【完結】機動戦士ガンダムSEED Revelation ~紅蓮のフレイ~ 作:kayako
「ジュール隊は、助けてくれたでしょ。
マユ、君も見てたろ? ザクファントムの斧さばき!」
マユはぽかんとしてナオトを見つめたままだ。ムジカ社長も困ったように唇をすぼめる。
「全く、何度言えばっ!」カイキがすかさず憤ったが、シホが先を制した。
「作業艇の件は、理由あってのこと──
あの白いモビルスーツだ!」
彼女は右腕の包帯を忌々しげに見やり、次いでカイキとフレイにまっすぐ顎を向ける。
「あの光は一体何だ!?
生涯忘れえぬぞ、あの忌まわしき光と痛み!」
「って、あ……!」
瞬間、ナオトが何かに気づいたようにシホを振り返り、彼女の包帯を見つめた。
シホはなおも抗議を続ける。「事と次第では、プラントへの報告もやむを……」
そこへ響く、ナオトのさらなる大声。「すいませんっ!
それ、やったの僕ですっ」
「え?」
思わず振向いてしまうシホ。
見ると、ナオトが彼女に向かって床にぶつかるほど頭を下げ、必死で謝罪していた。
「ごめんなさい。ゲイツRの、パイロットさんですよね……
あの時は、ありがとうございました」
頭を下げたまま、上目づかいにシホをチラ見するナオト。
突拍子もない少年の言葉に、さすがのシホも唖然とする。
「それゆえの……素人動作だったのか」
「そーだよっ」
またも子供の声が響く。今度はマユだ。
「アマミキョに乗りこむ為だったの。仕方ないじゃん」
しれっと開き直るマユ。
サイは頭を抱えたくなったが、半笑いになるしかなかった。
「だから、ティーダのことは心配しないで!」そう言い放つマユに対して──
「だから、の意味が分からん……」サイは呻きを押さえられず。
「ごめんで済むなら、戦争など起こらぬ」シホは諦めたように、ため息をつきつつもなお、フレイやマユを睨みすえる。
まだまだ抗議が続きそうな雰囲気にナオトがぴょんと飛び上がり、強引にその場を治めようと怒鳴った。
「だからぁ!
たった今決まったんですよっ、僕とマユが正式にティーダに乗るって!」
「え……」
一瞬現実を信じられず、思わずナオトをぽかんと眺めるサイ。
その直後
「え、えぇええぇ!!?」
サイはつい絶叫してしまい、フレイと社長を振り返る。
フレイは相変わらず、濃い睫毛をほんの少し震わせる程度の反応しかしなかった。
ウーチバラ港湾部より、民間シャトルで2時間ほどのデブリ空域。
アマミキョがとうに通過したその場所には今、3機のモビルスーツが接近していた。
ザフトのニューミレニアムシリーズ・ザクファントムにザクウォーリア。
ザフトの未来を託された新型2機はそれぞれ、ザクファントムが白、ザクウォーリアが紅に塗られていた。
ザクファントムは高機動力を誇るバックパック・「ブレイズウィザード」、そしてザクウォーリアは砲撃戦装備「ガナーウィザード」を装着している。
さらに彼らを護るように、ひときわ鮮やかなトリコロールカラーで彩られたモビルスーツが、星の間を流れていく。
ユニウス条約締結後にザフトで開発されたモビルスーツ群「セカンドシリーズ」──
その代表格、「インパルスガンダム」だった。
《将来を嘱望されたミネルバ隊の最初の任務が、特殊部隊の救出かぁ》
紅のザクウォーリアから、通信が発せられた。
威厳を保つよう努力しているようだが、明らかに少女の声だ。
《だからって、油断するなよルナ。
生き残りが隊長機だけって……》
インパルスから、こちらもまたあどけなさの残る少年の応答が流れる。
《何だってんだ、その船》
《ミネルバ・ジュニアよりはマシな船みたいね》
《やっぱりオーブの船だな。ろくでもない騒ぎを起こす》
吐き捨てるような少年の呟き。少女は無難になだめることしか出来なかった。
《でも、貴方の国よ?》
《だから腹が立つ》
《二人とも、お喋りは終わりだ。捕捉したぞ》
呑気な2機に対し、前に出た白のザクファントムからひどく冷静な声が響いた。
声だけでは、それがたった16歳の少年だとは誰も気づけないだろう。
彼らの目の前に、ひときわ大きな浮遊物が近づく。それは一見隕石のようにも見えたが、外部には分からないように内側が巧妙にくりぬかれている。
岩のように偽装された出入口から、まずザクファントムが入っていく。
安全を確認し、ザクファントムは単眼のカメラアイを二度光らせ、合図を送った。
その中身は──ちょっとした急造の要塞だった。
モビルスーツ拘束用機材が何台か備えつけられている。が、今そこに固定されているモビルスーツは1機もない。何人かノーマルスーツが浮遊していたが、いずれも整備士のようだ。
ただ、突貫工事で増設された発進口には黒いモビルスーツが1機のみ、右膝関節部を折り曲げ、崩折れるような体勢で沈黙していた。
あれは、ジン・ハイマニューバ2型──
紅いザクウォーリアの少女は、内部に進入しつつ無線で呼びかける。
《こちらミネルバ隊! パイロット、応答願います》
呼びかけに応え、ハイマニューバ2型のハッチが開き、黒いノーマルスーツの大柄なパイロットが姿を現した。
コクピットからは離れぬまま、無事を示すように大きく右手を振っている。
《お怪我はありませんか!?》
紅のザクウォーリアがゆったりとした動作で発進口に着地し、パイロットをのぞきこむように単眼を光らせる。
その後ろでは、ザクファントムが素早くハイマニューバ2型の装甲に触れ、損傷のチェックを始めていた。
ヘルメットの通信回線を調整しながら、ハイマニューバ2型パイロットも応えた。
《救援、感謝する。自分はヨダカ隊隊長、ヨダカ・ヤナセ!
テロリストによる民間救助船の乗っ取りが発生した。至急、追跡を頼む!》
後方からザクウォーリアに追尾してきたインパルスも、ザクウォーリアに比べ相当鋭敏な機動で着地し、ハッチを開いた。
「ご無事で何よりです!
ウーチバラの件は了解しています」
そこにいたのは、ザフトのエリートの証=紅のパイロットスーツを纏った紅い瞳の少年
──シン・アスカ。
勿論、彼はこの時、何も知らなかった。
彼の目前でその身体を爆砕され、彼を苛烈な運命に投げ込むトリガーとなったはずの妹が、新たな運命を歩んでいることを。
彼を差し置いて、彼女の兄を名乗る者たちと共に──
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次回予告
アマミキョを迎える、灼熱のコロニー。
そこでナオトとシンの運命は交錯し、激突する。
だがフレイは不敵に微笑む。まるで、こうなることが分かっていたかのように。
様々な思惑を乗せて進む船の中、サイは──
次回、機動戦士ガンダムSEED Revelation
「ミントン・ランデブー」
亡霊の呪詛、断ち切れ! ザク!!