【完結】機動戦士ガンダムSEED Revelation ~紅蓮のフレイ~   作:kayako

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part7 君がいなくなったら悲しいんだ

 

 

 CE73年9月28日。

 

 点検の結果、ティーダのバリュート開閉機構はハード部分に異常はなかったが、プログラムの一部に損傷が発見された。

 すぐさまブリッジに報告し、協力を仰ぐサイ。

 フレイがいつになく足早にブリッジに入ってきたのは、その直後だった。

 

「情勢は依然不安定だ。

 未確認だが、ユニウスセブン付近に正体不明のモビルスーツ群が集結中との情報もある。

 今後、索敵には注意を怠らぬよう」

 

 いつも以上に厳しいフレイの視線に、クルー全員の神経が尖った。

 そんな中、サイはティーダのバリュートの件をフレイに報告し、さらにTP装甲強化を提案していく。

 ――すると意外にも、フレイの答えはOKだった。

 

「貴様らが宇宙に上がり、ウーチバラに到着した時より早半年──状況が一層不穏なのは間違いない。

 ティーダの強化案は、実現すればこれまでになく良い戦力になるだろう。

 出撃も考慮に入れて調整を重ねるんだ、それからアマミキョ各砲門の点検も忘れるな。

 突入シミュレーションは30万回では済まんぞ……

 突入が成功しても、地上はさらに忙しくなる」

 

 その時カタパルトのミゲルから、フレイに通信が入った。

 

《見てくれ、アフロのTP装甲範囲を広げてみた。

 脚部先端までは無理だったが、これで上半身はほぼすべてカバーできる》

「ご苦労。アフロディーテはそれで十分だ、後はティーダの強化を優先しろ。

 サイが協力するそうだ」

 

 フレイは素早くモニターを切り替え、カラミティのコクピット内で調整中のカイキに簡潔に説明していく。

 

「――そういうわけだ。

 足りなければカラミティからパーツを拝借する。いいな?」

《オーケー。

 ティーダを傷つけるなよ、眼鏡》

 

 自分よりティーダが優先されようと、フレイの命令には決して異を唱えることのないカイキだった。

 どうやらサイの提案は受理されそうな気配だったが――

 

 

 にも関わらず、サイは暗澹たる気持ちを隠せなかった。

 地上に降りたところで、アマミキョが安全になるはずがない──事実、ミントン以降も、テロリストとの小さな衝突は何度も発生していた。

 アマミキョの安全が保障されるまで、統制は終わらないとフレイは言った。つまり、アマクサ組が事実上船を乗っ取っている状況は、永遠に終わらないのだ。

 

 そんなサイの肩を、優しく叩く女性がいた。アムル・ホウナだ。

 

「大丈夫、私も協力するわ。

 色々教えてね」

 

 

 

 

 

 

 CE73年10月1日。

 

 アムルと連携して軌道計算プログラムを修正しながら、アムルのプログラミング能力がそれほどではないことにサイが気づいて、既に2日が経過していた。

 

 勿論、彼女は腐ってもコーディネイター。無能といっても、その無能のレベルはナチュラルであるサイが努力に努力を重ねてようやく追いつくことが可能、という高みにある。

 しかし、そんな些末事に構っていられる余裕はなかった。業務が滞りなくこなせるのならば問題はない。

 軌道上のデブリ群の予測進路、暫定コース調整、自律補正プログラムの修正など、やるべきことは山ほどある。

 そしてサイはティーダのバリュート機構、そしてTPシステムの改良作業も同時にこなしていた為、ほぼ毎日睡眠時間2時間という状態だった。

 

 

 

 

 

 

 ナオトやアマクサ組整備士、そしてマユもシミュレーションに余念がない。

 彼らパイロットや整備士の主な作業は、地上に降下して以降の機体調整だった。

 

 重力のある大気圏では、戦闘方法も当然激変する。地球の重力は、コロニーの擬似重力とも違う重みで機体を押しつぶす。それに彼らは対応していかねばならなかった。

 ミゲルやラスティ、そしてニコルにもナオトは戦闘シミュレーションを助けてもらっていたが、その成績は案外悪いものではなかった。

 コクピットに酷似したシミュレーターに身を任せ、「僕は戦闘なんか……」とぼやきつつも、ナオトは目の前に出現した標的を正確に撃ってみせる。

 後ろで見ていたマユに「すごいじゃん!」と無邪気に絶賛される気分は、決して悪いものではなかった。

 

「人間じゃないって分かってるから、撃てるだけだよ」

 

 ナオトは操縦桿を引きつつ肩をすくめてみせるが、マユは後ろから首が絞まるほどナオトを抱きしめる。

 

「そんな処もカッコイイよナオト。

 だから私、ナオト大好き!」

 

 ナオトの頬が一瞬、かあっと燃えるように熱くなる。

 だがマユの次の言葉で、彼は幾分かの冷静さを取り戻した。

 

「カイキ兄ちゃんもカッコイイんだ。だから兄ちゃんも大好き。

 撃つのがカッコイイ人、みんな大好き!」

 

 ――君はこの前、兄ちゃんが死んでも全く悲しくないとか言ったじゃないか。

 大好きなのに、死んでもいい? どういうことだよ。

 

 ナオトはそんなマユの手を、やや強引に肩からどけた。

 

「マユは、みんなが大好きなんだね。

 でも、みんなが死ぬのも平気だ」

「だって、しょうがないよ。

 死ぬのって、そんなに恐いこと?」

 

 マユはナオトの言葉の意味が、依然として分からないらしい。

 勿論、態度の硬化の理由も。

 

「大好きな人が死んだら、悲しいと思わなきゃいけないの?」

「そう思えないのなら、それは好きじゃないってことだ。ただの無関心だよ。

 僕がいなくなっても、君は何とも思わないんだろ」

「うん」

 

 あまりにもあっさりした、即答。

 絶望と共に、ナオトはマユを殴りつけたい衝動にかられた。

 

「僕は、君がいなくなったら悲しいんだ。

 君が好きだから!」

 

 

 

 

 そのナオトの一大告白は、シミュレーションを観察していたハラジョウのミゲル、ニコルのもとにまで届いていた。

 

「残念だがナオト君……

 マユに青春を求めないほうがいい」

 

 ミゲルの独り言は、あながち冗談ではなかった。その証拠に、彼は一片たりとも笑顔を見せていない。

 一方ニコルは、そんな感情のもつれには大した関心を示さない。シミュレーション結果の方に夢中のようだ。

 

「結構すごいですよ、この結果。

 SEED保持者じゃないかな、彼」

「何だって?」

 

 ミゲルもその結果を見せられ、目を見張る。「何だこりゃ……

 実戦もろくにしてないのに」

「SEED持ちにやられた元英雄としては、複雑ですか」

 

 ニコルは車椅子を鳴らし、ミゲルに微笑む。その嫌味をミゲルは受け流した。

「お前が言うな」

「そうでしたね」ニコルはうっかりしてた、というようにおどけてみせた。

 

「でも、もう一人のSEEDが目覚めたのも事実ですよ

 ――僕の死によって」

「そして俺らは、そのSEED保持者の為にここにいる。

 この過程でSEEDがまた一つ見つかるなら、大収穫だ」

 

 

 

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