろ!?そもそも、そういう関係じゃねえって本人も言ってただろうが!!」

 

「可能性がある時点で潰す」

 

「あいつに一生独り身で居させる気か、このモンペが!!」

 

「誰がモンペだ。まだ幼いあの子に群がる時点でロクな奴ではないに決まっている。あの子をいくつだと思っている?」

 

「そういう話じゃ――――あ、やばっ」

 

「【福音(ゴスペル)】――【サタナス・ヴェーリオン】」

 

叫ぶ中で生まれたほんの一瞬の隙をつかれ、防御する間もなく魔法が炸裂する。

軽快に鳴るフィンガースナップと共に繰り出されるそれは、オッタルの時と同じ5発の魔法。

鐘の音も5つ。

それに気づいたリヴェリアは、脂汗が浮かんでくるのを感じる。

 

「レフィーヤと同系統のスキルか…!」

 

「なら、魔法で―――!」

 

「待て、レフィーヤ!」

 

「【魂の静寂(アタラクシア)】」

 

レフィーヤは魔法をアルフィアに向けて繰り出すが、それは当たる直前で打ち消される。

その光景を、彼女たちは見たことがあった。

 

「あれって…」

 

「あの少年と同じ魔法無効化だ!レフィーヤは私と共に防御と回復に専念しろ!」

 

その指示とともに、詠唱を始めるリヴェリアとレフィーヤ。

前衛がいるおかげで問題なく魔法は完成するが、アルフィアの猛攻の前にはその防御魔法も長くは保たない。

 

「どういうことだ…?なぜここまで強くなっている?それに、不治の病はどこに行った!?」

 

血反吐どころか、息切れ一つ起こす気配を見せないアルフィアに、リヴェリアは思わず悪態をつく。

その疑問のような悪態は前衛のガレスとフィンも同様のものを感じていた。

だが、そんなものを言っている暇は彼らにはない。

 

「魔導士なのに、なんでこんなに動けるのよ!?」

 

「それが出来るだけの化け物じゃ!泣き言を言っておらんで、攻撃の手を休めるな!」

 

「だとしても、限界が…。アイズ!!」

 

「分かってる!―――今来てる、あと一分耐えて!」

 

「「「了解!!」」」

 

スキルでベルの現在地を詳細に知ることが出来るアイズは、彼がこちらに向かってきていることを知り、それを伝える。

ベルさえ来れば、【道化行進(アルゴノゥト)】をフルに使うことが出来るようになる。

彼と同じファミリアにいる他の三人も来るはずだ。

それに、ベルの【英雄運命(きりふだ)】と【英雄神話(とっておき)】だってある。

ベルさえいれば、どれだけ理不尽な相手だろうが勝ち目が見えてくる。

 

そして、その時はようやく訪れる。

 

………………

……………

…………

………

……

 

雷を纏うベルは、屋根の上を駆けていく。

まさに下界最速という他ないほどのスピードだ。

その途中、ベルは詠唱を始める。

 

「【それは遥か彼方の静穏の夢】」

 

その魔法が完成すると、ベルのスピードは一段階落ちてしまう。

魔法無効化が自身にも作用し、雷霆の剣を力が抑制されたのだ。

だが、当然これも承知の上。

ベルは走りながらも、詠唱を続ける。

今まで一度も使ったことのない、2つ目の魔法の“本当の力”を使うために。

 

「【福音の慈愛、父母の奇跡、恩寵受けし我が身の幸福】

【禍根はなく。呪縛はなく。災禍はなく。鳴り響く天の音色こそ僕への愛】」

 

超長文詠唱。

今まで使ってこなかったその歌が零れ落ちる。

 

「【暖かな風。揺れる麦の穂。手を引く貴女。あの日見た理想の全て】

【箱庭に愛されし我が運命(いのち)よ、咲き誇れ。僕はアナタを愛している】」

 

それは、あの日の理想。

初めて願望を抱いた思い出の日。

それが形となった思いの結晶。

 

「【寵愛はここに。愛の証をもって万物(すべて)を鎮める】」

 

ベルは戦いの場に駆けつけると、屋根を蹴って大きく飛び上がる。

戦場の中心を目掛けて落ちていく。

そして、その魔法は解き放たれる。

 

「【哭き止め、聖鐘楼】」

 

最後の一文を歌い上げると、その効果はすぐに形となって現れる。

リヴェリアが展開していた防御魔法も、アイズが身に纏っていた付与魔法も、アルフィアが用意していた攻撃魔法も。

全て等しく消えていく。

 

全てが消えて静寂が場を支配する。

その静寂はやがて穏やかな風となって消えていく。

夕暮れの中、風に揺れる麦畑とそれが奏でる心地よい葉擦れの音。

そして、その畑の中を歩く、美しい女性と幼子。

見えるはずのない、この場には存在しないその光景を、この場にいる全員が幻視した。

 

「……ベル?」

 

この魔法を試し打ちした時には起きなかった現象に、アイズたちも戸惑った。

なにより、今の光景。

女性と幼子の顔はハッキリとは見えなかった。

だが、アイズたちにはそれがベルに思えた。

幻視したその光景に呆気にとられていると、気づけばベルがいた。

幻ではない、自分たちがよく知る本物のベルだ。

 

「すいませんでしたァァァァァ――!!!」

 

ベルは地に足をつき、額を擦り付け、謝罪の言葉を叫ぶ。

紛れもないDO☆GE☆ZAである。

 


 

ベル・クラネル一世一代の渾身の土下座に、この場にいる全員が固まる。

 

「本当にすいませんでした!!罰金でも慰謝料でも何でも支払うので、投獄だけは勘弁してください!!この人、絶対に脱獄するから二次被害がすごいことになるんで!!」

 

「………え?」

 

「ご迷惑をおかけして、本当に――――グっフ!」

 

「何をやってるんだ、お前は」

 

土下座をしていたベルは、アルフィアに首根っこを捕まれ無理矢理起こされる。

そして、そのまま目線まで持ち上げられたベルはアルフィアと目を合わせた状態で言い争う。

 

「こっちのセリフだよ!?何やってるの!?」

 

「売られた喧嘩を買っただけだ。文句ならザルドに言え」

 

「じゃあ、なんでアイズさんたちとも戦ってるの!?」

 

「アイツラが勝手に私とザルドの喧嘩に首を突っ込んできただけだ」

 

「喧嘩にしては規模が――――って、あれ?おじさんは?」

 

「よく見ろ、あそこに突き刺さってるだろう」

 

アルフィアが指差す方には、アルフィアの魔法で吹き飛ばされ、上半身だけ地面にめり込んだザルドがいる。

俗に言う、犬神家状態だ。

 

「おじさぁぁぁぁん!?」

 

『その声、ベルか!?ちょっと待て!!』

 

地面に突っ込んでるせいでくぐもった声で、ザルドは話す。

そして、足を揺らしてなんとかその状態から脱すると、ベルを見つけて満面の笑みを浮かべる。

 

「ベル!」

 

「おじさん!」

 

「ベ~ル~!!」

 

「お~じ~さ~ん!!」

 

「「ヒシっ!!」」

 

そして、ベルもザルドも満面の笑みを浮かべたまま両手を広げて駆け寄っていく。

そのまま力強く抱き合った。

 

「気色悪い」

 

「「ヘブシっ!」」

 

だが、それを気色悪がったアルフィアにより二人揃って拳骨を落とされ、沈められる。

そのまま地面に倒れ伏す二人を冷たく見下すアルフィア。

ちなみに、二人はダイイングメッセージのように地面にアルフィアの名前を書いている。

 

「男同士で何をやってるんだ、お前らは」

 

「い、イエス、マム…。サーセンッシタ」

 

「あのクソジジイから学んだ全ては即刻忘れろと言ったはずだが?」

 

「大変申し訳ございませんでした!!」

 

ベルの態度に呆れ果てるように、アルフィアは大きなため息をこぼす。

 

「まったく…。お前には一度、母親に対する敬意というものを思い出させる必要があるようだな」

 

「なら、お義母さんは息子への気遣いを思い出してください!!」

 

「そんなものを持った覚えはない。故に、思い出すことはない」

 

「ヒドいっ!!」

 

次々とコントのように繰り広げられる軽快な会話だったが、その中に一つ、聞き捨てならないものがあったのをアイズ達は気がついた。

 

「………母親?」

 

「誰が?誰の?」

 

「え?まさか、そんな訳ないわよね…?ベルくんの母親ってもっとこう、お淑やかで大らかな人を想像してたんだけど……。」

 

その事実を信じきれずに困惑する中、ベートたちもこの場にやって来た。

 

「やはり、もう終わっていたか」

 

「ベート…。来るのが遅いんじゃない?」

 

「元々、問題にはならないだろうしベルがいれば騒動も落ち着くと考えていたからな。私達がいても大差ない」

 

「事情はある程度知ってるってわけね…。ねえ、あの人って、本当に――――」

 

「ああ」

 

誰もが否定したい事実を、ベートは突きつける。

 

「ベルの母親らしいぞ」

 


 

あとがき

 

順番に書いていこうと思っていたんですが、こんな形になってしまい本当にごめんなさい。

本編ストーリーの方は、取り敢えずメレンでの出来事だけは今年中にはきっちり書き上げます。

それ以外は分かりません。

これの続きも、できれば今年中に書いて投稿したいです。

あと、考えてる半年後のステイタス設定だけはこのあと上げます。

 

本当に、ごめんなさい。

 

 

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