【完結】機動戦士ガンダムSEED Revelation ~紅蓮のフレイ~   作:kayako

376 / 436

※流血及び身体切断描写があります。苦手なかたはご注意ください。





part8 代償

 

 

 

 夕刻を過ぎた空は急激に暗くなり、壊れた運河を非常用のサーチライトが照らし始める。

 その光を頼りに、ナオトはごうごうと流れ続ける水を必死でかきわけながら、サイの姿を探していた。

 未だに動かないストライクフリーダム。その機体の下にまで潜り込むようになりながら、ナオトは目を凝らす。

 そして気づいた──自分の周囲を流れている水に、大量の血が混ざっていることに。

 

「!!」

 

 ナオトは慌てて、血の出処を確かめる。一体、この血は誰のものだ。

 

 野次馬はみんなルナさんたちが避難させていたはず。川に落ちた住民はいなかったはず。

 だとすれば……これは。

 

 サイを殴りつけたストライクフリーダムは今、デスティニーに止められた瞬間の体勢のままだ。両膝関節が川の中に没し、上半身はぐったりと川にうつ伏せになる形で倒れかかっている。両腕部はだらしなく川面に投げ出されたままだ。

 血は、その鋼鉄の腕のすぐ下あたりから流れ出していた。

 

 そして間もなく、ナオトは見つけた──

 ちょうど腕部と川面の境目となる暗闇の中、黒いゴミ袋の塊のようなものが横たわっているのを。

 それがサイの着ていたアマミキョの制服、サックスブルーのワイシャツだと分かるまで、暫く時間がかかったが。

 

「……サイさん!!」

 

 この時にはもう、ナオトの頭からは間近の危険など吹き飛んでいた。

 荒れる水をかき分けかき分け、ナオトは無我夢中でサイの元までたどり着く。運よくその身体は、壊れた岩壁の欠片に乗り上げてうつ伏せに投げ出されていた。

 ――良かった、少なくとも溺れてはいなかった。

 何度も何度もサイの名を呼びながら、ナオトはその上半身を抱き起こす。

 

「しっかり……

 しっかりして、サイさん! 起きてください!!」

 

 その身体から流れ出す血まじりの水で、ナオトの頬も腕も赤く汚れていく。

 モビルスーツの陰となって状態はよく分からないが、サイの身体はほぼ全て、重油でも浴びたかのように黒々と血で染まり、シャツもネクタイもズボンも元の色が何だったか判別不能になっていた。

 それでも、直接その身に触れたナオトにはすぐ分かった──

 体温はある。心臓もちゃんと動いている。呼吸も……

 すごく細いけど、止まっていない。

 大きく胸を撫でおろしたナオトは、両腕にサイの上半身を抱え直しながら、その顔を確かめる。血の気のない頬には至るところにすり傷があったが、それでもサイは──

 こんな状態でもまだ意識があるのか、ほんの少しだけ目を開き、微笑んでさえいた。

 肺のどこかが傷ついたのか、ぜいぜいと鳴る呼吸を何とか抑えながら、ナオトに呟く。

 

「ナオト……だから、言ったろ? 

 俺、死なない、って」

 

 サイがゆっくり笑ったその時──

 ひときわよく輝くサーチライトが、強烈に二人を照らしていく。

 その光はナオトの眼前に、サイの身体の状態を克明に曝け出した。

 大量の血液が、どこから噴き出しているかまでもを。

 

 

 両脚は無事だ。内臓から出血している形跡もない。

 だけど──どうしてだろう。

 サイさんの上半身が、奇妙に軽いように思えるのは。

 サイさんの、左肩から先が──無いように見えるのは。

 肩の先に見えているのは、ちぎれて黒く染まったワイシャツの切れ端だけだ。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 そうとは知らず、サイは苦痛をこらえながら呟いていた。

 

 

「なぁ、ナオト……

 早めに、救護班、呼んでくれないか。

 どうしてか、分からないけど……左腕が、すごく、痛いんだ。

 ハマーさんに殴られた時より、ずっと……痛くて……っ」

 

 

 既にないはずの部分からの激痛に、サイの表情が歪む。

 その右腕は、無意識に痛みを抑えようとしているのか。左肩から先を掴もうとしてがくがく震えながら、虚しく宙を泳ぐばかりだ。

 街中に鳴り響くサイレンが、ナオトには酷く遠いもののように聴こえた。

 

 

 どんなに動かせなくなっても、僕を抱きしめようとしてくれていた腕が。

 どんなに傷ついても、みんなを信じて全力で守ろうとしていた腕が。

 サイさんの左腕が──ない。

 

 

 その現実を認識した瞬間──

 ナオトは見た。真っ白な石英の種子が、粉々に砕けるヴィジョンを。

 母を失った刹那に見た光景と同じ、白い光が儚く壊れていく光景を。

 

 

 コロニーの空に轟く、少年の絶叫。

 同時に、停泊中のアマミキョ──開け放したままのカタパルトから光が溢れ、コロニーの港口全体を照らし出す。

 その強烈な光は港口のみならず、トンネルを通じてコロニー内部へも溢れだしていき、数秒の間、街の全てを白く染め抜いた。

 どこかで大きく爆発音が響き、その瞬間からコロニー内の空気が凄まじい強風へと変化する。

 

 

 吹き荒れる嵐に乗って響いたものは、祝福の鐘の音。

 全ての人々の上に盛大に鳴り響く、鐘の音。

 その中心に佇むは、名の通り、太陽の如く光り輝く純白のモビルスーツ──

 ガンダム・ティーダZ。

 

 

 

 

 

 

「ヴィーノ、すぐ戻りなさい! 

 この光の中にいたら、どうなるか分からないわよ!?」

「いくらルナの命令でも、聞けないね! 

 ティーダがどうなっちまったか見極めるまで、動けるか!!」

 

 強風に激しく煽られる樹木の下に身を隠しながら、ルナマリアとヴィーノは必死で耳を塞ぎつつ、上空を見上げる。

 コロニーの空に、まるで神像のように両腕を広げながら佇んでいるティーダZを。

 

「多分、湖の時と同じ現象が発生してやがる。

 パイロットの脳波を感知して、遠隔起動でティーダが動いたんだ。擬似的に黙示録まで発動して──」

 

 鐘の音により発生した酷い頭痛に眉を顰めながらも、ヴィーノの分析は冷静だった。

 

「だとすれば、コロニーの中じゃ滅茶苦茶ヤバイ!!」

「ヤバイって……まさか!」

「そのまさかだよ。湖でだって、デストロイやらアークエンジェルやら、あらゆるモビルスーツの機動が全停止に追い込まれただろ? 

 同じようにコロニーの機能までが全て止まったら、それだけでミントンは壊滅する!」

 

 その言葉が終わるか終わらないかのうちに、ルナマリアは思わず河岸から身を乗り出し大声で叫んでいた。

 負傷したサイを抱きながら茫然と、宙を見上げたままの少年に向かって。

 

「ナオト! 

 今すぐやめなさいっ、ティーダを止めて!!」

 

 風に逆らいながら、懸命に怒鳴るルナマリア。

 だがその声も虚しく、ナオトは血まみれのサイを抱いたまま、全く反応がない。サイの怪我の様子はここからではよく見えないが──

 最悪の予感が胸をよぎり、ルナマリアは思わずデスティニーを振り返る。

 流石のシンもこの鐘の音には耐えられないのか、ろくに動きが取れないまま凝固している。

 とはいえ、相対しているアスランもジュール隊も、そう簡単に動こうとはしていなかった。

 ジャスティスを眺めながら、ヴィーノは吐き捨てるように呟く。

 

「こっちのフェイズシフト装甲は全部、黙示録の影響を60%以上遮断出来るようにセットしてある。一応、あの野郎の機体も。

 だからあいつだって、動けるはずなんだけどな」

「とにかく、ナオトとサイを助けないと……痛っ……」

 

 激しい頭痛に耐えられず、ナオトを凝視したまま動けないルナマリア。突風で倒れないように身体を支えるのが精一杯だ。

 街中のあちこちから悲鳴が上がっている。音に耐えきれず、道路に突っ伏してしまった者も一人や二人ではない。ついさっきまであれだけ穏やかだった街は、強烈すぎる光と鐘の音の影響下、大混乱に陥っていた。

 そして街を彩っていた灯も、家々の窓に映る暖かな光も、川面を照らし出していたサーチライトさえも、次々と消えていく。ヴィーノの予想が当たろうとしているのか。

 祈るしかないのか。何とかナオトが落ち着いてくれて、この場を無事に切り抜けられる奇跡を。

 ティーダがその怒りを収めてくれることを。

 怒り狂った太陽を、誰にも抑えられないのならば──

 

 

 

 だが、ルナマリアが両膝を折りかけた、その瞬間。

 天使のように人々の上に君臨していたティーダZの頭部に、突然緋の閃光が走った。

 同時に大音響がコロニー中を包み、中断される鐘の音。

 但し、ティーダの鐘が断ち切られたと同時に、別の涼やかな鐘の音が空へ響き渡っていた。

 その音色に乗せて響く、女の声。

 それは、この時代では既に失われた神の書物、そのうちの一節。

 

 

《私の民よ

 彼女から遠ざかれ

 その罪に連なってはならない

 彼女の罪は積もり積もって天に達し 今 天罰が下る》

 

《彼女がしたとおりに彼女に報復を

 否、倍の報復を

 彼女が災いを混ぜて入れた盃の中に

 その倍の毒を

 贅沢を貪り食らった彼女に

 その分だけの苦しみを──喰らわせろ》※

 

 

 大きくのけ反り、光を失ったティーダZ。

 その真正面に舞い降りたものは──

 8基の漆黒の砲塔を翼のように背負い、装甲を紅蓮に染めた機体。

 ティーダZと同様、その機体全体も自ら紅に発光している。

 熱まで持っているのか、その周囲の大気がぐらぐら揺れていた。

 

 

 そして、続いて天を裂いたものは

 間違いなく、激昂にその身を震わせる、フレイ・アルスターの叫びだった。

 

《母上……否、ラクス・クライン。

 貴方は……一体、何をした? 

 サイに、何をしたァッ!!!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 不可視戦艦・シュンテンに囚われの身となっていたムウ・ラ・フラガ。

 彼はシュンテンにやってきたラクス一世と入れ替わる形でエターナルに収容され、そのままL3、コロニー・ウーチバラ方面へと護送されていた。

 正確には、ウーチバラを守護する機動要塞・オギヤカへと。

 

 ウーチバラにおいて改修されたオギヤカは今や、小規模のコロニーと言っても過言ではないほどの威容を誇っていた。海底に潜っていた頃でさえ街を一つ形成するほどの巨大戦艦だったものが、航宙用パーツを装備した上に改造に改造を加えられ、かつてのザフト機動要塞・メサイアにも似た形状に変化している。

 ウーチバラは例のテロの後、元の住民がほぼ全て追い出され、今はセレブレイト・ウェイヴの砲塔としての役割を一身に担っている。その周囲には多くのモビルスーツが武装し、厳重な警戒態勢を敷いていた。

 

 そんな中フラガは何故か、オギヤカのメディカルルームへ呼び出されていた。

 ──何の運命の悪戯か、アンドリュー・バルトフェルドに直接連れ出されて。

 

「驚いたよ……あんたまでここにいるとはね。

 あんたかい? フレイ・アルスターが、俺に会わせたかった人物ってのは」

「いや。僕はただの、ラクス・クラインの従者にすぎんよ」

 

 相変わらず飄々とした口ぶりで、砂漠の虎──バルトフェルドはフラガに答える。

 強制的に着替えさせられた病院着は何となく肌に合わず、奇妙な寒気を覚えた。

 この感覚は恐らく、布地が薄いせいだけではないだろう。

 そんなフラガの気分を知ってか知らずか、バルトフェルドは低重力の通路を巧みにリフトグリップで滑り、彼を先導しながら語る。

 

「正確には、彼女の母親──

 所謂、ラクス一世とも呼ぶべき存在のね」

「ラクスのママにか? 

 あいつは今やフレイ・アルスター共々、世界中を敵に回した魔女になってるぜ」

「知ってるさ。

 しかし興味深いんだよ、心理学をちょいと齧った者としては。彼女と、彼女に纏わる人間関係がね。

 これから君も知ることになるだろうが、彼女は人の常識を軽く超えるところまで到達してしまった。それを恐らく世間では、人倫を外れたというのだろうが……

 その心がどこまで行きついてしまうか。君は、興味がないかい?」

「ないね。そんな理由であんたは、本来のラクス・クラインを守る役目を放棄し、その母親に好き勝手させるつもりか? 

 人を人とも思わぬ所業の行きつく先がラウ・ル・クルーゼだったことぐらい、あんただって知ってるだろう」

「やれやれ。君は、味の分かる男だと思っているんだがなぁ」

 

 それ以降、フラガが何を聞いてもバルトフェルドはのらりくらりと逃げるばかりで、自身の心を見せなかった。

 フラガに分かったのは、バルトフェルドはストライクフリーダム・ルージュに襲撃され重傷を負い、気づいたらエターナルや部下たち共々オギヤカに収容されていたということだけだ。

 オギヤカでバルトフェルドが出会ったのが、ラクス一世──

 彼女の素性を明かされ、さらにラクスの身に起こった事件を聞かされ、彼は南チュウザン側で戦うことを決意したという。

 

「……って、あんたは本当に信じているのか? 

 ラクスを襲ったのが、単なる暴徒の仕業だと?」

「勿論、単純な事件じゃないのは分かっているさ。

 僕の部下たちが簡単にかく乱されラクスを見失ったという話は、正直今でも信じられんよ。ダコスタはああ見えて有能な男だからね。

 だが、襲撃を指示したのがラクス一世だというなら、納得はいく」

「納得、だと? 

 あんた、ラクスやキラの気持ちを……!!」

「あの二人にとっては、非常な不幸だったと思っている。

 だが、ラクス・クラインはこの程度で終わる女性ではない──今回のことで母親にあっさり屈してその意思を折るようなら、僕はここまでラクスについてきたりはせんよ。

 この件で強烈なダメージを受けたのは、ラクスよりむしろキラだろうな」

「あんたは……!

 なら何故、ラクス一世に媚びを売る」

「そんなつもりは微塵もない」

「エターナルをラクス一世に渡したのは、あんただろうが!」

 

 そこで初めて、バルトフェルドはフラガに視線を向ける。口元は笑っていたが、その眼光はやはり鋭い。

 その奥にフラガは一瞬、研ぎ澄まされた刃の如き光を感じた。

 

 

「アイシャと片腕を奪ったキラ・ヤマトへの怨恨──

 俺が全てきれいさっぱり忘れてる、とでも思っているかい?」

 

 

 その言葉に、フラガはハッとして顔を上げた。

 そうだ──これまでバルトフェルドが動いたのは、全てラクスの為だ。

 パトリック・ザラに反旗を翻した時も、デュランダルの襲撃からキラたちを守ったのも、エターナルを率いてラクスたちの中心となって戦ったのも。

 キラの為、ではない。ラクスの隣にキラがいたから、そうなっていただけだ。

 彼ほどの男だ。憎悪のあまりキラを背後から撃つような真似は決してしないだろう。

 しかし、苦しむキラに手を差し伸べず、敢えて放置する。それが──

 

「ま、僕も所詮は小さい男の一人ってことさ」

 

 にっこり微笑むと同時に、バルトフェルドの冷ややかな眼光は巧みに隠される。

 ずっと閉ざされたままの左眼は、何も語らない。瞼を割るかのように縦に刻まれた傷跡が、奇妙に心に残った。

 

「それに、自分の娘を襲わせる母親の心理に触れる経験など、なかなか得がたいもんだ。

 僕にも若干、世間で言うサイコパスの素質があるのかも知れん」

 

 この言葉は本心か虚勢か。それを判断するのはいささか早すぎる気もする。

 虎は明らかに何かを隠している。自身の直感はそう告げているが――

 さすがのフラガにもその正体までは見破れず、皮肉を口にするしかない。

 

「はっ。虎さんはお優しいことで……」

「言葉通りの意味に受け取っておこうか」

 

 そんな会話を続けているうちに、フラガはメディカルルームへ繋がるエアロック前まで案内されていた。

 医務室は別にあるのに、メディカルルームと名のつく場所があることをフラガは若干不審に思ったが、その疑問はエアロックが開け放たれた瞬間に氷解した──

 目が眩むほどの白い壁、煌めく照明。

 その中に連なっている、ガラスの棺桶にも似た箱の数々を目撃したことによって。

 

「──!? 

 おい。この部屋は、一体……」

「それじゃ、ごゆるりとご歓談を。

 僕は忙しいのでね、これにて失礼するよ」

「え、ちょ、おい!!」

 

 フラガの動揺をよそに、さっさと部屋を出ていくバルトフェルド。閉ざされるエアロック。

 唖然とするフラガに、かけられた声は。

 

「──お待ちしておりました、ムウ・ラ・フラガ様」

 

 やや舌足らずの幼い声に、思わず振り返る。

 だだっ広い白い空間の中に延々と並ぶ、ガラスの棺桶。その中央あたりに、エメラルドのワンピースを纏った少女がじっと佇んでいた。

 彼女は空色の瞳を大きく見開いたまま、両手を前にきちんと揃えて真っすぐにフラガを見据えている。閉まる扉から生じた僅かな空気の流れが、その金髪を揺らした。

 フラガはすぐに気づいた──彼女の正体に。

 

「君は……レイラ・クルーか。

 フレイ・アルスターの妹で、タロミ・チャチャの嫡子を名乗る者」

「世間では、そう言われています」

 

 フラガは彼女をもう少しよく見るべく、ゆっくりと歩みを進める──

 途中、ガラスの箱の中身がちらりと見えた。

 人間の子供が裸のまま無数のチューブに繋がれ、薬液らしき水で満たされた箱に入れられ、人工呼吸器に繋がれ、身体中から小さな泡をたてている。しかも同い年ぐらいの子供が何人も、何人も。

 そんなおぞましい氷の空間の中、少女は怖気づくことなくフラガと対峙していた。

 色素の薄い空色の瞳。切りそろえられた金色の髪は──

 フラガが勘づくとほぼ同時に、レイラは柔らかく微笑んだ。

 

「ムウ様。こうしてゆっくりと言葉を交わすのは、初めてではありませんか? 

 貴方のお父上の遺伝子を、曲がりなりにも継承する人間と」

「親父の……? 

 やはり、君も……クルーゼと同じ?」

「いいえ。私はラウ・ル・クルーゼとは違い、クローンではありません。

 ですが確かに、貴方のお父上の遺伝子データを元に生まれた人間です。

 だから一度、貴方とはお話してみたかった。貴方であれば、もしかしたら理解していただけるかも知れない──そう思いましたので」

「どういうことだ。親父のクローンとして生み出された存在は、クルーゼ以外にもいたとは聞いているが……

 君は、タロミの子供ではないのか?」

 

 そこでレイラは一度思いきり深呼吸し、大きく息をついてみせる。いかにもこれから、重要なことを話すと言いたげに。

 

「私の素性をお話することは即ち、私の姉──フレイ・アルスターの件を話すことにもなります。

 少し長いお話になりますが、よろしいですか?」

「俺なら構わんが……」

 

 恐らく今から語られる話は、ラクス母に纏わる狂気にも繋がる。

 そう直感したフラガは、思わず身体を硬くした。

 彼女がサイをオギヤカから逃がした話は、フラガも聞いている。サイをオギヤカの狂気に巻き込まぬ為、レイラは敢えて彼を脱出させたと。

 そうさせるほどの狂気とは、一体何だ。

 そして少女はゆっくり目を閉じながら、静かに語りだす。

 

「私は──

 対外的には、南チュウザン第三王妃たるフレイ・アルスター──その妹。

 そして、南チュウザン最大勢力たるヤミー・オーガ党党首であり南チュウザン王、タロミ・チャチャの後継者を名乗っています。

 ですが、それは真実の一部にすぎません。

 フレイ・アルスターは、()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

(※出典:新約聖書ヨハネの黙示録第18章第4~6節より)

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。