【完結】機動戦士ガンダムSEED Revelation ~紅蓮のフレイ~   作:kayako

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part4 囚われのステラ

 

 

 サイの拳が、震えていた。ディスプレイを叩き割らんばかりに。

 フレイの戦闘を見せられるのは、3度目。

 まるでこちらに見せつけるように、フレイはひどく派手に動く。

 フレイと名乗りつつ、フレイの姿を借りて

 ――それでいて、フレイとは全く異なる振る舞いをする。

 

 君は一体、『何』だ? 

 何が目的だ。何が欲しいんだ。

 何故、蘇った。よりにもよって俺の前に!

 

 ──キラ・ヤマト? 

 

 サイは急いでその名を頭から振り払う。

 何故今、キラの名が出てくる。どうかしている、俺は。

 

 アムルが相変わらず冷静に状況を報告しつつ、サイの様子を横目で覗き込んでいた。

 その間にもアフロディーテは動きを止めない。脚をもがれたウィンダムも、まだライフルを下げようとはしなかった。

 数条の光の筋が交錯し、2機が激突する

 ──ように見えたのは、一瞬。

 

 

 

 

 傷ついたままろくに動けぬステラのウィンダムは、あっさりとビームライフルを弾き飛ばされた。

 エグザスから放たれるビームをかいくぐり、アフロディーテはがっちりとステラ機を羽交い絞めにする。

 両腕を後ろから取られ、ウィンダムは全く動けなくなる。フレイは素早く相手の通信状態をチェックした。

 

「回線は開いたままか……都合がいい」

 

 フレイには、動けない機体の中で怯え、泣き、叫び、狂ったようにコクピットに拳を叩きつける相手の身体の震えまでが、手に取るように分かっている。のたうつ心臓の動きまでが読めている。

 激しすぎる闘争心と、人工的に植えつけられた強迫観念による、力の振動。

 フレイは、そんな相手に対しても全く容赦はしない。

 開かれた回線に向け、フレイは息を静かに吸い込み、一言一言言葉を区切りながら、はっきりと言い放った。

 

 

「どうした? 

『母親』が『死ぬ』『夢』でも見ているのか!」

 

 

 

 

 その通信は、ステラ機の回線を通じてネオのエグザスにも伝わっていた。

 フレイの放った言葉は、ステラに致命的な精神ダメージを与える言葉

 

 ──「ブロックワード」。

 

 その台詞から判断するに、ウィンダムのパイロットがステラということまでは判別されていない。

 しかし確実に、ガーティー・ルーに乗るファントムペインの存在、そして彼らを構成する強化人間(エクステンデッド)。

 さらに彼らの暴走を抑制するブロックワードまで、情報が漏れている。あの紅い魔女に。

 

 あの言葉は、彼女が入手した情報から構成したものだろう。

「母親」「死」「夢」――

 ステラ・ルーシェは「死」の言葉に反応するエクステンデッドだ。ブロックワードに反応すると、強化の代償として不安定になった精神は、暴走する──

 茫然とするネオの耳に、ステラの悲鳴が轟いた。

 その叫びの間をぬって、冷徹極まる少女の声が流れる。

 

《残念だったな、ネオ・ロアノーク。

 アマクサ組の情報網は天下一品なものでね》

 

 

 

 

 フレイはゆっくりとアフロディーテを操作し、アサルトナイフでウィンダムのハッチを切り開いた。

 中にいたのは一人の、か細い桜色のパイロットスーツ。完全に怯えていた。

 バイザーごしでは表情は分からないが、身体が硬直しきって痙攣まで起こしている様子を見れば、素人でも異常と分かるだろう。

 

「このような子供に頼るとは。堕ちたものだな、連合も──

 いや、元からか」

 

 そんなフレイのため息に、わずかに嗤いが混じった。

 ネオがフレイの動きに反応し、残されたガンバレルを彼女に向けかかったが──

 フレイはそれより早く、パイロットの身体をアフロディーテの掌で掴んでいた。

 嘲笑と共に、フレイの声が宇宙に響く。

 

「分かる。分かるぞネオ・ロアノーク! この子供の、肋骨の感覚までが!! 

 抱くには、いささか幼過ぎないか?」

 

 

 

 

 血のストライクの手中で、極度の恐怖に震えるステラの身体。

 その無惨な姿は、ネオの仮面ごしの肉眼でもはっきり確認できた。

 

 ――あいつは、完全にこちらの手を読んでいる。

 あの女ならば、やりそうな事だ。かつて自分の記憶を奪い、自分を操ろうとしたあの女どもならば。

 こんな卑劣な戦法を、厭うことはなかろう。

 

 ネオが逡巡している一刻一秒の間にも、ステラの精神は恐怖に汚染されていくだろう。

 無重力下の真空中で、モビルスーツに生身を掴まれる感触は、どんな屈強な戦士とて経験したくはないものだ。しかも彼女の脳はブロックワードにより、錯乱状態にある。

 判断が遅れれば、彼女は二度と使い物にならなくなる危険性すら──

 

 使い物。モノ。

 自分の脳裏に浮かんだ言葉に、ネオは憤怒する。

 ネオにとって、彼女はモノだった──いや違う、モノとして扱わなければならない少女だった。

 

 血のストライクの指の圧力で、ステラの身体が反り、細い首元が露になる。

 勿論声は聞こえないが、ネオには彼女の叫びが伝わっていた。

 

 

 

 痛い、苦しい、この女は怖い

 スティング アウル ネオ――

 ネオ、ネオ、ねお たす け

 あぁああぁああぁあぁがぁあああぁああああアァアァ ァアアアァアア ァアアア

 

 

 

 血塗られたストライクのカメラアイが二度、煌いた。

 それがステラの恐怖を倍加させ、ネオの憔悴を誘う。

 

「要求を聞こう」

 

 ネオは感情を押し殺し、ただそれだけを答えた。

 アフロディーテはステラを捕らえたまま、中破したウィンダムを牽引しつつ、こちらへやってくる。

 その腕部が、エグザスの機体と接触した。通信が入る。

 

《優しいのだな。撃つのが当然の状況だが》

 

「俺は君ではないのでね。

 分かってるんだろ。俺の心も、正体も」

 

《ほう……怒っているのか? 今の貴様にはふさわしくない感情だな。

 こともあろうに、貴様が子供の記憶を奪い、生命を操るとは》

 

 回線の向こうから、くすりと笑う声が漏れた。

 一気にネオの怒りは爆発寸前になるが、反論できない。

 ──事実だから。

 

「何がおかしい」そう呟くのが精一杯だ。

 

《当たり前だ。記憶遊びをされた貴様が、同じことを無力な子供にやる。

 これを笑わずして何を笑えと?》

 

 

 

 

 

 戦闘が一時中断している中、サイは目の前で公然と行なわれた卑劣な行為に、さらに怒りをかきたてられていた。

 説明されずとも分かる。このフレイの行為は明らかに──

 

「軍に対して人質作戦かよ。アマミキョは民間船だぞ」

 

 しかしそんなサイの呟きに、隣のアムルは冷たい。

 

「優等生ぶるの、やめたら? 

 あいつらは私たちを殺そうとしてるのよ」

 

 自分の母親と恋人を、と彼女は言わなかった。

 オサキもそれに同調する。

 

「先にやったのはあいつらだ。当然だろ」

 

 社長は黙したまま状況を眺めているだけだ。

 かつてフレイは言った、アークエンジェルで──

 

 

 ──この子を殺すわ! 

 パパの船を撃ったらこの子を殺すって、あいつらに言って!! 

 

 

 皮肉にも、フレイの行為は昔と一緒だ。

 アマミキョを撃てばパイロットを殺す。あの少女を殺す。人質を殺す。

 あの時は生きのびる為には仕方がなかった。だけど今はあの時とは違う、戦争中でも何でもないはずなのに――

 

 サイが歯噛みしたその時、通信ごしにフレイの要求が入ってきた。その内容は

 ――

 

 

 

 

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