【完結】機動戦士ガンダムSEED Revelation ~紅蓮のフレイ~   作:kayako

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part9 ディアッカの機転

 

 

 ブリッジでは当然、その異変はキャッチされていた。

 

「ザフト機2機──発進?!」

 

 アムルが金切り声をあげる。

 リンド―副隊長が、すべてを見透かしたように大きなため息をついた。

 

「案の定、ってか……」

 

「まさか、サイ君……あの子が?」アムルは呟く。

 その一言は、ブリッジほぼ全員の心境を代弁していた。

 

 

 

 

 ようやく、3機目が発進位置についた。ディアッカのザクウォーリアだ。

 2機が発進したおかげで、カタパルト内部の乱気流がひどくなっている。

 

 でも大丈夫、これで終わりだ。これで、全員――

 サイは顎からの汗を払いつつ、3度目の信号灯を振り

 

 ――だがその途端、怒声がカタパルト中に反響した。

 

 

「おい土下座野郎! 

 銃殺されたいか!」

 

 

 言うまでもなくハマーだ。よりにもよって、こんなタイミングで! 

 

 サイが舌打ちするより先に、容赦なくレンチが飛んできた。

 同時に、ザクウォーリアのバーニアに火が入り、カタパルトを滑降し始める。

 何とかレンチをよけたものの、その代償に、壁にとりつくタイミングを逸したサイ。

 

 

 結果──

 

 

 次の瞬間には、サイの身体は弾き飛ばされていた。

 カタパルトの床に上半身を叩きつけ、0.5秒後

 彼はザクウォーリアやレンチと共に、ゴム毬のように跳ね飛ばされた。

 紅が満ちた、空中へ。

 

「ち……

 レンチが無駄になっちまったぜ」

 

 ハマーの呟きを聞く者は、いない。

 

 

 

 

 

 

「しまった!」

 

 ディアッカが気づいた時には、遅かった。

 サイの身体は既に木の葉のように、熱い血で煮えたぎる空へ放り出されていた。その真下は、泥水の池。

 

 いくら水面とはいえ、この高さで人間が落ちれば──! 

 

 反射的に、ディアッカは機体を反転させていた。

 ザクウォーリアに大気圏飛行能力はないぐらい承知している、しかし、水面に叩きつけられる前に何とかしなければ──

 

「ミリィが泣くぜ!」

 

 それ以外に何も考えず、ひたすら機体をサイに向けて落下させる。

 ほぼ同時に飛び込んでくる、イザークの通信。

 

《何してる、ディアッカ!?》

 

 しかし構わず、ディアッカは叫んでいた。

 

「バカが落ちた、先に行け!」

 

 

 

 

 

 

「面倒だなぁ……

 行っちゃおう、ナオト!」

 

 完全にザフト機に包囲されたティーダ。そのコクピットでは、マユがまたもキーボードを操っていた。

 

「行っちゃおう……って、まさか!?」

「これだけ囲まれちゃったら、カタつけるにはこれしかないでしょ!」

 

 既にハロはマユとナオトの真ん中で、目を明滅させながら「ジュンビカンリョウ、ブックオブレヴェレイション、オンライン」を連呼している。

 

「一度起動してるから、簡単だよ。初体験と一緒♪」

「何を言ってるんだ君は! あんなのをもう一度?」

 

 ナオトはあれのおかげでコクピットで失禁した恥を、未だ忘れてはいなかった。

 というかマユ、君は今、何気にとんでもないことを言わなかったか? 

 しかし──

 

 

「しょうがないよ。

 殺したくないんでしょ?」

 

 

 マユに笑顔で言われると、うなずかざるを得ないナオト。「分かったよ……」

 

 あんな戦闘方法を取るマユをもう見たくはないというのが、ナオトの本音だった。

 いらなくなった人形を引きちぎるかのように、モビルスーツを壊そうとするなんて。

 確実に人がいるコクピット、それを引き剥がそうとするなんて。

 マユのことがさらに分からなくなっていく。でも、マユにそうさせない為には。

 

 彼もまた、マユとハロの指示通りに、キーボードを操り始める。

 ──あの、黒いジンにやられる前に! 

 

 

 

 

 永遠の血の夕闇の中、再び閃光を放っていくティーダ。

 コロニー外のミネルバJr、ボルテールもこの光を目撃した。

 その艦内では、アーサーが驚愕の声を上げる。

 ややオレンジに染められたコロニー、その端で拡がっていく、白色の小爆発。

 

 

 

 

 ティーダの光を背後に、ザクウォーリアは決死の降下を続けていた。

 可動範囲ギリギリまで、マニピュレータを伸ばす──

 その先には、落ちていくサイの身体があった。既に気を失っているらしい。

 

「間に合えっ!」

 

 ディアッカは落下速度をうまく調節できるよう、機体を制御する。黒に近い泥の水面が迫る。

 ティーダの光はさらに強くなったが、ディアッカは未だに気づいていなかった。

 次の瞬間

 

 

 盛大な泥しぶきと共に、ザクウォーリアは水面に激突した。

 

 

 

 

 

 

 ルナマリアもレイもヨダカも、さらにシン、カイキ、そしてフレイも。

 その場の全員が目撃していく、ティーダの光。

 

《通常の遮光フィルタは効かん、モニターを切れ!》

 

 ヨダカの通信が響くが、ルナマリアの神経はそれより先にティーダにやられていた。

 何しろ、目と鼻の先に機体があったのだ。

 

「何これ……

 身体の中に入ってくる!」

 

 ──退け。撤退しろ。

 ──その機体に手を出すな。

 

 強迫観念に近いものが、彼女の脳を蝕んでいく。それはレイも同じのようだ。

 

《退け、ルナマリア! こちらもこれ以上の戦闘は不可能だっ》

「で、でも……うごけ、な……!!」

 

 

 だが、そんな彼らの前に。

 不意に降り立ったものは、2機のザフト機

 ――ザクファントムに、ゲイツR。

 

《やめないか貴様ら! 

 ザフトがあの船を襲う理由は、一切ない!》

 

 

 

 

「誰だ……

 何か感じる、これは……」

 

 ティーダの光を受けたインパルスは、遂にアフロディーテの手で地上に叩き落されていた。

 幸い、致命的な損傷は受けていない。

 本来のシンならば、この仕打ちに異常なほどの怒りと屈辱を感じていたはずだった。

 

 

 ──しかし、光を見た彼は、その向こうに感じた。

 もう、感じるはずのないものを。もう、永遠にその手から離れたはずのものを。

 

 

 悠々と上空へ帰っていくアフロディーテを追うことすら出来ないまま、シンはその感触に慟哭せずにはいられない。

 

「マユ……

 マユなのか? そこにいるのは!」

 

 

 

 

 ~~~~~~

 

 

 次回予告

 

 ティーダの光をめぐり、揺れ動く人々の思惑。

 激しく衝突し、また、すれ違う運命。

 フレイの手により一層統制されていく船で──

 サイたちは再び、星が壊れる日を迎える。

 

 次回、機動戦士ガンダムSEED Revelation

「崩壊への助走」

 無音のシグナル、見失うな、アマミキョ! 

 

 

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