[本編完結]オサレ詠唱の申し子   作:山吹乙女

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 先生曰く、虚式『茈』の詠唱にBLEACHみを感じたのでお試しで書いてみた作品
 


多分天職は声優

 拝啓、前世の両親へ

 息子の私はなぜか呪術廻戦の世界に転生しました。洗い物を洗濯カゴに入れなかったことや、妹のプリンを勝手に食べたことや、夏休みの観察日記のアサガオを枯らしてしまったことが、私の贖罪すべき罪なのかもしれません。

 でもこの罪を甘んじて受け入れて呪術師としてなんとか死なないように頑張っていきます。

 

「パイセーン、暇なんでマッ○奢ってよ○ック」

 

「悟、暇だからって愛染さんにダル絡みするのはよくないよ」

 

 あの五条悟と夏油傑の二つ上の先輩になっていたけど…頑張ります。

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 術式を知覚したのは八歳の頃だった。同時期に最初の呪力操作でたまたま成功してしまった黒閃のおかげで呪力の核心に触れ、脳に伝わる衝撃と同時に前世の記憶が蘇った。

 前世の記憶を知覚した事と、発現した術式が噛み合ったのも偶然だったが、なんとなく出来そうという確信があり言葉に発してみた。

 

「君臨者よ 血肉の仮面・万象・羽搏き・ヒトの名を冠す者よ 真理と節制 罪知らぬ夢の壁に僅かに爪を立てよ──破道の三十三、蒼火墜」

 

 呪力の喪失と共にかなりの熱量を持った火炎の塊が、誰も見ていないであろう家の近くにある林のひとつの木に向けていた掌から、飛び出し木を薙ぎ倒していって大木にぶつかりそのまま鎮火した。夢にまで見たBLEACHの鬼道が使えたのである。

 

 それからというもの出力はどれだけ伸ばせるのか、どれだけの等級の呪霊を祓えるのか、危険だと判断できるもの以外のことはあらかた試した。

 危険なことは極力避けながら、黒閃の影響で二級呪霊が問題なく祓えるほど呪力操作に慣れるまで三年もかからなかったところで呪術高専関係者が家に来た。なんでも家の近くで練習していたことから残穢を辿って家まで辿り着いたらしい。

 

 高専関係者は両親には話さず、呪力をある程度理解していた私にだけ話してくれたが、私の呪力量と出力は一級相当であるらしい。術式が高専のお偉いさん好みであったこともあり、貴重な人材になると睨んだ高専関係者は私を監視下に置いた。

 

 そして高専から監視されながら祓えそうな呪霊を祓っていくと、呪術高専に通える年齢になり、冥冥さんとクラスメイトとなって二年後、今に至る。

 

「ちょうど任務も終わって暇をしていたところだ、せっかくだし冥冥さんも一緒にどうかな?」

 

「宗介くんの奢りなら私は構わないよ」

 

 愛染 宗介(あいぜん そうすけ)という絶妙に偶然で済ませられそうな名前と響きの良いバリトンボイスを持って。

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 私の術式は呪詩と呼ばれる呪術的に意味のある言葉の羅列そのものを、前もって決めた形にして技として昇華させる言霊呪法(ことだまじゅほう)と呼ばれるものだった。昔からある術式のようで言った言葉そのものが発動する呪言ほど使いやすくもなく、応用は利かないが、私生活には問題ないし、縛りで出力の底上げも出来るので火力面ではかなり気に入っている。

 

 火力が優れていることもあり一応二級で高専に入ったが、すぐに一級術師に格上げされ、今日も今日とて一級相当の呪霊の討伐任務を任されたのだから働き者だろう。冥冥さんではないが報酬が結構いいので不満はそこまでない。

 ちなみに火力面でなら無限バリアの五条悟以外に防げた人は居ないくらいだった…やはり火力よ。

 

「しかし今回はやけに禍々しいな…」

 

 元々一級以下の等級らしい任務だったが、廃れた廃村の神社で祀られていた土地神が呪いに転じたらしく、一級相当に格上げされたのだとか…そういえば過去編で灰原が死んだ任務も似たような内容だったような? 私が片っ端から任務を片付けていたから人手が回り、トラップのような任務もちゃんと等級通りに判断されるようになったのかもしれない。灰原生存ルートに入ったかもしれないな…。待てよ──確か灰原くんが死んだ時の任務は特級案件だったような?

 

「まぁいつも通り任務をこなすとするか」

 

 そして私の目の前には…そうだな、例えるなら鋼の○金術師の本当の姿のエンヴィーみたいな見た目をした呪霊だな、とても口が臭そうだ。

 しかしなんだかこの村で人柱にされた人の悲鳴が聞こえてきそうなので、早々に終わらせようとする。

 手を突き出し、目の前で掌をまるでワイングラスを持つかのように開けると黒い球体が姿を現す。

 

「破道の九十、黒棺」

 

 黒い箱がエンヴィーっぽい呪霊を覆い隠し、掌の黒い球体を握りつぶすと、呪霊を囲っていた黒い箱が無くなっていき呪霊が祓われた。九十番台なら詠唱破棄でも特級らしき呪霊を祓えるが、はたして甚爾くんに勝てるだろうか。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 言霊呪法には本来詠唱破棄なる技術はない、どんなに弱い技でも完全詠唱の必要性があった。しかしそこは縛りを用いて『完全詠唱しなければその技の威力を落とす』とすることで、技名と動作だけで出したい技が撃てると言う仕組みを作る。

 この術式のそのものの仕組みは要はポンプで風船に空気を送り、空気の入った風船を飛ばす要領に近い。それをポンプを使わずに自分の口から空気を送り込んで風船を膨らませて飛ばすのが、いわゆる詠唱破棄に当たる。

 

 更に番号の高い術の詠唱破棄をする場合、発生までのプロセスを詠唱で補っていたものを呪力で補う縛りを用いることで詠唱破棄だろうとある程度の火力を出せるまでに至った。

 その代わり九十番台の完全詠唱の鬼道を出そうものなら縛りの関係上、莫大な呪力を使うことになるので完全にオーバーキルとなる。多分今の私の呪力量で完全詠唱の黒棺を出そうものなら、渋谷事変の宿儺の伏魔御厨子とまではいかないだろうが、すごい惨状になるだろう。

 

 そんな国家転覆が出来るのでは無いか?と、思っていた矢先、星槳体の護衛と抹消任務を受けた五条悟と夏油傑の現場でのバックアップを言い渡され承諾することにした。

 指名されたのは二人だけだが、問題児である五条悟のお目付役のような役回りで一緒に派遣された。「お前なら懐かれてるようだし、アイツらも言うこと聞くだろうから問題ないだろ」って夜蛾先生に言われたよ。

 

「しかしお目付役で私まで駆り出されるとは思わなかったな…いや、しかしなんだかんだと呼ばれるような気もしていたのは事実ではあるか」

 

「何をぶつぶつ喋ってる?命乞いするなら今のうちだぞ、このホージュには勝てないだろうからな」

 

 また私の悪い癖が出たな、敵を目の前にしてるのに緊張感がない。確か…呪詛師集団"Q"だったか? ──しかしどのみちすぐに終わる。

 

「縛道の六十一、六杖光牢(りくじょうこうろう)

 

 指差した方向にいたホージュとやらに六枚の光の板が突き刺さると身動きそのものを封じた。

 

「なんだこれは!?動けない!」

 

「座標指定で固定させてるだけで、呪力そのものを縛るような術ではないけど、君では壊せないようだね…さて、なんて言っていたか──そうだ「命乞いするなら今のうちだぞ、この愛染宗介には勝てないだろうから」…だったかな?」

 

 意趣返しのつもりで相手のセリフを真似てみたが、意外と様になるものだな。

 

「パイセン性格悪っ!さっさと気を失わせればいいのに意趣返しでダラダラ時間かけるって性格悪いわ!」

 

 同じタイミングで呪詛師に襲撃された五条が帰ってきたが、性格悪いって評判の五条悟に言われるほどの行為だったか…思い返してみるとそんな気がしてきたな。

 

「おや五条か、流石に早いな」

 

「そりゃ相手雑魚だもん、こんな奴らに時間使う方が勿体無い」

 

「それもそうか…破道の一、衝」

 

 拘束した呪詛師の腹部に破道を叩き込むと吐血して気絶した。む、スタンガンのような技なのだが出力をミスったか。

 

「一番威力の低い破道で、雑魚でも呪力で体を強化してんのに吐血して気絶する威力って、やっぱり愛染パイセンはそのうち特級認定されるんじゃない?」

 

「そうかな?しかし私では国家転覆できるほどの呪力総量は無いさ、どこかで必ず呪力切れになるよ」

 

「うーん、そうかなぁ?俺の()には余裕そうに見えるけどなー」

 

「はは、これは手厳しい」

 

 私は壊す予定のない黒縁メガネを人差し指でクイと上げた。

 




 この偽ヨン様はロールプレイをしてるわけでも悪役になる気もないのに、言動が分かる人には怪しく見えてしまうなんらかの病に罹ってると思われます。
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