【完結】機動戦士ガンダムSEED Revelation ~紅蓮のフレイ~   作:kayako

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part5 急襲! シンVSフレイ

 

 

 そのモビルスーツがモニターに映し出された時、ブリッジで通信中のサイは呟いてしまっていた。

 

「……似てる。

 ストライクに」

 

 羊水の中の如きコロニー内を飛翔する、原色で彩られたモビルスーツ──

 しかしあれには勿論、かつての友は乗っていない。

 鳴りひびく警告音に喧騒から、それがザフトのものであることは判明していた。

 相変わらずブリッジ後方で構えるリンドー副隊長が、鈍重に指示を出す。

 

「電波状況を調べろ」

「コロニー外部より、ニュートロンジャマー撒布を確認!

 接近中のザフト艦2隻からです」

 

 サイが答えると、操舵席からオサキが大仰に振り向いた。橙の髪がふわりと揺れる。

 

「また……攻撃ってことか!」

 

 すぐに反駁するアムル。

「中立だってのに! 私たちも、ここも」

「多分、相手はそう思ってない」

 

 避難民の誘導指示が飛び交う中、サイは冷静にアムルの甘さを切り捨てた。

 

「避難民用居住ブロック、未だ19、20、32区画が収容完了していませんが」

「全ブロックドッキング中にとは……まずったな」

 

 唾をくちゅりと鳴らしつつ、副隊長はいつものように愚痴る。

 救出作業が一段落したと見て、アマミキョは避難民を一旦ミントン2に輸送する為、医療ブロック他数ブロックを収容しつつあったのだが──

 その最中の、ザフトの急襲だった。

 

「ドッキング作業は一時停止。

 地上の避難民は可能な限り、居住ブロックへ収容!」

 

 

 

 

 

 既にアマミキョコアブロック(ブリッジ・カタパルトを含む船の基本部分)にドッキングしていた医療ブロックでも、また混乱が発生し──

 ネネのやや情けない叫びがこだました。

 

「反則でしょ~……合体中に奇襲なんて!」

 

 スラムから脱出してきた避難民の治療で、医療ブロック全体がひどい腐臭に包まれている。

 走り回るネネたち看護師、そしてスズミら医師の様子から、ブロック奥で待機していたシホは既に状況を把握していた。

 

「もしや……

 チャンス到来、か?」

 

 はだけたままのパイロットスーツの胸元を、静かに引き寄せる。

 

 

 

 

 一方で、地上。

 ノーマルスーツで食糧運搬を手伝いつつ、大勢の避難民にどやされていたカズイのもとに、トニー隊長の怒号が飛んだ。

 

「ザフトの襲撃だ、総員第一種警戒態勢、コード401! 

 避難民の誘導を最優先!」

 

 とはいえ、1分前まで彼らは殺人的な日光を避けつつ、ゼリーパックを難民に配っていたのだ。

 軍属経験があるといえど、カズイはそれほど早くは動けない。パニックに陥る人々にあっという間に巻き込まれ、カズイは食糧担当の少女たちや避難民ともども、狭い居住ブロック内部へ押し込められることになった。

 

「上空だけじゃない……

 多分港からも、地上からも来る」

 

 カズイはそれを誰にも言えず、呟くのが精一杯だった。

 

 

 

 

 カズイの不安を、モビルスーツデッキのフレイはとっくに関知していた。

 慌しくなったカタパルト。整備士が走り回る中、発進口が大きく開いていく。

 熱と蒸気を含んだ強風が、気圧調整されていたカタパルト内部に吹き込んでいく。

 

「突風に気をつけろ! 靴のマグネットは必須だ」

 

 フレイは整備士たちに命じつつ、鳴りひびく警報の中でメットを被りアフロディーテのコクピットに飛び乗った。

 その指示で、整備士たちはノーマルスーツの踵のマグネットを作動させる。本来は無重力下の作業用であるが、瞬間最大風速30mを超える風の中では、こうでもしなければ動くことすらままならなかった。

 

「カイキはソードカラミティで出ろ。後から援護する」

 

 フレイは指示を飛ばしつつバイザーを閉じ、素早くアフロディーテのOSを起動させる。

 誰にも聞こえない呟きと共に。

 

「また試験か……

 母上も、仕方のない人だ」

 

 その時、最後方で待機していたティーダから通信が入った。既にパイロットスーツを着けたマユだ。

 

《フレイ! ティーダはどうするの?》

 

 フレイは左手でOSの調整をしつつ、彼女にしてはかなり長いこと(但し、0.5秒あるかないかの時間)思索し──

 そして返答した。

 

「敵は港口から侵入してくる。ナオト・シライシと共に地上へ降りろ。

 但し──」

 

 

 

 

 

「分かった。

 ナオト、お待たせっ。出撃だよ!」

 

 マユは朗らかな顔で、後席のナオトを振り返る。

 

「出動って言ってよ」ナオトは慣れないバイザーの蒸れを気にしつつ、カメラとスピーカの調整を忘れなかった。

 

「敵って……決まったわけじゃないのに」

「敵だよ! あれ見てっ」

 

 モニターに映るは、コロニーの軸線上──アマミキョより200mほど上空に当たる──から急降下してくるモビルスーツ。

 鳥のようにアマミキョ後方、居住ブロック付近に接近しつつ、ビームライフルでけん制をかけてきた。

 その挙動はナオトにも、ウーチバラでのトラウマを思い起こさせた。突然上空から舞い降り、何も知らない自分たちを一方的に撃ってきた、ザフトの機体を。

 

 敵かどうかは分からない。でも、撃ってくるなら、戦わなきゃ。

 アスハ代表から託された、このモビルスーツで――

 そう心に念じながら、ナオトは改めて操縦桿を握りしめた。

 

 

 

 上空の光景を見ながら、アフロディーテのフレイが満足げに微笑む。

 

「待っていたぞ。インパルス──

 まずはその技量がどれほどか、見せてもらう」

 

 そこへブリッジから、女性の指示が流れてきた。《アフロディーテ、発進、どうぞ》

 

 フレイはその無感情な声に、軽く唇の内側を噛む。アムル・ホウナだったか、あのド素人は? 

 だが、それも一瞬の間。

 

「ストライク・アフロディーテ、フレイ・アルスター、出るぞ!」

 

 凛と張った声と共に、突風吹きすさぶ発進口から血の色に染め上げられた空へ――

 同じ血の色のストライクが発進していく。

 

 

 

 

 続いて、カイキのソードカラミティが飛び出していった。

 大嵐吹きすさぶカタパルトの中で、ハマーはその鋼鉄の戦士たちの背中に向かって──主にフレイに向けて──口笛と投げキスを送った。

 そして次の瞬間、彼は未だに準備の整わないティーダに怒声を浴びせる。

 

「何をモタついてる! メットも被れねぇのかクソガキ」

「分かってますよ!」

 

 ナオトは思い切り頬を膨らませて返事を投げつけ、前席のマユの方へ身体を乗り出した。

 

「行こう。フレイさんの援護を」

「ダーメ」

「何で!」

 

 こんな時に、マユは強情だ。

 彼女とナオトの間にちょこんと待機している黒ハロも、動こうとしない。

 

「フレイが、駄目だって。

 私の『本当の』お兄ちゃんがいるから、フレイの所は駄目だって」

 

 ナオトの瞳が、困惑と驚愕に見開かれる。

 

「わ……わけが分からないよ! 

 カイキさんじゃないの、君の兄貴は?」

 

 そんなナオトにも、マユはにっこり笑ったままだ。「関係ないじゃん、そんなこと」

 

 

 

 

 

 

 一方、コロニー内に突入したフォースインパルス――

 そのコクピットでも、怒声が響いていた。ルナマリアからだ。

 

《シン! 

 コロニーでビームはやめなさい、目的はあくまで船とモビルスーツの確保でしょ!》

「分かってる! シャフトに当てる馬鹿はしないっ」

 

 現在のシンの位置は、コロニー軸からそう離れてはいない。つまり、ほぼ無重力に近い状態で戦闘が可能だった。自分たちがいつもやっている演習どおりにやれば

 ──しかし。

 

 一体何だ、このコロニーは。

 この、温かい血を詰めたが如き、巨大な宇宙のガラス瓶は。

 それに、この大地──元は市街地らしかったが、シンの眼下に広がるものは泥の海にしか見えない。しかし、そこではまだ人が蠢いている。

 

 と、突然警告音が響きわたった。

 船の周囲をうろついていたら、いつの間にか死角に潜り込まれていたらしい。畜生、奴らのカタパルトの様子をちゃんと確認しておくんだった。

 

 下から襲い来る、血の色のモビルスーツ。空と同じ色──

 視認した瞬間には、既にシンのインパルスは足もとから攻撃を喰らっていた。

 どす黒い翼を持つ、真っ赤な機体。機動力が、このインパルスと同等だと? 

 

《何だ? 

 分離機構も使いこなせていないようだな、シン・アスカ!》

 

 衝撃と共に響く、女の声。

 俺を笑っている──というか。

 

「何故、俺の名を!?」

 

 女の声はそれに直接答えることなく、さらに言い放つ。

 

《艦の運用システムが機能していないとはいえ──

 それではせっかくの変形・分離機構の優位性も無意味だな!》

 

 こいつ、Jrでなくミネルバでなければインパルスの性能が十分発揮出来ないことまで、把握してやがるのか──

 インパルスは本来、母艦のデュートリオン送電システムを使ったエネルギー補給、そして戦術換装システムを駆使して初めて、その性能をフルに発揮する。

 しかしそのインパルス専用とも言うべき運用機構は、本来の母艦であるミネルバにしかないもの。現在の彼らの母艦たるミネルバJrには、ない。

 せいぜい条約どおりに、1機のモビルスーツではなく3機の戦闘機として、分離したインパルスを搭載するぐらいが精いっぱいだ。

 

 ──動揺をつかれ、シンの操作が僅かに鈍った。

 

 その間に、血の機体はインパルスのビームライフルを潜り抜け、その股関節から背面をがっちり、空中で掴む

 ――畜生。あの声さえなけりゃ、こんな醜態!!

 

 低重力の空中では足もとが留守になりがちとは、教官から何度も覚えこまされた。だのに、何たる不覚だろう。

 まるでインパルスに喰らいつくかのように、血の機体は離れない。シンの、若さゆえの激情が燃え上がる。

 だがその激しさが、インパルスにさらなる隙を与えた。

 インパルスはすかさず対装甲ナイフを出して相手をえぐろうと試みる。が、背後から掴まれている為にインパルスの肘関節部が伸びず、相手の装甲まで届かない。

 何とか胸部まで届いても、難なく弾かれる。

 

 トランスフェイズ装甲だ、畜生。

 

 そうしている間に、インパルスと血の機体──ストライク・アフロディーテは、コロニーの重力に捉えられる。地表へ落下していく両者。と――

 

 激しい衝撃と共に、アフロディーテの蹴りがインパルスの脚部関節に炸裂した。

 

 ただの蹴りではない。モビルスーツの膝関節部が通常ではありえない方向

 ──つまり「前方に」大きく曲がり、アフロディーテのつま先がインパルスの腰部にまで損傷を与えていたのだ。

 ヴァリアブルフェイズシフトに護られているとはいえ、それはコクピット部分に近く──

 

 無視できない振動が、シンの精神まで動揺させていた。

 

「俺で遊ぶな……

 この女ァ!」

 

 

 

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