【完結】機動戦士ガンダムSEED Revelation ~紅蓮のフレイ~   作:kayako

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part6 カガリ、子供をMSに乗せる

 

 

《ナオト・シライシ。

 君の活躍、私は嬉しいぞ》

 

 カガリの特別通信は続いていた。

 録画されたものと分かっていても、ナオトにとってその笑顔は、女神そのものだった。

 

《ウーチバラでの奮闘を聞いた。君の同僚は大変不幸な目に遭われたが、それでも君は負けなかった。

 人々を護る為、火ではなく自らの言葉を使った君の姿勢、私は見習いたい。

 戦いの火種が未だ燻り続ける世界でこそ、人と人をつなぐ言葉が必要だ。

 私はオーブ、いや世界中に、君の戦い方を広めたい。

 言葉を発することこそが、争いを止める唯一の道だと!》

 

「アマクサ組、ほめられないねー」

 

 マユはカイキの左腕に寄り添い、じっとモニターのカガリを見ている。

 カイキがマユの手を撫でつつ、無表情で答えた。

 

「俺たちの件まで報告はしてないからな。当然だ」

 

 一方フレイは腕を組みながら、嘲りを押し隠せぬといった笑みを見せる。

 

「あの女……誰ぞに吹き込まれた空虚な言葉ばかり。

 せめて自分の言葉として装う努力はすべきだろうに」

 

 ナオトに勿論、この呟きは聞こえていない。

 

《君はオーブの……我が父上の想いを、見事ティーダで表現してくれた! 

 ナオト・シライシ。君がティーダに乗り続けることは、オーブSunTV局本社の意向でもある。

 君の活躍が報じられるや、オーブにも活気が増している。報道後わずか2日だが、大変な反響なんだ。

 私からも、頼む。

 危険なことは百も承知だ。ゆえ、君自身がもし望めば、で構わぬが……

 ティーダに、乗り続けてほしい。

 君の戦い方は、私たちの希望だ》

 

「──以上」

 

 紅い頭を軽く振りつつ、フレイは強引にビデオを止めた。

 カガリの姿が画面から消え、暫しの静寂が部屋を支配する──

 見るとナオトは、泣いていた。感激で。

 

「ありがとうございます……アスハ代表!」

 

 フーアのお守りを握りしめ、ナオトは嗚咽する。しまいには膝から崩れ落ち、座り込んで泣きじゃくり始めた。

 マユはそんなナオトを、目をパチクリさせつつ見つめながら、カイキの袖を引っ張る。

 

「変なの。ナオト、また泣いてる」

 

 答えぬカイキの代わりに、社長が笑った。

 

「嬉しい時にも、人は泣くんだよお嬢ちゃん。

 さて、ティーダのマニュアルの洗い直しをしようか、ナオト君」

 

 

 

 

 

 

「ねぇカズイ君、教えて! 

 フレイが元売春婦ってホント!?」

 

 居住ブロックの調理場で、大量のニンジンをミキサーにかける作業を終えたばかりのカズイのもとに、何人か同じ第三食糧配給班の人間が集まっていた。無重力下の食事用パックに入れる食糧を作る班だ。

 主に噂好きの少女ばかりで構成された班で、勿論ナチュラルばかりである。

 

「えぇ? 私はヤクザの情婦ってきいたけど」

「違うってば、きっとヤクザの組長だよ~。だからアマクサ『組』なんじゃないの?」

 

 カズイは女の子たちに囲まれ、きまり悪げに慣れないエプロンと三角巾を直した。

 

「ごめん……

 本当に、俺にも分からないんだってば」

 

 今のフレイに関しては、何を言われても否定も肯定もできないカズイだった。

 

「後生だから教えてよカズイ君。サイさんのことだけでもいいから」

「黙ってるの、かえってあやしい!」「きっとフレイって、サイさんに振られたんじゃない? 復讐の為に乗り込んできたんだよ!」「だとしたら、超迷惑なんだけどぉ」

 

 彼女らの剣幕に押されたカズイは、当たり障りがないと自分だけで判断したことを喋ってしまう。

 

「当たらずとも遠からず……ってとこかな」

 

 サイとフレイとキラの件にさえ触れなければ、良いだろう。どうせ似たような形で、アムル・ホウナにディアッカとサイの関係も話してしまったのだから。

 大丈夫、サイが心配するほどのことじゃない。中立国の、しかも救援隊のクルーだ。それなりに良心があるヤツだって結構いる。

 ザフト兵とちょっとぐらい親密だってバラしたところで、そこまで問題になるはずがない。

 それに、サイはブリッジ勤務。自分はこんな場所(誰にでも出来る仕事)だ。

 少しぐらい──

 

 その時廊下から、トニー隊長の怒鳴り声が聞こえた。

 

「お前ら、スープ詰め作業はどうした! 

 ここは効率が悪いぞ、ポイントが低かろうと命を維持する場所ということを忘れるな」

 

 

 

 

 

 

「フレイ! 何故ジュール隊を捕らえた!!」

 

 激しい足音がブリーフィングルームに響くや、殴りかからんばかりのサイとシホが飛び込んできた。

 ナオトがサイの出現に驚き、顔を上げるより早く──

 

「貴様、ブリーフィング中だぞ!」「それどこじゃ……離せ!!」

 

 サイはカイキに掴みかかられ、両腕を押さえられてしまう。

 それでもシホが社長に顎を向け、叫んだ。

 

「義に徹した者に危害を加えるが、アマミキョの管理手段か!」

「スパイ容疑だ」

 

 フレイは当然、とでも言うように斬り捨てる。なおも吼えるサイ。

 

「彼らは、船を護ったんだぞ! 

 正気に戻れよフレイっ」

 

 離れようともがくサイの顔面に、カイキの拳が飛んだ。「口をつつしめ! 

 貴様もお仲間と一緒になりたいかっ」

 

 そのまま床に吹っ飛ばされるサイ。

 思わずナオトは彼に駆け寄ったが、その上からフレイの言葉が響いた。

 正面に立ちふさがるシホ、そして倒れたサイにも言い聞かせるように。

 

「彼らはハラジョウへ無断侵入した上、乗員に危害を加えようとした。

 例のヨダカ隊とやらの件もある。通じている可能性は考えられよう」

 

 シホが、必死で激情を抑えこみつつ反論する。

 

「侮辱だ。

 我らがテロリストと内通していると?」

「貴女がとは言わぬ、ハーネンフース嬢。しかし、侵入した者たちは分からん」

「隊長はそのような御方ではないっ!」

 

 唇から流れる血を押さえつつ、サイも叫ぶ。

 

「君だって、彼らの戦いぶりは見たはずだろう!」

「ウーチバラ内部でのザクファントムの動きに関しては、報告のみにとどまっている」

 

 フレイは頬にかかった髪をよけ、腕を組み直す。

 シホの眉間に、さらに怒りの皺が刻まれた。

 

「隊長が、奴らテロリストどもを故意に逃がしたと言いたいか。ほう……」

 

 最早、ナイフを出してもおかしくない勢いで額に青筋をたてるシホ。

 そんな彼女を何とか押しとどめ、サイはフレイに噛みついた。

 

「俺は見ていたよ。ジュール隊長とエルスマンは奮闘していた! これ以上を望めないほど!!」

「貴様の目などあてになるか」

 

 フレイの表情は変わらない。紅い髪を掴んで泣かせてやりたいほどの衝動がサイを襲う。

 

「ナチュラルの目だからってのかよ!」

「貴様の目だからだ」

「何処まで人を喰えば!」

「やめてよ、サイさんっ」

 

 またもフレイに掴みかかろうと立ち上がるサイを、ナオトは必死で押さえた。

 さすがに見かねたのか、社長もぱんぱんと手を叩く。

 

「落ち着きなさい、これだから若者は! 

 せっかくアスハ代表からお褒めの言葉をあずかったばかりだというのに」

 

 のんびりと身体を動かし、サイたちとフレイの間に入っていく社長。

 

「サイ君は、人を信じすぎる。

 ジュール隊との友情を大切にしたい気持ちは分かるがね、もう少し状況を読みなさい。

 僕らは君ほど彼らを知らない」

「えっ……? 

 知り合いなんですか、ザフトとサイさんが?」

 

 今更のように明かされた事実に、すかさず食いつくナオト。

 その瞬間、必死でサイを押さえていた彼の手から、ほんの少し力が抜けていく。

 

 

 ──それだけで、サイはひどい失望を感じた。

 

 

 こういうことだ。ザフトと、オーブの人間との埋められない溝とは。

 いかに中立国といえども、オーブはナチュラルの人間が大多数を占める。どれだけコーディネイターとナチュラルの融和を唱えていようと、双方の偏見は未だに消えることはない。

 

 さらに言えば、ザフトは地球にジェネシスを向けたのだ──

 問題は、単にコーディネイターとナチュラルの違いに留まらない。互いが互いを滅ぼそうとした2年前の酷い戦いは、今も大きく双方を隔てている。

 

 その溝の深さは、戦後のディアッカとミリアリア、その周囲を見ていれば嫌でも思い知らされる。だからこそサイもディアッカも、お互いの関係をあからさまにすることは避けていたのだが……

 だが、改めてサイは衝撃だった。

 こともあろうに、コーディネイターとナチュラルのハーフであるはずの

 ──しかも、融和を推し進める象徴であるはずのナオトが、動揺を見せたのだ。ザフト兵と懇意にしている自分に対して。

 

 

「アークエンジェルでの戦友だそうだ。

 彼らのご友情は遺伝子を超えて、ってね」

 

 カイキがサイの代わりに、皮肉混じりに吐き捨てた。

 社長の言葉はまだ続く。

 

「申し訳ないが、ハーネンフース嬢。

 同じザフトである以上、疑いは当然かかる。しかも作業艇に侵入されたのでは、弁解の余地はないでしょう」

「しかし、ジュール隊の扱いは虐待です! あのような場所に……」

 

 シホの激しい抗議。それでもフレイは冷酷だった。

 

「船の人数から考えて、瞑想室の状況は必然だ。

 食事は与えてある、心配あるまい」

「結果的にあのようになったと!?」

 

 社長の柔らかい口調が、そこへ無理矢理割り込んでいく。

 

「それで納得してもらえませんかね。早急に手はうちます」

 

 それでもシホは納得できない。勿論、サイも。

 ――そんな時。

 

 

 

「それは……

 それは、本当にひどいですよ! 一体何やってるんです!?」

 

 

 

 ブリーフィングルームを破壊せんばかりに響きわたったものは、ナオト・シライシの声だった。

 

 

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