[本編完結]オサレ詠唱の申し子   作:山吹乙女

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 お疲れ様です。
 またしても続きました。
 ところで葬送のフリーレン見始めましたが面白いですね


あまり強い術式を使うなよ___怖く見えるぞ(怖気)

 やはり彼には私たちの姿が"ちゃんと"見えている様だね。真人の術式である無為転変は魂の知覚が出来る。五感を操る鏡花水月であろうと、第六感の部類に入る魂の知覚は対象外なのだろう。

 当初では身代わりの呪霊を錯覚によって私たち三人に見せ、先行させる宿儺と同じ手筈だったが、やはり上手くはいかないね…ならばプランBと行こう。

 

 私たち三人でツギハギ顔の呪霊、真人と対峙する。

 単純計算、三対一の構図だが真人に0.2秒の領域展開を発動されれば、例え私であろうと殺されてしまう可能性がある。上手い事、領域のタイミングを合わせられるなら話は変わってくるが、それもまた運任せになるだろう。

 なので私と夏油はあくまでも虎杖くんのバックアップに回り、真人からは確実な安全圏である二十メートルほど離れた位置での援護に徹する。

 

「多重魂『撥体』」

 

 真人の多重魂『撥体』は別々の魂の拒否反応を応用した範囲攻撃の様なものだ。多数対一の戦略もちゃんと用意している戦闘センスは本当に評価に値するな。

 しかし、呪霊操術という呪霊特攻の様な術式があろうと、魂の輪郭を捉えられたとしても、その全てを覆す可能性がある真人はやはり怖いね。

 

「来るぞ虎杖くん!」

 

 夏油が虎杖くんに注意する様に指示する。

 

「縛道の八十一『断空』、君は攻めに専念したまえ、防御は私と夏油が受け持つよ」

 

「先生…」

 

「面倒だね…虎杖は後、先に取り巻きを潰す!」

 

 真人が虎杖くんに向けて改造人間を指で弾き目眩しをして、こちらに近づいてくる。

 

「下がれ夏油、あの手にはくれぐれも触れるなよ」

 

「わかってますよっ!」

 

 真人は攻め込みながら改造人間を射出して変形、逃げる方向を狭めようとしているが、夏油もバックステップをしながら射出された改造人間を低い等級の呪霊で撃ち落とす。

 

 戦闘経験自体はまだまだだったはずだが、距離の詰め方が上手い…まるで詰将棋でもやらされている気分になる。

 簡易領域を使えない私と夏油は領域展開をされた瞬間に殺される。領域効果とその脅威を共有している私たちは、例え真人自身が領域展開をする気がなくてもその使用に怯える必要がある。つまり、距離を詰める事そのものが私たちにとっての攻めとなる。

 

 本当ならこちらから領域展開で仕掛けていきたいが、それも不安要素が残る。現在の羂索のボディと術式が分からない以上、取れる手段はできるだけ残しておきたい。

 しかしあの羂索の事だ、私が原作に介入する事を妨害していたところを見るに、観察か…それとも何らかの対策を講じて来たか、だね。

 

 何とも一人相撲の様になってしまうな。後先考えずに手を出せたら良かったが、結果として私にはこの方法しか思いつかなかった。

 

破道の六十三、雷吼炮(らいこうほう)

 

 真人に向けた掌から雷の様な閃光が迸り真人が回避するも、真人を追いかける形で背後まで迫っていた虎杖くんに捉えられ側面の壁まで殴り飛ばされる。

 

「良いタイミングだ、虎杖くん」

 

 私と夏油で真人を追い詰め、逃げ道を潰しながら虎杖くんをぶつけ、ちまちまと削っていく…持久戦だ。

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 今、虎杖悠仁の拳から黒い閃光が真人を殴ると同時に迸る。『黒閃』である。

 

「かはっ…」

 

「やはり虎杖くんを連れてきて良かった。削りが楽になる」

 

「まーた胡散臭くなってますよ、愛染さん」

 

 愛染は夏油に指摘されて「ハハ…」と、メガネを中指で押し上げる。

 

「さて、これで大詰めだ。もう一踏ん張りだ虎杖くん」

 

「押忍!」

 

 真人は逃げ遅れた一般人を改造人間にしながら臨機応変に戦うも、単純な人数差を埋めることは出来ず、臨機応変さであれば愛染宗介の言霊呪法があり、そして更に愛染ですら遠く及ばない手数を持つ夏油傑の呪霊操術があるので、単純な手数は一対一万以上の差はあることとなる。

 

 これまでの戦闘で『幾魂異性体』自身に命をかける縛りを付与された瞬間こそ危うい瞬間はあれど、真人の改造人間のストックはゼロとなり、『遍殺即霊体』も三人で十分に対処できるレベルのものであった。

 

「まだ…まだ!!!」

 

 しかし自身の魂の本当の姿を掴んだ末の真の姿である遍殺即霊体も打開されて尚、真人はその笑みを崩さなかった。

 

領域展開『自閉円頓裹(じへいえんどんか)』!!!

 

 真人は会得したのである。閉じない領域を。

 本来結界術である領域を結界で閉じずに展開する領域は、まさに空に絵を描くかの様に掴めるものではないが、こと掴めないあやふやな分野においては、魂という実体のない物を扱う術式を持ってる真人だからこそ理解し、会得出来たものである。

 

 閉じない領域の最大の利点はその効果範囲にある。

 領域で閉じないことにより、逃げ道の確保が出来るという結界術の前提を覆すものであり、結果的に縛りとしてその効果範囲は百メートルに及んだ。

 尚且つ、五条悟の無量空処によって会得した、虎杖の中に眠る宿儺の逆鱗に触れないギリギリの0.2秒という領域展開も拍車がかかり、完全な詰将棋の態勢であった夏油と愛染もその効果範囲に入り、致命傷を負うこととなる。

 

「ぐっ!」

 

「ふぅ…やられたな」

 

 奇跡的に成功した呪力での魂の防御により、死ぬことこそなかったが夏油は右足を、愛染は左腕から徐々に変異しようとしていた部位を切り落とし、虎杖に援護が入らないその瞬間を真人は見逃さなかった。

 

「無為転変…今日は俺の誕生日と…お前の命日だ」

 

 『遍殺即霊体狂鎧衣(へんせつそくれいたいきょうじょうえ)

 自身の魂の本当の形を理解したものが遍殺即霊体に当たるが、上げたのは物理的な肉体強度であった。

 しかしこの狂鎧衣は、目の前の人物の攻撃が皮膚に当たる瞬間に皮膚に穴をオートで開け、敢えて貫通させ、それ以外の体の変形を禁止する縛りを設けることで神技的速さの身体変形速度を会得した。

 肘につけられたブレードも鞭の様な軟性にすることで強度より柔軟性を獲得させ、より破壊させづらくさせた。

 

「第二ラウンドと行こう」

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 まさか…真人が閉じない領域を会得していたとは、やはり私は詰めが甘い。

 

「止血は終わったかな?」

 

「ええ、まさか結界で閉じない領域がこの世に存在するとは、鳩が豆鉄砲を食ったようです」

 

「私も反転術式のアウトプットが出来ていれば良かったが…君は家入くんのところに戻りなさい、脚を負傷していてはいざという時に動けないからね」

 

「そうします。愛染さんは虎杖くんのところに」

 

「分かっているよ」

 

 真人を追い詰めることに集中していて、いつのまにか外に出ていたので、家入くんのところに退避するのはそう難しいことではないだろう。

 

 しかし反射的に領域範囲から離れようと虎杖くんとの距離をかなり離されてしまったが、無事だろうか。

 実を言うなら、真人を夏油の呪霊操術で取り込んでくれたら羂索の計画を潰せていたが、夏油そのものを失う訳にも行かないからな。

 

 戦闘をしているところにようやく辿り着いた訳だが、夏油の止血の時間を考慮したとしても経って数分、その時間でまさか東堂くんが参戦していて、なんならもう真人を倒す一歩手前とは思わなかった。

 真人の形態も遍殺即霊体とは少し違うな、ベースの人の見た目に近い形だが、ブレードがあったはずの肘から鞭の様な物が伸びて触手のように自在に動いている。硬度よりも軟性を取った結果…虎杖くんの打撃と硬さを警戒してのさらなる変化だろう。

 

 このまま私が手を出さずとも倒してしまいそうだが、どうするか…。

 よし、虎杖くんの成長を考えてここは二人に任せ、もう運び出しができる様になってしまった獄門疆を持った羂索を探すべきだね。

 

「手を貸そうか、真人」

 

 私の予想とは裏腹に、既に二人の戦闘が終わったところに羂索らしき声が聞こえる…待てよ、この()は…。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 虎杖悠二と東堂葵の活躍により、真人は祓われる寸前まで追い込まれていた。

 そしてその場面にまるで転移してきたかの様に現れた人物が居た。

 

「手を貸そうか、真人」

 

「羂索…」

 

 羂索と呼ばれた人物の見た目は()()だった。

 真人が改造人間にしようと手を触れようとしたところを避け、丸い玉の状態に変え、嚥下する。

 

「大きくなったね、悠仁」

 

 東堂は虎杖の知り合いかと虎杖の顔を伺うと、その目は見開いていた。

 

「母さん…なのか?」

 

 虎杖の見開かれた瞳の先には、額に縫い目を施された女性、遥か遠い記憶の片隅に存在した虎杖悠仁の母親、虎杖香織であった。




 お疲れ様でした。
 実はこの虎杖曇らせは、一度でもいいからずっとやりたかった展開だったんですねぇ!
 ちなみに元々羂索のボディの候補は作劇的に虎杖ママ以外の候補はなかったですねぇ〜。鏡花水月に適応出来ていた読者様なら予想できていたでしょうが…
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