【完結】機動戦士ガンダムSEED Revelation ~紅蓮のフレイ~   作:kayako

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part3 ファントムペインの襲撃

 

 

「ウィンダム2機、撃墜確認!」

 ブリッジが歓声でどよめいた。が、サイはその声にはどうしても同調できない。

 

 フレイが、人を殺している。

 救助船たるアマミキョが、人殺しをしている。

 もう、戦争は終わったはずなのに。

 俺は人を助けるために、この船に来たんじゃなかったのか──

 

 次の瞬間、炎の向こうから紫の流線型のモビルアーマーが現れる。

 そして、まるでそれに付き従うような動きのウィンダムも視認できた。

リンドー副隊長が、間髪入れず叫ぶ。

 

 

「まだだ、まだいる!」

 

 

 紫のモビルアーマーに搭載されていた有線式ガンバレルが4基全て、水面を跳ねる魚のように舞い上がった。

 2連装ビーム砲に一対のビームサーベルを装備した、ガンバレル──

 

 あのモビルアーマーと似たものを、サイは確かに見覚えがあった。

 今は亡きムウ・ラ・フラガ少佐の愛機は、タイプのよく似たメビウス・ゼロだった。あれを操ることができるのは──

 

 そのガンバレルが今、フレイに襲いかかる。アフロディーテを取り巻き、オールレンジ攻撃を開始するガンバレル。

 星屑の海に、閃光の荒波が生まれた。

 

 さしものアフロディーテも、無数の光条を回避することは困難だった。

 絹布を織るように光の糸を伸ばしてくるガンバレル。その間をかいくぐりながらも、巨大なIWSPの翼は何箇所か破損する。

 ――それでも、フレイは負けていない。

 

 そんなアフロディーテの元に、カラミティが支援に入った。

 カラミティのバズーカ砲(トーデスブロック)がガンバレルを襲い、さらに後方からディアッカのガナーザクウォーリアのビーム砲が追い討ちをかける。

 

 空域を覆う、圧倒的な光の洪水。その間を、アフロディーテは素早く離脱。

 あの機動は、ハマーの言うとおりナチュラルでは確実にGで即死だろう。良くて内臓破裂だ。

 悔しい現実だが――サイは認めざるを得ない。

 

 

 

 

 

 

 モビルアーマー・エグザスの内部で。

 ネオ・ロアノークは、珍しく焦っていた。オールレンジ攻撃が思うようにいかない。

 コロニーに近づけない、中にアマミキョがいるのに! 

 

 あの紅いストライク。パイロットも、機体も知っている。記憶は確かに、ある。

 メンデルの皇女。彼女の俗称。

 

 ──俺は逃げ出した、彼女から。目覚めた時に、彼女はいたのに。

 

 そして、それ以前前の記憶──はるか昔のように思える記憶。

 その痕跡は、自分の脳の中枢からきれいに消されている。

 だが、消された記憶の中にも、彼女は『いた』。あの紅い髪の少女は。

 それに付随するはずの記憶は、呼び起こそうとすれば激しい頭痛を伴った。

 あの機体。ストライク。紅の髪。

 俺は知っている──

 

 その思考を強引に振り切り、ネオは我を取り戻す。

 紅のストライクだけではない。迫ってきたカラミティとザクウォーリアもまた、脅威であるのは間違いない。

 首筋に冷気が走る。咄嗟の回避行動──

 

 この感覚は嫌いではない。久々に、強者とやり合う感覚だ。

「俺の記憶、返してもらう!」

 

 

 と、その刹那。

 ネオの元に通信が入った。

 

《ネオっ! 

 私に任せて!!》

 

 その叫びと共にステラの乗ったウィンダムが、エグザスに右腕を触れるようにしながら通過していく。

 

「いけない、ステラ! 

 お前では無理だっ、性能差がありすぎる」

 

 だが、ステラは聞かない。

 ファントムペインの中でも、ガーティー・ルーでも、彼女はだだっ子で有名だ。

 

「引け、ステラ! ここは戦場だぞ!」

《だから、ネオを守るんだもんっ!》

 

 ステラのウィンダムが、一気に先行していく。あの直線的な戦闘スタイルでは、3秒でやられるがオチだ。いかに強化人間とはいえ──

 そうとも知らず、ステラの血気にはやった言葉がネオを貫いた。

 

《私だってやれる、あの紅いの程度!》

 

 

 

 

「突っ込んでくる!?」

 

 カラミティの中で叫びつつ、カイキ・マナベは思わずアフロディーテを視認する。

 その視線の先から、1機のウィンダムが無謀な燕のように突入してきた。

 そいつはまるで、フレイの動きをトレースするかのように、右へ左へこちらのビームをよけていく。

 必死にフレイを真似ている。明らかに他のウィンダムと動きが違うが――

 その懸命さが、カイキには哀れだった。

 

 ──まかり間違えば、俺もチグサもあのウィンダムの中だったな。

 あの、空飛ぶ棺桶の中……

 

 カイキは戦闘中に割り込んできた自分の思考を、無理やり振り払った。

 

《思った通りだ。ファントムペイン、間違いない!》 

 

 回線の向こうでフレイが笑っている。映像を見ずともカイキには分かった。

 

《面倒だ――残りのウィンダムとあの蕾どもをやる。

 咲かす前に、散らす!》 

 

 蕾とは、あの有線式ガンバレルだ。フレイの言葉が何を意味するかも、カイキには了解できていた。

 

「デブリの掃除も一緒にな!」

 

 胸部の複列位相エネルギー砲、肩から突き出した長距離ビーム砲、右腕のバズーカ──

 カラミティの全砲門に、パワーが蓄積されていく。

 ウィンダムをひらりとかわしたアフロディーテがカラミティの背中に回り、光で彩られていくカラミティの腰部を掴む。そして

 ――

 

 

 

 

 真空の宙に、光の織物が突如生まれた――そうサイは錯覚した。

 今度は何だ。フレイは何をやったんだ。

 コロニー内部ゆえ、戦闘空域とは隔絶されているアマミキョブリッジで、サイはもう一度戦闘状況を確認する。

 

「投げ飛ばしたのかよ!? アフロがカラミティを!」

 

 オサキの叫びがごく単純に、今起こった事態を説明していた。

 胸部、両肩、腕、持てる火力を全開にしたカラミティの機体ごと、フレイのアフロディーテが真横に一直線にぶん投げた結果の、光の帯。

 カラミティから発射された膨大な火線とほぼ垂直方向に、アフロディーテはカラミティを投げたのだ。それが無音の炎の、凄まじき咆哮となる。

 本来ならば移動の為にスラスターに向けるエネルギーまで含め、全ての力を砲門に注いだカラミティ。完全に巨大ビーム砲台と化したカラミティを、アフロディーテがその推力をもって強引に投げ飛ばす

 

 ──全ての砲門から、閃光を放ったまま。

 

 一見、無重力における物理法則を完全に無視したこの挙動。IWSPの推力だからこそ、可能な芸当だった。

 ウィンダムはステラ機を除き全て一瞬にして撃墜され、エグザスもガンバレルを2基、壊滅させられた。

 散らばっていたデブリが光で粉砕される中、ステラ機もまた、両脚部が破壊され動きが鈍化していた。

 そんなウィンダムに、今度はフレイが一気に近づいていく。

 

 

 

 

 ディアッカのザクウォーリアも、危うくその光に飲まれる処だった。

 コロニー方向やアストレイ隊に全く被害がなかったあたりを見ると、フレイはきちんと火線の方向まで計算してカラミティを投げ飛ばしたと見える。

 持てる推力を最大限利用し、空中でくるりと回転してカラミティの巨体を投げた、その凄まじき機動。

 

 本当にアレは、元が量産機なのか? ディアッカは、俄かには信じられない。

 おそらく元のダガーLの機体には相当の負荷がかかっている、機体保持の為の電力消費量も膨大だろう。豪快、かつ繊細な動きに耐えうる為の──

 

「俺のザクじゃなくて良かったぜ」

 

 きっとこの攻撃方法は、何度も実戦で行なっているに違いない。投げられたカラミティは、慣れた様子でスラスターを全開にし、体勢を立て直していた。

 この無重力下だ。あんなもん、並みのパイロットじゃどこまで投げ飛ばされるか分からないってのに。

 

 

 

 

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