【完結】機動戦士ガンダムSEED Revelation ~紅蓮のフレイ~   作:kayako

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part6 レイダーの奇襲

 

 さっきのドームの光景と同じく、これも幻であることを願わずにいられないサイだったが――

 桜のように舞う火の粉は容赦なく服や腕、髪を少し焦がしていた。

 アマミキョへの通信を試みたが、既に通じない。

 そんなサイを庇うように、少女が炎の街と彼の間に立つ。

 

「お前はここにいろ。

 私はアマミキョへ連絡する、今のところここが一番安全だ」

「えっ!? 

 おい、ちょ、待っ……!」

 

 そういうが早いか、サイの答えも聞かずに少女は炎の中へと駆け出した。

 またモビルスーツの強奪でもする気か──そう思う間もなく、彼女はビルの間の喧騒の中へと消えていく。

 あっという間にその姿を見失ってしまったサイは、ただひたすら通信機をいじる他はない。

 

「くそ……俺に、どうしろって!」

 

 あちこちで噴き出す火花と爆撃。

 ビルと家の間をのしのしと歩くダガーLは、目視で確認できただけで3機。

 ニュートロンジャマーの影響が強くなったのか、それとも混乱の為か。回線はほとんどつながらなかった。

 50秒ほど通信機と格闘した後、サイは諦めて今出たばかりのドームを振り仰ぐ――

 

 ドームの向こうの空は、赤黒く燃えていた。

 彼女がああ言うのだ、ここが一番安全なのだろう。

 理由は知らないが、彼女の断定が外れたことはない。初めて会った時もそうだった。

 サイは根拠のない予測にすがり、ドームの陰に身を潜めようとする

 

 ──その刹那。

 彼の全身を、真っ黒い影がぬう、と覆った。

 

 思わず空を見上げる。

 と、すぐ上空をすっぽりと、象のような巨体が視界を埋め尽くしていた。

 

 それは――

 よくサイが目にするティーダ、アフロディーテ、そしてフリーダムと同じ顔の巨神。

 街を徘徊する汚れきったダガーLとは違い、全身が真っ黒に輝いている。

 縁を紅に彩られた黒い翼をはばたかせ、そいつは上空から舞い降りてきた。

 

 サイを吹飛ばしかねないほどの震動を伴い、『それ』はゆっくりと瓦礫だらけの道路へ着地する。

 そして彼は見た──

 

 

 黒の巨神が、直径2.5メートルほどもある鉄球を、天空に振りかざす光景を。

 しかもその鉄球は、漫画で見るようなふざけたトゲもどきを何本も生やしている。

 その鉄球は間違いなく――

 サイ一人を、狙っていた。

 

 

 あれは2年前、アークエンジェルやフリーダムを苦しめた連合のモビルスーツ・レイダー──

 そう認識した瞬間、サイの身体は地面から1メートルほど浮き上がっていた。灰燼と共に。

 同時に、たった今まで自分がいたはずのドームのエントランスが、粉みじんに砕けていく。

 雪のように降りかかってくるガラスの粉。

 

「――!」

 

 次の0.3秒で、サイは身体ごと砂だらけの地面に打ちつけられる。

 そのままゴムまりのように2、3度跳ね、道路の反対側まで飛ばされて塀に背中を激突させてしまう。

 血まじりの唾が、喉から飛び出した。

 肺が潰れるかという衝撃で気を失いかけたサイだが、それでも砂だらけになりながら身を起こす。

 歯を食いしばり、頭を振った。

 

 ──せっかく動き始めた時間、こんなところで止めてたまるか! 

 

 サイは外れた眼鏡を拾い上げ、目前に迫った黒い巨体を振り仰いだ。

 街のあちこちで起こる火柱にも一寸たりともたじろぐことなく、ゆうゆうと巨神はそそりたつ。

 と、スピーカから声が流れ出した。

 状況に似つかわしくない、呑気な声が。

 

《はぁ~……

 ここも暑いなぁ。大気圏突入したばっかりなのに、人使い荒いよ全く》

 

 胸部の下に配置されているらしきコクピットブロックが、機動音と共に開いた。

 まだ少年のような体格を黒いパイロットスーツに包んだその操縦者は、サイを見下ろす形でゆっくり立ち上がる。

 炎の中で、再び響く声。

 

《……あれぇ? 

 意外としぶといねぇ》

 

 サイはそのまま動けない。

 それは、物理的な衝撃のせいだけではなかった。

 

 

 この声──この口調──

 俺は知ってる。間違いなく知ってる。

 まさか……()()()が、生きていたっていうのか? 

 2年前、俺たちが死なせてしまったようなあいつが──

 

 

 サイの足が1、2歩、ふらふらと後退した。

 

 嘘だ、やめてくれ。お願いだ、頼む。

 まさかお前まで、俺たちを混乱させようってのか。フレイと同じように! 

 

 そんな心の叫びも知らず、レイダーはサイの方向へ一歩、踏み出した。

 軋み、揺れる道路。

 壊れたガラスで転びかけながらも、サイは必死でレイダーから逃げようとしてドームの陰に戻った。

 鉄球をぶらぶらさせながら、レイダーはまだ彼へ接近しようとする。

 開かれたコクピットでは、パイロットがメットを外しかけていた。

 

 やめろ、お願いだ、やめろ

 ──サイの願いも虚しく、ゆっくりと脱がれていくメット。

 

《あ、そうだ。

 ちょっと聞きたいんだけどさ。ミリィは元気?》

 

 メットの下から、癖のあるちぢれた黒髪が出現する。白い肌には大量の汗が流れているようだが、その汗は決して焦りによるものではない。今しがたサウナに入ってようやくさっぱりした――という按配の、気持ち良さそうな汗だ。

 

 サイは壁まで追いつめられる。

 息は上がり、心臓が破裂寸前に波打っている。

 もう間違いない。こいつは──! 

 

 コクピットの少年は、にっこり微笑んでサイを見下ろした。

 スピーカを通さずとも、その肉声がはっきり聞こえる位置まで、サイと少年は近づいていた。

 

「お久しぶり、サイ・アーガイル。

 俺だよ、トール・ケーニヒ。

 2年ぶりだし、忘れちまったかなぁ? 今日はお前に、用事があってさ……」

 

 再び振り上げられようと機動する、左腕の鉄球。

 少年は笑顔を崩さず、ウィンクまでしながら明るく言った。小銭貸して、と言う時と全く同じ口調で。

 

「ごめんっ。

 悪いけど、ちょっと死んでもらっていいか?」

 

 

 

 

 ~~~~~~

 

 次回予告

 

 明かされた真実。

 慟哭と共に、動き出した時間。

 その時間を止めようとする者は誰か。

 無垢なる心を凌辱する者は誰か。

 怒りに染まった太陽が、暴虐の大地を照らし出す。

 

 次回、機動戦士ガンダムSEED Revelation

「血みどろの懺悔」

 紅蓮の真実、見極めろ。ティーダ! 

 

 

 

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