【完結】機動戦士ガンダムSEED Revelation ~紅蓮のフレイ~ 作:kayako
広瀬に救出されてすぐ、装甲スレスレを通過していったシュラークの閃光──
ナオトがほっとする間も与えず、広瀬は叫ぶ。
《喜ぶのはまだ早い。スラスターは生きてるか?》
「だ、大丈夫です!」
咄嗟にバーニアを噴かし、ウィンダムと連れ立つようにして水面直上の支柱へと降り立つティーダ。
両機は一旦背中合わせになり、通信でお互いの状況を確認する。
それが繋がった途端、スピーカからは広瀬の荒い息が飛び込んできた。
サブモニターも繋がり、相手のコクピットも映し出される──
「……えっ?」
ナオトは思わず息を飲んだ。背広の3分の2以上が血まみれじゃないか、あの人は!
最悪の兆候を示す目の下の濃い隈まではっきり見える。ぶ厚い唇はほぼ真っ白になり、口端から流れ出した血は喉仏のあたりまで伝っていた。
だが、息を飲んだのは向こうも同じらしい。
「広瀬さん、ホントに大丈夫なんですか? すぐに手当てしないと……」
《アホ……お前、自分を棚に上げて何言ってやがる。
そのシャツって、真っ赤だったか?》
それでも広瀬は、皮肉っぽい笑みを崩さない。
《どうやらお互い、あんまり無事とは言いがたいようだ。
あの女と違って……》
言いながら広瀬は、上空で悠々と待機しているアフロディーテを睨みつけた。
《だが幸い、あの女もカラミティも、ティーダのコクピットを狙う気はないらしいな。
それをやっちまったらおそらく、奴らの目的そのものにも響くせいか》
「だけど、マユを助けるにはどうしたら……
マユは多分、あの光の柱の中にいるんです。僕たちを待ってる!」
《俺がフレイを引きつける。
そうすれば後は……カラミティの砲撃さえ気をつけりゃ、ティーダはもっと楽に上まで行けるはずだ。
但し、これだけは覚えとけ。黙示録は最終手段だ》
「どうして!?」
今、アフロディーテとカラミティにまともに対抗出来るティーダの武器と言えば、黙示録しかない。
自分に残された唯一の逆転勝利の道は、黙示録起動だけ――そうナオトは考えていたのだが。
《アレをここで使っちまったら、研究塔のバイタルラインたるこの場所にどんな影響があるか分からん。
この柱は、セレブレイトウェイヴ発振装置の試作バージョンみたいなもんだ──
だからティーダも、この下にあったんだろ? 恐らく、起動キーとして。
黙示録が発動したら、同時に柱が暴走を引き起こす可能性がある。むしろ、奴らの狙いはそれかも知れない……
てか、俺の本来の目的もそれだがな。今それをやっちまったら、マユもお前も助からんだろ》
「冗談やめてくださいよ!
じゃあ、どうしたら……」
《最初にお前がやろうとしていた通りだ。
ある程度上空まで行ったら、力技で柱を叩き壊してマユを助けるしかなかろうな。
黙示録はその後だ。その為にも、右腕だけは絶対落とされるなよ》
ナオトが唇を舐めつつ、ティーダの右腕──
今や唯一の武器とも言える攻盾システム「トリケロス」を眺めた、その時。
《相談は終わったか?》
フレイの声が突如割り込む。
待ってましたとばかりにビームサーベルで2機に飛びかかるアフロディーテが、モニターに映し出された。激しいアラートと共に。
同時に別々の方向へ跳ね、ギリギリでかわすティーダとウィンダム。
ジェットストライカーで思うままに飛翔するウィンダムは、そのまま空中でアフロディーテと光の剣を交えた。
それぞれの剣を構えた両機の拳同士が激突し、炸裂する火花。
《俺だったら、色々話してくれるかな? フレイ・アルスター!》
《ここまで追ってくるとはな……
どうやら山神隊の力、甘く見ていたようだ!》
《アマミキョの守りは山神隊がやってんだ!
あんたがアマミキョを潰す気なら、見逃すわけにゃいかねぇんだよ!!》
《その決定を下すのは私ではない。私はあくまで要請通りに動くだけだ》
ナオトを相手にした時と違い、フレイの声から若干余裕が失われている。
そこへさらに畳みかける広瀬。
《タロミ・チャチャの要請ってか?
つまりあんたは、奴のお人形に過ぎんわけだな……
あと3年もすりゃ、いい女になると思ってたが!》
《民を守る為だ》
《その民の中に、アマミキョやシライシやマユは入ってないってのか!
アーガイルも!!》
剣戟の隙を利用して、ウィンダムは対装甲貫入弾・スティレットを腰から投げつける。
サーベルでそれを一閃するアフロディーテ。
塔を揺るがす大爆発が起こり、両機はナオトの視界から一瞬消えてしまった。
「広瀬さんっ……!?」
叫びながら飛ぼうとするナオト。
だが、アラートが響きわたる──
ほんの10数メートルまで近づかれていたカラミティに、完全にロックオンされていたのだ。
カラミティの胸部が白熱の光に満ちていく──
「く……っ!!」
舌打ちと共に、ナオトは機体を真横へ跳ねさせた。
今までいたティーダのいた場所が、情け容赦なく真っ白な火球に変貌する
――その瞬間、ナオトは気づいた。
「カイキさん……
全然、手加減、してない?」
ひどくなっていく呼吸と共に呟くナオト。
ティーダコクピットは狙われないと思っていたが、その読みは間違っていたのか?
いや、違う。本来の作戦上、ティーダのコクピットが狙われないのは間違いない。
だからこそティーダを温存していたのだろうし、危険を冒して彼らはナオトをここまでわざわざ連れても来たのだ。
フレイの言動から考えて、ナオトがティーダに乗り込むところまで、彼女の想定範囲内だったのだろう。悔しいが、それは認めざるを得ない。
だとしたら、カイキがナオトの命を乱暴に消しにかかる理由は──
そうそう考えずとも分かる。
作戦なんかどうでもいいほど、僕が憎くてたまらないんだ。
カイキさんは。
最大出力のバーニアで跳躍したカラミティは、そのまま支柱の上のティーダに喰らいつく。
一瞬揉みあった両機は支柱から落下し、そのまま下の水面へ飛び込んだ。
幸か不幸か、先ほどナオトが落ちた場所よりそこはずっと浅く、水底で跳ね返って2機はすぐに浮上した──
が、カラミティの暴走は止まらない。
《フレイがどう言おうが、俺は貴様を許せない……
貴様の存在を許さない!》
喰いついたティーダに向かって、カラミティは
その光の切っ先は真っ直ぐティーダコクピットに――ナオトに向けられていた。
駄目だ。今度こそ殺される──
少年が目を瞑りかかった、その瞬間。
「やめてぇえ! ナオトを離して!!」
塔全体に、思わぬ人物の絶叫が響いた。
壁に取り付けられたスピーカから鳴り響き反響する声に、その場の全員が動きを止めてしまう。カラミティまで含めて。
――まさか。
ナオトは反射的に、機体中のカメラというカメラを駆使して音の発生源を探った。
先ほどまで研究員たちが何人かたむろしていたはずの、ガラスの壁の向こう──
予期せぬ戦闘が始まって、研究員はとっとと避難したと思っていた。
だが、一人だけ残っていたのだ。というよりも、一人だけここへ来たというべきか。
丁度ティーダの真正面、カラミティの背中にあたる壁のガラス窓──
そこに一人だけ残っていたのは、豊かな金髪の女性。
ナオトがずっとその愛に飢え、渇望していた存在。
「母さん……!」
絶望か、安堵か。
自分でも判断がつかない溜息が、ナオトの肺から漏れた。
~~~~~~
次回予告
訪れる破滅の時。消えていく命。
母に、血に、運命に翻弄され続けた少年は、遂に目覚める。
彼らを犠牲に大人たちが生み出すものは、福音か、黙示録か。
次回、機動戦士ガンダムSEED Revelation
「祝福の鐘の中で」
流れる血の果て、覚醒せよ! ティーダ!!