【完結】機動戦士ガンダムSEED Revelation ~紅蓮のフレイ~   作:kayako

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part8 斬り込み隊長、フレイ

 

 

 

 コロニー内部では、作業用M1アストレイによる太陽光ブロック修復作業が続いていた。

 アマミキョからも、数台のミストラルが出動していた──作業用アームを装備したモビルアーマーである。

 ミストラル自体は地球連合の開発だが、今使用されているのはムジカノーヴォ社長がアマミキョ用に購入したものだ。7割方が、ジャンク屋から買い取り修復したものであるが。

 

 コロニー内を飛行中のアマミキョは、数隻の救助艇を牽引しつつ、外装してあった救助用ブロックを切り離して地上へ降ろし、残されていた被害者の救出にあたっていた。

 勿論、チュウザン・オーブ合同軍と協力体制をとりつつの作業である。

 

 

 修復作業を斜め上に見つつ、ディアッカ・エルスマンのザクウォーリアが、港口からウーチバラに進入してきた。

 彼はコロニーの外側から、ティーダの光を目撃していた。イザークとシホの合流予想地点付近で光を見たディアッカは彼らの危機を察知し、他のゲイツRを全てボルテールに帰投させ、単身で直接ウーチバラへ向かったのである。

 宇宙を照らす蛍光灯のようなコロニー。その内側から爆発したかのような光に、さすがの彼も肝を潰したのだ。

 まだ燻り続ける黒煙が、モニターごしに彼の視界を包む。

 

「早速の作業、お疲れさん」

 

 濁る空気の向こうにアマミキョの船体を発見し、ディアッカは呟いた。

 イザーク機を探索しつつ、発光信号を出す。

 

 

 

 

 

 

「助けてくれたのはザフトだろ」「じゃあ、黒いジンは何だ?」

「ミサイルまで積んで、冗談じゃないわよ。最初からコロニー壊す気だったんでしょ」

「ウィンダムだって言えたことか、中立のテレビ局を空襲する馬鹿がどこにいるよ」

 

 襲撃をかけたのが連合側かザフト側かで、再び一触即発状態になるアマミキョブリッジ。

 マイティが不安げに、サイの出て行った方を見やる。

 

「それに、さっき彼が言ってた、条約違反の戦艦って……」

 

 さらに、ディックが嫌味ったらしく続ける。

 

「連合もやってくれるよなぁ! 

 おみそれしやした、ナチュラルにも出来る奴はいるってねぇ」

 

 社長は一言、注意しただけだ。「そういう言い方、嫌いじゃないけど空気読みなさいね」

 操舵席を陣取ったオサキも、苛立ちを隠さない。

 

「にしても……

 トニー隊長にサイに、ブリッジ出る奴多すぎだろ! 敵殲滅したわけでもねぇのに」

 

 そんな彼女に、副隊長がぼそりと呟いた。

 

「船内無線は傍受されると何べん言えば分かる? 

 この状況じゃ、口頭での連絡が一番安全だ。今頃走りまわっとるよ」

「でも副隊長、カズイにあの女は? アムルとか言ったっけ。 

 他にもいただろうが、ここから逃げた奴」

 

 

 

 ――その時突如、カタパルト直通のエレベータが開いた。

 全員の上から降ってくる、潔い声。

 

 

 

「愚か者どもが……! 

 それがアマミキョを委任された者の姿かっ」

 

 

 ブリッジ中の空気が、その声により水を打ったように静かになる。

 そこにいたのは、紅い髪の少女──ストライク・アフロディーテのパイロット、フレイ・アルスター。

 全員が目を見張る中、彼女は社長と副隊長のもとへつかつかと歩み寄っていった。

 

「社長、一概にザフトだの連合だのと決めつけるのは危険すぎます。

 どちらも一枚岩ではありません、特に連合は現在、ほぼ分裂状態に……」

 

 その威勢にも動じることなく、社長はフレイのパイロットスーツ姿を惚れ惚れとして眺める。

 

「いやはや、素晴らしい戦いだったよ! アルスター隊長。

 貴女の言うことももっともだ。チュウザン本国の状況から見ても、連合の末端がいかに腐ってるか知れようってもんだしね。

 連合がブルーコスモスの完全支配下だったら、僕は今頃絞首刑さ」

 

 副隊長がそれに応えるように、含み笑いを浮かべた。

 

「大型の組織ではよくある末期症状だ。大西洋にユーラシア、南アフリカに我らが東アジア……

 星をひとつに纏めようって魂胆が、そもそものアホの元でな」

 

 フレイはブリッジ中に敢えて聞こえるように言い放つ。

 

「恐らく、狙われたのはアマミキョの装備でしょう。民間の救助船とはいえ、モルゲンレーテのイズモ級、その改造型です。

 それに敵は、PS装甲パーツ狙いの単なる脱走兵どもでもない」

「さっきの実戦で確信した?」

 

 フレイは静かに頷いた。

 

「連合の特殊部隊という情報もあります。

 ミラージュコロイドを使用した艦、そしてナチュラルとは思えぬ運動能力を備えた兵士を実戦配備している部隊

 ──これは噂ではありません、社長。

 現に、先ほどの戦闘で現れたウィンダムとダークダガーLの動作は、その情報の確実性を立証しています」

「ヤキンやオノゴロでもいたっていう、薬漬けの子供のことかい?」

 

 そんな社長の疑問に、副隊長はぶすっと呟いた。

 

「明らかにバージョンアップしとるがな。持続時間が違う」

 

 その会話に、ブリッジクルーたちが不安を露にしてフレイたちを眺め、コソコソとざわめいていた

 ――が、フレイはひと睨みで彼らの口を閉ざさせる。

 彼女の言葉一つ一つが、この船の行く処全て、戦場になりうる可能性があるということを示していた。

 

「ザフト側も似たようなもの──

 今でこそ表面的には穏健派のデュランダル議長が仕切っていますが、彼にしても何を考えているやら。

 あの白面、気に喰わぬ」

 

 皮肉たっぷりの少女の言動に、リンドー副隊長は笑う。

 

「同族嫌悪かねぇ、アルスター嬢? それにザラ派の残党も気になるわな。

 可能性は幾らでも考えられるってこった」

 

 それを聞き流しつつ、社長はきまり悪げに頭を掻いた。そして、何故か呑気そうに呟く。

 

「マスコミ工作は失敗だったかなぁ……

 中立国の緊急救難船の存在を大々的にアピールしておきゃ、逆にテロは起こりにくいと読んだんだがな。アスハ代表のバックアップもあることだし……

 だが逆に、テロリストを大分引き寄せちまったかぁ~」

「社長、ご自分のコロニー一つを賭けに使用しないで頂きたい。

 最近のテロリストどもは、世間体など気にしない下賤が多い……逆に、残虐行為を敢えて見せつけることにより、脅威を示すパターンが増加する一方です」

 

 フレイは腰に片手を当てて堂々と言い切る。

 紅いパイロットスーツにきゅっと締められた腰まわりの線は、クルーの男たちの目を惑わせていた。

 

「現場にマスメディアがいりゃ、余計に好都合ってわけな」

 

 副隊長が歯の間から息を出し入れし、唾をちゅっちゅと鳴らした。苛立った時の彼の癖だが、勿論この癖はクルーのほぼ全員から嫌われている。

 フレイは付近のモニターを自ら操作した。カタパルトで整備中のティーダとアフロディーテの姿が映し出されるのを確認しながら、彼女は会話を続ける。

 

「民衆を押さえつける暴力行為は、時に緊急避難として必要になる状況もあります──

 しかし長続きはしない。敵がザフトにしろ連合にしろ、その後を考えているとは思えません。

 勿論、双方示し合わせての示威行動ということも考えられますが」

「どちらでもないとも言えるよ、身内かも。

 アマクサ組斬り込み隊長としてはどう?」

 

 社長の目が、一瞬鋭く光りフレイを見据えた。

 が、彼女はモニターを眺めたままそっけなく答えるだけだ。

 

「いずれも推測の域を出ませんね。

 それより今後の敵の動向です。次のポイントで下船されると聞きましたが、社長?」

「L4のコロニー、ミントン2だ。

 その隣のミントン1で、プラントとの事業提携の交渉予定でね……コーディネイターの技術者たちの引き抜きも考えてる。

 オーブからはどうも、コーディネイターの技術者が流出してるらしいじゃない?」

 

 そこで若干興味を示したオサキが話に割り込んだ。

 

「ミントン2? 

 例の、太陽光ブロック半壊コロニーか」

 

 フレイは無表情のまま、オサキには答えず皮肉まじりに呟く。

 

「色々とお忙しい身、お察ししますが――

 場合によっては、予定航路の変更もやむを得ません」

 

 瞳はじっとモニターの中のティーダ、そのコックピットに取りつく整備士を見据えている。

 やがて白いノーマルスーツの整備士が、モニターごしにフレイに合図を送ってきた。

 両腕を大きく交差させ、×印を作っている。

 

「失礼。

 やはり、ティーダに問題が発生しています」

 

 フレイはさっと社長のもとを飛びのき、エレベータに向かう。

 その時、ディックが外部からの信号をキャッチした。

 

「接近中のザクウォーリアより発光信号。着船要請が出ていますが」

「許可しろ。それからザクファントムとゲイツRを収容ずみと伝えておけ」

 

 リンドー副隊長が指示を出している間、フレイは素早くブリッジクルーの表情を一人一人横目で観察していた。

 フレイがその場から離れた隙に、クルーたちはもう騒ぎ出している。

 

「――民間人とはいえ、何たる現状認知の弱さだ」

 

 その呟きに気づいた者は、誰もいない。

 

 

 

 

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