【完結】機動戦士ガンダムSEED Revelation ~紅蓮のフレイ~   作:kayako

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PHASE-46 生者の定義
part1 仕組まれたカップル


 

 

 アマミキョブリッジの真正面に出現した、紅の機体──ストライクフリーダム・ルージュ。

 必死でその気配を追っていたティーダZがそこへ掴みかかり、どうにかアマミキョから引き剥がしにかかった。

 港で交錯する、ナオトとチグサの叫び。

 

《やめるんだ、マユ! 

 そこにいるんだろ? いい加減、僕を思い出してくれよ!!》

《相変わらずうるさいねぇ、このガキ! 

 少し黙んな! あんたの声聞くと、頭痛くなるんだ!!》

 

 ナオトの呼びかけもチグサは当然拒絶し、力任せにティーダZを蹴り上げた。

 まともにその蹴りを食らったティーダZは、低重力の中で大きく突き飛ばされてしまう。

 その隙にルージュは再び、アマミキョブリッジにビームライフルを向ける──

 銃口は容赦なく、サイに真っすぐ向けられていた。

 

《出ておいで~、サイ・アーガイル♪》

 

 スピーカーから響いた声は何故か、幼い子供が懸命に色気を出そうとでもしているようで、若干上ずっている。

 そこにはほんの僅かに、舌なめずりまで混ざっていた。

 

《あんたはもう、ただのナチュラルじゃないんだから。

 もう、何も知らない一般人ヅラなんて、できないよ。この、化け物!!》

 

 その言葉の意味を、サイは半分も理解出来ない。

 

 ──化け物? 俺が? 

 もしかして俺が感じているこの、奇妙な感覚のことを言っているのか? 

 

《とぼけちゃって……

 もう分かってんでしょ? あんたが、アマミキョのハーモニクスシステム。その中心だってことぐらい!!》

 

 チグサは一体、何を言い出した。

 アマミキョのハーモニクスシステム──人の精神の境界を一時的に歪めそのエネルギーを収束し、物理的な力に変換するシステムが、そう呼ばれているのか。

 ずっと正体不明だった、このアマミキョのブラックボックスが。

 しかもその中心が、俺だと? 

 

 ルージュのカメラアイを睨みつけながら、サイはじっと唇を噛む。

 皆を翻弄し続けるこのシステムの正体が分かるなら、今すぐにでも飛び出していきたい気分だったが──状況は容赦なく変化し続ける。

 突如モニターに映しだされる、2機のウィンダム。

 同時に飛び込んできたものは、山神隊・霧山少尉と時澤軍曹の声だった。

 

《やめなさい! 

 アマミキョに、手は出させない!!》

《ストライクフリーダムだろうと、あのオールレンジ攻撃さえなければ戦える! 

 下がれ、アマミキョ!!》

 

 2機のウィンダムは交互に折り重なるようにしながら、ルージュの直上からビームサーベルで斬りかかる。

 素早く機体を一回転させてそれを躱しながら、アマミキョから一旦離れて飛翔するルージュ。

 

《ちっ……しゃらくさい。

 今は、殺す気なんかないっつーの!!》

 

 などと言いながら、それでもルージュは懐からシュペールラケルタ・ビームサーベルを抜き放つ。

 それは本来のストライクフリーダムの持つ武装とほぼ同じ、紅に輝く二振りの光刃だった。

 サーベルの閃光をものともせず躱し続けながら、ほんの数瞬でウィンダム──

 それも、『天海』のロゴが肩部に刻まれた時澤機の懐に飛び込んでいく。

 

《アタシが欲しいのは、サイなんだ。

 オッサンはどいてな!》

《なっ……!?》

 

 予想外に敏捷なルージュの動きに、さすがの時澤もついていけなかったのか。

 チグサのせせら笑いと同時に――

 ウィンダムはサーベルを構えた右腕部と、蹴りを叩き込もうとしていた左脚部をも切断されてしまった。

 

《ぐぅっ……!!》

《時澤軍曹!?》

 

 切断部からの小爆発に耐える時澤機に、霧山機が接近する。

 恐らく負傷したであろう時澤を気遣いながら、霧山は時澤機を守るようにルージュの眼前に立ちはだかった。

 

《あれだけ散々暴れておいて、今更殺す気がないとか……

 信用出来るわけがないでしょう! 

 降りてきなさい。貴方たちの真意を確かめる!》

 

 冷静ではあるが怒りに満ちた霧山の言葉が、港に響く。

 それでもさすがに子供を殺めたくはないのか、彼女はチグサに投降を促した。

 勿論、それに応じるようなチグサではなかったが。

 

《ったく……アタマ固いなぁ。

 アタシの説教より、自分と後ろのオッサンの心配したらっ?!》

 

 ルージュのカメラアイが二、三度、不規則に明滅する。挑発するかのように──

 そして次の瞬間コロニーの壁を大きく蹴り、再び二刃のビームサーベルを構えて霧山機に襲いかかった。

 重量をまるで感じさせないその動き。霧山も咄嗟の判断が出来ず、サーベルを構えたままほぼ棒立ちに近い状況に陥ってしまう。

 いくら鍛え抜かれた連合軍人とはいえ、彼女も時澤もナチュラルだ。元々エクステンデッドとして育てられたチグサとは、その反応速度には雲泥の差がある。

 しかもチグサの身体自体は、コーディネイターを模して作られた人間(カーボンヒューマン)たるマユ・アスカのものだ。チグサとマユの二人がお互い一人の戦士として『適合』してしまえば、ザフトの赤服以上の脅威となるのは想像にかたくない。

 

 状況を見ているしかない自分に歯噛みしながら、サイは火器管制用モニターへと視線を走らせる。隙あらば援護可能か確認する為でもあったが──

 その時視界の隅で、何かが白い燕の如く港へ飛び込んできた。

 

 

《いい加減にしなさいよ! 

 もう、あんたには暴れさせないんだから!!》

 

 

 それは紛れもなく、ルナマリアの怒声。

 よく響くその声がアマミキョブリッジに反響した時にはもう、彼女のフォースインパルスはルージュに真横から強引に食らいついていた。

 加速と重量を利用して、一気にインパルスはルージュを港口内壁に叩きつける。衝撃で港全体が揺さぶられ、金属片を含んだ砂煙がゆっくりと舞い上がった。

 さすがのチグサもこの奇襲は意外だったのか、軽い悲鳴を上げる。

 

《あぅっ……インパルス!? 

 あんた、シン兄を連れ戻しに行ったんじゃないの!?》

《あんたをどうにかしてから、そうさせてもらうわよ! 

 湖の時はよくも、酷い目に遭わせてくれたわね!!》

 

 ルージュの頭部を掴んだまま、強引に機体胸部──コクピット付近に思いきり拳を叩き込むインパルス。

 フェイズシフトにより機体そのものにダメージが入らずとも、その衝撃は強烈な振動となって中のパイロットに伝わっていく。

 

《ちょ、ちょっと待っ……あぁっ!!》

 

 

 

 

 

 

PHASE-46 生者の定義

 

 

 

 

 

 

 響きわたるチグサの悲鳴も無視し、二度、三度と拳を叩きつけながら──

 ルナマリアはアマミキョとティーダ、そして連合の二機を確認した。

 間に合った。どうやら、アマミキョもティーダも無傷。ウィンダムは一機損傷してはいるが、もう一機がそれを庇いながら離脱しようとしている。

 インパルスに向かって明滅する、ウィンダムのカメラアイ。ルナマリアにはそれが、礼のようにも見えた。

 

 ──そうか。

 何だかんだで私、連合と一緒に戦ってるんだ。

 

 そんな状況に不思議さを覚えながらも、インパルスもまたカメラアイによる礼を返す。

 ウィンダム2機が飛び去っていくのを確認しながらも、インパルスは組み伏せたルージュから離れなかった。

 ルージュは懸命にビームサーベルをインパルスに刺そうとするが、両腕部も押さえつけられているせいでうまくいかない。

 

 ──中のパイロットを、何としてでも引きずり出す。

 そうすれば、きっとシンも……!! 

 

 容赦なくインパルスは腰部から対装甲ナイフを抜き放つと、ルージュのコクピットめがけて大きく振りかぶる──

 しかしその瞬間ルージュのスピーカーから響いたものは、皮肉まじりのチグサの言葉。

 

 

《へぇ……さすが、『偽姉ちゃん』。

 シン兄が接近してるってのに、無視してアタシに殴りかかるっていうね。

 そんなんじゃ、結局シン兄は戻ってこないよ~?》

 

 

 その言葉に、思わず動きを止めてしまうインパルス。

 口調は違えど、ルナマリアには確かにその単語に覚えがあった。

 あの言葉を聞いたのは、奇しくもここ、ミントンではなかったか。

 

 

 ──えぇ? これがお兄ちゃんとの『適合者』なの? 

 ──なぁんだ。私の『お姉ちゃん』になるには、弱すぎだなー。

 ──さよなら、偽姉ちゃん。

 

 

《へへ。ちゃーんと覚えてるみたいじゃん? マユの言葉。

 この際だから言っちゃうけど、ルナマリア・ホーク。あんたさ……

 今でこそシン兄の彼女ヅラしてるけど、それ、所詮は元議長の差し金だからね?》

 

 何だ。組み伏せられていながら、この子供は一体何を言い出した? 

 戸惑うルナマリアの胸に、チグサはさらに言葉の刃を刺していく。

 

《喜びなよ。あんた元々、シン兄とは遺伝子的に相性良かったんだ。

 子供を問題なく生めるから、プラントの婚姻統制にも引っかからない。

 シン兄の彼女になるには、最適の人物だったってこと》

「何を言いたいの……何を!」

 

 こちらが有利な状況でありながら、ルナマリアの声は震えだしていた。

 そんな彼女に、あどけない声が容赦なく襲いかかる。

 

《元議長──デュランダルは、シン兄の才能を買ってたけど。

 同時に、その遺伝子を問題なく次の世代に受け継がせることも重要視してた。

 だからシン兄の同級生兼同僚として、あんたが選ばれたんだ。射撃の才能がクソなだけじゃなく、大した戦闘能力もないあんたをね。

 それも出来うる限り統制という形を取らずに、自然にしようとしたんだよ──デュランダルは。

 あんたとシン兄は、何もなくてもくっつく運命でしたってカンジにしたかったのさ。

 ははっ……そうするように仕向けた時点で、仕組まれたカップルだっつーのにね!》

 

 動けないままの両機の間に流れる、チグサのせせら笑い。

 

《要は、ね? 

 最初から、デュランダルの掌の上だったんだよ。あんたとシン兄の間の、愛ってヤツはさ。

 だからシン兄の妹にあたるマユにとっちゃ、あんたは『偽』の『姉』だった。

 しかもご丁寧にデュランダルはさ、シンとあんたを対等な関係にする為に、あんたには不釣り合いな赤服にまで無理矢理仕立てあげて。

 不得手な射撃用機体をあんたに宛がうことで、シンにあんたを守らせてみようとさえしてたみたいだよ? あんたが下手すぎて、うまく行かなかったっぽいけど。

 適合者同士を出来るだけ自然な形で出会わせる為に、結構苦心してたみたいだね~

 そこまでやって、自然も何もあったもんじゃないけどさ!》

「……だから、何が言いたいのよ。

 そんな出鱈目で人を惑わせて、何が楽しいの?」

 

 操縦桿を握りしめながら、ルナマリアの頬を汗が伝う。

 シンと私の出会いが、最初から仕組まれていた? デュランダル議長に? 

 

《出鱈目なんかじゃないさ。

 アマクサ組の情報網がハンパないこと、知ってるでしょ~? ザフトのデータベース覗き見ぐらい、お茶の子さいさいだよ~? 

 戦場で生まれる、戦友同士の熱い愛。演出家デュランダルが目指してたのは、そんなトコじゃん? 

 あくまで実験的なケースだから、シン兄はともかくあんたは別に、途中で死んでもしょーがない!てな感じでデュランダルは扱ってたみたいだけどね~

 あんたに何かあっても、あんたの妹っていう保険もあるし。メイリンだっけ? 一応その子も、シン兄との適性がないわけじゃないから。

 姉妹揃ってのミネルバ配属が認められたのも、そーいう事情あるらしいよ~? ははっ》

 

 手だけではなく、歯までガタガタと怒りで震えだす。

 すると何か。私が今まで、自分の実力で赤服の地位を勝ち取ったと思っていたのは。

 自分の力で、インパルスを動かしてきたと思っていたのは。

 ──心からシンを労わり、痛みを分かち合いたい。そう思ってきたのは──

 

《それでもシン兄を奪いたいってんなら、好きにすりゃいいよ。

 だけど、いいの? そんな愛で。

 それって明らかに、人工的に作られた感情じゃん!》

 

 そんなチグサの罵声が響くと同時に、仕返しとばかりにインパルスの胸部がルージュに思いきり蹴り上げられた。

 

「ぐぅ……っ!!」

 

 思わぬ衝撃に完全に隙を衝かれ、一瞬機体のコントロールを失うルナマリア。

 同時にインパルスも大きく後方へ吹っ飛ばされ、低重力の中で力なく浮遊してしまっていた。

 

《てゆーか、あんたのことなんか別にどーでもいいんだけどさ……

 さすがにこりゃ、ちょっと不利っぽいかな?》

 

 その時ルージュが見上げたものは、宙域から港へ続々と突入してくるウィンダムの軍勢。

 殆どがホウジョウから出撃した機体だった。

 それを確認したのか、チグサの舌打ちがその場に反響する。

 

《かわいそーだし、ここで暴れるのはやめとこーかな。

 またシン兄のお説教はメンドくさいし。

 だけど──》

 

 そんな言葉と同時に、ルージュの機体が胸部付近から消失を始める。

 まるで装甲の紅が光の粒子に変化していくように、透明になっていく機体──

 勿論それは、ミラージュコロイドを使用したステルスシステムの発動だった。

 

 





※当然ですが、本パートで書かれたシンとルナマリアの設定(デュランダルによって仕組まれた云々)は原作にはありませんので、その点よろしくお願いいたします。
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