【完結】機動戦士ガンダムSEED Revelation ~紅蓮のフレイ~   作:kayako

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part4 ガナーザク、まさかの救援!

 

 

 ルナマリアは再びインパルスを駆り、閃光を巧みに避けながらカオスγの懐を目指す。

 

 ──元議長の目論見だろうと、私だって赤服。

 あんたみたいな卑怯者になんか、絶対に負けないんだから! 

 

 次から次へとモニターに映し出される劫火をものともせず、ルナマリアの意地を乗せたインパルスは宙域を突っ切り、盾ごとカオスγに体当たりを食らわせた。

 同時に通信回線を開きながら、怒鳴る。

 

「やめなさい! 

 私たちはラクス・クライン救出と、セレブレイトウェイヴ阻止の部隊。

 援軍のつもりなら、作戦行動の邪魔はしないで!」

 

 敢えてビームライフルもビームサーベルも使わず、機体のみでカオスγを止めに行ったルナマリア。

 しかしそんな彼女をせせら笑うように、アムル・ホウナの声が回線から響く。

 

《ルナマリア・ホーク……貴方ね。

 そちらこそ、邪魔はしないでもらいたいわね。私たちの目的もまた、セレブレイトウェイヴの破壊。

 それを妨害しようとするなら、誰だろうと討つ!》

「デスティニーはザフトの機体よ! それでも!?」

《当たり前でしょ。

 あいつはザフトを裏切って、あの神経兵器を守ろうとしてるのよ。

 討たない理由がない!》

 

 食らいついてきたインパルスを強引に脚部で蹴り飛ばすと、カオスγは再び両肩部に搭載された機動兵装ポッドから、朱に染まった光弾・ファイヤーフライ誘導ミサイルを何十発となくまとめて撃ち放った──

 放射状に撃たれた閃光はデスティニーのみならず、インパルスまでも狙っている。

 その光芒が目指す方向を見ただけで、ルナマリアは直感した──

 

 この女、隙あらば私まで殺す気だ。

 恐らくアマミキョも、アークエンジェルも、ミネルバJrも!! 

 

《ルナ、逃げろ!》

 

 アカツキを拘束したまま動けないデスティニーから響く、シンの声。

 盾でどうにかファイヤーフライを防ぎながらも、ルナマリアはその衝撃に耐えるだけで精一杯だ。

 必死で歯を食いしばりながら顔を上げると──

 モニターに大写しになっていたのは、疾風の如く眼前に現れた、カオスγ。

 猛禽類の嘴にも似たメインアーマーが、ルナマリア自身をも貫かんと迫っていた。

 次の瞬間左側から来たものは、全身の骨を砕かんばかりの衝撃。

 

「──あぁっ!!」

 

 単純に、カオスγは邪魔とばかりにインパルスを平手打ちの要領で殴り飛ばしただけなのだが、そのパワーだけでルナマリアはゼロコンマ数秒、気絶してしまっていた。

 相手に対してほぼ逆さに跳ね飛ばされてしまったインパルスの中、何とか顔を上げると──

 

 確認出来たものは、真っすぐにデスティニーに向かっていくカオスγ。

 その横からインパルスもデスティニーも無視して、宙域を飛んでいくグフ・イグナイテッド。それに追従するザクウォーリアが3機。

 恐らくヨダカが乗っていると思われる黒塗りのグフは、明らかにアークエンジェルに狙いを定めていた。

 

「駄目!! 

 メイリン、逃げてぇ!!」

 

 アークエンジェルには今でも蟠りがある。それはルナマリアも、シンと同じだ。

 しかし今、あの船にはメイリンがいる。

 ルナマリアのその叫びも虚しく──

 無防備のアークエンジェルに、グフの両前腕から放たれた4連装ビームガンの光が直撃した。

 

 

 

 

 

 

 ビームの直撃を受け、大きく揺さぶられるアークエンジェルブリッジ。

 マリューやミリアリアたちが必死で衝撃に耐える中、チャンドラとメイリンの叫びが交互に響く。

 

「バリアント2番、沈黙! 右舷5、6番デッキの通信、遮断されました!」

「右舷後方よりザフト機4機、さらに接近! 

 グフイグナイテッド1に、ザクウォーリア3です!」

 そんな中でもマリューは艦長席にしがみつくようになりながら、ノイマンに尋ねる。

「デブリの影に隠れられる!?」

「無理です、間に合いません!」

 

 操舵士たるノイマンは目にも止まらぬほどの舵さばきで船をコントロールし、着弾を最小限に回避していた。しかし、それでも限界はある。

 眼前のデスティニーとアカツキを睨みながら、マリューは歯噛みを隠せない。

 これでは最早、アカツキの奪取どころではない。自分たちまでやられてしまう。

 そんな中ミリアリアは必死の通信を続けながら、ふと何かに気づいたように顔を上げた。

 

「でも──

 何故今、ザフトがアークエンジェルを攻撃するの? 

 メサイア戦までなら分かる。だけど……」

 

 そんな疑問に答えるかのように、彼女の背後でオペレートを続けていたメイリンが呟いた。

 

「多分あれは、デュランダル元議長派だと思います。

 彼らはクライン派と真っ向から対立して、今もプラント評議会を混乱させている。

 彼らは未だにディスティニープランを信じてて、ザフト内では過激派になりつつあるんです」

 

 そんなメイリンの言葉に、マリューが反論する。

 

「しかし、セレブレイトウェイヴの阻止という点では、ザフト内部で意見は一致しているはずでしょう? 

 いかに今のザフトが混乱していようと、アークエンジェルまでを攻撃する理由が……」

「でも、作戦に乗じてクライン派の勢力を削ぎ落そうとする元議長派が、少なからず存在するのも事実なんです。

 中にはラクスさんの暗殺を狙う者さえいるらしいです」

 

 比較的冷静に情報を提示するメイリン。

 こう見えて、彼女の情報収集および解析能力は天才的だ。ザフトのデータベースにハッキングする程度のことは今でも趣味感覚でやっている。

 つまり、メイリンの示した情報に間違いはない――

 そう確信したミリアリアは舌打ちを隠せない。

 

「そうなれば──

 これを機にラクスさんの救出失敗と嘯いて、彼女を抹殺。

 ついでに邪魔なアークエンジェルも、作戦の巻き添えで消すってわけか。

 デュランダル派のやりそうなことね……っ!!」

 

 ミリアリアの言葉が終わらぬうちに、再び縦に大きく揺さぶられるブリッジ。

 チャンドラの怒号。

 

「右舷後方に被弾、損害不明! 

 ヘルダート4番破損! 5番倉庫に火災発生!!」

 

 彼の声と共に、ブリッジのメインモニターの脇に映し出されている損傷モニターが次々に紅に染まっていく。

 こんな被害はメサイア戦時は勿論、3年前のヤキン・ドゥーエですらなかったかも知れない。

 だが構わず、マリューは指示を続けた。

 

「これ以上、好きにさせるものですか。弾幕を張ってその隙に、アカツキを取り戻す! 

 バリアント5番6番、及びヘルダート、撃てぇっ!!」

 

 真上から雨あられと火線を撃ち込んでくるザフト機。必死で抗うアークエンジェルから、無数の光条が発射されていく。

 それでもさらに執拗なザフト機の攻撃は続き、集中攻撃を食らっていた右舷後方、バリアントの一部で大爆発が起こった。

 それは、インパルスと交戦中だったはずのカオスγが放った、ファイアーフライ誘導ミサイル。大量にばら撒かれたうちの数発。

 同時に、艦全体が大きく揺さぶられる。

 

「いやあぁ! アスランさん!」

 

 思わず両腕で頭を抱え、コンソールパネルに突っ伏すメイリン。

 同じく伏せてしまいたい衝動をどうにか抑えながら、ミリアリアはオペレートを続ける。その額からは、玉のような冷や汗が次々に噴き出していた。

 

 ──私だって、誰かの助けが欲しい。

 

 モニターの中で急速に接近してくる、ザクウォーリア3機。

 どれほど弾幕を張ろうと悠々と潜り抜け、こちらを狙ってくる。

 

 ──アークエンジェルに乗れば、力を手に入れられる。

 そう思ったから、私はサイの手を振り払った。もう二度と、自分の無力を噛みしめたくはなかったから。

 でも結局それは、またキラの力を利用するってことだった。キラが自分の力にどれだけ苦しめられたか、分かっていたはずなのに。

 アークエンジェルに乗って、みんなを助けたい──って、サイには宣言したけど。

 結局それは、欺瞞でしかなかった。

 だから多分、今の状況は、私への罰なのね。

 ごめんなさい、トール。私、結局──

 

 

 しかし、ザクウォーリアのうちの1機が、直上からブリッジ付近へと狙いを定めたその瞬間

 ――ミリアリアの手元でオープンになったままの回線から、突然一つの声が響き渡った。

 

 

《伏せてろ、アークエンジェル!》

 

 

 怒号にも近いその声に、ミリアリアは反射的に衝撃に備えて姿勢を低くする。

 逆にメイリンは少しだけ顔を上げ、不思議そうにその声の出処を確かめていた。

 

「誰? 

 アスランさんじゃ……ない?」

 

 直後にブリッジを揺さぶる衝撃。メインモニターに溢れる爆光。

 クルーたちの悲鳴の中で、ミリアリアは手探りで状況を確認する。

 

「これは……!?」

 

 ブリッジのすぐ上まで迫っていたザクウォーリアが、一撃のもとにその両腕ごと、ビームライフルを爆砕されていた。

 すぐにミリアリアはコンソールパネルを手繰り、モニターに目を凝らす。

 メイリンの叫び。

 

「ざ……ザクファントムが1機、インディゴマーク23ベータより接近! 

 回線と光学映像、開きます!」

 

 同時にメインモニターに映し出されたものは──

 

 黒灰色に彩られ、高エネルギー長射程ビーム砲オルトロスを腰だめに構えた、ガナーウィザード装備のザクファントム。

 間違いない。アークエンジェルを襲ったザクウォーリアを撃ったのは、「彼」だった。

 

 

《ふいー、何とか間に合ったみたいだな。

 生きてるか? アークエンジェルよぉ!》

 

 

 ブリッジに響く、呑気だがどこか艶を感じさせる低音。

 あまりに懐かしく感じるその声に、ミリアリアは思わず感情を露わにしかけながらも──

 努めて冷静に対応する。

 

「こ……こちらアークエンジェル。

 救援、感謝します」

 

 そんな彼女の言葉に、ザクファントムパイロットは明らかに動揺を見せた。

 

《えっ? 

 み、ミリアリア!? お前っ、やっぱりまだそこに乗って……!?》

 

 ザクファントムの背後からは、次々に援軍が到着しているのが確認出来る。そのうち1機は、純白のグフイグナイテッド──

 助かったわけではないが、状況は少しだけ有利になった。

 思わず肩の力が抜けそうになりながらも、ミリアリアは精一杯の緊張感を声にこめる。

 

「戦闘はまだ終わってない! 

 油断しないで、ディアッカ・エルスマン!!」

 

 

 

 

 

 

 緊急通信を受け、母艦たるアークエンジェルの元へ急ぎ舞い戻ったアスラン。

 無数のデブリを挟んでのキラとの撃ち合いは延々と続いていたが、やむなく中断せざるを得なかった。

 ストライクフリーダムを背後に残すのはあまりにも不甲斐なくはあったが、母艦が沈められる寸前とあらばやむを得ない。

 それに──逃げようとする相手を撃つキラではない。

 その確信があったからこそ、アスランは敢えてキラに背を向けた。

 スラスターを全開にし、宙域を切り裂くが如く飛んでいくインフィニットジャスティス。数秒経過しても、やはりフリーダムは追ってこない。

 

 ──そうか。キラ、お前は……

 どこまで行っても、その戦い方は変えないつもりか。

 

 深い失望の中にどこか安堵を覚えつつも、アスランは前方モニターを確認する。そして、思わず息を飲んだ。

 

「──!!」

 

 この距離からでも、破壊されかけたアークエンジェルが視認出来た。そして、デスティニーにワイヤーで強引に捕縛されているアカツキも。

 オーブの獅子たる機体の胸部は見事に切り裂かれ、花火にも似た電光が幾筋も走っている。鏡面装甲の輝きも半分がた落ちているように見える。

 そして、彼らを取り囲むように群がってくるモビルスーツ群。インパルスに、他にも何機か見覚えのある機体があった。

 

「──あれは! 

 ジュール隊が、ここまで……? それに、カオス?」

 

 どうやら、危機一髪でディアッカの駆るザクファントムがアークエンジェルを援護したらしいが──

 彼らは完全に睨みあっている。アークエンジェルを攻撃してきた、ザフトの軍勢と。

 

「何故だ? 

 ザフト同士で、いがみ合いなど!」

 

 アスランは急遽、ジュール隊との通信を試みる。

 チャンネルを開いた瞬間飛び込んできたものは、イザーク・ジュールの怒号だった。

 

《遅いぞ、アスラン! 

 何をやっていた、貴様ァ!?》

「すまない、イザーク。

 援護、感謝する!」

《後で借りは返してもらう。それより、こいつはどういうことだ? 

 何故デスティニーが、オーブの機体を?》

 

 その言葉に、改めてアスランはデスティニーを見据える。

 届くかどうかは分からないが、敢えてアスランは呼びかけた──

 

「シン、聞いているか。

 今すぐアカツキとパイロットを返してもらう。これだけ包囲されていれば、いくらデスティニーといえどもただではすまんぞ!」

《…………》

 

 そんな呼びかけにも、当然シンは応じない。

 ――呼びかけたのが俺とくれば、当然か。

 アスランは深いため息と共に、ビームライフルの銃口を真っすぐデスティニーに向ける。

 だがその瞬間、コクピットにけたたましいアラートが鳴り響いた。

 

「!? これは……!! 

 やはり、キラか!」

 

 アラートと同時に、モニターに映し出された漆黒の宇宙を縦横無尽に切り裂いていく青い閃光。

 カオスγの右脚部が砕け散るのを確認したと同時に、アスラン自身も衝撃で大きく揺さぶられる。

 

「ぐぅっ……!!」

 

 構えていたライフルが、掌部ごと弾け飛んでいた。

 咄嗟にサブモニターで後方を確認すると──

 

 そこにいたのは勿論、悠然と青い翼を広げるストライクフリーダム。

 闇の広がる宙域で、その青は妖艶なまでの光を放ち、明らかにこちらを威迫している。

 そして、いつの間にかその背後まで迫っていたのは、

 見渡す限りの虚空を埋め尽くさんばかりの、黒に塗られたダガーLの軍勢。

 宇宙に溶け込むように巧みに気配を隠しながら、「彼ら」はキラにつき従っていた。

 

 デスティニーを庇うように、不気味な静けさをもってストライクフリーダムはアスランたちの前に舞い降りる。

 同時に響いたものは、キラの冷徹な声。

 

《シンは傷つけさせない。ムウさんも渡さない。

 アスラン、お願いだ。どうかここは、アークエンジェルと共に引いてほしい。

 そうでなければ──みんな、『彼ら』に殺されることになるよ》

 

 その言葉通り──

 ストライクフリーダムの背後の黒ダガーLの軍勢は全て、虎視眈々とこちら側に狙いを定めていた。

 腰だめに構えられたそのビームライフルから、いつ一斉に閃光が放たれてもおかしくない。

 そうでなくとも彼らは自らの機体を弾丸がわりに、躊躇うことなく自爆攻撃を食らわせてくる──

 そうなれば、ミーティアを相手にする以上に凄惨な状況になるのは、誰の目にも明らかだった。

 

《本当は、君も一緒に来てほしいけれど……

 でも、今は無理みたいだから》

 

 そんなキラの言葉にほんの少しだけ未練があるように思えたのは、アスランの思い過ごしだったろうか。

 宙域を覆うが如くの大軍勢を味方に、悠々と背中を向けてその場から飛び去って行く、ストライクフリーダムとデスティニー。

 その2機に、あまりにも強引に連れ去られていくアカツキを──

 アスランもルナマリアも、ジュール隊も、ザフトも、アークエンジェルも、ただ歯を食いしばりながら見ていることしか出来なかった。

 

 そんな彼らの間に、切れ切れの通信が響いていく。

 それは、ミントン港口にて危機を脱したアマミキョからの──

 サイ・アーガイルの声だった。

 

《アークエンジェル。聞こえますか……こちらアマミキョ。

 すぐにそこから、撤退してください。

 そこにいるのは、今見えている軍勢だけじゃありません。黒ダガーを吐き出している母艦は恐らくミラージュコロイドで艦影を隠していますし、それに……

 距離は不明ですが、そう遠くない場所まで、エターナルが接近しつつあります。

 もしミーティアを持ち出されたら、どう考えてもこちらに勝ち目はありません!》

 

 

 

 





※本パートのメイリンですが、劇場版の彼女の動向を考慮した描写を若干入れています。
ストーリーの変更はありませんが、このように少しだけキャラ描写に手を加えることはあると思いますので、その点よろしくお願いいたしますm(__)m

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