【完結】機動戦士ガンダムSEED Revelation ~紅蓮のフレイ~   作:kayako

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part2 ナオト、掌返し

 

 

 ミネルバJrでもこの事態に、全員が戸惑っていた。

 

「撤退命令?」

 

 アーサーが素直に感情を露にする。

 大げさな仕草に見えるが、彼は真面目な男だ。ただ、感情が表に出やすい性格は軍人としては不向きかも知れない。

 それを横目に、タリアは言ってのける。

 

「ミントン2からの連絡よ。

 彼らは純然たる、民間の救援隊です。ムジカノーヴォ社長からの直接の伝言、聞いてみる? 

 考察本が一冊書けるぐらいの、まどろっこしい嫌味が詰まってるけれど」

 

 アーサーはもちろん、メイリンもオペレーターたちも、呆けた表情を隠しきれない。

 それでは、自分たちは今まで一体──何を相手にしていたのだ? 

 アマミキョにテロリストが潜んでいるという情報は、一体何だった? 何の為に自分たちは、あの船と戦った? 

 これでは無実の民間船を襲うテロリストと、何も変わらないじゃないか。

 タリアは静かに唇の内側を、犬歯で噛んだ。

 

「相当のヘマをやらかしてくれたものね……ギルバート」

 

 

 

 

 ミントン1を取り囲んでいたザフト艦ミネルバJr、そしてボルテールは、攻撃を中止せざるを得なかった。

 アマミキョに確保されていたジュール隊のザクファントム・ザクウォーリア・ゲイツR3機を収容し、彼らはミントン空域から去っていく。

 

 戦争が終結して以降もテロは各地で頻発し、当然のことながらザフトでも連合でも警戒が強まっていた。

 民間の企業もそれに伴い、ある程度の武装を(大半は非合法な形で)施す組織が増加していた──

 が、それがさらなる警戒心を呼び起こし、今回のアマミキョのように軍と民間が勘違いをしあって予期せぬ衝突を起こすケースは、決して稀ではない。

 だが、その結果出た死傷者も、決して少なくはなかった。

 

 

 

 

 

 

 一時的にしろ、アマミキョはどうにか被弾箇所の修復を終えた。

 そして瞑想室では──

 

 サイが、正座させられていた。

 帰って早々、服が乾ききらないままの状態できっちり7発殴られ、ここへ放り込まれたのだ。覚悟していたとはいえ、カイキの拳は堅固だった。

 被弾のおかげかどうなのか、瞑想室の人数は一時的に10分の1ほどに減っていた。が、やはり好奇の目はサイに集中する。

 カイキとマユ、そしてナオトがサイを見下げつつ、瞑想室の格子扉を閉めた。

 

「一生入ってろ、ドブネズミ!」

 

 カイキは憤怒を隠さず、格子ごしに血のついた拳を突き出してくる。

 その背後からマユが頭を出し、ネズミの真似らしきものをしながらはしゃぐ。

 

「バイバーイ、ちゅうぅ~う♪」

 

 すぐに兄妹は出て行った。

 ナオトも少しサイを心配げにみやったが、やはり彼らの後を追おうとする。

 そんな抹茶のノーマルスーツの後姿を、サイは呼び止めた。

 

 

「ちょっと待て、ナオト。

 ──何故、また発動させた?」

 

「黙示録のことですか」

 

 ナオトは振り返りもしない。

 その声にははっきりと、不満が現れている。

 

「そうしなきゃ、あの状況は止められなかったんです」

「って、マユが言ったのか?」

 

 図星を突くサイの言葉に、ナオトは肩をこわばらせた。

 

「いけませんか。

 僕より彼女の方が、戦闘のプロなんでしょ」

 

 サイは未だに腐臭を放つワイシャツの裾を絞りながら、ナオトを諌めにかかる。

 やっぱり、この子はまだ子供だ。

 

「一部モニターしてたけど、あんな戦法はプロとは言えないよ。獣だ。

 君は、そう思わなかったのかい」

 

 ナオトは敢然とサイを振り向いた。

 真正面から話をしようというのではなく、怒りのあまりに振り向いたのだろう。

 

「僕には、マユの戦い方は分かりません! 

 ましてや貴方に、何が分かるんです」

 

 ナオトは明らかに興奮状態にあった。

 無理もない──さっきまで戦闘していた上に、マユの本性を見せつけられたのだ。虐殺にも似たあの戦法を。

 サイはナオトの気分を理解しながらも、言わずにはいられない。

 

「それと──

 ティーダは、ただのモビルスーツじゃない。核同様、慎重に扱う必要がある」

 

 周囲を気にしながら、サイは格子を掴み、ナオトに囁くように話かけていた。

 

「黙示録は、めったに発動させていいものじゃない。

 あの光を間近で浴びたら、君の身体だって――」

 

 しかし、今のナオトにサイの心が分かろうはずもなかった。

 その言葉が終わらぬうちに、一息に怒りを爆発させるナオト。

 

「言われたくありませんよ! ザフト兵逃がした人にっ!!」

 

 明らかに、先日の発言とは矛盾した言葉を吐いている。イザークの戦い方を賞賛し、シホとも普通に会話をかわしていたはずなのに。

 だがその矛盾に、ナオト自身気づくことはない。

 

 無理もない――

 ナオトに大きなトラウマを残したあの黒ジンが、再び目の前に現れたなら。

 ザフトへの恐怖、怒り、憎しみが呼び起され、同時にマユの凶暴性を目にしたなら、14になったばかりの幼い少年の心が激しくかき乱されるのは当然だ。

 

 何より。

 何故、あのジン・ハイマニューバ2型は、ザフトの正規部隊と行動を共にしていた? 

 あれは、ザフト脱走兵のテロリストという話じゃなかったのか? もしくは全く別の機体?

 

 ――いや。ナオトやマユの反応を見る限り、奴はウーチバラを襲ったのと同一犯だろう。

 確証こそないが、サイの中で何故か強い確信がある。

 だからこそ、ナオトの混乱も極まっているんだ。

 

 とっとと駆け出していく、抹茶のノーマルスーツの小さな背中。

 それを見ながら、サイはどうすることも出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 そんな瞑想室を──

 ブリッジでは、フレイがリンドー副隊長と共にモニターしていた。

 サイに背を向けて出て行くナオトを眺めつつ、フレイは尋ねる。

 

「副隊長。

 何故、あの男をブリッジから出したのです?」

「ジュール隊の解放が、ザフト側の要求内容に含まれていた。

 奴なりの独断行動だろ」

 

 副隊長はいつものように、小指で鼻をほじろうとする。

 その手首をフレイは掴んだ。

 

「オイオイ、鼻血出さす気か」副隊長はごまかそうとしたが、フレイは一切を無視する。

「この行動が予測できぬ貴方でもないでしょう、リンドー副隊長」

 

 と、アムルが横やりを入れた。「副隊長は確か、ザフト側の要求は一切呑めないと……」

「未熟な通信士は、黙って訓練をしていろ」

 

 横からの発言をきっぱり撥ねつけるフレイ。

 アムルは先ほどの戦闘での屈辱をまた思い出し、一人静かな怒りに震える。

 

 状況からは信じられないことだが、フレイはアムルより8つほど若い。その事実が、さらにアムルの怒りと嫉妬を増幅させている。

 その隣のサイの席は、幸か不幸か後任が決まらず、誰も座ってはいなかった。

 リンドー副隊長は、落ち着いて話を続けた。

 

「仮に、ワシらがそのまま要求を呑んでジュール隊を解放したとして、だ。

 奴らがあれだけのアマミキョ擁護をしたと思うか? 

 命がけで奴らに恩を売る形になったわけだよ、あの男は」

 

 ジュール隊が率先してザフト側に撤退を勧告した事実は、アマミキョブリッジにも知れ渡っていた。

 全てを察知し、フレイは彼女にしては珍しくため息をついてみせる。

 

「サイ・アーガイルの行動、全てお見通しというわけですね。

 賭けもいい加減にして頂きたい」

「つまらん賭けだったよ。

 すまんね、あんたの元・婚約者を利用しちまって」

 

 元、の部分を強調した、分かりやすい嫌味だった。

 

 

 

 

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