【完結】機動戦士ガンダムSEED Revelation ~紅蓮のフレイ~   作:kayako

340 / 436
part11 お前は敗北者じゃない

 

 

「あの、しょう……じゃなかった、一佐。

 セレブレイト・ウェイヴは。南チュウザンは、今どんな動きを?」

「それについても、心配ないさ。

 ティーダの黙示録発動をきっかけに、北チュウザン近辺のタロミの動きはすっかりおとなしくなった。無力化されてやむを得ずか、それとも意図的なものかは分からんがな。

 コロニー・ウーチバラについても、ザフトが軍を展開させて周辺の監視を続けているらしい。アスランによると、ジュール隊がなかなか頑張ってくれているそうだ」

 

 その名前を聞いて、サイは心底ほっとした。

 何か動きがあれば、ディアッカたちなら間違いなく反応してくれるはず──

 根拠はないものの、何故かそんな安心感があった。

 

「ほれ、着いたぞ。ここだ」

 

 ナオトとルナマリアを従えつつサイを両腕に抱いたまま、軽快なフットワークであっという間に頂上まで登るフラガ。

 

「何ですか? ここ……

 灯り以外、何も見えないですけど」

 

 ナオトは訝しがりながら、眼下の景色を眺めていた。

 丘の麓は避難民のキャンプがあるはずだが、確かに彼の言うとおり、丘の下はほぼ暗闇に包まれ、テント内を照らすほのかな灯り以外の光は殆ど見えない。

 その向こうは海があるだけだ。遥か向こうに広がる水平線。

 夜明けはすぐそこまで迫っているようで、次第に海面付近が明るい紅に染まり始めていた。

 そして──

 

 

 

 水平線の向こうから、いつもと同じ、この地を焼き尽くさんばかりの灼熱の太陽が姿を現す。

 ずっと雲に覆われていた分、陽光の輝きは一段と強くなっているように思えた。

 海面から太陽がその欠片を覗かせただけで、サイは思わず目を細めてしまう。

 まるで溶岩のように、天から海へ溢れ出す黄金の煌き。

 

「どうだ──

 これが、地上の太陽ってやつだ」

 

 プラントじゃ決してお目にかかれんだろうと言いたげに、フラガはルナマリアを見やる。

 だが彼女はそんな軽口にも気づかず、眼前の光景の美しさに心を奪われていた。

 彼女の心情を代弁するかのように、ナオトが感嘆の声を上げる。

 

「うわぁ……! 

 久々ですよ、こんな綺麗な朝日は」

 

 そんな彼らにも、フラガは余裕の微笑みを崩すことなくさらに言う。

 

「そりゃそうだろう、太陽自体が久しぶりだしな。

 だが、俺の見せたいもんはちょっと違う」

 

 

 

 フラガはそう語りながら、陽光に照らされ出した眼下の地を見降ろした。

 自然と、サイたちの視線もそちらに向き──

 

 

 

 生まれたばかりの光に照らされた大地が、金色に輝きだす。

 そこに建てられた、無数の難民たちのテントと共に。

 その数は、サイたちが想像していたよりも遥かに多く、海のすぐ近くまでをびっしりと埋めていた。

 輝く大地と共に、テントの天幕に残った雨水も陽光を反射し、美しい光を放つ。

 ナオトは思わず、驚愕と歓喜の入り混じった溜息を漏らしていた。

 

「す、すごい……

 こんなにたくさん、ここに人が集まっていたなんて」

 

 よく見ると、早めに起きてきた子供たちが元気よく外へ飛び出し、朝の光の中で踊りだしている。

 テントの外で支度をしながら、子供を呼ぶ母親の声が響く。

 子供らが駆けていくたびに、小さな足が水や砂を蹴っていく。その一粒一粒が、光の中で輝きを放っていた。

 その歓声は次第に多くなり、キャンプ中に反響していく──

 

 

 長い間、風雨と砲弾の恐怖に晒されていた人々が、久々に迎えられた快晴の朝。

 その喜びを、人々は全身で受け止めていた。

 朝を迎え、この光を浴びられたことを、全身で感謝しながら。

 

 

 サイはフラガの腕の中から、茫然とその光景を眺めていた。

 そんな彼に、フラガはゆっくりと呟く。

 

「サイ。

 お前がいたから、この連中は今日も朝を迎えられた。

 あそこのガキどもは皆、言ってたぞ。ガンダムに乗ったタキシードのお兄ちゃんが、助けてくれたって」

「そんな……

 俺は、何も出来ていません」

 

 首を横に振りながら、サイは自嘲する。

 

「俺にもっと力があれば。俺がもっと頑張れていたら──

 もっと助けられたはずなんです。

 感謝されることなんて、何も出来てない。俺は英雄でも勇者でも何でもない。

 ナオトもルナマリアも、皆を振り回して……

 この人たちを助けられたのは、結局はアマミキョのみんなやティーダの力だ。

 俺は──」

 

 感情がこみあげ、喉に言葉をつまらせるサイ。

 そんな彼に、すかさず何か言おうとするナオトとルナマリア。

 しかし二人をゆっくりと目で制し、フラガは語りかける。

 

「そうだな。

 確かに、お前一人では何も出来なかったかも知れない。

 だがお前がいなきゃ、アマミキョも、ティーダも。

 もっと言うなら、ミネルバJrも山神隊も……ここまでは動けなかったはずだ」

 

 

 それは──

 ザフトでも連合でもアマミキョでもない、大局的な視点を持ち。

 かつ、2年前のサイを知るフラガだからこそ言える、彼への言葉だった。

 

 

「2年前、お前は酷い挫折を味わった。

 それはすぐに割り切って捨てられるレベルじゃない、呪いに満ちた絶望とも言えるものだ。

 あの時、キラにもお前にも……

 フレイにも何もしてやれなかったのが、今も悔やまれてならん。

 だが、逆に言うなら──

 あの敗北が。あの痛みが、今のお前を形作った。

 挫折を引きずりながら、腐りも曲がりもせず、真っ直ぐに前を向いて一歩一歩、ここまで来た。

 それがそのままお前の強さとなり、彼らを救ったんだ」

 

 

 黄金の穂をつけた麦畑のように揺らめき、輝く大地。

 それを静かに眺めながら、フラガは一言一言、噛みしめるようにサイに言った。

 

 

「お前は、敗北者なんかじゃない。

 少なくとも、ここにいる人々にとっては──救世主。

 太陽(ティーダ)を導いた、伝説の英雄だ。

 俺は、それだけ言いたかった」

 

 

 瞼が熱くなる。

 目の前の光景が、じわりと霞む。

 左眼を覆っていた包帯までも、いつの間にか濡れていた。

 サイたちに気づいた人々が、眼下で手を振っている。中には両手を組み合わせ、跪いている女性までいた。

 滲み続ける視界の中でも、しっかりその姿を目に焼き付けながら、サイは答えた。

 

「──ありがとうございます。

 この景色……俺、忘れません」

 

 それだけ言うのがやっとで、あとは声にならない。

 そんな彼をしっかり両腕で抱え直しながら、フラガはぽつりと呟いた。

 

「俺も、思い直したよ。

 やっぱり、きっちりつけんとな。自分のやっちまったことの始末は」

 

 サイにはその言葉の意味が、よく分からなかったが──

 フラガの呟きは燦々と輝き始めた朝陽の中へ吸い込まれ、二度と繰り返されることはなかった。

 

 

 

 

 

 ~~~~~~

 

 

 

 次回予告

 

 

 現人神を名乗った男は、突如舞台から姿を消した

 世界の敵意を集めるかのように動くフレイ

 彼女の真意を探り、破滅を止める為、アマミキョも宇宙へと飛び立つ

 それは微かな希望への道標か、さらなる悲劇への幕開けか

 

 

 次回、機動戦士ガンダムSEED Revelation

「タロミ暗殺」

 

 

 その正義は、誰の為に。ジャスティス! 

 

 

 

 





※今回で、全体のおよそ4分の3ほどのストーリーが終了となりました。ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
次回からはついに最終局面突入。不可解の極みのフレイに対し、サイとナオトはどう動くのか。
キラとラクス、変節の理由は。
そしてそこに巻き込まれたシンやアスラン、フラガたちの運命は……?
もしよろしければお気に入り登録、評価など、どうぞよろしくお願いいたします!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。