【完結】機動戦士ガンダムSEED Revelation ~紅蓮のフレイ~   作:kayako

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part2 砕き切れ

 

 

 続いてフレイが、アフロディーテで出動した。

 あっという間にカイキのカラミティに追いついたかと思うと、またも例の光の帯の必殺技を披露する。

 全砲門を開きっぱなしにしたカラミティを、アフロディーテがIWSPの推力のみを利用して投げる──デブリ清掃にはもってこいの戦法だった。カラミティの射線に、アストレイやティーダがいなければの話だが。

 

《どけっ、ティーダ!》

 

 いつになく必死なフレイの声が響いたとほぼ同時に、彗星のようになったカラミティがナオトの目の前をすっとんでいく。

 シュラーク、トーデスブロック、スキュラ──

 カラミティの光が、ユニウスセブンの構造物を一瞬にして炎の華に変えていく。

 

 だが、いくら破壊してもその破片はまだ大きかった。

 

 アフロディーテはカラミティを投げ飛ばしてすぐにバーニアを噴かし、等速でデブリの海を突っ切るカラミティに追いつくが早いか、もう一度そのエメラルドの装甲を掴んだ。

 ナオトが唖然としている間に、再度フレイの警告。

 

《そこのアストレイ、邪魔だ!》

 

 そしてまたもカラミティが投げられ、閃光のカーテンが闇に展開される。慌てて射線から退避したアストレイだが、危うく脚部をもがれる処だった。

 目の前の残骸どころか、地球まで破壊するかのようなフレイの勢い――

 

 

 

 

 カタパルトではそんなフレイの戦い方に慌てふためいた整備士たちが、大急ぎでエネルギーパックを用意していた。ミゲルは舌打ちを禁じえない。

 

「やばいぞフレイ……

 これじゃ、エネルギーパックがいくらあっても!」

 

 スカイグラスパーには既にラスティが乗り込んでいる。

 

「俺が補充役に回る。フレイと一緒に出るよ。

 エネルギーが切れたらIWSPだけ外して俺が持って帰る、IWSPの予備バッテリーにエネルギー流し込んで、フレイの処へ持ってけばいい」

「それなら、彼女が戻る手間は省けるが……うまくいくか?」

 

 ミゲルは不安げだが、ラスティは構わずエンジンを始動させた。「こんな時に、スカイグラスパーを使わないって手はないだろ」

「嬢ちゃんの為だ。

 効率3倍上げ、やるぜ!」

 

 ハマーもフレイの戦いに喚起され、整備士を威勢よく怒鳴り散らしていた。

 

 

 

 

 ブリッジではオサキが、舞い散るデブリの中で操舵に四苦八苦していた。

 

「ザフトの役立たず野郎……

 もうちょい小さく砕いとけってんだっ」

 

 砲撃を繰り返しながらも、巨大デブリをよけるので精一杯なアマミキョ。

 サイもアムルも、破片の位置の特定に必死だった。大気圏突入を間近にして損傷が発生すれば、船にどんな影響が出るか分からない。

 既に外では、5枚目の光の織物が拡がっている

 ――そこへ、その場にそぐわぬ声が流れてきた。

 

《──星が終わる光景を、自分は見たくありません。

 この破片が落下すれば、チュウザンは勿論、東アジア共和国、ユーラシア連邦、大西洋連邦の国々に多大な損害が出るばかりでなく……》

 

 勿論、ナオトだ。

 こんな時にも実況にこだわる執念に、サイは呆れを超えて感心した。

 その間にも、ティーダは目の前の岩盤を次々と撃っていく。住宅の建築材だろうか、あれは? 

 

《長期的観点からの影響は避けられないでしょう。

 大地が落ちる時、燃えた土が巻き上がり、太陽を遮り、川は汚れ、作物は枯れていく。

 そして落下の衝撃により、海底火山など地底への影響も考えられます》

 

 

 

 

「ナオト、すごいっ」マユに褒められながらも、ナオトは喋りと射撃をやめない。

「黙って! この光景を、この目に焼きつける……

 かつてプラントの悲しみの象徴であり、平和を約束された地であるユニウスセブンが今、何故、大地に降りそそぐのでしょうか!」

 

 ティーダは撃つ。かつて人の生活が営まれた大地を。

 未だに収容されていない白骨遺体。もはや原形を留めず、どの部分の骨か、そもそも骨か瓦礫かすらも見分けがつかない。

 それが次々と爆砕され砂の如く崩壊していくのが見え、ナオトは一瞬だけ平静さを取り戻した。

 

 人がいたんだ、ここは。オーブや、ウーチバラと同じに。

 そして何も知らない人が、何も知らずに死んでいった。フーアさんやアイムさんと同じに。

 

「人類に対する神の業火なのかは分かりませんが、これが落ちれば、ここで亡くなった24万3721名の魂は、地球を滅ぼす火になります! 

 それでは、報われません。――あまりにも」

 

 ティーダはなおも、残骸を撃つ。ナオトの声と共に。

 

「学校の教室でしょうか──

 黒板と机の残骸のようなものが、何かの布切れと一緒に飛び散っていきます」

 

 そこでナオトは、一旦マイクを切った。

 

「ごめんなさい」と、一言謝罪しながら。

「誰かを殺す前に、貴方たちを燃やします。

 その方が……いいでしょ」

 

 ティーダのレーザーライフルが、再び火を噴いた。

 

「今破砕したのはオフィスでしょうか……

 大量の書類が、紙吹雪のように真空中を舞っていきます」

 

 その背後ではM1アストレイが、紅白に彩られた機体から、手榴弾を次々に投げつけていく。そして作業用ドリルで容赦なく破片を砕く。

 

《チーズケーキ丸ごと、いっただき!》

 

 ひときわ大きな建造物を破壊してのけたアストレイから、女性パイロットの高笑いが響いた。

 殆どのアマミキョ隊員たちにとって目の前の残骸は、何があろうと絶対に破壊せねばならない超特級危険物であると同時に、ポイントゲットの為の獲物である。

 ポイントが次々に手に入るとは、それだけ豪勢な食事が約束されるということだ。必然的に、作業にも熱が入る――

 

 

 

 

 ブリッジにも、ナオトの実況はそのまま流されていた。

 

「この余裕のない時に、あの馬鹿!」

 

 オサキが舵を切りながら怒鳴ったが、リンドー副隊長は少しだけ苦笑した。

 

「こんな時だからさ。歴史的実況になるぞ」

 

 その一方でサイはモビルスーツ、そしてアマミキョの位置確認に追われていた。

 

「もうすぐ、重力に引かれる……

 そろそろ作業員を撤退させないと!」

 

 と、その時――

 響いたものは、フレイの怒声。

 

《こういう時に抽象的言語を使うな、0.1秒でも時間が残っている限りやる!》

 

 エネルギーの切れたアフロディーテが、帰還してきたのだ。

 

 

 

 

《どけっ、ノーマルスーツども!》

 

 凄まじい声と共に、アフロディーテが突っ込んできた。

 カタパルト内に浮遊していた整備士たちが慌てて散っていく。フレイとハマーの怒鳴り声がなければ、機体に激突していた者が出ただろう。

 

 フレイはハッチを開いて顔を出すや否や、矢継ぎ早に各部へエネルギーパック充填指示を下していく。「20秒しか待てん、急げ!」

 

 それに伴い、ハマーの声もいつも以上に大きくなった。

 

「ぼさっとしてるクソたれは、全員ユニウスと一緒にデブリになってもらうぞ、アホンダラ!」 

 あながち冗談ではない。何しろハマーは1ヶ月ほど前、ヘマをした整備士を船体の外の宇宙へ、ワイヤー一本しかつながっていない状態で放り出すという仕打ちを、実際にやってのけたのだ。一瞬で整備士たちがアフロディーテにとりついた。

 

 その間にミゲルがフレイに耳打ちし、フレイはスカイグラスパーのラスティに視線を送り、無言でうなずく。アマクサ組の意思疎通は、それだけで十分だった。

 きっちり20秒後、アフロディーテはスカイグラスパーと共に飛び出した。

 

 

 

 

 再出動したアフロディーテが、IWSPからデブリに向けて砲撃しつつ、ティーダに近づいていく。フレイの声が、ティーダのコクピットにも響いた。

 ──それは時々起こる、フレイによる詠唱。

 

《耳ある者は、聞け。

 捕らわれるべき者は、

 捕らわれていく。

 剣で殺されるべき者は、

 剣で殺される。

 ここに、聖なる者たちの忍耐と信仰が必要である》

 

「フレイさん? また聖書か」

「旧約聖書ヨハネの黙示録、第13章9-10節だって。よほど怒った時しか読まないけどね」

「今日という今日は、僕もフレイさんの気持ち分かるよ」

 

 ナオトが言った瞬間、フレイの映像がモニター脇に小さく現れた。

 

《マユ、私を投げ飛ばせ。カラミティへだ》

 

 マユはいつも通りにっこり笑い、何でもないことのように答える。

 

「オーケー! アレだねっ」

「アレって?」

 

 ナオトが聞くのも構わず、マユは意気揚々とパネルをいじり出す。フレイの通信は続いていた。

 

《マユの技術では、推力の調整が問題だな……

 ティーダ、アマミキョ外壁に移動しろ。

 アマミキョ、聞こえるか! 重力場を外壁8番区画へ展開!》

 

 

 

 

「何だって?」

 

 いきなりの命令に、ナオトのみならず、ブリッジのサイも動揺を隠せない。

 が、フレイは有無を言わせなかった。

 

《見ていれば分かる、急げ!》

「了解」

 

 今までの経験から、戦闘に関してはフレイにミスはない。サイは回線を船内へ繋いだ。

 

「外壁区画8番付近の人に警告します、5秒後に外壁方向へ擬似重力をかける! 

 衝撃に備えてっ」

 

 

 

 

 居住ブロックと医療ブロックの間を、リフトグリップで移動していたカズイとトニー隊長他数十名は、サイの警告が終わらぬうちに一気に「床へ」叩きつけられた。

 サイの警告通り、一気に急激な重力がこの区画へかけられたのだ。

 宇宙を航行している間、居住用ブロックはアマミキョ船体を軸に、360度回転し続ける形で安定を保つ。従って、外壁部分へ急激に擬似重力をかけるとなれば、床に叩きつけられるのは必然だった。

 しこたま腰をうったカズイの上に乗っかりながら、トニー隊長は情けなく怒鳴る。

 

「何なのだ、今度は!」

 

 そんなトニー隊長の上から、さらに2、3人の男の身体が降って来る。カズイは素早く隊長の下から抜け出たが、トニー隊長は数人分の体重を一気に喰らうハメになった。

 続いて床の下から来た軽い衝撃に、カズイは気づいた。

 すぐ外に、モビルスーツが着地したんだ──

 

 

 

 

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