[本編完結]オサレ詠唱の申し子   作:山吹乙女

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 お疲れ様です。
 やっぱり五条と愛染を再開させる話をルート分岐みたいな形で作っておきたいかも…と考えた完全な蛇足です。後1話か2話続くかもしれませんし、続かないかもしれません。続かなかったら、多分流れの美しさ優先でこの話は消しちゃうかも…

 ちなみにアフターストーリーですので、別れたままの方が美しいと思う方は読まなくても大丈夫ですよ…いや、でもちょっと読んで欲しいかも…。


[AFTER STORY]愛染宗介消失編①

 パイセン…アンタが僕たちの前から、その記憶ごと消えて居なくなってしまってから、既に五年が経ったよ。

 パイセンが世界に掛けた鏡花水月によって、全日本人は呪力に目覚め、呪術が当たり前の世の中になった。

 

 呪力で動く家電や、インフラの変化、便利になった事の方が多いけど、その分犯罪に術式を使う呪詛師の数も年々増加の傾向にある。経済の成長に伴って、社会の闇が出てくるのは当然のことだけど、解決する側としては暇のない日々を送っている。

 

 呪術総監部は解体して、新たに"呪術総連盟"と名前を改めて、傑はその呪術総連盟の最高幹部に___僕の側近になって偉いはずなのに全国各地に自分の足で呪術をレクチャーしに行っている。呪力に目覚めて多少のコントロールをするまではできても、適切な使い方を教えるには、呪術師の母数がまだまだ少ない。

 

 硝子も七海も伊地知も事務仕事と地方の派遣で、会って直接会話するなんてことも少なくなってしまった。悠仁達もすっかり大人になって僕たちの仕事の手伝いをしてくれている。

 

 時間の流れが早いようで悠仁達と一緒にお酒も飲めるような歳になっちゃった。僕は下戸だから飲めないし、悠仁もアルコールが効かないからほとんど飲まないらしいけど、一年の大晦日くらいはみんなで集まっているよ。

 ここだけの話、傑は幹部として貫禄が出たというか、日々の疲労で目元と口元にシワが出始めている…僕はまだピチピチで若いけどね!

 

 僕は…アンタのことを諦めないよ。どれだけ時間が掛かってもこの手で探し出す。まだまだ時間がかかりそうだけど、パイセンは待っててくれるかな…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「術式が消失した?」

 

 呪術総監部改めて、"呪術総連盟"初代総帥五条悟の声が、伊地知潔高の報告により、会議室の一室から発せられた。

 

「はい、今日までで四件、直近であれば昨日の午前11時ごろ東京都にある病院で術式の鑑定を受けた子供の術式が無くなっていた事例が発生しました。五条さんの六眼のように見ただけで相手の術式が分かる術式を持った医者でしたが、『診察に来た時には既に術式が無くなっていた』とのことです」

 

「んー、でもそれはおかしいね。術式は普通脳に刻まれてて奪われたと仮定するならその子供は廃人、もしくは余裕で死んでる可能性もあるのに術式が無くなっていることすら分からなかった…」

 

「はい、術式が発動しないということで病院に訪れた時に発覚したものと見られます」

 

「ちなみに、消失した術式の種類とか分かる?」

 

「全てに裏が取れていまして、消失した術式は呪力でマーキングした地点に飛べる転移の術式、今では料理の術式として知られている両面宿儺の術式"御廚子"、仮想の質量を付与する"星の怒り(ボンバイエ)"、そして…"無下限呪法"です」

 

 伊地知は四枚の顔写真付きの資料を机の上に並べ、術式と共に出身地がバラバラの対象者と共に説明をした。

 

「…僕と同じ無下限はともかく、どれもこれも使い方によって有用なものばかりか…最初の術式は憂憂くんの転移の術式とどれくらいの精度で違いがあるわけ?」

 

「分類上というか、使い方の肌感で言えば、東堂葵くんの不義遊戯(ブギウギ)に近いものらしいです。」

 

「かなりの即効性のある転移。それこそ日常生活で使ってるレベルの有用性か…これは誰かが意図的に術式を集めていると仮定して_」

 

「術式を奪える何かを開発した"誰か"がいる…ですね」

 

 五条の言葉に続く形で伊地知が答え、その言葉に五条は頷く。

 

「この事はすぐに総連盟のメンバー全員に伝聞、可及的速やかに術式を奪う個人_或いは団体を探り、殲滅する。これは僕の勘だけど今回の事件は、一筋縄では行かないと思うよ」

 

「分かりました」

 

 伊地知は資料の作成と報告に駆られるようにして会議室を後にし、五条だけが残った静かな会議室で、五条は天井を見上げ溜息を吐いた。

 

「こんな時、パイセンが居てくれたら…」

 

『他人を頼れるようになったのはいい傾向だね。ただし、他人にも自分と同じクオリティを求めてしまうのは少しいただけない…人には人の出来る事が違っていて、適材適所を見誤ると反感を買う。出来る事ならその人個人の能力を加味することが好ましい。しかし、五条が他人を頼るなんて…明日は槍でも降るのかもしれないね』

 

 青い春を送っていた時に聞いた大事な先輩の言葉が、五条の頭をよぎる。五条からしても昔になるが、何気ない会話の他愛のない出来事でもその先輩との思い出を忘れないために、たまに思い出す。

 

「わかってるよ、パイセン___僕に任せてるんだってこと」

 

 五条は背もたれを倒していた椅子を元に戻しながら飛び起き、伊地知の残した資料を手に取り、会議室を後にした。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「総連盟からの伝令?」

 

「"可及的速やかに任務を遂行されたし"…だと」

 

 人気(ひとけ)のない公園で昼食をとっていた虎杖悠仁に、昼食を選ぶのに手間取った脹相が、悠仁と合流するまでに式神が運んだ連絡で入った情報を教えていた。

 情報漏洩の影響から、総連盟ではトップシークレットの伝令は式神を使い書類を全員分送る敢えてアナログなやり方が主流となっており、悠仁と脹相がツーマンセルで行動することが多い事から、どちらか片方に送られる事が多くなっていた。

 

「伝令では術式が奪われる前例があったらしい。俺もそうだが、悠仁も気をつける事だな」

 

 脹相はパン屋で悩んで選び抜いたカスクートを口に頬張り、口元についたソースを親指で拭き取った。

 

「奪われるって言ったって、読んだ限り分からないことが多すぎて用心のしようがないもんなー」

 

 悠仁はすんなりと決めた焼きそばパンを一口運び、牛乳で流し込んだ。

 

「まぁ、俺は今から地方で術式操作のレクチャーが入っている。悠仁は今日海外から流れ着いた特級呪霊の討伐任務だろ。離れるのは名残惜しいが、お互い仕事だ…怪我にだけは気をつけろよ」

 

 カスクートを完食した脹相は立ち上がり、悠仁に背を向けて歩き出した。

 

「わかってるよ"兄ちゃん"」

 

 お互い片手で手を振り挨拶をして、脹相は人気のない公園を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 脹相は人通りのない高速の高架下を近道で使うかのように歩いて進んでいたところに、白装束の男が行く手を遮るようにして裏路地から姿を現した。

 

「ごきげんよう」

 

「…誰だ?(この感覚…呪霊か)」

 

 見ず知らずの男からの突然の挨拶を怪訝に思いながら、脹相はいつでも臨戦態勢に入れるように拳を握り構えていた。

 

「貴方の術式を頂きに参りました…そう、貴方の"赤血操術"を!」

 

 男は円形のレリーフを脹相に見せるようにして高らかに掲げた。

 

「やはり伝令にあった術式を奪う奴か!」

 

「"我々"は陰の支配者!真なる人間にして、人類の上位種!!我々の軍門に下り、平伏しろ!!!」

 

 男の掲げたレリーフから眩い光を一瞬だけ発した後、男はそのレリーフ見てニヤリと顔を歪ませるが、その行動に一切の疑いを見せぬまま脹相は"百斂(びゃくれん)の構えをとる。

 赤血操術における奥義である両手を合わせた内側で血液を圧縮させる百斂。そして指の隙間から圧縮した血液をウォーターカッターの様に打ち出す穿血(せんけつ)の流れは赤血操術の遠距離攻撃における最速とされた。

 

「…馬鹿な…術式が…」

 

 しかし、その奥義は術が発動"できたら"の話であり、結果的に脹相の術式は発動しなかった。脹相は自分の感覚的に術式を使っていた感覚であったが発動しなかった影響から、一瞬だけ両手の掌に視線を落とした…その一瞬の隙によって、脹相は目の前の男が両手を合わせた構えを取っていたことに遅れて気が付き、目の前の男が発射した穿血の直撃を食らい、脹相はその場に倒れ伏した。

 

 残された男は自分の力を確かめるように手をグッと噛み締め、ニヤリと笑いながら握りしめると、脹相に対しての用事が済んだと言わんばかりにその場を後にした。

 

 

 

 

 




 お疲れ様でした。
 新たな敵…すごく"見えざる帝国"感ある…まぁ敢えてなんですけど…。
 でも死神代行消失編みたいなサブタイなのに、やってることは千年血戦編のギャップすごい…。

 しかし、ジャンプ映画でよくあるスピンオフ作品の触りみたいな展開…本当なら、羂索との死闘が終わった後の五周年記念みたいなお祭りがある話とか挟むと思うと、めちゃくちゃスピンオフ映画の恒例だ…。
 
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