[本編完結]オサレ詠唱の申し子   作:山吹乙女

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 お疲れ様です。
 今回が最終回です。


特別な歩み

 平安時代から体を乗り換え生きながらえて来た羂索が虎杖香織の身体を以って全日本人を集約、一つの呪霊に纏めようとした未曾有の呪術災害。後に『魑魅魍魎』と呼ばれた事件は、全日本人が呪力に目覚め、呪術が当たり前となったことにより、呪霊そのものが新しく生まれなくなった事から計画は頓挫し、五条悟と夏油傑と虎杖悠仁の活躍の元、事態は収束した。

 

 …事件報告ってこんなもんか?…やっぱり伊地知にやらせればよかった。あー肩が凝る。

 

「パイセン…アンタは今どこに居んだよ」

 

 パイセン…愛染宗介は呪いの王、両面宿儺を討ち取ったその流れで、羂索を追跡、各地に分裂していた羂索を同時に相手取る必要性から戦力は各地に分散した。

 

 全ての呪術師を総動員させ、分身を作る暇を与えさせない作戦は成功するも、羂索は最後に自身で隠し持っていた宿儺の指を取り込み、自前で用意した一億の呪霊を融合させ、生物としてのステージを上げ…、しかしなんとかそれを祓う事に成功した。

 

 ただ…"その事"に気がついた時は、戦いが終わった後だった。

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「お疲れさん!傑!悠仁も危ないところを助けられた!」

 

「全く、悟は私がいなかったらどうなっていたか…」

 

「まぁいいじゃん、五条先生が無事だったんだし!」

 

 手数の多さからサポートに周り、全ての術師をバックアップしてくれていた傑と、自身の血統に決着をつけることが出来た悠仁の二人とハイタッチを決める。特に最後の悠仁の渾身の黒閃がなければ、僕であろうと死んでいた可能性すらあった。

 あの時見た進化したパイセンに並ぶであろう生物としての違い、僕が思っていた比喩的な、周りの人間が花に見えていた物とは根本的に違っていた。

 

 そうそうパイセンもこの戦場のどこかに居るだろう、あの時進化した雰囲気は鳴りを潜めているのか、気配が掴めないけど…まぁどこかにいるでしょ。

 

「そういやパイセンは?二人ともどこ行ったか知ってる?」

 

「パイセン?あぁ、冥冥さんなら一足先に憂憂くんと帰ったはずだよ、行き先はイスタンブールだったかな?」

 

「歌姫先生なら京都側じゃない?」

 

「ん?違う違う、パイセンだよ、パイセン。身長高くて、メガネかけて胡散臭かった愛染パイセン」

 

「愛染?…」

 

「え、誰?ホントにその人高専の人?」

 

 …は?二人とも何言ってんの?

 

「いやいや、二人して…僕はまだしもパイセンは揶揄っちゃダメでしょ。傑は特にお世話になったんだし」

 

「ごめん悟、揶揄ってるわけじゃなくて本当に知らないんだ…さっきから誰のことを言ってるんだ?」

 

 候補として少し浮かびかかっていた嫌な予感が、傑の発言から現実味を帯びてきた。

 僕は困惑する二人から離れると、野営地で医療キャンプをしていた硝子を尋ねる。

 

「硝子!パイセン、ここに来てたりする?」

 

「パイセン…?悟がそんな呼び方する歳上の人いたっけ?」

 

 硝子に一旦別れを告げると、七海にも聞いた。

 

「愛染宗介…そのような先輩がいた記憶はありませんね」

 

 藁にもすがる思いで、伊地知にも尋ねた。

 

「愛染さん…いえ、私の記録にもそれらしい人物はいらっしゃらないですね」

 

 まさかと思い、知り合いにあらかた聞いてみるがパイセンの記録が、パイセンがその場にいたという記憶がみんなの中から綺麗さっぱり無くなっていた。まるで存在そのものが幻覚であったかの様に。

 しかし存在そのものが幻覚や幻術ではない、あの人が居たという事実は僕自身の記憶が物語っている。

 

「どこに行っちゃったんだよ…パイセン。なんで…どうして、何も言わずに行っちゃうんだ…」

 

 どこかに行ったのなら見つけるしかない…例え、僕しかアンタの事を覚えていなかったとしても…。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「ケヒ…俺の存在ごと消せば良かったものを、術式を剥奪して人並み未満の呪力で俺の即身仏を使い転生させるとは…貴様も存外物好きだな」

 

「おい貴様ッ!宿儺様がお聞きしているだろう!しっかり答えないか!」

 

「先ずは紅茶でも、淹れようか…ダージリンでよかったかな?それともカモミール?」

 

「おのれッ!無視をするな!…まぁいい、カモミールを頂こう」

 

「俺はダージリンでいい」

 

 やはり食後は紅茶に限る。昼食を軽めにしたから紅茶と一緒に食べるスコーンで量的に丁度いい。

 

 …しかし、話し相手が欲しかったのもあったが、宿儺の即身仏の周りに漂っていた魂を義体に入れたのは間違いだったかもしれない。ただ、これだけ騒がしいと暇にならなくて済むか。

 

「今更だが、私が何か手を加えたわけではないのに…どうして君がここにいるんだね、羂索?」

 

「細かい事はいいじゃないか。これから長い付き合いになるんだし…あ、紅茶のおかわりをもらってもいいかい?砂糖は多めで頼むよ」

 

 大方、予備の予備で持っていた術式…"死後転生する術式"のようなモノでも使ったのだろう。

 

 私の進化した斬魄刀…ではない、卍解によって姿を現した"真創鏡花水月"は世界そのものに掛ける五感を超えた完全催眠、簡単な話が世界の改変が出来る訳なのだが、過去の改変は出来ないため、目の前にいる宿儺、裏梅、羂索を改変してしまうとタイムパラドックスのようなバグが発生してしまう。やはり崩玉も万能というわけではないらしい。

 

 呪力量も一般人未満、術式もないので、大事になるコトはないが、なんとも奇妙な集まりができてしまった。

 

「しかし、君のその力があれば世界なんていくらでも自分の思うがままに改変出来たのに、もう自分は世界に不要とばかりに身を潜めてしまうなんてどうしてだい?」

 

「…羂索、君の想像する私が作る世界は、確かに恐怖はないだろう。だが、死の恐怖の無い世界では人は、それを退けて希望を探ることをしないだろう。人はただ生きるだけでも歩み続けるが、それは恐怖を退け歩み続ける事とはまるで違う。だから、人はその歩みに特別な名前をつけるのだ…。」

 

 

 "勇気"と___

 

 

 

 

 




 お疲れ様でした。
 長い間読んでくださり、ありがとうございました!
 やっぱり最後には"勇気"で、締めたかった…締められてよかった…

 多分この世界の最終巻の単行本特別読み切りで、五条が愛染を探し出して再開するストーリーとかある。
 ちなみに五条だけが愛染のことを覚えていたのは、やっぱり六眼を持ってるからですね、愛染の力も結局は呪力由来ですので

 ここ悩んだのですが、羂索がラスボス化する辺りの話は、愛染のスタンス的に自分が手を出す気は無かったと思うので、モノローグとして消化しました。
 実は敵だった人達が、最終回に案外何食わぬ顔で平和にわちゃわちゃしてる姿が好きだったりします。
 宿儺、裏梅、羂索の転生後の見た目と年齢と性別は敢えて決めてないので、各々の脳内で妄想しましょう。愛染の手にかかれば年齢なんて瑣末な問題ですし…。

 この世界線の呪術廻戦の感想スレは番外編で上がると思います。本編は愛染が締めて終わりですけど
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