【完結】機動戦士ガンダムSEED Revelation ~紅蓮のフレイ~   作:kayako

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part9 僕、乗ります

 

 

 数分後。

 アマミキョ・カタパルトデッキでは、またしてもひと騒動が発生していた。

 治療もそこそこに、医療ブロックから無理やり連れてこられたナオトが、ティーダの前に引きずり出されている。

 強引に連れてきたのはカイキであったが、勿論その後ろからサイも追いかけていた。

 

 そして、ティーダの前ではフレイ・アルスターが整備士に指示を出しながら、ナオトを待っていた。

 

「だから! 

 偶然最初に触った人間しか動かせないなんて、モビルスーツとしてどうなんだって

 ――ぐっ!?」

 

 サイはナオトの代わりにフレイに怒鳴ったが、途端にカイキに殴られた。

 さっき医療ブロックでも避難民に何度か殴られていたが、カイキの一撃はそんなものと比較にならない。

 ちなみにカイキはナオトをここまで連れてくる間に、若干抵抗したナオトを2発殴っていた。顔と腹を1発ずつ。

 ティーダに取りついている整備士二人と顔を見合わせつつ、フレイが言う。

 

「またお前か――

 試験機体だったと、何度言えば理解するのだ? 

 さっさとパイロットスーツを持って来い、でなければまた子鼠を背広で乗せることになる」

 

 フレイに整備士の一人が近づき、注意深くバイザーを上げて小声で囁く。

 赤茶けた前髪が印象的で、まだあどけなさの残る顔立ちの青年だ。

 

「やっぱ駄目だ、フレイ。

 解除にはどうやっても40時間以上かかるって――ニコルが」

 

 もう一人の整備士の方は、バイザーを上げないままフレイに叫ぶ。

「ティーダを今すぐ使いたいなら、ハードから交換するっきゃねぇ!」

 

「交換パーツは?」フレイがカイキに尋ねたが、彼はぶっきらぼうに呟くだけだった。

「ぶっ壊されちまったよ。襲撃で」

 

 そしてカイキは強引にナオトの髪の毛をつかみ、ひきずり上げる。

 

 

「マユが動けない以上、こいつが動かすしかねぇんだ、ティーダは!」

 

 

 なされるがままのナオト――

 そんな彼を冷静に見つめたまま、フレイは言い放った。

 

「今すぐ着替え、コックピットでマニュアルを確認しろ。

 貴様を出すような事態だけは避けるが、戦況によっては分からん。何しろ相手は不可視戦艦だ」

 

 それだけ言うと、フレイはすぐ奥のアフロディーテの方へ身体を流していった。

 赤茶髪の整備士がついていく。

 

「アフロの首回りはどうだ?」

「いつものことだけど、無茶して使いすぎだよフレイは。

 ダガーLとIWSPとの相性は、社長が言うほど悪くないけどね」

「モビルスーツは人型だが人間ではない。関節が人間のそれと同様に動くわけではない。

 その理論を最大限に活用するのがパイロットの務めだ」

 

 

 そのまま重力に乗って飛び去ろうとするフレイ――

 だがサイは勿論、黙っていられない。

 

「ちょっと待てよ!」

 

 ナオトを庇いつつ、サイはなおもフレイにくってかかった。

 離れようとする恋人を、女々しくどうにか引き留めようとする男だ、これじゃ──

 そんな情けない思いを抱きながらも。

 

「情報漏洩防止措置にしては無茶すぎる。

 こんなのあるかよ、ナオトとマユ以外受けつけない兵器なんて!」

 

 だがフレイの反応は相変わらずだ。眉一つ動かさない。

 

「これは心外だな――」カタパルト全体に響くが如き強い声。

「ヘリオポリスのモビルスーツ強奪現場に居合わせた者から、そのような戯言を聞くとは!」

 

 

 

 

 ちょうどその時、カタパルトに既に着船していたザクウォーリアのハッチが開き、ディアッカ・エルスマンが顔を出した。

 彼は少し離れた場所に、ストライク・アフロディーテを発見する。そしてその足元を見て

 ――仰天させられた。

 

 

 そこにどういうわけか、サイ・アーガイルがいたから。

 元々敵同士でありながら、何の因果かアークエンジェルで共に戦った仲間──

 ミリアリアの顔が頭の隅をよぎったが、次の瞬間のフレイの言葉に彼は身体を硬直させた。

 無理もない、かつての自分のことを言われたのだから。

 

 

 ──ヘリオポリスの、モビルスーツ強奪。それをやったのは、他ならぬ自分たちだ。

 それにより図らずもミリアリアやサイ、そしてフレイの運命をも変えてしまったのも。

 

「何であいつら、ここにいんだよ?」

 

 イザークのザクファントムとシホのゲイツRが奥に固定されているのを確認し、ディアッカはほっと胸をなでおろす。機体の損傷は酷くはない。

 サイに声をかけようと考えたが、あまりの張りつめた雰囲気に、ディアッカは喉まで出かかった声を抑えた。

 

「俺もちょっとは空気読むこと、覚えなきゃあ……さすがにね」

 

 そんなディアッカをちらっと見やった赤毛の整備士が、急いでバイザーを下げたことには誰も気づかなかった。

 

 

 

 

 作業員たちがサイの姿を、ある者は好奇心をもって、ある者は嫌悪感をこめて見つめる。

 オーブの伝説的存在・アークエンジェルにサイが乗っていたことは、ほぼ全てのアマミキョ乗員に知れ渡っている。

 

 それだけに──

 サイの行動は、必要以上に注目の的になっていた。

 しかしサイは自分に注がれる視線を意識しながらも、フレイに反論せずにはいられない。

 

「最初に乗った人間が強奪犯だったらどうする気だった?」

「ロールアウト直後にマユが乗り込み、一人目の登録はすませてあった」

 

 フレイは無感情に答えるだけだ。

 カイキがナオトを突き放しながら、付け加える。

 

「つまり、マユがいなきゃティーダは動かねぇってこった。

 もっとも、黙示録を作動させないという条件下なら、今のこいつだけでも操縦はできる」

 

 そう言いながらナオトを見下げるカイキの目に、憐憫は全くない。

 

「あぁ、そう……

 要するに、マユ・アスカが認めた者でなければ乗れないから、セキュリティはそれで問題なかったということだね」

 

 サイが冷静さを保つよう懸命に努力しつつ、呟いた一言。

 だがその言葉に、カイキは一瞬顔をそむけた。

 今の言葉の、何かが気に障ったのか。そのままカイキは何も言わず、自機であるソードカラミティの方へと身体を流していく。

 ソードカラミティは破損したパンツァーアイゼンのワイヤー付け替え作業中だったが、カイキはその整備士たちに声をかけた。

 

「今の作業を、中断してもらうかも知れん。

 次は砲撃戦装備で出る可能性が高い……それより左腕の修理を最優先だ」

 

 サイはそんな彼の背中を眺めながら、殴られた頬を押さえつつフレイに言った。

 

「分かったよ。

 君たちアマクサ組は、アマミキョを絶対的に護る──

 君の言葉と力は、さっき証明されたばかりだ。俺は信じる」

 

 サイが言い切った時、奥に待機していたザクウォーリアから声が響いた。

 

「俺も出るよ。

 安心しな、お嬢さん方」

 

 ――ディアッカ・エルスマンだ。

 ザクウォーリアが着船していたのは知っていたが、フレイやナオトに気を取られたサイは、彼への礼を忘れていた。

 思わず駆け寄ろうとしたサイだったが、ディアッカは目くばせとジェスチャーだけで彼を下がらせる。

 

「ところでさ。

 先に着いたはずの、ジュール隊長らの安否確認をしたいんだが」

 

 サイはディアッカの心遣いを思い、心底頭を下げたくなった。

 いくら助けてくれたとはいえ、ザフト兵と懇意にしている場面を大勢の人間に目撃されては、サイを取り巻く状況がどうなるか分かったものではない

 ――特に今は。

 

「二人とも無事だ、ただ女性兵士が負傷している。

 医療ブロックに収容ずみだ」

「了解。サンキュー!」

 

 サイの言葉に、ディアッカは礼を言いつつハッチの内側に姿を消した。

 フレイはその様子を注視していたが、やがてアフロディーテの方へ戻っていく。

 その時──

 

 

 

「僕……

 乗ります!」

 

 

 

 ナオトの声が、サイの背中を打った。

 

「運が良ければ、マニュアル読みながら座ってればすむんでしょ。

 パイロットスーツ、取ってきます」

 

 サイは慌てて呼び止めようとしたが、ナオトはもう走り出していた。

 

「僕、何となく分かります。

 あの機体で、もっと出来ることがあるような気がするって!」

 

 

 

 時は、コズミック・イラ73年、4月。

 ユニウスセブン落下の日まで、残り半年のことであった。

 

 

 

 ~~~~~~

 

 次回予告

 

 発進するアマミキョに襲いかかる、不可視戦艦。

 宙域に響くかつての死者たちの声は、今を生きようともがく者たちを惑わす。

 様々な思惑が交錯する中、フレイのとった思わぬ行為は、ファントムペインの少女を窮地に追いつめる。

 憤怒に燃えた少年は、遂に──

 

 次回、機動戦士ガンダムSEED Revelation 「ドジっ子、出撃」

 暗黒の宙域、貫け、カラミティ! 

 

 

 

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