【完結】機動戦士ガンダムSEED Revelation ~紅蓮のフレイ~   作:kayako

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part32 宇宙を流れる紅

 

 

 

 ウーチバラの完全崩壊から、十数分もの後。

 

《地球軍の核攻撃部隊も、現在撤退中だそうだ。

 ウーチバラ破砕の時点で、核攻撃まで15分を切っていたらしい。

 非常に危ないタイミングだったが──これも、アスハ代表の尽力のおかげだろうな》

「……そうですね。

 彼女がオーブ代表として連合のお偉方に頭を下げてくれなければ、この奇跡もありえなかった」

 

 サイはセイレーンコクピットで、静かにトニー隊長との通信を続けていた。

 ドラグーンXの放った爆光は未だにウーチバラ宙域を染めていたが、そこから徐々に離脱していく艦船の姿が見える。

 光を放った後、殆どのエネルギーを使い切ったのか。機体のあちこちから火花を発していたルージュも、しっかりとティーダZを抱えたまま、ミネルバJrへと帰還していた。

 今のアマミキョには満足なカタパルトも残っておらず、ティーダZは元々ザフトの機体だ。

 何より今、ミネルバJrにはシンも帰還していたから、マユがミネルバJrを選んだのは妥当な選択なのだろう。

 ストライクフリーダムも、インフィニットジャスティスに伴われながらアークエンジェルに帰還していくのが見える。アークエンジェルのそばには、いつの間にかエターナルも接近してきていた。

 

 ──ナオトのあの声を聞いて、キラはどう感じたのか。

 

 サイはふと、そんなことを思った。

 図らずも傷つけ、その心を完全に崩壊させてしまった少年が、偶然とはいえ自分の名を無邪気に呼び続けるという状況は──

 しかし、サイはこうも思う。

 

 今の俺には、祈ることしか出来ない。

 キラの心が、これ以上壊れてしまわないように。

 キラが今度こそ、過たず自分の道を選択し、ラクスと共に進んでいけるように──

 

 そう思いながら、サイが通信を終えかけたその時。

 

「……うぅっ」

 

 まだ爆風の収まらぬ中、セイレーンを操っていたフレイが、突然呻いた。

 思わずサイが振り返ると、彼女は必死でデブリを避けながら、下腹部を抑えている。

 これまで痛みをこらえにこらえ、それでも戦ってきた彼女が、明確に痛みによる呻きを上げるなど──

 ただ事ではない。

 

「フレイ! 

 これ以上は無理だ。すぐにアマミキョへ……スズミ先生に診てもらおう! 

 今は、それしかない!」

 

 まだ麻痺の残る指で、サイはフレイの手を揺さぶる。下腹部を抑えた、彼女の手を。

 そんなサイをじっと見つめる、灰色の瞳。

 誇り高く強かったはずの彼女の瞳は、これまで見たこともないほど、恐怖に慄いていた。

 頬から完全に血の気が失せているのが、バイザーごしでも分かる。

 唇からそっと漏れたものは、ともすれば空気の中へ消え行ってしまうような、弱音だった。

 

「……いて、くれるか? 

 私は……怖い。全てを見るのが。全てを知るのが。

 また、あの罪を、犯してしまうのが」

 

 それは──

 スーパーコーディネイターだろうが何だろうが関係ない。この危機に瀕した女性なら、当たり前に感じる、恐怖。一度でも経験しているのならなおさらだ。

 フレイの手がずっと震え続けているのが、サイにも分かった。

 多分、彼女は分かっているのだろう。お腹の子がたどる運命を。

 それでもなお、現実から逃げようとしているのは──

 自分の身から子を離すまいとする、母親としての最後の願いだ。

 ならば、俺がやれることなど、一つしかないじゃないか。

 

 ろくに動かない右手で、それでもフレイの手を掴みながら。

 サイは一言一言を噛みしめるように、力強く告げた。

 

「大丈夫。

 どんなことがあっても、俺は、君のそばにいる。

 だから──君も、約束してくれ。

 何があっても、生きるって!」

 

 すっかり砕け落ちた眼鏡のレンズごしに、フレイを見つめる青い瞳。

 彼女はじっとその言葉を聞いていたが──

 やがてその灰色の瞳が、涙で滲んだ。

 

「ありがとう──サイ。

 お前と出会えて。お前を選んで──

 私は、本当に果報者だ」

 

 

 

 

 

 

 数刻後。

 ガンダム・セイレーンのスラスターが炎を噴き、一息に進行方向を変えた。

 そして迷うことなく、帰る場所に向けて飛翔していく──アマミキョ後方ブロックへと。

 ウーチバラの炎と爆風が未だ空間を満たす中、その紅は鮮やかに煌めいていた。

 ストロボのように輝く宇宙を染め抜く、一筋の血のように。

 

 

 

 

 

 

 

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