【完結】機動戦士ガンダムSEED Revelation ~紅蓮のフレイ~   作:kayako

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part2 ナオト・シライシ

 

 

 

 紅毛の少女の銃口が火を噴き、銃弾が正確に相手の額を撃ち抜いたその頃

 

 

 ――ナオト・シライシは、宙港内部通路でまたしても壁に頭部を激突させていた。

 

「やれやれ。本日3回目……」

 

 あまりの痛さに空中で頭を抱えるナオトを、カメラマンのアイムがはやし立てる。

 

「中継が止まった瞬間に、やるなってばよ」

 

 ところどころまだつっかえはするものの、ナオト・シライシは今日も無事にレポートを続けております。と、心の中で自分にエールを送った瞬間にこれだ。

 

「あらぁ。最高の画になったのに」

 

 ディレクターのフーアも、さも残念だという顔を隠さない。

 

 いつもどおり、真面目にネクタイをしてスーツを着込んだナオトに、アイムとフーアがいつもどおりサポートしつつ、ナオトの中継を興味深げに見守る。

 そしていつもどおり、笑顔でナオトが中継からビデオ映像に切り替わりフーアがOKサインを送った、その瞬間の出来事だった。

 

 しかし今回はただひとつ、いつもどおりでないことがある。

 それは、ここ──つまり、コロニーウーチバラ宙港区画内部通路──が無重力空間だということだ。

 ナオトは頭を押さえながら顔を赤らめ、大きな茶色の瞳をますます大きくしてスタッフ2名を振り返る。

 何せ、無重力空間というものをナオトはここ、ウーチバラに来るまで体験したことがない。

 オーブ本土で生まれ育ち、若くしてオーブでTV局に入社し、オーブでTV番組の仕事に携わっていたナオトである。希望の報道部門に回ればいずれ宇宙に出ることもあるだろうと思ってはいたが、これほど早くなるとは思わなかったのだ。

 

「リフトグリップで曲がるって、こんなに難しかったんですね」

 

 無重力空間を想定して、通路の左右に備え付けられた人員移動用装置=リフトグリップは、秒速2mから7mで一人の人間を通路に沿って移動させる。

 現在ナオトたちのいる宙港区画のような場所では必要不可欠なものだが、慣れない者はまごついてしまう。特に、曲がる時は一旦レールが切れるから不便だ。

 

「ナオトなら慣れるよ。コーディネイターだろー?」

 

 こういうデリケートなことをさらりとはっきり嫌味なく言うのは、良くも悪くもアイムの特徴である。

 

「『半分』だけですよ。

 だからこんなミスをする」

 

 ナオトはまたも顔を赤らめ、グリップを握りなおしながらばつが悪そうに笑った。

 

「でも、だから好かれるの。貴方は」

 

 そう言いながら手馴れた手つきでターンして、フーアはあっという間にナオトを抜き去る。

 24歳のやり手のディレクターで、しょっちゅうコロニーと本国を行き来していた女性である。当然、こういう場所でスカートなぞ履いてくれるはずがなかった。

 

「オーブでは、ね。

 プラントじゃ未だ、禁忌の存在ですって」

 

 フーアの短めの髪の匂いをかすかに感じながら、ナオトはゆっくりと身体を移動させていく。

 通路の向こう側から壁の向こう側から周り中から、人の怒鳴り声や作業艇の警告音が聞こえてくる。

 出発前だけのことはあり、えらいこと騒々しい。機器のチェック、船体の整備、人員移動。

 

「大丈夫かなぁ、僕自信ないですよ。こんなレポート久々だし……

 ずっとバラエティとか料理番組ばっかりでしたから」

「大丈夫だよ、お前がまだ子供だってことぐらい、視聴者全員分かってる。

 いくら半分コーディネイターとはいえ、14歳になったばっかのガキにそんな期待ができるか」

 

 

 14歳。

 そう──ナオト・シライシは、14歳のTVレポーターだった。

 

 

 プラントでは、コーディネイターは通常15歳で成人扱いされる。2年前の大戦では15歳で戦場へ出たものも数多い。

 だから、14歳(入社時は13歳)であるナオトがテレビ局で働き、カメラの前に立ってレポートしていても何ら不思議はないだろうというのが、オーブ・SUNテレビ局アナウンス部部長の理屈だった。

 

 ナオトはアイムに軽くくってかかる。

 

「でも、この前インタビューしたシュリ隊の人たちの中には、当時17歳でヤキンを生き抜いたナチュラルの、しかもオーブの学生さんがいましたよ」

「アークエンジェルに乗ってたって噂の眼鏡だろう? 

 ナチュラルじゃまだ未成年のはずだが、随分大人びた応答しやがってたな」

「大人びたじゃなくて、彼は実際大人」

 

 フーアの声が、二人の間に割って入った。

 そんな彼女に、ナオトは多少唇を尖らせる。

 

「自分が子供ってことは理解してます。

 でも僕は、戦争を止める役に立ちたい。今はタレント同然でも、いずれ報道を……」

「ナオト。あんまり熱くなると、今度はその鼻っ柱ぶつかるぞ」

 

 ナオトは前に迫った壁に気づき、慌ててグリップから手を離し、次のリフトグリップに取りつく。

 姿勢が安定するとナオトは息をつき、スーツの懐からメモを取り出した。

 さっきレポートで読み上げた文章が書かれているが、その所々に赤い矢印がつけられている。

 

「もう慣れたけど……

 あまり、好きじゃないなぁ。こういうこと」

 

 フーアが空間を滑りながら、器用に横からメモを覗く。

 

「いいのよ。コーディネイターでもバカはバカで、子供は子供。同じ人間。

 それをみんなに印象づけてもらわなきゃ」

「出た、アスハ代表名言その15」

 

 アイムがカメラをいじりながら囃す。

 フーアも微笑みを隠さず言った。

 

「それとナオト。人間、嘘をつく時は8の真実に2の嘘をくっつける。

 貴方の場合は8が……」

 

 ちょうどその時、ナオトは本日4回目の頭と壁の激突をやってのけた。

 アイムとフーアは二人で口をそろえる。

 

「──真実だし」

 

 

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