【完結】機動戦士ガンダムSEED Revelation ~紅蓮のフレイ~ 作:kayako
ブリッジでは当然、その異変はキャッチされていた。
「ザフト機2機──発進?!」
アムルが金切り声をあげる。
リンド―副隊長が、すべてを見透かしたように大きなため息をついた。
「案の定、ってか……」
「まさか、サイ君……あの子が?」アムルは呟く。
その一言は、ブリッジほぼ全員の心境を代弁していた。
ようやく、3機目が発進位置についた。ディアッカのザクウォーリアだ。
2機が発進したおかげで、カタパルト内部の乱気流がひどくなっている。
でも大丈夫、これで終わりだ。これで、全員――
サイは顎からの汗を払いつつ、3度目の信号灯を振り
――だがその途端、怒声がカタパルト中に反響した。
「おい土下座野郎!
銃殺されたいか!」
言うまでもなくハマーだ。よりにもよって、こんなタイミングで!
サイが舌打ちするより先に、容赦なくレンチが飛んできた。
同時に、ザクウォーリアのバーニアに火が入り、カタパルトを滑降し始める。
何とかレンチをよけたものの、その代償に、壁にとりつくタイミングを逸したサイ。
結果──
次の瞬間には、サイの身体は弾き飛ばされていた。
カタパルトの床に上半身を叩きつけ、0.5秒後
彼はザクウォーリアやレンチと共に、ゴム毬のように跳ね飛ばされた。
紅が満ちた、空中へ。
「ち……
レンチが無駄になっちまったぜ」
ハマーの呟きを聞く者は、いない。
「しまった!」
ディアッカが気づいた時には、遅かった。
サイの身体は既に木の葉のように、熱い血で煮えたぎる空へ放り出されていた。その真下は、泥水の池。
いくら水面とはいえ、この高さで人間が落ちれば──!
反射的に、ディアッカは機体を反転させていた。
ザクウォーリアに大気圏飛行能力はないぐらい承知している、しかし、水面に叩きつけられる前に何とかしなければ──
「ミリィが泣くぜ!」
それ以外に何も考えず、ひたすら機体をサイに向けて落下させる。
ほぼ同時に飛び込んでくる、イザークの通信。
《何してる、ディアッカ!?》
しかし構わず、ディアッカは叫んでいた。
「バカが落ちた、先に行け!」
「面倒だなぁ……
行っちゃおう、ナオト!」
完全にザフト機に包囲されたティーダ。そのコクピットでは、マユがまたもキーボードを操っていた。
「行っちゃおう……って、まさか!?」
「これだけ囲まれちゃったら、カタつけるにはこれしかないでしょ!」
既にハロはマユとナオトの真ん中で、目を明滅させながら「ジュンビカンリョウ、ブックオブレヴェレイション、オンライン」を連呼している。
「一度起動してるから、簡単だよ。初体験と一緒♪」
「何を言ってるんだ君は! あんなのをもう一度?」
ナオトはあれのおかげでコクピットで失禁した恥を、未だ忘れてはいなかった。
というかマユ、君は今、何気にとんでもないことを言わなかったか?
しかし──
「しょうがないよ。
殺したくないんでしょ?」
マユに笑顔で言われると、うなずかざるを得ないナオト。「分かったよ……」
あんな戦闘方法を取るマユをもう見たくはないというのが、ナオトの本音だった。
いらなくなった人形を引きちぎるかのように、モビルスーツを壊そうとするなんて。
確実に人がいるコクピット、それを引き剥がそうとするなんて。
マユのことがさらに分からなくなっていく。でも、マユにそうさせない為には。
彼もまた、マユとハロの指示通りに、キーボードを操り始める。
──あの、黒いジンにやられる前に!
永遠の血の夕闇の中、再び閃光を放っていくティーダ。
コロニー外のミネルバJr、ボルテールもこの光を目撃した。
その艦内では、アーサーが驚愕の声を上げる。
ややオレンジに染められたコロニー、その端で拡がっていく、白色の小爆発。
ティーダの光を背後に、ザクウォーリアは決死の降下を続けていた。
可動範囲ギリギリまで、マニピュレータを伸ばす──
その先には、落ちていくサイの身体があった。既に気を失っているらしい。
「間に合えっ!」
ディアッカは落下速度をうまく調節できるよう、機体を制御する。黒に近い泥の水面が迫る。
ティーダの光はさらに強くなったが、ディアッカは未だに気づいていなかった。
次の瞬間
盛大な泥しぶきと共に、ザクウォーリアは水面に激突した。
ルナマリアもレイもヨダカも、さらにシン、カイキ、そしてフレイも。
その場の全員が目撃していく、ティーダの光。
《通常の遮光フィルタは効かん、モニターを切れ!》
ヨダカの通信が響くが、ルナマリアの神経はそれより先にティーダにやられていた。
何しろ、目と鼻の先に機体があったのだ。
「何これ……
身体の中に入ってくる!」
──退け。撤退しろ。
──その機体に手を出すな。
強迫観念に近いものが、彼女の脳を蝕んでいく。それはレイも同じのようだ。
《退け、ルナマリア! こちらもこれ以上の戦闘は不可能だっ》
「で、でも……うごけ、な……!!」
だが、そんな彼らの前に。
不意に降り立ったものは、2機のザフト機
――ザクファントムに、ゲイツR。
《やめないか貴様ら!
ザフトがあの船を襲う理由は、一切ない!》
「誰だ……
何か感じる、これは……」
ティーダの光を受けたインパルスは、遂にアフロディーテの手で地上に叩き落されていた。
幸い、致命的な損傷は受けていない。
本来のシンならば、この仕打ちに異常なほどの怒りと屈辱を感じていたはずだった。
──しかし、光を見た彼は、その向こうに感じた。
もう、感じるはずのないものを。もう、永遠にその手から離れたはずのものを。
悠々と上空へ帰っていくアフロディーテを追うことすら出来ないまま、シンはその感触に慟哭せずにはいられない。
「マユ……
マユなのか? そこにいるのは!」
~~~~~~
次回予告
ティーダの光をめぐり、揺れ動く人々の思惑。
激しく衝突し、また、すれ違う運命。
フレイの手により一層統制されていく船で──
サイたちは再び、星が壊れる日を迎える。
次回、機動戦士ガンダムSEED Revelation
「崩壊への助走」
無音のシグナル、見失うな、アマミキョ!