【完結】機動戦士ガンダムSEED Revelation ~紅蓮のフレイ~   作:kayako

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part2 ジュール隊、見参!

 

 

 マユが黒ジンと呼んだその機体は、ジンハイマニューバ2型。

 ジンの派生機種で、ザフトにおける量産機がジンからゲイツへ移行するまでの過渡期に、少数ではあるが生産されたものだ。ジンにはないビームカービンと、真っ赤な鞘に収納されたMA-M92斬機刀が装備されている。

 ザフトのエースパイロットと呼ばれた者たちが乗り込んだ機体で、ザフトでの評価は相当に高い。

 そのコックピットに座るは、機体と同じく黒と紫を基調にしたパイロットスーツに身を包んだ、黒褐色の肌の男。

 両耳から顎、それから鼻の下の豊かな真っ黒な髭が顔の下半分を覆い、さらに目の部分全てを隠す黒のサングラスまでしている。

 男はモニターの中で必死に防御しているティーダ、そして後方でジンと戦うソードカラミティを確認しつつ、呟いた。

 

「あれが噂の、オーブとチュウザン共同開発の新システム、とやらか?」

 

 嘲笑の響きが混じった声だが、笑っているのかどうかは髭に隠れて分からない。

 

「どちらも既存機体にしか見えんがな。特にブリッツもどきはド素人……

 あの白は目立ちすぎだろう」

 

 

 

 

 

 

 ビームカービンの火線がティーダのトリケロスに集中していたが、効果が上がらないと知るやハイマニューバ2型はすぐに戦法を変えた。

 紅の鞘に収められた斬機刀を抜き放ち、ビルの間から飛び出してティーダの後ろをとり、襲いかかってくる。

 

「ぐ……

 よ、よけられないかな!?」

 

 背後から迫る黒いジンをモニター後方に見ながら、操縦桿を握り締めるナオトの手が氷のように固まる。

 それでもマユは呑気なものだ。ハロもてきぱきと指示を送ってくる。

 

「何言ってるの? こっちが死ぬよー」

「ハロハロ、右レバー上段、ビームサーベル、中段、ライフル!」

 

 手のひらが汗だくでレバーが滑りそうだ。

 誰かを撃てってのか。

 

「僕はレポーターだよ。人は殺せないっ!」

 

 敵接近の警告音。マユが朗らかに笑った。

 

「ナオトってば、変なのぉ。

 人殺すの、そんなにつらい?」

 

 

 ――当たり前だろ。

 

 

 ナオトはともかく、必死で機体制御にかかる。

 刀で襲いかかってきた黒ジンに機体を向き直らせ、右腕のトリケロスで全身を庇う体勢にする。まともに斬機刀の攻撃を喰らうトリケロス。

 しかし状況とナオトの心情に比して、マユの声は異常に呑気だ。

 

「防いでばかりじゃやられちゃうよ~。

 右腕に装備が集中してるんだから、壊されたら激マズ」

「ブリッツって確か、ミラージュコロイド装備してたよね!?」

 

 刀と盾が擦れ合う、凄まじく甲高く嫌味な金属音。コックピットが揺さぶられる。

 

「だからー、ブリッツじゃないんだってば。

 あるわけないじゃん、条約で禁止されたのに」

「じゃあ何なんだ、この機体は!」

 

 そんなナオトの絶叫に、マユはちょっとだけ首を傾げるような仕草をした。

 後部座席脇に取り付けられていたキーボードを彼女が操ると、その下部から小さなディスプレイが飛び出す

 ――が、彼女はすぐそれをしまった。

 

「……ダメ。

 フレイが怒る」

 

 その間にも黒のジンは迫り、紅を帯びた白色の単眼がモニター正面に光る。

 途端、ナオトの恐怖のゲージが上限を突破し──

 数瞬、脳みそが空っぽになったような感覚を覚え、次に彼は再び胸元の、フーアの指の存在を認識した。

 怒りが蘇る。フーアの指が、心臓のあたりで跳ねる。

 

 

 この機体が。ジンが。

 フーアとアイムを、一瞬で奪った──

 

 

 ナオトはハロの指示に従いつつも、ほぼ直感的にレバーを操作した。

 右腕のトリケロスの先端からビームライフルが放たれ、黒のジンに閃光が走る。

 ジンは危機一髪でかわしたが、そのおかげでティーダは斬機刀の脅威から逃れられた。

 体勢を立て直し、モニターごしに再び相手を睨みつけるナオト。

 

「マユ。

 外部スピーカーの音量は、どこで調整すればいい!?」

 

 ──見てろ。これが僕の戦い方だ! 

 

 

 

 

 

 

 アマミキョブリッジは、依然として混迷を極めていた。

 ディックの上ずった声。

 

「ジン1機、港湾区画搬送ゲートへ接近!」

 

 トニー隊長が叫ぶ。

 

「まずい。船の発進を止める気か!?」

 

 奥の方で船内モニターを見守っていた女性オペレーター・マイティもそれにつられて悲鳴を上げた。

 

「やだ……イヤだよぉ! 

 私たちが何したっていうの!?」

 

 若干ふくよかさが目立つ容貌だが、いつも朗らかな笑顔を皆に振りまくマイティ。しかしそんな彼女の悲鳴は、否が応でも日常の崩壊を実感させられる。

 それに呼応するように、業務遂行が不可能になり片隅に座り込んでいるヒスイも呟いた。

 

「嫌っ……何でみんな冷静なの、何でみんな戦えるの?」

 

 吐き気と震えを、懸命に抑えているヒスイ。

 女性の甲高い声というものは、それだけでパニックを倍増させる効果がある。

 2年前に何度かそういう場面に遭遇した経験のあるサイは必死でキーボードを繰り、皆が落ち着くことのできそうな情報を探っていた。

 

「狙いがアマミキョとは限らない。

 工場のモビルスーツかも」

 

 尤も、テロリストの狙いが9割がたこの船の装備にあることは明白だった。

 サイはそれを承知の上で、周囲を落ち着かせるべく敢えてそう言い放ったのだが、すぐに横からカズイが突っ込む。

 

「この船以外ないだろ……狙うものなんて」

 

 サイが思わずカズイをたしなめかけた時、後方でプログラミングを行なっていたナチュラルの青年・ミノルが叫んだ。

 

「バカヤロー。

 これだからザフトって奴は!」

 

 この言葉に、ディックがすかさずつっかかる。

 

「ザフトと決まったわけじゃない!」

「でも、あれはジンじゃないか!」

 

 そんなミノルの言葉に、ディックがいきり立った。

 オーブ出身ではあるが、ディックはコーディネイターだ。ザフトではないとはいえ、同胞を貶されたとあっては黙っていられないだろう。

 

「ジンだからってザフトとは限らないだろ。

 連合にだって、ジンを操縦できるパイロットがいる可能性はあるだろうが」

 

 舌打ちするミノル。

 

「ジンのOSをナチュラル用に書き換えたってのかよ。

 さっすが、コーディネイター様は言うこと違うねぇ」

 

 挑発にしか聞こえないこの物言いに、思わず立ち上がりかけるディック。

 こんな時に何を言い争ってる。サイは慌てて彼を押さえた。

 

「ありうるよ。

 連合の技術力を甘く見ちゃいけない、フェイズシフトを開発したのは連合だ」

 

 ミノルもディックも一瞬、サイを睨んだ。

 お前は一体どっちの味方だ──

 そんな怒声が、二人の目の奥から聞こえてくる。そんな気がした。

 

「えぇい、全く! 口を動かす前に手を動かせ! 

 冷静に、冷静にだ。状況を確認しろ!」

 

 一触即発のブリッジの真ん中で、トニー隊長が喚く。

 社長は外部と通話中だったが、表情にはまだ余裕が見える。

 その時、モニターに反応があった。

 

「リュウタン広場付近にて、ジンと交戦中の機体を確認! これは

 ……ティーダと、カラミティです!」

 

 例の『アマクサ組』だ。

 サイはすぐに回線を開き、ほとんど怒鳴るようにして通信を送る。

 トニー隊長が通信を開けと命じていたが、サイの行動の方が2秒は早かった。

 

「ティーダ、ソードカラミティ! 

 応答願います、こちらアマミキョブリッジ! マユ・アスカ! カイキ・マナベ!」

 

 もう一人は何処にいる。

『あの名』を持ち、ストライクの名を冠するモビルスーツを操るという娘は──

 反応が来るより先に、ディックの悲鳴が響いた。

 

「発進口付近に、モビルスーツ3機接近! 

 距離100、グリーン3、2、5、マーク03ブラボー! 

 熱紋照合、これは……

 

 GAT-02L2、ダークダガーL!?」

 

 ダガーL。ということは、やはり連合──

 ディックはチラリとミノルに蔑むような視線を送るが、既にミノルはモニターに集中していた。

 一方で社長は電話を切りつつ、依然として余裕を見せながらリンドー副隊長と言葉を交わす。

 

「なるほどね……連合とザフトによる挟撃というわけか。

 ウーチバラを舞台にオールスターを開催するつもりはないんだがなぁ」

「どちらも、よほどウーチバラの太陽光がお好みなんだろうよ。

 しかし、こんな処でエネルギーを消費するわけにはいかんな社長。

 それから隊長、CICどうなっとる?」

 

 リンドーに尋ねられ、汗だくで返すトニー。

 

「状況がフェイズRですので、既にオンラインです。発進シークエンスは……」

「避難民の収容状況を確認後だ」

 

 リンドーが言いかけた時、メインモニターにまたも変化が現れた。

 敵機を示す赤のマークに、きれいに後ろと前を塞がれているアマミキョだったが、モニター上部──

 つまり船の発進方向へ、一直線に向かってくる2機のモビルスーツがいる。

 

「待ってください……ザフト機2機、接近! ザクファントム及びザクウォーリア! 

 敵機じゃない、支援ですっ!」 

 

 ディックが心なしか嬉しそうに声を上げる。 

 アマミキョから見て上方から接近してきた、緑のザクウォーリア。その高エネルギー長射程ビーム砲・オルトロスが火を噴いた。

 ザクウォーリア追加装備・ガナーウィザード特有の装備である。

 相当の大出力の砲だが、港口に当てないようにうまくやってくれた

 ──サイは思った。

 

 宇宙の闇に紛れそうな漆黒の塗装を持つダークダガーLは、巧みに火線をかわす。

 しかしかわした瞬間、追撃してきたスカイブルーのザクファントムが、両肩のガトリング砲で攻撃をかけた。

 蜂の巣にされる寸前にダークダガーLは、ひらりとそれもかわしてしまう。

 

 

 そして、事態はさらに急変した。

 闇の中からもう一機、宙を切り裂くかのようにダークダガーLが現れ、ザクファントムから見てほぼ右下から襲いかかったのである。

 ザクウォーリアが、右腕のオルトロスを下げ左腕に装備されていたシールドを前方に差し出す

 ──途端、シールドの下部から閃光が走った。

 

 シールドの裏にビーム突撃銃が隠されていたのだ。光が漆黒の宙を切り裂き、ダークダガーLの左脚部が損傷する。

 それを見た他2機のダークダガーLは体勢を整え、一旦後方へ下がっていく──

 

 

 そんな戦闘の様子が刻々とモニターされていたアマミキョブリッジへ、ザクファントムから通信が入った。

 

《アマミキョ乗員および避難民に告ぐ! 

 自分はザフト所属ジュール隊隊長、イザーク・ジュール!》

 

 ジュール隊の支援に、緑と白のカラーリングも鮮やかなゲイツRが2機、飛び込んでくる。

 ザフトの量産機だが、ザクウォーリアを始めとするニューミレニアムシリーズの台頭により、旧式化しつつある機体である。しかしその高機動性は今でも十二分に戦場で通用するものだ──

 それを見越しての、ダークダガーLの一時後退だった。

 ザクファントム、ザクウォーリアはゲイツRに後方を護られながら宙港手前まで接近し、アマミキョに呼びかけていた。

 

 

 

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