【完結】機動戦士ガンダムSEED Revelation ~紅蓮のフレイ~ 作:kayako
襲い来るアフロディーテに対し、インパルスはソードカラミティのワイヤーに絡め取られたまま、何とかビームライフルを発砲した。
黒い翼を翻し相手がよける隙に、再び跳躍するインパルス。ソードカラミティがアーマーシュナイダーで襲いかかるが、シンの反応速度がまさった。
迫った刃をひらりとかわし、飛ぶ。インパルスは胴体から再度分離、ワイヤーを引きちぎる。
なおも追撃してくるアフロディーテの頭部バルカンをかわし、再合体。
目指すは上空、アマミキョ。無傷で確保しなければ──
そんなシンの目の前で、血の海を切り裂くように船から生まれた白い光があった。
「あれは
……白いブリッツ!」
インパルスは即、反応した。しかしまだ、機体に切れたワイヤーが絡む。思うように機動しない。
それを見越したように、空へ向かうインパルスの進路をさえぎるアフロディーテ。
──速い!
《『チグサ』のもとへは、まだ行かせない!》
「うるさいよ!」
畜生、アマミキョへはまだ遠いか。
白のブリッツに向けて、インパルスはビームライフルを放つ。船へのけん制射撃も兼ねてだったが
──またも、シンの激情は勘を鈍らせた。
「すみません、出すぎた真似を」
サイは通信を続けながらも、隣席のアムルを見やる。
彼女はずっと俯いていたが、やがて顔を上げ、ゆっくりサイを振向いた。
信じられないほどの、優しい笑顔で。
「いいのよ。副隊長の言うとおりだし──
ゆっくり学習していかなきゃね」
あれだけの屈辱の後だというのに、この女性は何を考えているのだろう。
思考がほぼ読めない笑顔。そういえば昔のフレイも、こういう表情をしていたことがよくあったっけ。
――その時だった。
インパルスのビームが、アマミキョの船体後方を直撃したのは。
またも、シンはミスを犯した。確保すべき船を二度も損傷させた。
しかも今、捕らえるべき目標を眼前で逃がした──
しかし、それはまだいい。おそらくルナマリアとレイが何とかしてくれる。
問題なのは、自分が、いいように遊ばれていることだ
――得体の知れない、モビルスーツ2機に。
戦法から判断する限り、相手に殺意は感じられない。こちらを撃破しようという意思が感じられない。
それは、シンという一人の若い戦士にとっては、間違いなく最高の屈辱だった。
――殺意を抱くまでもない雑魚ってか、俺は!
インパルスのビームライフルが、遂に激昂にまかせて火を噴いた。アフロディーテの黒い翼に向けて。
そんな青臭い少年の感情を、アフロディーテのフレイはとっくに察知していた。
ギリギリでかわしつつ、アマミキョに当たりそうなものは9.1m対艦刀で次々と薙いでいく。
「医療ブロック、第24区画に被弾!」
衝撃に揺れるブリッジに、ディックの悲鳴が響く。
しかし激震に耐えながら
――サイの脳裏で、何かが閃いた。
今だ。今しかない――ザフトの新型ストライクに感謝だ。
サイは腹を決め、コンソールパネルをいじり始める。
「医療ブロックの被害は微小。
ただ、19、30区画、それから居住ブロックの通信回線が損傷しています」
「瞑想室もかよ?」
オサキはぶつくさ言いながら、慎重にインパルスの動きを見ながら必死の舵取りをしていた。
サイはすかさず立ち上がる。「俺、確認してきます!」
「ブリッジ組が、持ち場を離れる気?」アムルがサイを怪訝そうに見たが、サイの答えは決まっていた。
「船内無線は傍受されるし、人の足がこういう時は一番役に立つ。
ですよね、副隊長?」
「講義の成果は上々か」チラリとサイを見下げつつ、副隊長は鼻毛をつまんだ。
「いいだろう、どうせ隊長は役に立たん……
但し、制限時間は3分だ」
地上の廃墟では、ルナマリアのザクウォーリアがアマミキョに向け、信号弾を次々と撃っていた。アマミキョへの通信内容とほぼ同じ信号だ。
血で濡れた空を、白と青の光が裂いていく。
《コロニーは囲まれている。奴らは逃げられない》
レイの通信が響いた──その時。
《やめて下さい!
僕らは、テロには何も関係ない。中立の救援部隊です!》
少年の大声が鳴りひびくと同時にルナマリアの目に映ったものは、真っ白に輝くモビルスーツ。
紅蓮に燃えさかる空を背景に、声と共に降ってきた白い翼。
それが、あっという間にルナマリアのザクウォーリアの目の前に堂々と降り立ったかと思うと、正面から飛びついてきた。
「その声……子供!?」
今のは外部スピーカから響いた、パイロットの声だろう。
にしても、何という大声。耳が割れるかと思った。
ザフトの技術なら、これを音波兵器にすることだって可能じゃないの?
――そんなルナマリアの思考に、レイの叫びが割り込む。
《動じるな、その機体を確保しろ!
白きブリッツだっ》
レイのザクファントムがすかさず、ビーム突撃銃で白いブリッツに火線を浴びせる。
どちらも真っ白い機体。燃えるような紅の空気に、この2機は異様に映えた。
相手は右腕の盾──トリケロスで素早く防御し、もう片方の手でルナマリア機を押さえにかかる。
ザフト機2機と堂々と渡り合えるほどの技術は、勿論マユのものだった。
ティーダはトリケロスでビームを振り払いつつ、この複合防盾の先端からビームサーベルを突き出した。
ナオトは後席で、ひたすら外部スピーカにがなる。
「僕たちはテロリストでも何でもない!
僕はオーブのSunTVレポーター、ナオト・シライシです!」
ルナマリア機の動きがほんの少し鈍る。接触した装甲を通じて、相手の声が直接響いた。
《やっぱり子供ね。
貴方、テロリストに騙されてるんじゃないの?》
「違いますよ!」
マユはそんな問答は聞いちゃいない――
ザクファントムに向けてトリケロスを突き出したまま、ティーダは驚くべき動作に移った。
一旦ルナマリア機を振り払い、一気にレイのザクファントムに走り出す。
──神速とも言うべき速度で。
ティーダは右腕の盾から、貫徹弾・ランサーダートを一発発射する。ザクファントムはそれを回避──
しようとした瞬間、ティーダは左腕で、盾からもう一本のランサーダートを抜き放った。
刀がわりに、真横からザクファントムを殴りつける。
「これ以上の戦闘はやめてください、ウーチバラだけでたくさんだ!
せっかくみんなを助けたのにっ!」
「だったら、暴れるのをやめなさい!」
ルナマリアの眼前で、レイのザクファントムが組み伏せられた。あの、少年の声が聞こえるはずのモビルスーツから。
その機体はさらにザクファントムの腰部から手榴弾を奪い、盾のある方の腕で頭部に叩きつけようとしていた。
《データバンクでは、これほどの戦闘能力は……!》
倒された機体から、レイの──
彼にしては、珍しく必死な声が響く。
《僕たちはこの暑さの中で、精一杯人を助けたんです。
脅されたわけでもなんでもない、僕たちは、自分たちの意思で!!》
と少年の声で言いながら、そのモビルスーツは二度、三度と、ザクファントムの頭部、肩部を殴りつける。それも、ピアサーロックの大きな牙を持つ、左腕でだ。
フェイズシフトを持たぬザクファントムの白い装甲が、ルナマリアの目前で傷つけられていく。
レイの声。
《構うな、ルナマリア!
撃てっ、この機体を!!》
言われなくたって、やる。
ビーム突撃銃を構えるルナマリア機。しかしこのままでは、レイまで巻き込んでしまうかもしれない──
《マユ、やめてよ! やめるんだっ》
《やーだよっ。やらなきゃ、こっちが撃たれちゃう!》
少年の声と一緒に、こちらを馬鹿にしているとしか思えない小娘の笑い声が聞こえた。
その奇妙に朗らかな声は、ルナマリアの激怒を誘う――
子供の遊び場じゃないってのよ。頭の血管が熱くたぎる。
メットを被っていなければ、いつものクセっ毛が1本から5本に増えていただろう。
「こぉのっ……
言行不一致ヤロー!」
一瞬で肉弾戦に切り替え、ルナマリア機が突進を開始。
と同時に、ザクファントムが相手の手榴弾を突撃銃の銃身で叩き落す。同時にザクファントムは、ブレイズウィザードから誘導ミサイル(ファイヤビー)を一斉に発射する。
殺しはしない、弾幕がわりだ――
付近の建造物を全て薙ぎ払うが如き、大爆発が起こった。
黒煙の間を抜け、飛び出す一筋の輝き。
何とかレイは助かったか。一瞬そう思ったルナマリアだが、飛び出したのはザクファントムではなかった。
それは、捕獲すべきモビルスーツ──白のブリッツ。
まるで白い狼のごとく、そいつはルナマリアめがけて飛びかかっていく。