【完結】機動戦士ガンダムSEED Revelation ~紅蓮のフレイ~   作:kayako

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part3 シンVSフレイ、再び

 

 

《アマミキョが、体勢を立て直した?》

《クルーの避難は、あらかた完了したみたいだな》

 

 ダガーLとアマミキョの攻防を、後方で見守っていたアフロディーテ。

 そのコクピットで、フレイは呟く。

 

「何故だ……

 自沈プログラムの実行完了には、まだ早いはず。

 何故、メインエンジンが爆発した?」

 

 そこまで口に出してみて、フレイは顔を上げる。

 

「まさか……!」

 

 その時轟いたものは、電光石火の如きラスティの通信。

 

《フレイ! 

 10時方向から敵影だ、これは……っ!!》

 

 ラスティが言い終わらないうちに――

 アフロディーテとグフとスカイグラスパー、そして雲霞の如くアマミキョに集まっていたダガーL部隊に、鋼と閃光の嵐が滝の如く降りそそいだ。

 

「やはり、ザフト……

 ミネルバか!」

 

 緑の炎を放つ鳥のように、空を舞う無数の光。

 いくつも飛び交うその光に翻弄され、アマミキョ直上にいたダガーLは次々となす術なく落とされていく。

 フレイたちアマクサ組3人も危うく直撃を食らう寸前だったが、何とか全員回避に成功した。

 しかしその火の鳥の間を縫うように、紅に光る双対の刃が、波濤を貫いて真っ直ぐに飛んでくる。

 

「ドラグーンに、フラッシュエッジ……

 遂に来たか」

 

 フレイは全てを悟ったかのように、舞い上がるアフロディーテの中で目を閉じる。

 

「ダガーLとウィンダムの混成部隊を出させろ。

 覚悟を決めねばならん時が来たようだ!」

 

 飛んできた紅の刃を、ビームサーベルで叩き払うアフロディーテ。

 だが、その光の刃──フラッシュエッジは怯むことなく、主の下へ旋回運動をしつつ戻っていく。

 

 青空の下に舞い降りた、10枚もの紅の翼を誇るモビルスーツ──

 デスティニーガンダムのもとへ。

 

 

 

 

 

 

 ミネルバ隊が、ヨダカ・ヤナセの操るジン・ハイマニューバ2型及びグーン部隊と合流を果たした、その後。

 ウルマ沖に到着した彼らが見たものは──

 一瞬では、信じがたい光景だった。

 

 連合軍と南チュウザン軍の激突はまだ分かる。

 だが、南チュウザン軍の動きが明らかにおかしい。連合艦隊ではなく、その後方に控えている例の民間救援船、アマミキョだけを集中的に狙っているのだ。

 連合軍の奮闘か、アマミキョは撃沈こそ辛うじて逃れているが、至るところから黒煙と炎を噴き出し、半分がた沈んでいる。船の上層に設置されているブリッジが何とか視認出来るという状況だ。

 しかも、そのアマミキョを攻撃しているのは――

 かつてアマミキョを守る為に自分たちと剣を交えた、紅のストライク。

 

 真っ先に疑問を発したのは、インパルスのルナマリアだった。

 

《ねぇ、どうして? 

 どうしてあのモビルスーツが、アマミキョを攻撃しているの?》

 

 後方に控えるヨダカがそれに答える。

 

《恐らく奴らは、アマミキョを無理矢理実験船として育て上げていた。

 データが揃ったので、不要となった船を自分たちの手で消す──

 そんなところか》

 

 ヨダカの通信に、割り込んでくる少年の怒声。

 

《何だよ……

 何だよ、それ! 

 無理矢理船を奪って、中の民間人をこき使って、いらなくなったら殺そうってのか? 

 何も知らない人たちが、どうなってもいいってのかよ!》

 

 デスティニーの中から、シン・アスカの怒りの咆哮が轟く。

 

《シン、落ち着け。

 それをさせない為に、俺たちが来たんだ》

 

 甲羅にも似た漆黒の背部ユニットが、鈍く輝くモビルスーツ──

 レジェンドガンダムから、レイ・ザ・バレルの落ち着き払った声が響く。

 だがその声とは裏腹に、レジェンドの機動はデスティニーよりも若干早かった。

 

《見ての通り、船は撃沈寸前だ。

 時間がない、まずはあの黒いモビルスーツどもを叩き落とすぞ!》

 

 言葉通りに飛び出していった漆黒の甲羅から、緑に輝く炎を帯びたハヤブサが一気に放出される。

 それは、分離式統合制御高速機動兵装群ネットワーク「ドラグーン」──

 大気圏内では使用出来ないその突撃ビーム機動砲を、今レジェンドは6基全て、背部の固定砲台として使用しつつダガーLを砲撃していた。

 無重力空間ほどの大暴れはできないものの、それでもドラグーンの光はレジェンドの手足の如く敵を貫き、次々に落としていく。

 それを追いながら、シンはダガーL部隊のやや後方に、紅のストライクを目撃した。

 

 ――幾たびも激突を繰り返した、紅の女神。

 そいつがまるで、待っていたかのようにデスティニーをゆっくり振り返る。

 せせら笑っているようにさえ見える、その頭部意匠を見た瞬間。

 

《この……!》

 

 純なる怒りのままに、シンはビームブーメラン・フラッシュエッジを投擲していた。

 

《何であんたは……無力な人たちを……

 易々とぉっ!》

 

 

 

 

 

 

 ミネルバ隊が交戦状態に陥ったその背後で、ヨダカは状況を慎重に観察していた。

 アマミキョの損傷度合いは、予想を遥かに超えている。黒ダガーLどもの捨て身の攻撃のせいもあるが、何より内部からのダメージが大きいようだ。

 先行して潜らせたグーン部隊からの報告では、船からはどうやら次々にクルーが脱出しているらしい。

 

「あの女……

 ここまでやれと命じた覚えはないのだがな」

 

 ヤエセでの夜を、ヨダカは思い出す。

 あの時の()()は──

 アマミキョについて話す時の彼女は、言葉では仲間を案ずるようなことを言っていたが、目は全く違う色をたたえていた。

 あれはむしろ憎しみに近い、獰猛な光だ。

 

 ──まぁ、いいだろう。

 最悪でも、船体のデータを手に入れられればそれで良い。こちらには例の機体のデータもあるのだ。

 

 後方から海中を直進してくるグーン3機を確認しつつ、ヨダカは唇を舐めた。

 オーブ攻め直前の、しかも勲章授与直後で舞い上がっている若僧どもをこき使うのは気が引けるが、何度も戦った因縁の相手だ。

 今回は何かしらやってくれるに違いない。

 

 

 

 

 

 

 アマミキョブリッジでただ二人だけ取り残されたサイとオサキは、船体の立て直しを行いながらも同時に、戦況のめまぐるしい変化に驚いていた。

 

「ザフトが……俺たちを守りに来た?」

「何だか知らないけど、好都合だ。

 この隙に下がるぞ!」

 

 オサキは元気よく操舵輪を振り回しながら、左舷のエンジンの様子を見ていた。

 彼女の、一見豪快だがきめ細かくもある操舵のおかげで、既に航行不能と思われたアマミキョは再び息を吹き返し、少しずつではあるが再度後退を開始していた。

 彼女の言った通りだ。確かに俺だけじゃ、ここまでうまく船を動かせるはずがなかった。

 

「救助艇は?」

「大丈夫。もうみんな、出発したようだ」

 

 まだ生きているモニターを確認しながら、サイはほっと胸を撫で下ろす。

 オサキはそんな彼を、中央通路ごしに右隣に見ながら、ふと呟いた。

 

「フレイのこと……

 やっぱり今でも、心配なのか?」

 

 メインモニターでは、アフロディーテとデスティニーがビームサーベルでの斬り合いを始めている。

 サイは気づけば、その様子を見上げてしまっていた。

 

 あの紅の翼のモビルスーツ──

 まるで、フリーダムの青い翼と相対するような翼だ。それにあの武装──

 ビームブーメランに大型の対艦刀、ビーム砲にビームライフル、考えられる限りのありとあらゆる武器をアホのように詰め込んで、しかもパイロットはそれらの武装を巧みに使いこなしている。当然の如く、装甲はフェイズシフトだ。

 無謀極まりないダガーLが1機飛び出してジェットストライカーを投げつけたが、あのモビルスーツはかすり傷一つ負っていなかった。勿論そのダガーLは、1秒後には火球になった。

 いくらフレイでも、ビーム兵器やフェイズシフト装甲に対する武装に欠けるIWSPでは、劣勢にならざるを得ないだろう。

 実際、相手の攻撃を巧妙にかわしてはいるものの、ビームサーベル以外にまともな攻撃手段を持たないアフロディーテは防戦一方となりつつあった。

 

 アフロディーテの機体を刃が掠めるたび、サイの額にも冷や汗が浮かぶ。

 

 ――だから……あれだけ言ったじゃないか。

 俺への拘りなんて捨てろって!

 

「やっぱり、どこまでも優しいんだな。

 サイは」

 

 その言葉にふと振り返ると、すぐ左隣にオサキの笑顔が見えた。

 

「ここに残ったのだって、本当はフレイともっと話をしたいからだろ。

 あと、カズイの馬鹿を探すのもあるし」

 

 大きな臙脂色のキャップの下から、癖のある赤毛が跳ねている。悪戯っぽい青い瞳が輝いている。

 オサキの笑顔はこんな時でも、溌剌としていた。

 さっきまであれだけ怒っていたのに、女というものはこんなにもくるくる変わるものか。

 サイは図星をつかれ、思わず耳まで赤くなる。

 

「そ……それだけじゃない。

 ちゃんと皆を避難させないといけないし、船の後始末もある」

「私情で動けないから、副隊長さんは大変だよなー。

 ま、アタシも似たようなもんだけどさ」

 

 オサキは余裕を装うように、ウィンクまでしてみせる。

 そんな彼女の気遣いに、サイは心底申し訳ないと思った。

 

「本当に、ごめん。

 俺の勝手な思いに、君までつき合わせて……」

「だから言ってるだろ、アタシだって同じだって。

 ……アタシだって、本当は」

 

 オサキはそこで彼女には珍しく、口ごもってしまった。

 帽子の下に隠れていても、その横顔ははっきりと赤くなっているように見えた。

 

 

「お……

 お前と、二人っきりに、なりたかったんだからさ」

 

 

 

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