【完結】機動戦士ガンダムSEED Revelation ~紅蓮のフレイ~ 作:kayako
One Last Kiss
──サイ。サイ!
良かった! まだ聞こえてるみたいで。
──フレイ?
これは……その姿は、君なのか?
随分久しぶりだな。『ホントの』君に会うのは。
──そうね。
貴方がこっちに来るのを何とか止めた、あの時以来かな。
──すごく昔になる気がするな……
あの時は、本当にありがとう。
今では、感謝してる。君が俺を拒んでいなかったら、俺は──
何も出来ずに、死ぬところだった。
──ううん、いいの。
あの時、こっちに来そうだったサイを拒絶して、本当に良かったと思ってる。
だってそうしなきゃきっと、キラも……
ずっと永遠に、時間を止めたままだったから。私のせいで。
──キラは……あれで、良かったのかな。
あいつとラクスさんはこれから、もっと激しい戦いに追い込まれるかも知れない。
動き出した時間が、必ずしも良いものとは限らない。
そう思ったら、俺があいつに言ったことは、本当に正しかったのかって……
──そうね……でもきっと、大丈夫よ。
ありがとう、サイ。キラの時間を、動かしてくれて。
私の本当の想いを、キラに伝えてくれて。
ずっとずっと、気になっていたの。キラが私の言葉に囚われたまま、永遠に抜け出せない時間の牢獄を彷徨っているみたいで。
そんなキラを見ていて、すごく、つらかった。
私がどんなに呼びかけても、キラには何も聞こえていなかったから。
でも、サイ。貴方がキラを解放してくれた。
それがいいか悪いかなんて、関係ない。良くするかどうかは、キラが決めることよ。
──でも、キラに君の想いを伝えるまで……
俺は、とてつもなく時間がかかってしまった。
そのおかげで犠牲になったものも、たくさんある。
ネネもオサキも、ハマーさんも、山神隊の人たちも──トノムラさんも、トールも。
ナオトも……生き延びはしたけど、魂が壊れてしまった。
そして……俺が、一番守らなきゃいけなかったものまで!
──悔やむこと、ないわ。
サイは……本当によく頑張ったじゃない。
彼女があの痛みから生き延びられたのは、ずっと貴方がそばにいてあげたおかげでしょ?
全てが終わるまで3日もかかったのに、ずっとそばにいたんでしょう? 貴方は。
──そばにいることしか、出来なかったよ。
痛みと罪悪感で苦しみ続ける彼女の手を、必死で握ることしか出来なかった。
大量出血しかけた時は……本当に、どうなるかと思った。
でも、それでも、彼女が生きていてくれて、良かった。俺はそう思う。
──彼女が死なずにすんだのはきっと、貴方がいたから。
何も出来なくても、そばにいて抱きしめてくれるだけで──
人は、救われることもあるの。
──決して褒められるようなことじゃないよ。
当たり前だと思っていた人の営みが、これほど難しいなんて……思わなかった。
人が生まれてくるっていうのは、本当に奇跡に近いことなんだ。
俺たちに、奇跡は起きなくて……大切なものを失って
……初めて、それが分かった。
──人が生まれるのは奇跡に近くて。
そして、その命を維持していくのも奇跡に近い。
みんな、自分の命は当たり前にそこにあるように思っているけど……
実は、とてつもない危険をかいくぐりながら、そこに存在しているのよね。
コーディネイターだってナチュラルだって、それは同じ。
それをまとめて一瞬で吹き飛ばすなんて……本当に酷い、絶対にやってはいけない所業なのよ。
──多分、だからなんだな。
みんな、毎年自分の誕生日、祝うのって。
子供のころは、親が盛大に俺の誕生日、祝ってくれたもんだけど……
あの気持ち、今なら分かる気がする。
──っていうか……
サイ。貴方、自分で分かってないの?
貴方、今日が誕生日なのよ! しかも二十歳!
一番盛大に祝うべき時じゃないの!!
──え!?
あ、そ、そうだったか。本当に色々あったから、すっかり忘れてたよ。
──もう、立派な大人になっちゃったのね。
私からサイにあげられるものなんて、ないに等しいけど……
……これぐらいしか。
──え……って、おい?!
ちょっ……フレ……っ!!?
──ん……くっ……ふぅ……
──んん……
──
──
──……ふぅ。
ふふ。何よ、すごく上手になっちゃって。
手つきとか、完全に慣れちゃってるじゃない。
──違うって。これは……
君こそ、なんで今更俺に。君は、キラに……!
──キラのことは、確かに好きだけど……
サイ。貴方が大好きだったのも、確かだから。
キラを好きになっても……
貴方は、ずっと、忘れられない──大切な人。
──フレイ……
俺にとっては、君もそうだ。
酷く傷つけあってしまったけど……それでも、君のことは忘れられない。
忘れたら、俺は俺でなくなる。どれほど時間がたっても、他の誰を好きになっても──
君は、それほどの存在だ。
──戦争なんかなければ、私は優しい貴方と、時々喧嘩しながら……
何も知らずに、ずっと一緒にいられたんだと思う。
だからこれは、最後のキスよ。
──そうか。
ありがとう……フレイ。
──だから……
彼女のこと、大事にして。
私の名前と姿を使ったあの子のこと、本当に嫌だったけど。
でも……あの子は、ずっと子供のまま、成長を止められていたの。
彼女は貴方の時間を動かし、その貴方がキラの時間を動かした……
だけどね。貴方と出会ったあの瞬間こそが、彼女の時間の──人生の始まりでもあったのよ。
多分それも、彼女が言ってた、「奇跡」の意味。
だから……ずっと、大事にして。
私の分まで、あの子、大事にして。
──分かってる。
きっと、大事にする。
──そうね。
いつかまた会える日を、楽しみにしてる。
何十年も後になると思うけどね。ていうか、そうでなきゃ駄目よ。
舌の根も乾かないうちにすぐこっちに来るような真似したら、また叩き返すからね!
──はは。そうしてくれると、嬉しいなぁ。
──うん。
だからそれまで……元気でね。サイ。
──あぁ。
俺は、これからもちゃんと生きるよ。
……さようなら、フレイ。