【完結】機動戦士ガンダムSEED Revelation ~紅蓮のフレイ~   作:kayako

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part5 交戦! アマミキョVSミネルバ

 

 

 かくして、アマミキョはマラッカ海峡を抜けて即、ミネルバと接触──

 交戦状態に陥った。

 

「出発してまだ、24時間経ってねーじゃねぇかよ!」

 

 操舵手オサキの怒声がブリッジに響いたが、その間にもザフト艦から次々に出撃してくるモビルスーツ。

 サイのすぐ横から、リンドー副隊長の令が飛ぶ。

 

「クルーは全員Fブロックまで退避。惑わされるな、ミントンの奴らだ。

 あのストライクもどき、間違いない」

「でも、こちらは民間船です! 相手との交信を確立してからでも……」

 

 この状況に納得がいかないアムルがリンドーに反論したが、彼はその言葉を鼻で笑うだけだった。

 直後、ビームライフルの閃光がアマミキョブリッジ直上を通過し、クルーごとアマミキョを威嚇する。

 光の向こうにサイは見た──太陽の下で鮮やかに映える、紅のモビルアーマーを。

 フレイのアフロディーテよりも明るい赤。血の紅でもなく、炎の紅でもない。

 サイにはその色が何処か中途半端に思えたが、今はそんなことに思いを馳せている余裕はない。

 

「こちらが降伏しない限り、奴らは撃ってくる。

 特に、ティーダの存在が知れていたら……」

 

 サイは呟きながら、モニターでカタパルトを確認する。

 砲撃の中、着々とティーダの出動準備は進められていた。抹茶のパイロットスーツを着けたナオトが、意気揚々と乗り込んでいる。

 

 畜生、ティーダには代替パーツがあるんじゃなかったのか。だから一度はナオトを降ろしたんじゃないのか、フレイ! 

 ナオトを降ろせと自分が言った時、フレイは代替パーツの件など口にもしなかった。

 ナオトにSEED因子があると分かった為なのか。SEEDを完全に目覚めさせる為に、ティーダに乗せるというのか。キラを捕らえる為に、俺のみならず、ナオトやマユも利用するのか。

 では、キラと接触したその後は──

 

 

 

 

「カラミティは砲撃形態でアマミキョ直上を守れ。

 ティーダは奴らをギリギリまで引きつけてから撃て。タイミングはマユに任せる」

 

 アフロディーテでいつも通りメットの調子を確認しつつ、フレイはティーダやカラミティに通信を送っていた。

 ティーダの真っ白な機体の中、マユは笑顔で答える。

 

「りょーかい!」

 

 マユの能天気な返事とほぼ同時に、アフロディーテがカタパルトを滑り海へと飛び出していく。

 続いてカイキを乗せたカラミティが、甲板へ通じる作業用エレベータに乗り込んだ。ヘルダートしか撃てないアマミキョの代わりに、カラミティが砲台となるのだ。

 

「すぐ行くよ……()()()()()

 

 マユはカラミティを眺めつつ、唇から呟きを漏らす。

 その「兄」という言葉には二重の意味があったのだが、久しぶりに被るヘルメットのバイザーを不器用に調整しているナオトに、到底その意味は分からない。ただそんな彼も、フレイの指示に疑問を投げかけることは忘れなかったが。

 

「ギリギリまで? 危険すぎるじゃないか。

 大体撃てって、何を?」

「決まってるでしょ。黙示録!」

 

 

 

 

 そんなマユの声をブリッジで聞いたサイは、通信を繋げずにはいられなかった。

 

「二人とも、黙示録の起動は慎重に。

 あのザフト部隊との接触は、おそらく二度目──

 何らかの対策をしている可能性はある!」

 

 アマミキョやアフロディーテ、カラミティだって、ティーダ対策の遮光フィルタを装備しているからこそ、あの光に耐えられるのだ。でなければアマミキョはティーダの光で、ウーチバラでとっくに自滅していただろう。

 同じ装備を、奴らが用意していないとは考えにくい──

 だが、サイがそう言おうとするより早く、ナオトの反論が飛んできた。

 

《大丈夫ですよサイさん! これでも僕は腕を上げたんです。

 この前の模擬起動試験でラスティさんに褒められたの、知ってるでしょ》

 

 サイは胃の左上あたりに鈍い痛みが走るのを感じたが、その瞬間──

 カタパルト中に、久々の怒声が響いた。

 

《うるっせえぞこのパガキが!》

 

 これまでなら、サイの胃痛と頭痛の最大要因になっていたハマーの声だ。ちなみにパガキとは、随分前から整備士たちの間でのナオトの蔑称である。「半端なガキ」。

 

《奴は馬鹿なりに、てめぇを心配してんだよ! 

 フレイ嬢の命令だから仕方ねぇが、本来ならてめぇなんぞ、モビルスーツにゃ一番乗っちゃいけねぇ人種なんだ!》

 

 だが当然、ナオトはハマーにさらに反抗する。

 

《あんたこそ、整備士なんて一番やっちゃいけないよ! 

 今更サイさんの肩持とうっての? あれだけ酷い怪我させといて、虫が良すぎるよこのアル中!》

 

 工場の事件で、サイとハマーの間に僅かながら邂逅があったことを、ナオトは知らない。

 かくして、怒気に満ちたハマーのぶ厚い唇からは、文字に起こすのが憚られるほどの罵詈雑言がマシンガンの如く飛び出し、結果的にサイの胃痛を促進させた。

 

「こんな時に喧嘩しないでくれ! 

 マユ、カタパルトに留まって黙示録発動ってのは無理なのか?」

《いくらサイの頼みでも無理ありすぎ。遮光フィルタにも限界があるし、みんなが怪我しちゃうよ。

 ってなわけで、マユ・アスカ、ナオト・シライシ、いっきまーす!》

 

 行きますと言っても甲板行きのエレベータに乗り込むだけの話であったが、それでもマユもナオトも俄然やる気だった。

 ――その結果、引き起こされる事態も知らずに。

 

 

 

 

 フレイのアフロディーテとシン・アスカのインパルスは、早くも空中戦に突入していた。

 正面から正直に突撃してきたインパルスの心意気に、フレイは二刀流のアサルトナイフと皮肉で答える。

 

《久しぶりだな、坊や!》

 

 一旦剣を交えたかと思うと、すぐにオーバーヘッドキックの要領でインパルスに蹴りをかますアフロディーテ。その際、インパルスをからかうように頭部バルカンを連射することもフレイは忘れない。

 インパルスは盾で見事にいずれの攻撃も防いだが、その盾が一瞬だけ邪魔になり、気づいた時にはアフロディーテに下方に潜り込まれていた。

 シンは叫ぶ──

 

「相変わらず、馬鹿にして!」

 

 下から撃たれたビームを、シンは素早くインパルスを分離させてかわす。そして分離させたままのチェストフライヤー──つまり、ビームライフルを持ったままの上半身をアフロディーテに突撃させる。

 そのビームライフルから、光が放たれた。

 

「分離機構を使えてないとか、言ってたよなぁ!」

 

 ミントンで、子供のように扱われた屈辱をシンは忘れていなかった。あらかじめ簡単なプログラミングを施しておけば、このような変則攻撃も可能なのだ、インパルスは。

 

 

 

 

 思わぬ攻撃に、アフロディーテは一瞬だけ虚をつかれた。

 向かってくるチェストフライヤー自体は難なくよけたものの、分離させているパーツ自体から繰り出される攻撃までは予測していなかったのである。

 その光がコクピットを貫く数瞬前に、何とかフレイは光をかわす。援護してくるカラミティの閃光──

 しかしその光条の間をぬって、グゥル(MS支援空中機動飛翔体)に乗った紅のザクウォーリア、白のザクファントムも空中を滑降しつつ、雨のようにビームを撃ってくる。

 この間に、インパルスは難なく再び合体してしまっていた。一気に連携攻撃にさらされるアフロディーテ――

 

 それを庇ったものは、山神隊・時澤の操るウィンダムだった。

 盾で見事にザクファントムのファイアビーの業火を防いだ時澤機はジェットストライカーを翻し、フレイに通信を送る。

 

《異常ですよアルスター嬢……

 敵性とはいえ民間船一隻に、何故これほどの攻撃を?》

 

 舌打ちと共に、フレイはIWSPのパワーを全開にして飛翔した。

 

「必死なのだな、議長も」

 

 

 

 

 確かに、ミネルバ側も必死であった。特に、自分が乗リ込んだグゥルの機動に四苦八苦させられているルナマリアなどは。

 ただでさえ射撃は苦手だというのに、慣れないグゥルに自分のザクウォーリアを乗せられて、ルナマリアは機動を保つのに精一杯だった。その上、海の向こうからは無数の光条が飛んでくる。

 

「やっぱり、移動砲台なんて無茶よ! 接近戦だったら、こんな……っ!」

《愚痴を言っている間に撃たれるぞ、ルナマリア!》

 

 通信の向こうから飛んでくる、レイの叱咤。

 

「でも、目的は例のモビルスーツの捕獲でしょ。

 私たち、戦いに来たんじゃないってのに!」

《向こうはそうは思っていない。こちらも!》

 

 レイに現実を突きつけられると同時に――

 ルナマリアは、別スピーカーから飛び込んできた声を聞いた。

 

《連合の犬に、オーブの偽善船。

 お前ら、お似合いだよ!》

 

 勿論、シンの叫びである。

 怒りをビームサーベルに変え、シンは一気にアフロディーテを叩き落しにかかった。

 大空へ逃げていく紅の機体に、それを追うインパルス。

 

「そんな……私が、甘いの?

 だって、あの船は民間の……!」

 

 しかし、彼女の呟きに答えるかのように、インパルスとアフロディーテをさらに追っていく機体があった。

 紅のモビルアーマー──セイバーガンダム。彼女の敬愛するアスラン・ザラだ。

 戦況がこのまま進めば、相手を撃沈しかねない。シンやヨダカの勢いを目撃したルナマリアは密かに危惧していた。

 しかし、オーブとザフト両者の事情を知っているアスランなら、何とかしてくれるかも知れない──きっと、事を穏便におさめる方法を知っているはずだ。アスランなら。

 ルナマリアはそんなわずかな希望を、彼に見い出していた。手のひらに乗せた雪のかけらのように、儚い希望ではあったが。

 

 

 

 

 そのセイバーでは、アスランがアフロディーテの機動を訝しんでいた。

 

「どういう事だ? 

 あの紅の機体、まるでシンを試すように……」

 

 カラミティから来る雨あられの炎を、モビルアーマー形態のセイバーは最小限の動きで見事にかわしていく。光は紅の翼をすり抜けすり抜け、虚空に向かって消滅していく。

 アマミキョ甲板上で待機するカラミティにティーダを、アスランは既に肉眼で確認できた。

 一旦青空に舞ったセイバーは、太陽を背にしてモビルスーツ形態に変化する。

 目標はただ一つ。太陽を浴びた絹のシーツの如く輝く、あの白い機体──

 アスランには一つだけ、考えがあった。

 ヨダカは激怒するだろうが、これが自分のやり方だ。

 

「アマミキョ、聞こえるか! 

 自分は、ザフトのアスラン・ザラ!」

 

 

 

 

 直上に占位した紅のモビルスーツからの声に、アマミキョクルーはざわめいた。

 さらに畳みかけるように、声はブリッジに響く。

 

《それとも、アスハ代表元護衛官、アレックス・ディノと言った方が通りが良いか? 

 アマミキョの諸君!》

「……!?」

 

 サイはその声に、思わず立ち上がってしまった。

 まさかこんな処で、あのアスラン・ザラと再会しようとは――勿論、他のクルーたちにも動揺は拡大していたが。

 

「あの噂、本当だったんだ」「姫の護衛が、ヤキンの英雄だったってヤツか」

「それじゃ、彼はザフトに戻っちゃったってこと? 何故?」

 

 そんなざわめきをよそに、アスランの呼びかけは続いた。

 

《貴船が民間船ということは承知の上だ。突如として当方から威嚇をかけたのは、理由あってのこと──

 即刻全ての攻撃を中止し、ガンダム・ティーダをミネルバに譲渡せよ。

 ミネルバ艦長、タリア・グラディスよりの伝言だ》

 

 船内中が固唾をのんで、アスランの言葉を聞いている。

 食糧班で待機していたヒスイなどはまたもパニックを起こし、トニー隊長に叱咤されていたが。

 

《その条件さえ飲めば、こちらもアマミキョ乗員に一切の危害は加えない。約束する》

 

 だが、そんなアスランの言葉に――

 真っ先に食らいついたのは、カイキだった。

 

《信用出来るか! 

 その甘言で、何万人のナチュラルを殺してきた!?》

 

 叫びと同時に、カラミティの双肩の砲・シュラークが再び火を噴いた。

 素早くモビルアーマーに変形した紅の機体は、ナチュラルであれば一瞬で気絶するであろう速度で回転を繰り返し、火線を回避する。

 太陽を遮る、紅のザフト機。サイはその色を中途半端だと感じた理由が何となく分かった――

 

 パイロットがアスランだから、かも知れない。

 

「今更、ザフトの言葉をぬけぬけと信用するナチュラルなど天然記念物だよ。

 甘いねぇ、アレックス君は」

 

 リンドー副隊長がほくそ笑む。その言葉に、誰も反駁はしない。

 一度は交戦した相手なのだ、船内中をひっくり返されてもおかしくはない。

 いつの間にやらザフトにいるアスランの意図もはっきりしない以上、サイも迂闊に彼を信じることは出来なかった。

 

 

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