【完結】機動戦士ガンダムSEED Revelation ~紅蓮のフレイ~   作:kayako

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part4 『深淵』からの救援

 

 

 ヤハラの空域──アマミキョコアブロックが位置するすぐ真上では、カラミティの砲線が炸裂していた。

 上空から襲いくるバビ・ディン混成部隊を、市街地への墜落は出来る限り避ける形で海岸線沿いに落ちるよう、狙い撃つ。

 カラミティの大火力だからこそ出来る芸当だった。

 

 その火線の間から飛び出したのは、フレイのストライク・アフロディーテ。

 光と豪雨を潜り抜けて向かってきたバビに、彼女は空中肉弾戦を挑んでいく。

 双対の対艦刀を閃かせ、丁度河川の上空でアフロディーテは、アーマー形態のままのバビの腹に刃を叩き込む。

 

 バビはそのまま川へと墜落。爆発による水柱が盛大にそそりたつ――どうにか、市街への損害は避けられた。

 だがなおもアフロの背後から、新たなバビが襲い来る。

 そのままアフロは首だけ180度回転させ、頭部バルカンを放って応戦──

 

《フレイ! 

 民間施設を気にしてちゃ、戦闘にならねぇっ》

 

 カイキの通信がアフロディーテのコクピットに反響したが、

 

「偽善的戦闘と言われようと、この地は私の血液同然! 汚す者は許さぬっ」

 

 そう叫びながらフレイは、カラミティのそばに降り立った。

 互いに背中を合わせるように、アマミキョ前方を守り立ちはだかる2機。

 

「この攻め……やはり正直すぎるな。

 こんなものはザフトではない」

 

 フレイの呟きに、カイキが応答する。

 

《川からも来るってか?》

「ヤエセ河川ポイント19、23、34には既に連合が警戒網を張ってある。河川から潜入される事態は想定済みだ。

 だが、気になる──こうも単純な攻めは」

 

 と、その時突然通信に割り込みが入った。アマミキョ内で待機中のティーダからだ。

 ――それは場を切り裂くような、尋常ならざるマユの叫び。

 

 

《フレイ! 

 何か来る、足元!》

 

 

 瞬間、フレイは叫んでいた。

 

「カイキ! 

 真下だ、撃てっ!!」

 

 同時に彼女はアフロディーテのバーニアを全開、空中へ飛翔した。

 カイキもまたフレイの意図を察し、背面のビーム砲・シュラークと胸部のエネルギー砲・スキュラを同時に撃ち放った──

 幸運にもそこは、川べりの、人も建物もほぼないに等しい荒地。その真下に向かって。

 

 

 カラミティから生まれた力の閃光が、大地を割る。

 その光の中から現れたのは──アッシュが3機と、ゾノがおそらく4機ほど。

「ほど」というのは、カラミティの最初の一撃でゾノらしき物体が煮溶かされ、熱と光でくっついてしまった為だ。

 マグマ地獄もかくやというほどの炎で覆われ、煮沸される大地。

 その中でゾンビの如く、中のパイロットもろとも溶け崩れていく機体。

 

 だが、溶かされた巨人たちの間をぬうように現れたのは、全身をドリルで覆った黒いモビルアーマー──

 

「……ジオグーンか」

 

 唇の間から、皮肉めいた笑みを漏らすフレイ。

 

 

 地中機動試験評価型グーン、その制式仕様。ザフト軍の特殊潜行型モビルスーツだ。

 地中への穿孔能力があり、敵拠点へのピンポイント攻撃を行なう

 ――そんな情報は、とっくにアマクサ組は掴んでいたのだが。

 

《畜生……

 これほど早く投入するとは!》

 

 悔しさのあまりコンソールパネルを叩くカイキ。

 ジオグーンの外部スピーカーから、野太い軍人の音声が豪雨と蒸気の中、轟く。

 

《突貫工事、完了。

 ティーダを頂きに上がりました、お嬢様方!》

 

 その声は間違いなく、ウーチバラ及びミントンでアマミキョを襲った執拗なる男

 ――ヨダカ・ヤナセ。

 

 

 

 

 眼前の大地を破り突如現れたザフトに、アマミキョ内は混乱を極めた。

 避難民を誘導していたカズイも、またしても悲鳴を上げる。

 

「地中からなんて、聞いてない!」

 

 ブリッジでも、オペレーターのディックが各地の異変を次々に報告していた。

 

「さらに第2、第3河川警戒ポイントからザフト機上陸! 

 まっすぐこちらに向かってますっ」

 

 リンドー副隊長は既にこの事態を見越していたか、ただ一人平静に呟く。

 

「目的を、わざわざワシらに絞ってくるとはな。

 よほどこの船に恨みがあると見える、あの男」

 

 ノイズ混じりの通信を必死で解析していたアムルも、思わず怒鳴る。

 

「何なのよ……

 そんなにティーダって大事なもの?」

「ティーダだけじゃねぇ、アマミキョもだ! ザフト野郎っ」

 

 オサキが操縦桿を握りしめつつ、前方にのしのしと近づくジオグーンを睨みつけた。

 ジオグーンの生んだ大地の亀裂から、次々とアッシュやゾノが虫のように這い上がってくる。

 早速アフロディーテとカラミティが応戦しているが、何せ相手の数が違う。

 恐れていたザフトの新型が、まとめて来やがった! 

 

「山神隊は何してやがる! ナチュラルの意地を見せてくれよっ」

 

 オサキは目の前に広がる爆光に耐えつつ、叫んでいた。

 

 

 

 

 既に十数機もの味方が撃墜された海岸線で、その破片を踏み越え浅瀬を飛び越え、広瀬、風間、そして伊能のウィンダムは未だに駆けずり回っていた。

 真田上等兵の死も、ザフトの地中からの潜入も、彼らはまだ知らない。

 

 そんな中、広瀬機に肉迫するゾノ。

 いい加減バッテリーが切れかけ、消耗戦を強いられていた広瀬機はゾノの爪に捕らえられ、一息に空中から海に引きずりこまれる。

 

「広瀬! 

 ……だからあれほど、奴らの爪には気をつけろとっ!」

 

 咄嗟に飛び出した伊能の叫び。だがそれは、盛大に飛沫を上げて沈んだ広瀬機にもパイロットにも届かない。

 水中に引きずりこまれては、普通に考えてウィンダムに勝ち目はない。

 広瀬機のコクピットを握りつぶそうとする、ゾノの爪──

 

 凄まじき腕力だ。広瀬少尉を守るはずのコクピットブロックが、恐るべき震動と共にひしゃげていく。

 広瀬はひっきりなしに鳴り響くアラートをどうすることも出来ず、思わず唇を噛む──

 

 勉強しか出来ない頭でっかちだの何だの、毎度伊能に言われて馬鹿にされるが、それでも意地を見せたかった。

 年齢的にはそこまで差はないはずなのに、あいつの方が戦闘での勘の良さも経験も昇進スピードも、全てが俺を上回ってた。それでも俺だって必死でここまで食らいついた。だけど――

 確かに奴の言う通り、俺はツメが甘い。そいつは認めざるを得ない。

 だから爪にやられた……って、シャレてる場合か畜生。

 

 

 さらにゾノは海中深くまで潜り、広瀬機にとどめを刺そうとしていた。

 急速な圧力上昇で広瀬は一瞬、全身の血が沸騰した感覚に陥る。コクピット下部からは海水が流れ込んでいた。

 ノイズが激しくなるモニターの向こうには、無数の鋼鉄が浮遊している。撃墜された味方機の破片が。

 

 

「こんな処で、棺桶になれるかよ!」

 

 

 広瀬が意地で盾を振り上げた瞬間──

 何故かその眼前で、ゾノが閃光と共に破壊された。実に呆気なく。

 

 

 朦朧とする頭を振りつつ、モニターを確認する。

 この光と爆発の威力、恐らくディープフォビドゥンの魚雷だ。やはり海中では頼りになる。

 ――もしかして、助かったのか。

 広瀬はエネルギー残量に気を配りつつ再度上昇をかけながら、味方機を確かめる。やはりそこにはディープフォビドゥン3機と、それから──

 

「あ? 

 何だよ、あのエイリアン気取り……」

 

 彼はつい、滅多に漏らさないはずの間抜けな声を上げてしまった。

 

 あんな機体は、連合にはどこにもない。水色に輝く円盤状のモビルアーマーが、盛大な火力と脅威のスピードでゾノ3機を海中で爆散させていた。

 その火力も速度も、広瀬たちのウィンダムは勿論、連合自慢の水中機・ディープフォビドゥンにも全くひけを取らなかった。いや、倍以上あるのではないか? 

 

 

 

 

「ラスティ! ティーダはまだ出られないの?」

 

 ティーダのコクピットで待機を命じられていたマユは、叫んでいた。

 前席のラスティは思う──マユがこんな焦りを見せたことなんて、あっただろうか? 

 

「無理だ、奴らの狙いはティーダなんだぜ」

 

 モニターごしにカタパルト内を見ると、スカイグラスパーにミゲルが乗り込み、調整を行なっているのが見えた。

 それだけで、状況がただ事ではないことは理解出来る。まさか、あの片腕でやる気か? 

 ラスティの思惑をよそに、またマユが後席で呟く。

 

「ラスティには分からない? この感触──

 何かが、近づいてくる」

「こんな時にボケるなよ。ザフトなら、目の前だっての」

「違うの。どんどん近づいてくるの。感じるの。

 私たちを想う力が、近づいてくる。

 ねぇ、ラスティ……これが、人を想う力なの?」

 

 こんな時に、一体何を言っているんだ。

 ラスティは一瞬マユを蹴飛ばしたい衝動に駆られたが、ふと気を取り直してディスプレイを見る。

 通常はニュートロンジャマーで殆ど見えないはずの敵が、ティーダのディスプレイにははっきりと映し出されている。

 そんなティーダの恐るべき通信機能の秘密をラスティは勿論知っていたが、今その状況が分かったところでどうにもならない。

 敵を示す真っ赤な三角で、自分らは囲まれている。周りの河川から、次々に紅い三角が増えていく。

 海岸線などは、味方を示す青い表示が次々に紅に染まっていく。

 

「神経をカラにして。

 ラスティだって、ティーダに乗っていれば感じるはずだよ」

「だから! 

 俺はティーダと相性悪いんだって……」

 

 そう言いかけた瞬間。

 ラスティは頭の中に、一陣の風のように何かの幻がよぎるのを感じた。

 

 ──何だ、これは。

 

 豪雨と閃光をつっきる、小型ヘリの幻影。

 ラスティには辛うじてそれしか見えなかったが、マユにはそれが何だか、即座に分かったらしい。

 

 

 

「ナオトだ! 

 ナオトが帰ってきたあ!!」

 

 

 

 マユの弾けるような笑顔。

 同時に黒ハロが、威勢良く飛び跳ねた。

 

「ナオト、ナオト! 

 オモイダケデモ、チカラダケデモ!」

 

 

 

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