【完結】機動戦士ガンダムSEED Revelation ~紅蓮のフレイ~   作:kayako

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part9 終わりによって始まる『終焉』

 

 

 連合艦タンバにて待機中だった山神隊のメンバーにも、サイの放送の件はすぐに伝わった。

 その内容はあらかじめ予想されていたこともあり、伊能以下隊員たちの動揺はそこまで激しくもなく、彼らは淡々とそれぞれの任務についていた──

 ウーチバラへ向かう為の。そしてアマミキョを護る為の準備を。

 ブリッジで放送を傍受しながら、山神は艦長席でじっと耳を傾ける。

 その視線の先、ブリッジのメインモニター越しに見えるものは勿論、停泊中のアマミキョ。

 

「……広瀬。風間。真田。竹中。

 無駄にはすまいぞ。お前たちの奮闘も、アーガイル君の決断も」

 

 

《ここまで話せば、アマミキョが南チュウザンによって消されかけた理由は、自ずと理解してもらえると思う。

 実験の証拠を、跡形もなく消滅させる為だ。

 タロミ・チャチャは、世界から戦争をなくす為のツールを作り出す為、アマミキョとティーダを──

 俺たちを、実験に使い。

 最後には、その痕跡全てを消そうとした》

 

 

 

 

 

 

 アマミキョの隣と言ってもいいほど近くに停泊していたミネルバJrにも、サイの放送はしっかり届いていた。

 ブリッジで事務手続きを行なっていたアーサーも、その手助けをしていたアビーも、そしてたまたまブリッジに居合わせたルナマリアも──

 サイによって改めて語られた内容に、衝撃を隠せなかった。

 

「あの船に関わる者たちは皆──踊らされていたというのか」

「ティーダの危険をいち早く察知していたヨダカ・ヤナセ隊長は、正しかったということでしょうか」

 

 悔しげに拳を握りしめるアーサー。誰に問いかけるでもなくぽつりと呟くアビー。

 ルナマリアもまた、自らをかき抱くように両の二の腕をぎゅっと握りしめる。

 

 ──私たちも、アマミキョを巡る実験に巻き込まれていたんだ。

 

 コロニー・ミントンで黙示録の光を初めて見た時の痛みは、まだ覚えている。その痛みが、自分たちミネルバ隊も決して無関係ではないことを彼女に教えていた。

 

 ――何も知らなかったとはいえ、私たちは何度もタロミの計画を止めようとしていたはずなのに。

 それなのにまんまと実験は成功し、多くの仲間があの光の犠牲となってしまった。そしてシンまでもが、彼らに奪われた。

 それもこれも、何もかもがタロミの目論見通りだったというのか。

 

 

《──だけど奇跡的にアマミキョもティーダも復活し、ここに在る。

 これはひとえに、多くの悲劇も困難も乗り越えてきた皆の力だと思っている。

 大切な仲間や大事なものをとてもたくさん失ったけど、それでもみんなはもう一度集まってくれた。

 それに、アマミキョの志を胸に、新たに集ってくれた仲間も大勢いる。

 だが……》

 

 

 

 

 

 

 サイの声のトーンが、やや落ちかける。

 アークエンジェルのブリッジでは、マリューもフラガもノイマンらクルーも、そしてミリアリアも――

 一言も聞き逃すまいと、その声に耳を傾けていた。

 艦長席に座るマリューの背中から、フラガはそっと囁く。

 

「思い出すねぇ。三年前の君を……」

「覚えてるのね。ありがとう」

 

 

《これから俺たちがウーチバラで行なう任務は、単なる救助活動じゃない。

 どうして、セレブレイト・ウェイヴ攻略作戦にアマミキョが引っ張り出されるのか。疑問に思っていたクルーも多いだろう。

 今の説明から、おおかた想像はつくだろうが──

 セレブレイト・ウェイヴに対抗しうる力を持つのが、ティーダであり、アマミキョだから。

 この船は軍属ではないが、恐らくアマミキョが中心となり攻略作戦は組み立てられていくことになるだろう。

 当然、クルーに及ぶ危険は跳ね上がる。

 俺も隊長も、皆を守り本来の任務を遂行する為に全力を尽くす。だが、はっきり言う。

 ──全てを守り切れるとは限らない》

 

 

 だがミリアリアの背後で定時連絡を発信していたメイリンはその時、ふと別の通信が飛び込んできたのに気が付いた。

 不審に思い、サブモニターを開いた瞬間──

 メイリンは思わず、小さな叫びを上げてしまっていた。

 

「か……艦長! 

 すみません。たった今、ニュースで速報が……!!」

 

 

 

 

 

 

《俺は、強くない。

 俺の目の前で、何人も何人も、大事な仲間が亡くなった。

 俺を信じてついてきてくれた仲間を、守り切れなかった。

 絶対に、同じ悲劇は二度と起こさない。無茶でも何でもそう断言するのが、役職もちとしての義務なのだろうけど──

 残念だけど現状、それは出来ないんだ。

 ──だから、誰も皆に強要はしない。

 ウーチバラへ向かうか、地上へ留まるか、アマミキョそのものから降りるか。

 皆が一人一人、自分の意志で決めてほしい。

 誰かの意見に流されたり、状況に惑わされることなく、しっかり自分の心を見定めて決めてくれ。

 その上で、それでもついてきてくれる者がいるなら──

 俺は、心から感謝するよ》

 

 

 ここまで喋り終えて、大きくひとつ息を吐くサイ。

 言うべきことは、出来る限り皆に伝えたはずだ。ずっとのしかかっていた肩の荷が下りたような気がして、サイは何となしに宙を見上げる。

 そんな彼の横から、トニー隊長が補足するように放送に割り込んだ。

 

「我々の知る事実は、伝えられることは全て皆に伝えた。

 これらの情報を元に選ぶのは――諸君、君たちだ。

 そして副隊長の言葉どおり、我々も君たちの命の保障は出来ない。

 だが、これだけは言わせてほしい──」

 

 

 言いながら、トニーはそっとサイの方を見やる。

 恐らく彼の言葉は、サイにも向けられていた。

 

 

「全てを守り切ることは出来ないのが現実だが。

 全てを救い出すために尽力するのが、我々だ。

 それは、ここに集いし皆にも言えること──

 再びアマミキョに乗ると決めたのなら、我々は力の限り、君たちを守る。

 それだけは、約束する」

 

 

 カッコよく決まったと言いたげに、マイクを切った直後にサイに向き直り、ニカッと笑ってみせるトニー。

 それを見ながら、ブリッジ隅で機器の調整を行なっていたヒスイも、少しだけ苦笑していたが──

 ふと手元のモニターを確認した瞬間、彼女の表情は凍り付いてしまった。

 

「た、隊長! サイさん! 

 すぐにモニターを見てください!!」

 

 そんなヒスイの叫びに、サイは一瞬で思考を切り替え、手元のコンソールに右手を走らせた。

 1秒も置かずに、ブリッジのメインモニターに映し出されたものは──

 

 

 

「……フレイ? 

 それにあの子は……レイラ・クルーか?」

 

 

 

 場所がどこなのか判別しづらい、どこぞの執務室のような部屋。

 全体的に洋風に設えてあり、机上の万年筆やダイヤル式電話など、今ではめったに見なくなった古い調度品が確認できる。

 本棚が張り巡らされた壁には窓らしきものは見えず、シャンデリアがこうこうと天井に輝いている。

 画面の中心には渋い茶色の革製ソファが置かれ、そこにレイラ・クルーは座っていた。彼女を護るかのようにソファの後ろに立っているのは勿論、南チュウザンの黒い軍服姿のフレイ・アルスターだ。

 

 レイラは──座らされていたと表現した方が正しいか。

 サイが出会った時の溌剌とした表情は綺麗にかき消え、感情すら失ってしまったように見える。

 何より印象的だったのは、彼女の恰好だ。金髪を結っていたリボンも消え、フレイのそれと形状がよく似た紫の軍服を着せられているレイラの姿は、男か女かも判別が難しくなっていた。

 揃えた足を床にきちんとつくのさえ難しい巨大なソファに無理矢理座らされているのが、なんとも痛々しい。

 無機質なアナウンサーの声が、そこに被さった。

 

 

 

《繰り返します。先ほど北チュウザン経由で入った情報によりますと──

 昨日未明、タロミ・チャチャが死亡したとの発表がありました。

 今流れている映像は、南チュウザン国内で流れているニュース映像です》

 

 

 

「な……なんだって? 

 タロミが、死んだだと!?」

 

 先ほどとはうってかわって、激しく動揺するトニー隊長。

 だが、動揺はサイも同じだった。

 タロミ・チャチャが死んだ? ずっとフレイや俺たちを弄んできて、現人神を名乗りこれから世界中を牛耳ろうとしていたタロミが、死んだ? 

 こんなにも、あっけなく? 

 

 そんなサイの耳に、ヒスイがさらに新たな情報を告げる。

 

「現在出回っているニュースをまとめると、内部犯による暗殺の可能性が高いとのことです。

 つまり……クーデターということでしょうか?」

 

 俺が聞きたいよ。

 そう心の中で毒づきながらも、サイは画面の中のフレイとレイラを凝視する。

 

「もう少し、確かな情報をくれ。でないとこちらも動けない」

「タロミが死んだのなら、セレブレイト・ウェイヴの脅威もなくなったということか? 

 ……いや、そう単純な話にはならんか」

 

 トニーの言葉は単なる予測にすぎなかったが、ラクスの話をミリアリアから聞いていたサイは確信出来た──

 これで終わりなんかじゃない。むしろ、始まってしまったんだ。

 恐らく、背後にいるラクス・クラインの母親が動き出した。内部の犯行という情報が正しいのなら、なおさら。

 画面の中で、フレイ・アルスターが静かに口を開く。

 

 

《この国の父として、柱として、英雄として、我らを導いてきた王──

 タロミ・チャチャは亡くなった。

 だが皆の者、安心してよい。タロミの崇高なる志を継ぐ嫡子・レイラが、ここにいる》

 

 

 フレイはそっとレイラの肩に触れ、促すように彼女を見やった。

 まるで機械人形のように、瞳を上げるレイラ。

 声からも少女らしさは消え、そのかわり、少年を思わせるような凛とした声が響き始めた。

 

 

《肉体が消えようとも、その志は決して死ぬことはない。

 神も人も、その点は同じです。

 わたくしはタロミの意思のままに、神の御名のもと、この国を導いていく所存。

 第三王妃たるフレイ・アルスターも、一層力を尽くしてくれること、約束してくれました。

 どうか皆、わたくしに力を──》

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~~~~~~

 

 次回予告

 

 旅立ったアマミキョの前に立ちはだかるもの

 それはオギヤカの脅威だけではなかった

 ティーダとアマミキョの進化はやがて

 少年の中に悪魔を生み出す

 

 

 次回、機動戦士ガンダムSEED Revelation

「女神降臨」

 

 誰を守り、誰に牙を剥く。エターナル! 

 

 

 

 

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