また続きました。筆が意外と乗るんですねぇ
「ケヒ、捕まえたぞ凡夫。姿を偽証させる呪霊を使うとはな、俺でなければこの違和感に気づかなかっただろう」
宿儺は愛染の背後を取り、片手で腕を掴みもう片方の手で首を掴む。
「…面白い、捉えてどうする。領域の直後だろう、術式も回復していないのに何ができるのかな?」
「ふん、貴様はこの期に及んでまだ、自分が死なないと思っているのか?頼みの綱の言霊呪法とやらも、この距離では真価を発揮できないだろうに」
「…いいのかい?その手につかんでいるのが、またしても呪霊で本物の愛染宗介ではないのかもしれないんだよ?」
宿儺の先程までニヤリと笑っていた顔が汚いものでも見るかの様に、侮蔑の表情へと変わった。
「はぁ、最後の言葉が命乞いとはな…興醒めだ」
宿儺は愛染の腕を離し、背後から刺突させ腕で腹を貫通させる。
「一体何が…私の目の前で一体何が起こっているんですか…愛染さん」
「見ての通りだよ、夏油。砕けろ、鏡花水月」
宿儺の耳元で詠唱とは別にパキリとガラスが割れる様な音が聞こえたかと思うと、目の前の情景が変わる。
「どうしてだ…何が…」
宿儺の掴んでいる腕の先は一瞬前までは愛染の後ろ姿を捉えており、やや長いブラウンの髪色を靡かせていたが、目を見開いた宿儺の前では白色の髪のおかっぱ頭をしている。
目に映るのは頭部だけではない、体格、服装、匂い、呪力、その全てが愛染のものとは違っており、代わりに自分のよく知る人物に…
「しまった…逆だ」*1
「宿儺…様…どう、して…」
宿儺を見るため後ろを振り返った裏梅の口元にツーッと血が滴り落ちる。
「愛染宗介!貴様ッ!!」
宿儺は裏梅から手を離し、すぐさま愛染に向かって領域展開から回復した術式を使おうとしたが、その体がピタリと止まり、顔や体の模様がみるみると消えかかる。
「(俺が思っている以上に小僧の立て直しが早い…まさか…)貴様、さては俺の体内時間をずらしたな…。次に会うときは、覚えておけよ…愛染宗…介…」
「それは恐ろしい…しかし、次に戦う時は君が
◆◆◆
流石は呪いの王、両面宿儺と言ったところだね。まさか詠唱破棄とはいえ縛道の三段重ねを破って来るとは思いもしなかった。保険で裏梅が私の姿に見える様に鏡花水月を掛けていなければ危うかっただろう。
「まさか、呪いの王と対面して無傷で済むとは…今でも生きた心地がしなかったが、やはり我らの先輩は一味違う。あの両面宿儺でさえ術中に嵌める催眠を掛けられるとはね」
「いや、私もまだまだだよ。仮にあの宿儺が完全体の…指二十本なら、今の私であれば術式が跳ね返されていただろう…さて目覚めた気分はどうかな、虎杖くん?」
宿儺が虎杖くんの中に沈んでから虎杖くんが目を覚ますまでほんの少しのタイムラグがあったが、本来であれば宿儺が沈むと同時に虎杖くんが浮かび上がっていただろうが、これも鏡花水月で宿儺の体内時間をずらしたのが原因だろう。
「悪夢を見たあとの気分だ…」
虎杖くんは肩をがくりと落とす。人間を腕で後ろから突き刺して貫通させた感触がまだ腕に残ってるだろうからね、そういう感想にもなるだろう。
ただ、その件の裏梅は宿儺の模様が消えかかると同時に姿を消した様だが…あの場面では、宿儺以外に集中できなかった私の落ち度だな。
しかし時間稼ぎに有効だったとはいえ、虎杖くんには悪いことをした。しかも鏡花水月を持っていることも宿儺にバレる結果となった。やはり私もまだまだだね。
「さて、こうしている間にも外では呪霊に襲われている一般人も多いだろうから急ぐよ。でもこの先は危険だからね、先生としては虎杖くんは外に出て民間人を助けてもらいに行ってくれ…と言いたいところだが、七海くんの情報では人型の呪霊に対して明確な有効打があるそうだから、私たちと共に五条を助けに行こう」
「押忍!」
「頼りにしているよ虎杖くん」
夏油と虎杖くんが仲良さそうなのは、なんとなく分かるな。この二人性格が合いそうだからね。
「ウッス!」
◆◆◆
「愛染先生一人に任して良かったのか?」
禪院真希が、重傷の七海建人と禪院直毘人に付き添いながら"帳"の外で待機している家入硝子の元へと移動しているところで、七海に問いかける。
「あの場では、私たちは足手纏いにしかなりません。でも愛染さんはあの五条さんですら信頼している人物ですから、実力は折り紙つきでしょう」
「だといいんだがな」
七海の意見に直毘人が疑問げに相槌を打つ。
「ふんふふんふんふーん♪」
三人の進行方向を横切ろうとスキップを踏む一人の男がいた。その顔はツギハギ顔をしており、雰囲気はその邪悪さを隠そうともしていなかった。
「生存者はっけーん!しかも知ってる顔もいるじゃん!」
「ツギハギ顔、七海さん!」
「えぇ、私と虎杖くんが取り逃してしまった呪霊、確か真人だとか」
「こっちの攻撃は基本効かんのだろ?なら逃げるしかないわな」
「逃すわけないじゃん」
真人が腕を蛇腹剣の様に形を変えて六本分に分離させ、三人に対して切り付けるも直毘人が投射呪法によっていち早く避け、七海は十劃呪法で迫り来る腕を破壊し、真希も有り合わせの武器で対処をしようとするが、真人がもう一つの腕で真希をピンポイントで狙っていたことにより、予想出来ていなかった攻撃が直撃すると覚悟した瞬間、目の前に誰かが立ちはだかった。
「真希ちゃん、やっぱ君弱いわ。足手纏いやから素直に帰りな」
「直哉…」
真希に直撃するはずだった攻撃を弾いたのは禪院家次期当主筆頭、特別一級術師、禪院直哉であった。
「直哉!お前は京都にいる予定では!?」
「宗介くんに頼まれててな?どーしても俺の力を借りたい言うもんやから、はるばる来たってわけやパパ」
愛染宗介は、呪術界において発言力のある御三家(次期)当主一人ずつと面識と伝手を持っておいた方が良いと考え、五条悟は言わずもがなであり、加茂憲紀、そして禪院直哉とある程度の親睦を深めていた。
「愛染さんが援軍を…しかしそんな話は何も」
「へぇー俺が来ること宗介くん言うてへんのか、君ら宗介くんからあんま信用されてへんのかもね」
「おしゃべり終わり?もう俺も動いていい?」
「こっちの会話終わるまで待っててくれるなんてな。驚いたわ、呪霊のくせに利口やね」
直哉は直毘人と同じ投射呪法を使い、真人をフリーズさせる。
「コイツのことは宗介くんに聞いてるから、俺がなんとかするその間に君らは逃げたらええわ…あぁそれと、できるだけ遠くになッ!」
直哉は"帳"の外側とは逆の方向に蹴り付け、真人を吹き飛ばす。そしてその行動を皮切りに三人は"帳"の外側を目指した。
「こんだけ蹴っても、ダメージゼロなんやろ?」
「そう言う術式だからね(あの一瞬、俺の身に何が起こった?)」
真人は自身の身に起きた出来事を思い出すが、感覚が切れた様な違和感と直後に襲いかかった蹴りと建物にぶつかる衝撃の整合性が取れず、その一連の動きを
本来の投射呪法であれば、高速移動をしているのかと考えつくところだが、現在直哉が使っている投射呪法のフレームレートは一秒間に二十四コマから
「まぁ、時間の無駄やから終わらそか」
「いいじゃん、まだ始まったところだろ?」
「いやもうお終いや、領域展開『
本来直哉では呪術の核心を掴んでもまだ届かなかったであろう領域展開を、愛染宗介が直哉にだけ教えた『浴』を用いて次のステージへと登らせた。愛染としては動かせる手駒が欲しかったと直哉は考えていたが、それでも自力では届かなかったであろう『アッチ側』に至れたことに対して一定の恩義を感じていた。
ちなみにこのことについて愛染宗介は「ただ、単に関西弁キャラの仲間が欲しかった」としか考えていなかった。
「ほな、宗介くんのところに行こか…あ、そういや術式焼き切れてるんやったな」
お疲れ様でした。
感想欄でちょいちょい言い当てられててビックリしてるんですが?どうして分かったんですかねぇ…メロンパンが五条に正体バレた時と同じ感想が出てきましたね
もしや読み手は鏡花水月に順応しているのか?
あと直哉くんはやっぱり愛染の仲間ですねぇ!
やっぱり関西弁の強い人が仲間に欲しいと思ったんですかね?そうやって御三家当主と仲良くしてるから胡散臭いって言われるんだぞ
あと直哉くんのドブカス成分が丸くなったのは、愛染がちょっと手を加えたからですね…???「鏡花水月を使ってお話したら素直になったよ」