【完結】機動戦士ガンダムSEED Revelation ~紅蓮のフレイ~   作:kayako

59 / 436
part7 対峙、マユVSルナ

 

 

 襲い来るアフロディーテに対し、インパルスはソードカラミティのワイヤーに絡め取られたまま、何とかビームライフルを発砲した。

 黒い翼を翻し相手がよける隙に、再び跳躍するインパルス。ソードカラミティがアーマーシュナイダーで襲いかかるが、シンの反応速度がまさった。

 迫った刃をひらりとかわし、飛ぶ。インパルスは胴体から再度分離、ワイヤーを引きちぎる。

 なおも追撃してくるアフロディーテの頭部バルカンをかわし、再合体。

 

 目指すは上空、アマミキョ。無傷で確保しなければ──

 

 そんなシンの目の前で、血の海を切り裂くように船から生まれた白い光があった。

 

「あれは

 ……白いブリッツ!」

 

 インパルスは即、反応した。しかしまだ、機体に切れたワイヤーが絡む。思うように機動しない。

 それを見越したように、空へ向かうインパルスの進路をさえぎるアフロディーテ。

 

 ──速い! 

 

《『チグサ』のもとへは、まだ行かせない!》

「うるさいよ!」

 

 畜生、アマミキョへはまだ遠いか。

 白のブリッツに向けて、インパルスはビームライフルを放つ。船へのけん制射撃も兼ねてだったが

 

 ──またも、シンの激情は勘を鈍らせた。

 

 

 

 

 

 

「すみません、出すぎた真似を」

 

 サイは通信を続けながらも、隣席のアムルを見やる。

 彼女はずっと俯いていたが、やがて顔を上げ、ゆっくりサイを振向いた。

 信じられないほどの、優しい笑顔で。

 

「いいのよ。副隊長の言うとおりだし──

 ゆっくり学習していかなきゃね」

 

 あれだけの屈辱の後だというのに、この女性は何を考えているのだろう。

 思考がほぼ読めない笑顔。そういえば昔のフレイも、こういう表情をしていたことがよくあったっけ。

 

 ――その時だった。

 インパルスのビームが、アマミキョの船体後方を直撃したのは。

 

 

 

 

 

 

 またも、シンはミスを犯した。確保すべき船を二度も損傷させた。

 しかも今、捕らえるべき目標を眼前で逃がした──

 

 しかし、それはまだいい。おそらくルナマリアとレイが何とかしてくれる。

 問題なのは、自分が、いいように遊ばれていることだ

 ――得体の知れない、モビルスーツ2機に。

 

 戦法から判断する限り、相手に殺意は感じられない。こちらを撃破しようという意思が感じられない。

 それは、シンという一人の若い戦士にとっては、間違いなく最高の屈辱だった。

 

 ――殺意を抱くまでもない雑魚ってか、俺は! 

 

 インパルスのビームライフルが、遂に激昂にまかせて火を噴いた。アフロディーテの黒い翼に向けて。

 そんな青臭い少年の感情を、アフロディーテのフレイはとっくに察知していた。

 ギリギリでかわしつつ、アマミキョに当たりそうなものは9.1m対艦刀で次々と薙いでいく。

 

 

 

 

「医療ブロック、第24区画に被弾!」

 

 衝撃に揺れるブリッジに、ディックの悲鳴が響く。

 しかし激震に耐えながら

 

 ――サイの脳裏で、何かが閃いた。

 

 今だ。今しかない――ザフトの新型ストライクに感謝だ。

 サイは腹を決め、コンソールパネルをいじり始める。

 

「医療ブロックの被害は微小。

 ただ、19、30区画、それから居住ブロックの通信回線が損傷しています」

「瞑想室もかよ?」

 

 オサキはぶつくさ言いながら、慎重にインパルスの動きを見ながら必死の舵取りをしていた。

 サイはすかさず立ち上がる。「俺、確認してきます!」

 

「ブリッジ組が、持ち場を離れる気?」アムルがサイを怪訝そうに見たが、サイの答えは決まっていた。

 

「船内無線は傍受されるし、人の足がこういう時は一番役に立つ。

 ですよね、副隊長?」

「講義の成果は上々か」チラリとサイを見下げつつ、副隊長は鼻毛をつまんだ。

 

「いいだろう、どうせ隊長は役に立たん……

 但し、制限時間は3分だ」

 

 

 

 

 

 

 地上の廃墟では、ルナマリアのザクウォーリアがアマミキョに向け、信号弾を次々と撃っていた。アマミキョへの通信内容とほぼ同じ信号だ。

 血で濡れた空を、白と青の光が裂いていく。

 

《コロニーは囲まれている。奴らは逃げられない》

 

 レイの通信が響いた──その時。

 

 

《やめて下さい! 

 僕らは、テロには何も関係ない。中立の救援部隊です!》

 

 

 少年の大声が鳴りひびくと同時にルナマリアの目に映ったものは、真っ白に輝くモビルスーツ。

 紅蓮に燃えさかる空を背景に、声と共に降ってきた白い翼。

 それが、あっという間にルナマリアのザクウォーリアの目の前に堂々と降り立ったかと思うと、正面から飛びついてきた。

 

「その声……子供!?」

 

 今のは外部スピーカから響いた、パイロットの声だろう。

 にしても、何という大声。耳が割れるかと思った。

 ザフトの技術なら、これを音波兵器にすることだって可能じゃないの? 

 ――そんなルナマリアの思考に、レイの叫びが割り込む。

 

《動じるな、その機体を確保しろ! 

 白きブリッツだっ》

 

 レイのザクファントムがすかさず、ビーム突撃銃で白いブリッツに火線を浴びせる。

 どちらも真っ白い機体。燃えるような紅の空気に、この2機は異様に映えた。

 相手は右腕の盾──トリケロスで素早く防御し、もう片方の手でルナマリア機を押さえにかかる。

 

 

 

 

 

 

 ザフト機2機と堂々と渡り合えるほどの技術は、勿論マユのものだった。

 ティーダはトリケロスでビームを振り払いつつ、この複合防盾の先端からビームサーベルを突き出した。

 ナオトは後席で、ひたすら外部スピーカにがなる。

 

「僕たちはテロリストでも何でもない! 

 僕はオーブのSunTVレポーター、ナオト・シライシです!」

 

 ルナマリア機の動きがほんの少し鈍る。接触した装甲を通じて、相手の声が直接響いた。

 

《やっぱり子供ね。

 貴方、テロリストに騙されてるんじゃないの?》

「違いますよ!」

 

 マユはそんな問答は聞いちゃいない――

 ザクファントムに向けてトリケロスを突き出したまま、ティーダは驚くべき動作に移った。

 一旦ルナマリア機を振り払い、一気にレイのザクファントムに走り出す。

 

 ──神速とも言うべき速度で。

 

 ティーダは右腕の盾から、貫徹弾・ランサーダートを一発発射する。ザクファントムはそれを回避──

 しようとした瞬間、ティーダは左腕で、盾からもう一本のランサーダートを抜き放った。

 刀がわりに、真横からザクファントムを殴りつける。

 

「これ以上の戦闘はやめてください、ウーチバラだけでたくさんだ! 

 せっかくみんなを助けたのにっ!」

 

 

 

 

「だったら、暴れるのをやめなさい!」

 

 ルナマリアの眼前で、レイのザクファントムが組み伏せられた。あの、少年の声が聞こえるはずのモビルスーツから。

 その機体はさらにザクファントムの腰部から手榴弾を奪い、盾のある方の腕で頭部に叩きつけようとしていた。

 

《データバンクでは、これほどの戦闘能力は……!》

 

 倒された機体から、レイの──

 彼にしては、珍しく必死な声が響く。

 

《僕たちはこの暑さの中で、精一杯人を助けたんです。

 脅されたわけでもなんでもない、僕たちは、自分たちの意思で!!》

 

 と少年の声で言いながら、そのモビルスーツは二度、三度と、ザクファントムの頭部、肩部を殴りつける。それも、ピアサーロックの大きな牙を持つ、左腕でだ。

 フェイズシフトを持たぬザクファントムの白い装甲が、ルナマリアの目前で傷つけられていく。

 レイの声。

 

《構うな、ルナマリア! 

 撃てっ、この機体を!!》

 

 言われなくたって、やる。

 ビーム突撃銃を構えるルナマリア機。しかしこのままでは、レイまで巻き込んでしまうかもしれない──

 

 

《マユ、やめてよ! やめるんだっ》

《やーだよっ。やらなきゃ、こっちが撃たれちゃう!》

 

 

 少年の声と一緒に、こちらを馬鹿にしているとしか思えない小娘の笑い声が聞こえた。

 その奇妙に朗らかな声は、ルナマリアの激怒を誘う――

 子供の遊び場じゃないってのよ。頭の血管が熱くたぎる。

 メットを被っていなければ、いつものクセっ毛が1本から5本に増えていただろう。

 

「こぉのっ……

 言行不一致ヤロー!」

 

 一瞬で肉弾戦に切り替え、ルナマリア機が突進を開始。

 と同時に、ザクファントムが相手の手榴弾を突撃銃の銃身で叩き落す。同時にザクファントムは、ブレイズウィザードから誘導ミサイル(ファイヤビー)を一斉に発射する。

 殺しはしない、弾幕がわりだ――

 

 

 付近の建造物を全て薙ぎ払うが如き、大爆発が起こった。

 黒煙の間を抜け、飛び出す一筋の輝き。

 何とかレイは助かったか。一瞬そう思ったルナマリアだが、飛び出したのはザクファントムではなかった。

 

 

 それは、捕獲すべきモビルスーツ──白のブリッツ。

 まるで白い狼のごとく、そいつはルナマリアめがけて飛びかかっていく。

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。