[本編完結]オサレ詠唱の申し子   作:山吹乙女

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 お疲れ様です。
 続きます、今回短いです。


[AFTER STORY] 愛染宗介消失編③

 木々の生い茂る森の奥に、縁側とガラス張りのバルコニーが特徴的な和と洋が融合した奇妙な建物が人の目から隠れるように立っていた。

 バルコニーから見える庭はちょっとした庭園のようになっており、家庭菜園では見ないような観賞用の花々が咲き誇っている。

 

「ここからの庭の景色でお茶をするのが一日の楽しみになってしまったねー」

 

 長い髪を緩く纏めた妙齢の美女が、ティーカップに注がれた紅茶を啜る。その紅茶は常人からすればひどく甘く感じるほど砂糖が入れられているが、依然として涼しい顔だった。

 

「ふん、羂索め随分と年寄りくさい事を言う」

 

 羂索に応えたのは少々厳つい印象を受ける青年だが、どこか親しさを感じられるのは性格が軟化した為だろう。

 

「女の子に向かって年寄りくさいとは非道(ひど)いじゃないか宿儺」

 

「女の子という年齢(とし)でもないだろうに、恥を知れ恥を」

 

「裏梅も酷くないかい?」

 

 宿儺に追随して羂索を罵ったのは白髪のおかっぱ頭の少女、裏梅だった。彼女が飲んでいるのは急須で入れられた緑茶であり、ガラス張りのバルコニーで飲むにはミスマッチ感は少々拭えない。

 

 その一見騒がしくも聞こえるやり取りを微笑みながら眺めているのは、ブラウンの髪を緩くかき上げた目鼻の整った男性だった。

 

「宗介くんも彼らに言ってやってくれよ」

 

 宗介と呼ばれた男性…愛染宗介は、平穏を謳歌していた。

 

 しかし、その平穏は唐突に終わりを迎えようとしていた。

 

「見つけたぞ…愛染宗介」

 

 ガラスを挟んで突如として現れたのは、白い軍服のようなものに黒いマントを肩にかけた黒髪の長い壮年の男性が佇んでいた。

 

「君は…何者かな?」

 

 愛染宗介の名前を知る存在は、自分の許可した存在以外いないように、世界を改変させていた。故に、自身を知る目の前の男に対して、愛染は警戒レベルを一つ上げた。

 

「我が名はユーハバッハ…お前の全てを奪うものだ」

 

 愛染はその名前自体、既に知っているものではあったがこの世界に存在すらしないと思い込んでいた。故にその対応が一瞬遅れた。

 

「砕けろ_」

 

「遅いッ!お前の鏡花水月は、()()()()()()()()!」

 

 腰に帯刀していた日本刀を引き抜いた愛染だったが、引き抜いた瞬間にその日本刀は粉々に砕け散った。

 

「なん………だと…」

 

「宗介くん!」

 

 驚愕する愛染に羂索は叫んだ。

 

全知全能(ジ・オールマイティ)は未来を視る。未来でお前の鏡花水月を折った」

 

「…全知全能___君たちは引き給え!」

 

「案ずるな_いずれあの世で会える」

 

 愛染が羂索達に向け避難するように目を離した瞬間、ユーハバッハの抜き手が、愛染の胴体を貫いた。

 

「お前の精神を百年後の未来に飛ばした」

 

 愛染の胴体を貫きながらその体を浮かせ横に放り投げると羂索、宿儺、裏梅は既にこの場から離れていた。

 

「ふん、逃げ足だけは速いか…まぁいい、今殺さずとも未来が揺らぐことはない」

 

 少し口角をあげたユーハバッハは横に放り投げた愛染を見やると、意図せず丁度肘掛けのある椅子に座るように投げられ、ぐったりと頭を垂れていた。

 

「では、お前を完全に殺す時に、また現れる」

 

 ユーハバッハが愛染に言い渡した瞬間、愛染を中心に呪力の迸りが起こる。

 

「何が起こっている…そうか、私が精神を未来に飛ばすその前に、術式が()()()()()()のか」

 

 愛染がその精神を未来に飛ばされる前に、苦し紛れに放った術式が時間差で発動しようとしていた。

 

「黒棺…その完全詠唱か」

 

 既に発動している術式は回避こそ可能だが、ユーハバッハの全知全能では無効化できない。

 ユーハバッハはその事を愛染が知っているか知っていないか定かではないが、どのみち()()ユーハバッハでは不老不死の愛染を殺せない。故に精神を百年後の未来に飛ばし、簡易的な封印のような処置を施した。

 

 精神は未来に飛ばした事から、トドメを刺すことはせず、まるで眠るようにして椅子に座る愛染の自身を中心として発動した黒棺を回避しながら眺めて、ユーハバッハは自分の本拠地へと帰還した。

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 時間は愛染の精神が未来に飛ばされた瞬間に遡り、突如として愛染宗介を知るものの脳内に()()()()()()が溢れる。

 

「愛染…さん…ッ!愛染さん!」

 

 夏油傑は存在した記憶が戻った衝撃から多少の混乱はあれど、その異常事態の原因とされる愛染の身に何かが起こったと直感的に判断して、手に持ってた書類を机に置き、行動に移した。

 

 家入硝子は術式被害の急患で運ばれた重症患者が、既に手遅れであった状況が続いて辟易とした感情をタバコで忘れようと火をつけたところで、愛染に対しての存在した記憶が戻り、数十秒その場に停止したかと思えばすぐにタバコの火を消し、愛染を探しに出かけた。

 

「愛染さん…私はッ、こんな大事なことも忘れていたのか!?」

 

 記憶の戻った七海建人は、拳を固く握り机に拳を打ちつけた。

 

「五条さんなら…」

 

 七海は五条悟なら何か知っているのではないかと考えつき、連絡を取ろうとスマホに手を伸ばした。

 

「宗介くん…何かあったんやな…」

 

 愛染に協力していた仲間の禪院直哉ですら、記憶を消されていたが、元々"そうなる"と知らされていたところに記憶が戻った事から、何かが起こった異変を感じ取り、禪院家の術師を招集しようと動き出した。

 

 乙骨憂太が、伊地知潔高が、ミゲルが、愛染宗介を知る全術師が、愛染の異変を感じ取り、一斉に行動に移した。

 

 一方その頃五条悟は、各方面から自分に愛染宗介の居所を聞く鳴り止まない電話の対応に追われていた。

 




 お疲れ様でした。

 パイセンは不意打ちに弱いから、同程度の実力だと初撃は喰らいやすいんですねぇ。ちなみに割とすんなりやられているパイセンだけど、むしろすんなりくらい早くやらないと倒せなかった序盤の強敵みたいなのがパイセン。

 死神代行消失編みたいな流れがちょっと綺麗にできた気がする…今までが、逆月島さん現象だったから割と美しい。
 あと五条悟を人間として扱って、他人を蝶や花のように見ていた五条悟を人間の感性に戻した愛染が、超越者の人外みたいな存在になった状況で、今度は愛染自身が人間のように他の人から救われようとされている所も芸術点高い。
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