【完結】機動戦士ガンダムSEED Revelation ~紅蓮のフレイ~ 作:kayako
「あの、しょう……じゃなかった、一佐。
セレブレイト・ウェイヴは。南チュウザンは、今どんな動きを?」
「それについても、心配ないさ。
ティーダの黙示録発動をきっかけに、北チュウザン近辺のタロミの動きはすっかりおとなしくなった。無力化されてやむを得ずか、それとも意図的なものかは分からんがな。
コロニー・ウーチバラについても、ザフトが軍を展開させて周辺の監視を続けているらしい。アスランによると、ジュール隊がなかなか頑張ってくれているそうだ」
その名前を聞いて、サイは心底ほっとした。
何か動きがあれば、ディアッカたちなら間違いなく反応してくれるはず──
根拠はないものの、何故かそんな安心感があった。
「ほれ、着いたぞ。ここだ」
ナオトとルナマリアを従えつつサイを両腕に抱いたまま、軽快なフットワークであっという間に頂上まで登るフラガ。
「何ですか? ここ……
灯り以外、何も見えないですけど」
ナオトは訝しがりながら、眼下の景色を眺めていた。
丘の麓は避難民のキャンプがあるはずだが、確かに彼の言うとおり、丘の下はほぼ暗闇に包まれ、テント内を照らすほのかな灯り以外の光は殆ど見えない。
その向こうは海があるだけだ。遥か向こうに広がる水平線。
夜明けはすぐそこまで迫っているようで、次第に海面付近が明るい紅に染まり始めていた。
そして──
水平線の向こうから、いつもと同じ、この地を焼き尽くさんばかりの灼熱の太陽が姿を現す。
ずっと雲に覆われていた分、陽光の輝きは一段と強くなっているように思えた。
海面から太陽がその欠片を覗かせただけで、サイは思わず目を細めてしまう。
まるで溶岩のように、天から海へ溢れ出す黄金の煌き。
「どうだ──
これが、地上の太陽ってやつだ」
プラントじゃ決してお目にかかれんだろうと言いたげに、フラガはルナマリアを見やる。
だが彼女はそんな軽口にも気づかず、眼前の光景の美しさに心を奪われていた。
彼女の心情を代弁するかのように、ナオトが感嘆の声を上げる。
「うわぁ……!
久々ですよ、こんな綺麗な朝日は」
そんな彼らにも、フラガは余裕の微笑みを崩すことなくさらに言う。
「そりゃそうだろう、太陽自体が久しぶりだしな。
だが、俺の見せたいもんはちょっと違う」
フラガはそう語りながら、陽光に照らされ出した眼下の地を見降ろした。
自然と、サイたちの視線もそちらに向き──
生まれたばかりの光に照らされた大地が、金色に輝きだす。
そこに建てられた、無数の難民たちのテントと共に。
その数は、サイたちが想像していたよりも遥かに多く、海のすぐ近くまでをびっしりと埋めていた。
輝く大地と共に、テントの天幕に残った雨水も陽光を反射し、美しい光を放つ。
ナオトは思わず、驚愕と歓喜の入り混じった溜息を漏らしていた。
「す、すごい……
こんなにたくさん、ここに人が集まっていたなんて」
よく見ると、早めに起きてきた子供たちが元気よく外へ飛び出し、朝の光の中で踊りだしている。
テントの外で支度をしながら、子供を呼ぶ母親の声が響く。
子供らが駆けていくたびに、小さな足が水や砂を蹴っていく。その一粒一粒が、光の中で輝きを放っていた。
その歓声は次第に多くなり、キャンプ中に反響していく──
長い間、風雨と砲弾の恐怖に晒されていた人々が、久々に迎えられた快晴の朝。
その喜びを、人々は全身で受け止めていた。
朝を迎え、この光を浴びられたことを、全身で感謝しながら。
サイはフラガの腕の中から、茫然とその光景を眺めていた。
そんな彼に、フラガはゆっくりと呟く。
「サイ。
お前がいたから、この連中は今日も朝を迎えられた。
あそこのガキどもは皆、言ってたぞ。ガンダムに乗ったタキシードのお兄ちゃんが、助けてくれたって」
「そんな……
俺は、何も出来ていません」
首を横に振りながら、サイは自嘲する。
「俺にもっと力があれば。俺がもっと頑張れていたら──
もっと助けられたはずなんです。
感謝されることなんて、何も出来てない。俺は英雄でも勇者でも何でもない。
ナオトもルナマリアも、皆を振り回して……
この人たちを助けられたのは、結局はアマミキョのみんなやティーダの力だ。
俺は──」
感情がこみあげ、喉に言葉をつまらせるサイ。
そんな彼に、すかさず何か言おうとするナオトとルナマリア。
しかし二人をゆっくりと目で制し、フラガは語りかける。
「そうだな。
確かに、お前一人では何も出来なかったかも知れない。
だがお前がいなきゃ、アマミキョも、ティーダも。
もっと言うなら、ミネルバJrも山神隊も……ここまでは動けなかったはずだ」
それは──
ザフトでも連合でもアマミキョでもない、大局的な視点を持ち。
かつ、2年前のサイを知るフラガだからこそ言える、彼への言葉だった。
「2年前、お前は酷い挫折を味わった。
それはすぐに割り切って捨てられるレベルじゃない、呪いに満ちた絶望とも言えるものだ。
あの時、キラにもお前にも……
フレイにも何もしてやれなかったのが、今も悔やまれてならん。
だが、逆に言うなら──
あの敗北が。あの痛みが、今のお前を形作った。
挫折を引きずりながら、腐りも曲がりもせず、真っ直ぐに前を向いて一歩一歩、ここまで来た。
それがそのままお前の強さとなり、彼らを救ったんだ」
黄金の穂をつけた麦畑のように揺らめき、輝く大地。
それを静かに眺めながら、フラガは一言一言、噛みしめるようにサイに言った。
「お前は、敗北者なんかじゃない。
少なくとも、ここにいる人々にとっては──救世主。
俺は、それだけ言いたかった」
瞼が熱くなる。
目の前の光景が、じわりと霞む。
左眼を覆っていた包帯までも、いつの間にか濡れていた。
サイたちに気づいた人々が、眼下で手を振っている。中には両手を組み合わせ、跪いている女性までいた。
滲み続ける視界の中でも、しっかりその姿を目に焼き付けながら、サイは答えた。
「──ありがとうございます。
この景色……俺、忘れません」
それだけ言うのがやっとで、あとは声にならない。
そんな彼をしっかり両腕で抱え直しながら、フラガはぽつりと呟いた。
「俺も、思い直したよ。
やっぱり、きっちりつけんとな。自分のやっちまったことの始末は」
サイにはその言葉の意味が、よく分からなかったが──
フラガの呟きは燦々と輝き始めた朝陽の中へ吸い込まれ、二度と繰り返されることはなかった。
~~~~~~
次回予告
現人神を名乗った男は、突如舞台から姿を消した
世界の敵意を集めるかのように動くフレイ
彼女の真意を探り、破滅を止める為、アマミキョも宇宙へと飛び立つ
それは微かな希望への道標か、さらなる悲劇への幕開けか
次回、機動戦士ガンダムSEED Revelation
「タロミ暗殺」
その正義は、誰の為に。ジャスティス!
※今回で、全体のおよそ4分の3ほどのストーリーが終了となりました。ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
次回からはついに最終局面突入。不可解の極みのフレイに対し、サイとナオトはどう動くのか。
キラとラクス、変節の理由は。
そしてそこに巻き込まれたシンやアスラン、フラガたちの運命は……?
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