【完結】機動戦士ガンダムSEED Revelation ~紅蓮のフレイ~   作:kayako

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part7 シン、キラと意気投合?

 

 

「え? 

 デスティニーが悪いってんですか」

「例えば、掌部分のこの武装──パルマ・フィオキーナ。

 使いどころを考えてみたんだけど、どうも思いつかないんだよ。

 アロンダイトを持ったらパルマは使えなくなるし、パルマがあるならアロンダイトは必要かな? とも思うし。

 アロンダイトが使えなくなった時の補助とも考えられるけど、少なくとも、二つを同時に使うのは非常に難しい武装だよね。

 なのに同時運用を想定しているのは、単なるパワーの無駄遣いにも思える。

 いくらハイパーデュートリオンで無尽蔵なエネルギー供給が可能とはいえ、無理な使い方したらどこにエラーが発生してもおかしくない」

「確かに……

 言われてみれば、パルマとアロンダイトを一緒に使ったことってないかもな」

 

 シンの肩越しに身を乗り出したキラは、彼の手元のコンソールを素早く弄り始める。

 

「ただ、パルマの位置を、掌ではなく甲部分に変更してみたらどうだろう? 

 そこそこ汎用性は増すと思うんだ」

「そうか。

 だけどそんな改造、すぐには……」

「改造でなくとも、すぐに戦場で対応出来ることもあるさ。発想を変えてみて。

 普通の人間は手首を180度回転するのは無理だけど、モビルスーツならこんな風に──

 そうだな、神経接続に余裕を持たせて、関節部の装甲強度を5%ダウンさせることになるけど……

 あとは、アロンダイトとの接続ポイントを変更。内部骨格の連動性も調整を加えて」

 

 キラが指をコンソールに滑らせただけで、シミュレーターの画面上でデスティニーの右腕部が大きく様変わりする。

 手首がぐるりと半回転することによって、掌部分にあったはずのパルマの発射口が手の甲部分へと回っていく。さらに指関節部分にも変更が加わり、内側のみならず外側へも曲げられるようになり──

 その結果、手の甲からパルマの閃光を発射した状態でアロンダイトを構えるデスティニーが、画面内に登場した。

 この間、わずか十秒もない。

 

「す、すげぇ……」

 

 キラの早業に、シンは思わず感嘆のため息をついていた。

 ――こんな真似をあっという間にやってのける人と、俺は戦っていたのか。

 

「ただ、ごめん。

 パルマに関しては今のところ、これ以上が思いつかない。

 この状態でアロンダイトを通常通り扱うには、手首関節の強度を限界まで下げないといけない上に指付近の神経接続でエラーが多発するだろうから、リスクも大きいしね」

「いや、これだけでも十分凄いっスよ……」

「あまりに無茶して手首自体が取れたら、元も子もないよ。パルマ周りの武装を大きく改造するのなら、話は別だけど。

 これ以外に何か可能性があるとすれば、そうだな……

 ミラージュコロイドによる機体の光学残像形成……いわゆる分身機能をどれだけ使えるかだけど」

「分身か……

 うまくいったこと、あまりないんだよなぁ」

「分身それぞれを独立して動かせれば想定以上のポテンシャルが引き出せそうだけど、それを可能にするには出力系統からの改良が必要になりそうだし、そうなるとちょっと時間がかかりそうだね」

「で、出来るんですかそんなこと!? 改良しただけで?」

「うん。例えばほら、こんな感じで」

「す、すげぇ……確かに結構手を入れる必要ありそうだけど、でも、これ思いつけるだけでも凄いですって!」

 

 シンの素直な言葉にも、キラは厳しい表情を崩さず指を動かし続ける。

 

「デスティニーが孕む問題は、それだけじゃない。

 コンセプト自体も、あまり良くない気がする」

「コンセプト? 

 あぁ、最初からあらゆる状況に対応できる機体……って、議長は言ってたけど」

「そうだよね。

 いわばゲームで言うなら、火力・装甲・機動性全てが100。そして、火にも冷気にも竜巻にも電撃にもそこそこ強いってタイプ」

「その考え方なら、ストライクフリーダムは火力120、機動性120、装甲60って感じなんですか?」

「もっと極端。火力140、機動性140、装甲20ってところ」

「え、そんなに!?」

 

 驚くシンをよそに、キラはデスティニーの膨大な戦闘データに素早く目を走らせていた。

 

「だけど仮に、装甲は弱いけど火力は200ぐらいあって、機動性は100以上なんて機体が現れたら、どうする?」

「デスティニーと、どっこいどっこいの素早さってことですか?」

「先手取れなかったら、一撃で終わるよね。仮に攻撃出来たとしても、向こうの方が素早ければ逃げられてしまう。

 だったら、火力と機動性に特化したストライクフリーダムの方が有利になる。

 そこまでの火力も機動性もなくても、ヒートロッドとか相手の弱点を大きく衝ける特殊性を持ったモビルスーツなら、装甲特化の別の機体で守りとおして、隙を衝いて致命傷を与えることも出来る。

 いずれにせよ、そこにデスティニーの出番はなくなってしまうんだ。どんな状況にも対応可能って聞こえはいいけど、逆に言えば、特化した機体と比べるとどんな状況でも中途半端になってしまう。

 これが、オールマイティと言われる機体が使いにくいと言われる所以。

 状況に合わせて機体構成を変えられるインパルスやストライクの方が、まだ使いやすいと思う……これはパイロットの適性によっても違うと思うけどね」

「でも、ポテンシャルの低い量産機なら、デスティニーはいくらでも倒せますよ。

 それにそんな極端な機体、そうそう出てくるはずが……」

「確かに、今はそうだ。今はね。

 だけど、すぐに出てくるさ。これからは量産機であっても、そういう特殊な機体は多く出てくるはず。

 火力100の機体を出すなら、こっちは装甲120の機体。

 装甲120なら、火力を140に。

 じゃあ機動性を150に上げよう、それじゃこっちは火力も機動性も200、ってなって。

 ならオール200の機体。それなら今度はオール300の機体……

 そうやってどんどん、戦いは酷くなっていったんだから」

 

 そう語るキラの横顔が、奇妙に冷たくなったようにシンは感じた。

 まるで、キラ自身を酷く嘲っているようにも見えて──

 

 

 ──この人は一体、どんな目にあってここまで来たんだろう。

 やっぱり俺と同じように色々なものを失って、ここに辿りついたんだろうか。

 キラさんがオギヤカに来た理由は多分SEEDってヤツなんだろうけど、それ以外は俺、何も知らないな。何も知らないで、キラさんを討とうとしてた。

 だけどこのままじゃ、キラさんは……

 どこか、危なっかしい気がする。全部抱え込んで、ぶっ壊れそうな感じだ。

 ちょうど、メサイア戦前のレイみたいな──!! 

 

 

 シンは同時に思い出す。

 あの時、レイ・ザ・バレルが語った言葉を。

 

 

 ──キラ・ヤマトという夢のたった一人を作る資金の為に、俺たちは作られた。

 恐らくは、ただ、出来るという理由だけで。

 

 

 レイの言葉の意味は、シンには今も半分も理解出来ていない。

 ただ、レイがクローンとして生まれた理由がキラにあったこと。

 それが彼の中でキラへの憎悪となって膨張していったことだけは、何となく分かっていた。

 だがそのキラは今、シンの目の前で、レイと同じように何かを抱え込んでいる。

 レイと同じような、今にも崩壊してしまいそうな危うさを。

 

 

「ねぇ、キラさん」

 

 気が付いた時には、シンはキラに自然と声をかけていた。

 

「何か悩みがあるなら、俺で良ければ聞きますよ。

 何も答えられないかも知れないけど、話聞くぐらいなら出来ますから」

「えっ?」

 

 その言葉が本当に意外だったのか、キラは思わず手を止めた。

 菫色の澄んだ目が見開かれ、数回大きく瞬きしながらシンを見つめる。

 

 

「ザフトでの、俺の友達──レイって言うんですけど。

 すごく頭のいい奴だったんだけど、いつも何か悩んでる感じだった。

 いつも一緒にいたのに、俺、あいつ自身のことはあまり聞けなくて。

 あいつから教えられて、助けられてばっかりで……

 レイが何を悩んでいたのか殆ど分からないまま、あいつ、俺の知らないところで逝っちまった。

 だから俺──キラさんには、そうなってほしくない」

 

 

 不器用だが、本心からの言葉。

 しばらく当惑したようにキラはシンをまじまじと見ていたが、やがて少し安心したように微笑んだ。

 

「──ありがとう。

 そう言ってくれるだけで、なんか、気が楽になった気がする」

「でしょ? 

 お互いよく知らないからこそ、話せることもあるって言うし!」

 

 シンがそう言うが早いか、シミュレーターの座席ごしにいきなりレイラが肩に飛びついてきた。

 

「ふふ……シン様は何だかんだでお兄さんですわね~! 

 そしてやっぱり男性同士は、拳を交わしてこそ分かり合えるというものですわ~!」

「え!? 

 ちょ、レイラ、待て、いきなり乗られちゃ重いって!」

「嬉しいのです。シン様とキラ様は、お二人で心を開けば絶対に仲良くなれると確信していましたので!」

「べ、別に、仲良くなったわけじゃ……」

「あらぁ、仲良くしたくはありませんの?」

「そうじゃないけど!」

 

 シンに背中から抱きつきながら、レイラは歓喜を隠さない。

 幼子特有の良い香りがその金髪から漂い、シンはくすぐったさに戸惑ってしまった。

 そんな二人を、しばらくの間キラは優しく眺めていたものの──

 やがて表情を引き締め、シンに向き直る。

 

 

「本当のことを言うと──

 僕は多分、知ってるんだ。君の友達が、どうして亡くなったかを」

「えっ……レイを!?」

「ただ、すごく厳しい話になるし、すぐには信じてもらえないかも知れない。

 僕自身のことにも関わるから、少し覚悟がいる。お互いにね。

 それでもいいなら──話すよ」

 

 

 その時、タイミングを見計らったかのように、エア・ロック脇の通信デバイスが無機質な電子音で鳴りだした。

 

「あら、多分お姉様ですわ。

 お姉様もああ見えて結構シン様とキラ様のこと、心配されていましたので!」

 

 そう言ってレイラはシンの肩からぴょんと飛び降り、素早く駆けだして通信に出る。

 

「お姉様! ちょうど良かったです~

 今、キラ様とシン様が素晴らしく意気投合して、一緒に訓練をなさっているところです。

 はい、ええ、多分デスティニーの改造のお話も進むと思います。キラ様のアイデアも加われば、今度こそデスティニーは無敵に……」

 

 二人をよそに、早口で勝手に話を進めまくるレイラ。

 だがその表情は不意に、石のように固まってしまった。

 

「──え?」

 

 彼女の全身から放散されていた嬉しさの感情が一瞬で掻き消え、そのかわり、言い知れぬ緊張感が小さな背中に漲ってくる。

 

「……分かりました。

 すぐに参ります」

 

 別人のように低い声でそう応答すると、レイラは通信を切ってしまった。

 さすがに訝しく思い、シンは声をかける。

 

「どうしたんだ? 

 フレイから連絡か?」

「え、えぇ……」

 

 しかしすぐにレイラは、悪戯っぽい笑顔で振り返ってみせた。

 エメラルドのスカートを翻し、小さく舌まで出してシンをからかう。

 

「なんでもないですわよー、だ!」

「え、おい」

「お姉様の、いつもの呼び出しですわ。

 私、行って参りますので、お二人は殿方同士、ごゆるりとお寛ぎくださいまし!」

 

 シンが止める間もなく、レイラはエアロックを解除してするりと部屋から出て行ってしまった。

 その様子を、キラもじっと眺めながら呟く。

 

「何があったんだろ……心配だね」

 

 やっぱり、この人もそう思ったのか。

 閉じてしまった扉を眺めながら、シンの胸には得体の知れない不安がよぎっていた。

 

 

 

 





※デスティニーの分身機能に関する記述は劇場版を見てからの後付けです。
ここで触れないのはさすがに不自然すぎると思ったので書き足しました。

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