【完結】機動戦士ガンダムSEED Revelation ~紅蓮のフレイ~   作:kayako

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part11 ナチュラルの意地――アカツキVSドムトルーパー隊

 

 

 機動要塞オギヤカとコロニー・ウーチバラ。セレブレイトウェイヴの核とも言えるその場所に、接近を試みるアカツキとアークエンジェルだったが──

 その行く手はエターナルによって、完全に阻まれていた。

 

「畜生、どういうつもりだ虎ァ! 

 歌姫の船を、こんなところでぇ!!」

 

 エターナルから放出され続ける、滝の如き火線。

 光る糸のように宙域を駆けるミサイルが、次々にアカツキとその後方のアークエンジェルを襲う。暴風にも似たその攻撃から、アカツキは今やたった一機でアークエンジェルを護っていた。

 そのコクピット内で絶えず衝撃に揺さぶられながら、フラガも愚痴を隠せない。

 アカツキの宇宙戦闘装備たるシラヌイは、キラやシンとの戦闘で砲塔システムが一度全て破損した。マードックらの尽力で奇跡的に再使用出来るまでにはなったものの、本来7機あったはずのビーム砲塔システムは、まともに使えるまで修理出来たのは僅か5機のみ。その5機を宙に飛ばして防御フィールドを張らざるを得なかった。

 結果、無数の対艦ミサイル及びビームを防ぎきれず、アークエンジェルはさらに被害を増していく。

 無敵を誇ったラミネート装甲も限界に達しつつあるのが、フラガは肌で感じ取れた。

 

 おまけに──

 エターナルから出撃してきたドムトルーパー隊が、さらにアカツキをかく乱していく。

 時には3機が連なり、時には分散して連携攻撃を行なうそのさまは、エターナル以上に容赦がなかった。

 最も痛烈だったのは、三位一体となって繰り出されるジェットストリームアタックだ。

 胸部の攻性防御装置から繰り出されるスクリーミングニンバスは、ビーム同様の粒子を散布して防御フィールドを生み出す。それは同時に無慈悲なまでの攻撃性も併せ持ち、まるでビームサーベルが面となって襲いかかってくるような錯覚さえ起こさせる。

 そのフィールドだけでもアカツキの防御フィールドと拮抗するほどの威力はあったが、3機が連携してフィールドをさらに拡大し生み出す攻撃──ジェットストリームアタックは、既にアカツキのビーム砲塔システムのうち1機を破壊していた。

 残る砲塔システムは、たった4機。

 

 それでもフラガは、焦りを隠すように砲塔システムの照準をドム隊に定め、間断なく集中攻撃を食らわせていく。

 アカツキの火力は衰えを見せず、収束して撃ち込まれたその閃光はドム隊のフィールドを突き破り、うち一機の右脚部、そしてもう一機の胸部装甲を吹き飛ばした──

 パイロットのわずかな叫び声が、フラガの脳にも響いてくる。それはフラガ自身の感覚によるものか、それともティーダZの光の翼の影響か。もう、彼にも分からない。

 傷ついた味方を庇いながら、デブリを盾に一旦後退しかけるドム隊。

 その時突如、通信から響いてきた声は。

 

《こうしてまた会うとはね、鷹よ。

 不本意ではあるが、僕は君たちを討たねばならん》

 

「やはり生きていたか。虎──

 俺たちを助けておきながら、今また、何故!?」

 

 ミーティアから集中して撃たれた津波の如きミサイルを、ほぼ全弾シールドで強引に受け止めるアカツキ。

 それでもフラガは、バルトフェルドを問い質さずにいられない。

 恐らくこちらの通信コードを熟知しているからこそ開かれた、バルトフェルドからの回線。

 ミサイル着弾による激しい衝撃に耐えながら、フラガはその声に耳を澄ませた。

 

《あの後案の定、母君には全てがバレたよ。

 この通信も、ほぼ開き直りでやってるようなものさ。

 部下は非常によくやってくれたんだが、どうも奴はツメが甘くていかんね》

 

 バルトフェルドの腹心、ダコスタのことか。

 フラガがそう直感すると同時に、バルドフェルドの笑みが回線から漏れた。

 

《だが彼は僕特製コーヒーの、貴重な試飲係でもあるからね。

 いなくなられては困るんだよ》

 

 その言葉の意味するところを、フラガは即座に理解した。

 恐らくバルトフェルドは、オギヤカ内で動いていたであろうダコスタら、部下たちを人質にとられた。もしかしたら、ラクス本人の命すらも盾にされている可能性すらある。

 そしてドム隊の動きから、わずかに感じられたのは――

 エターナルを護ろうとするのではなく、むしろ脅かそうとするような機動。

 少しでもバルトフェルドが不審な動きを見せれば、即座にエターナルブリッジを撃つ準備ぐらいは出来ているのだろう。

 

「──そりゃ確かに、納得いく理由だな!!」

 

 嵐の如き攻撃をすり抜け、ドム隊が再びフィールドを張り巡らそうとするのも構わず、アカツキは片側のミーティアに狙いを定める。

 同時にアークエンジェルからも、必殺の陽電子破城砲・ローエングリンが発射される。それはエターナルに向けてではなく、その背後のオギヤカを狙って。

 しかし、完全に相手側の虚をついて放たれたであろうその一撃は──

 オギヤカの円錐形、その中心軸となる柱部分に着弾したと同時に、宙域に拡散する光となって消滅していく。オギヤカ本体ではなく、その表面に張られたガラスに全エネルギーが吸収されたかのように。

 

「なっ……!? 

 やはり施されているか。陽電子リフレクターが!」

 

 予測はしていたものの、非情な現実に思わず唇を噛むフラガ。

 あのメサイアやレクイエム、そしてデストロイにも搭載されていた防御機構・陽電子リフレクター。陽電子砲すら防ぎきるこの無敵の壁は、当然の如くオギヤカにも存在した。

 リフレクターそのものは地球連合発祥の技術だ。しかし南チュウザン、そしてラクス一世と繋がるターミナルの情報網や技術力から考えれば、オギヤカにその技術が流用されていても何ら不思議ではない。

 

「クソっ……

 だとしても、弱点がないわけじゃ!!」

 

 フラガはすぐに思考を切り替え、腰部のビームサーベルを抜き放つ。

 どうにかして砲撃の雨を潜り抜け、オギヤカに接近出来ないか。否、やるんだ。

 ビーム刃で切り刻めば、陽電子リフレクターを破れる可能性もある。アカツキの鏡面装甲が何の為にあると思ってる! 

 背後のアークエンジェルはローエングリンを消されたにも関わらず、なおもゴッドフリートとバリアントによる波状攻撃を仕掛けている。消されても消されても、躊躇なくオギヤカへと砲撃を叩き込んでいくアークエンジェル。

 その動きに、異様な焦りが見え始めている。フラガは咄嗟にアークエンジェルに呼びかけた。

 

「おい、どうしたアークエンジェル!? 

 このままじゃ、俺より先にそっちのエネルギーが切れかねんぞ!?」

 

 だがフラガの問いが終わらないうちに、ミリアリアの悲鳴の如き通信が飛んできた。

 

《一佐。先ほど、アスハ代表からの緊急連絡がありました。

 残り5時間でセレブレイト・ウェイヴの停止が見込めないならば、地球連合はウーチバラ住民の救出を待たずして、一斉熱核攻撃を行なうとのことです!》

「な……!?」

 

 これも予想出来ていたことだ。これまでの連合の姿勢からすれば、むしろこの対応は遅すぎるとも穏便すぎるとも言える。

 それでもフラガは、一層の動揺を隠せない。

 

「そりゃ、選択肢としてアリなのは分かるが──!」

 

 だからか。だからこそアークエンジェルは先走り、効果の薄い砲撃をなお続けているのか。

 そんな中でも気丈にオペレートを続けるミリアリアの通信が、響く。

 

《現在アカツキの砲塔システムは、50%以上が使用不能と推測されます。

 このままでは危険です。一旦帰投してください!》

「バカを言え! 

 今俺が下がれば、一瞬で艦はお陀仏だぞ!?」

 

 しかし、そんなフラガの怒声に答えるように──

 ミリアリアに替わりマリューの声が、直接通信から轟いた。

 

《アカツキを収容後、本艦はオギヤカへの攻撃を続行します。

 現在の砲撃だけでも、オギヤカへある程度の損傷は蓄積している。見た目以上に、システム内部にダメージが広がっているはず。第四射を遅延させられる程度にはね》

「死ぬ気か、バカ! 

 今全員で避難すれば、まだチャンスは──」

《ティーダZパイロットの状態は分かっているでしょう? 

 これ以上彼に負担はかけられない。今退却して連合の核攻撃に全てを任せたとしても、ウェイヴの照射距離、及び照射時間を考えれば、失敗する可能性の方が高い。

 そうなれば、再びナオト君やサイ君たちが使われるだけよ。恐らく、彼らが完全に壊れるまでね。

 ラクス一世の暴走を止めるチャンスは、今をおいて他にはないの!》

「……!!」

 

 感情だけでなく、ある程度理屈も交えてこちらを説得するマリュー。その言葉に、どこか彼女の成長を感じたフラガだったが──

 同時にそれは、アカツキに僅かな隙を生じさせた。

 マリューの言葉が終わるか終わらぬかのうちに、アカツキ、そしてアークエンジェルに向かってくる強烈な敵意。

 それを直感したフラガは、即座に機体を反転させる。と──

 

 ──この油断。

 エースとはいえ、所詮ナチュラルか。

 

 メインモニターに大写しになったのは、ドムトルーパーの頭部に刻まれた黒十字。その中心で蠢く、紅の単眼。

 同時にフラガが感じたものは、ドムトルーパーパイロットの思惟。

 クライン派といえど、そこは所詮ザフトでありコーディネイターなのか。それがドム隊のヘルベルトかマーズかは判然としないものの、完全にフラガを小馬鹿にしたかのような男の声が流れ込んでくる。

 だがそれに抵抗する余裕さえなく、ドムから出現した紅の防御フィールドで吹き飛ばされかかるアカツキ。接触寸前で再び防御フィールドを展開し、どうにか直撃だけは免れたものの──

 同時に、ほぼ強引に振り下ろされた強化型ビームサーベルによって、アカツキは左腕関節部を切断されてしまっていた。勿論、装備していたシールドごと。

 

「ぐ……! 

 ミスった──っ!?」

 

 口ではそう言いながらも、アカツキのビームサーベルは咄嗟の機動で、相手の左胸部を貫く。

 互いの防御フィールドによってそれぞれのビームの威力は大きく減衰していたものの、それでも互いの要となる武装を刻む力は残っていたか。

 ドムの閃光はアカツキの盾を、アカツキの刃はドムの胸部──スクリーミングニンバスを、それぞれ宙に四散させていた。

 防御装置と共に胸部を弾き飛ばされ、大爆発に巻き込まれるドムトルーパー。

 

 ──マーズ!! 

 よくも……死にぞこないの分際で!! 

 

 宙に吹き飛ばされていく、ドムの寸胴な巨体。

 同時に、悲鳴のような女性の思惟がフラガの脳に飛び込んでくる。それは仲間を呼ぶ、ヒルダの叫びか。

 だが、彼女の敵意に注力している暇は寸分たりとも与えられなかった。

 鳴り響くアラート。同時にアークエンジェルを確認するフラガ。

 

「……!!」

 

 今のドムに気を取られすぎたか。もう一機のドムトルーパーが、急速に純白の母艦へと接近しつつあった。

 さらにそこへ、再びミサイルを撃ち込んでいくエターナル。

 アークエンジェルも決死の覚悟でドムを振り払おうと試み、同時に急速回転しながらエターナルの攻撃を躱しつつあったが──それでも限界がある。

 咄嗟に機体を反転させようとするフラガだったが、ドムが──恐らくヘルベルト機が、アークエンジェル、その甲板に向けてビームサーベルを振りかぶる方が早かった。

 間に合わない。フラガが思わず絶叫しかけた、その瞬間。

 

 ──よけて、ムウさん。

 なるべく当たらないようにするから。

 

 脳に飛び込んできたのは、いつも聞き慣れていたはずの、少年の声。

 同時に、宙域の遥か彼方から飛来した無数のエメラルドの閃光が、今まさにアークエンジェルを刻もうとしていたドム、その四肢をビームサーベルもろとも、正確に吹き飛ばす。

 否、ドムだけではない。閃光はエターナルに搭載されたミーティアさえも貫き、一瞬でその3割以上を使用不能に陥らせた。

 しかも恐らく、パイロットにもブリッジクルーにもさほどのダメージは負わせずに。

 こんな所業が可能なのは──フラガの知る限り、一人しかいない。

 

「キラ──

 お前、こんな状況でも──っ?!」

 

 あいつは今、アスランと戦っているはずだ。フレイ・アルスターを護って。

 あいつはアークエンジェルとは袂を分かったはず。なのに──

 今、何故、俺たちを? 

 

 一瞬戸惑ったフラガの思惟に、現実の声が飛び込んでくる。キラとは違う、別の少年の声が。

 救難チャンネルを利用したであろう通信が、アカツキのコクピットに轟いた。

 

《ぼさっとすんな、嘘つき野郎!!》

 

 アカツキへ強引に接近戦を仕掛けていたドムトルーパー──ヒルダ機。

 そんな彼女とアカツキのほぼ直上から、閃光と共に敢然と割り込んできたのは──

 紅に輝く翼を纏った、トリコロールに彩られた機体。

 今まさにアカツキのフィールドを突き破ろうとしていたドムの防御フィールドを、力任せに引きちぎるように吹き飛ばしていく。

 艦艇をも一撃で引き裂く巨大ビームソード──アロンダイトによって。

 

 空域に拡がる、ヒルダの悲鳴。

 と同時に、フラガは自分を助けに飛び込んだ機体を改めて確認した。

 間違いなくそれは──デスティニーガンダム。

 かつてザフトとして自分たちと幾度も刃を交え、今また南チュウザン側につき、一度はアカツキを撃破した機体。それが──

 

「シン・アスカか……

 何故、俺たちを助けた? 

 キラも君も、一体何故……?」

 

 デスティニーはそんなフラガの呼びかけに一瞥もしないまま、オギヤカの主軸の反対側──

 デブリに隠れかけてほぼ見えなくなっている死角へ、その頭部を向けた。シンの叫び。

 

《礼なら後でいい! 

 それよりあんたら、アレが見えないのかよ!?》

 

 ほぼ円錐形になっているオギヤカ。その頂に当たる部分へ、今アークエンジェルは攻撃を仕掛けている。しかしオギヤカは完全な円錐ではなく、幾つもリングが重ねられている向こう側、底面とも言うべきそちらにも僅かな円錐が形成されていた。

 その反対側の軸へ──

 今、連合の山神隊が決死の攻撃を仕掛けている。自ら囮となって。

 そこへ、虫のように一斉に群がっていく黒ダガーLの大軍も確認出来た。

 

「偽ダガーが少ないと思ったら──

 そういうことか!!」

 

 

 

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