構成めちゃくちゃ悩みました。
「そうですか…あの愛染さんが…」
虎杖悠仁から愛染宗介の訃報を受けた七海建人は少し上を向き目を瞑ると、昔の記憶を蘇らせる。
『君が今年から入ってくる一年の七海くんだね、私は愛染宗介。さて堅苦しい挨拶はこれくらいにして、同期の灰原くんや君たちの先輩に当たる人物達とも交えて親睦会のようなものを今からやろうと思うのだが、参加してくれるかな?』
いつも柔和な笑みで優しく接してくれてた愛染さんはいつも誰かのために動いてくれていたなと、初めての出会いでもそれは変わらず七海建人の記憶にあり続けていた。
伊地知潔高は渋谷における死傷者の報告書を作成している途中、愛染宗介の項目に取り掛かる段階で耐えられず涙を流した。
「愛染さんッ…」
『伊地知くん、君は呪術師志望だったね、悪いことは言わないから、君は呪術師にならない方がいい。強さと言う点ではないよ、精神性とも言うべきかな? 君は優しすぎる、呪術師としても、人としても…──愛染さんも同じだって? はは、これでも私はしっかりと呪術師のつもりなんだけどね』
愛染宗介の死体を羂索が持ち去ることを辛うじて阻止したあと、死体安置所にて夏油傑は静かに俯き昔を思い出し、家入硝子はその遺体を探る。
『どうやら悩んでいるようだね、顔色も良くないし私でよければ相談に乗るよ?──そうか…それは大変だったね。今まで守ってきた物の価値がわからなくなった…か、これほど重い悩みを抱えていたとはね、もっと早くから気がついてあげられればよかったな』
『でもそうだね…これは私が何かを言って解決してあげられる物ではないだろうが、いっそのこと守る物そのものを変えてしまうと言うのはどうだろうか?自分の為に、親友の為に、そう言った自分勝手かもしれない物を守るだけでも人は歩み続けられる物だと思うよ___』
「自分が私の世話になってどうするのさ…」
『救えなかった命に対して何も思えない人物なんて居ないよ、医療に携わっているなら尚のことだろう。君がいるからこそ救える命があることは誰もが思っていることだよ…でもタバコは少し控えた方がいいかもしれないね、君が元気に長生きすることでより多くの人を救うことができるのだから』
「嘘…これって…」
愛染宗介の遺体を解剖していた家入だったが、ある違和感に気がつき手を止めた。
◆◆◆
血液と肉片が飛び散った空間で私は立ち尽くす。呪術総監部の粛清は驚くほどあっさりと終わり一分とかからなかっただろう。
こんな血生臭い世界で優しい世界を目指そうと言うのだから、自分でも笑みが溢れてくる。しかし呪詛師以外の人を殺し血に染まった手で
「宗介くん〜、そっち終わった?…何物思いにふけてんの?」
「いや、何でもないよ直哉。らしくないことを考えていたと思ってね…」
少し離れていた直哉が姿を現すと、こちらを物珍しそうに見る。
「どうしたのかな?」
「普段は優しそうな雰囲気やのに、裏ではこんな血も涙もないような人やし、宗介くんの"本当"はどっちなんやろと思うてね?」
「ははは、あまりからかわないでくれ。本当の私は自分のことしか考えられない矮小な人物だよ。それよりそろそろミゲルと憂太が日本に到着する頃だろう。それに伴って総監部が出す予定だった通達の改変は進んでいるかな?」
「抜かりなく、終わらせといたで」
呪術総監部より通達
一、渋谷事変を起こしたとされる大戦犯、羂索の捜索並びに抹殺。
二、虎杖悠仁の死刑執行猶予を取り消し、速やかな死刑執行を決定とする。
三、虎杖悠仁の死刑には特級術師、乙骨憂太を任命する。
四、死刑執行後の虎杖悠仁の肉体は直ちに、呪術総監部に移送すること。
「元の指令からかなり内容変えたんやね、獄門疆の解除や正道くんの処遇は分かるけど、悠仁くんの死刑関連はそのままにするんやね」
「構わないよ、ある程度は元の通達通りにしておかないと羂索にすぐ気取られるからね」
「いやぁ俺はただ、学年が違うとはいえ教え子を殺す判断を出すんやね、と思うてね」
なんだか含みがある言い方だね…。好感度は稼いでたはずなんだが…。
「あぁ、それなら憂太の反転術式なら虎杖くんの心臓を止めた瞬間に蘇生させることも可能だからだよ。ただ問題なのは一度だけだが、両面宿儺は肉体の主導権を得られる縛りを虎杖くんと結んでいるはずだから、伏黒くんと離すために一時的だが隔離が必要というわけなんだ。伏黒くんと隔離する理由は彼の術式が原因だね、かの両面宿儺は虎杖くんから伏黒くんに受肉体を移そうと考えているはずだ。仮に死刑執行時に体を乗り換えられるようなことがあったとしても、ミゲルの見立て通りなら現時点でも憂太なら両面宿儺の制圧は可能だろうからね」
「…もう、俺は宗介くんが未来人って言うても驚かへんわ」
「ソレならいっそ、良かったのかも知れないね」
未来人よりもっと荒唐無稽な人だが、言っても信じてくれないだろう。
◆◆◆
俺にとって愛染宗介という人物は埒外の化け物やと思うとる。強さという点やない、強さなら俺や甚爾くん、悟くんや傑くん、後よう知らんけど由基ちゃんも同じ枠組みに入るやろな。でも俺の言う化け物はその精神性にあると思うとる。
例に挙げるなら『浴』やろうな。文字通り悪魔との契約に初めて浸かった瞬間、まるで身体中の皮膚の下を芋虫が這いずり回っとるような感覚に囚われながら、内側から自分の体を作り変えるように、芋虫が歯を剥き出しにして喰らい付く痛みに襲われる。
"そっち側"に立つためやと言われんかったら、もう二度とごめんやと思うくらい不快な感覚やった。それを宗介くんは顔色一つ変えずに浸かっとる。あの時はドン引きしたわ。
でもその精神性があったからやろな、この人を甚爾くん以上におもろいと思うてしまう。
しかし、それにしても宗介くんの先読みはほんまに未来予知レベルやろ、誰が"片腕失ったパパが当主を降りて、禪院家の次期当主が俺やなくて恵くんに変わって、尚且つ総監部に取り入るために自分の娘達を殺そうとする叔父さん"を予想できるんや。
「大戦犯である羂索と血縁関係である死刑予定の悠仁くん、渋谷事変に加担した疑いのある学友の恵くんと真依ちゃんと真希ちゃん殺して、総監部に羂索抹殺の意志を見せるためっちゅう建前なんやろ?実の娘と、当主ですら殺すことでその信憑性と忠誠心を見せる腹づもりなんやろけど…ほんま呆れてくるわ」
二人共切られて叔父さんに引きずられとる最中やったな、向かう先は呪霊を飼っとる練習場か、危ない危ない。
「お前には私の気持ちは分からん。不出来な娘のせいで当主になれなかった私の気持ちは」
「…何言うてんねや?」
実の娘達切り伏せといて言うにこと欠いてソレかいな…。
「…叔父さんがパパに負けて当主なれへんかったんは娘が産まれるずっと前やんか、何が関係してるん?デキが悪いんは頭やなくて人やったんか…可哀想に、俺が介錯したろか?」
「お前も当主の座になれる可能性があるからと、手を貸すものと思っていたが…変わったな」
ずっと変わられへんのに、考えかたが古臭さすぎるやろ。そんなんやからイマイチパッとせぇへんのや。
「変わったのは世界の方やで…いや、俺は変える側になるんか」
術式解放『
「次期当主候補筆頭は_」
あぁ、コレが宗介くんが言う膿にしかならん奴やな。今ならよう分かるわ。
「_ここで殺す!」
「呆れるわ…トロ過ぎるやろ、何もかも」
自分が死んだ事も気が付かないんやからな。
お疲れ様でした。
愛染「真希くんと真依くん死んだら巡り巡って禪院家滅ぶから頑張って阻止してきて、それとも自分の家の事情なのに私に行かせるつもりかな?」
直哉「しゃーないから行ったるわ!」