【完結】機動戦士ガンダムSEED Revelation ~紅蓮のフレイ~   作:kayako

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part6 世界崩壊

 

 

 ティーダのバリュートが、遂に開かれた。

 橙の花びらの如き炎の粉を飛ばし、ティーダは白い繭のようなバリュートに包まれる。

 同時にカラミティも離脱し、バリュートを開く。機体だけなら突入は可能だが、パイロットとなるとそうはいかないのはティーダと同じだ。

 

 しかしフレイのアフロディーテは離脱しつつも、バリュートを開かない。

 そもそも、アフロディーテにはバリュート機構がない。IWSPを防御壁代わりにし、巧みに突入角度を調整しての、アフロディーテの大気圏突入だった。

 

 

 

「やったぜ、ナオト!」

 

 突入中にも関わらず、オサキはブリッジで思わず指を鳴らしてしまう。

 緊急事態中の緊急事態ではあったが、ブリッジ、カタパルト共に、かなりの歓声が沸きあがった。

 皆が、ナオトの奇跡に盛り上がった──

 ただ一人、サイを除いては。

 

 リンドー副隊長が号令を下す。

「各員、操船焦るなよ! 突入っ」

 

 アマミキョも、ティーダに続いて一気に大気圏に突進していく。燃えさかる無数の岩盤と共に。

 サイはじっとうつむいたまま、動けなかった。

 ナオトの生還は勿論嬉しい。しかし、自分の無能をこんな形で見せつけられたことが、サイは悔しかった。

 しかも、その力の無さがナオトとマユを危機に晒したのだ。

 

「しっかり。

 私も責任を取る、大丈夫」

 

 隣のアムルが、ゆっくりと微笑んでいた。重力が、アムルの長い髪を少しずつ沈ませていく。

 と――

 オペレーターとしての業務を一瞬忘れ、思わず叫ぶディック。「見ろ、あれっ」

 

 

 近づいてくる蒼い地表。

 アマミキョより遥か彼方に、次々とユニウスセブンの破片が降りそそぐ──

 白い雲に覆われた緑の平原が一瞬で光に変わり、雲が渦を巻くように形を変えていく。

 

 

 勿論その下の様子までは見えないが、光の下でいかなる破壊が行なわれているかは、全員が分かっていた。

 

 

 

 

 食堂で突入状態に入ったカズイたちもまた、モニターで地上を見ることが出来た。

 降りしきる膨大な炎の量に、カズイは声も出ない。

 一体何が起こっているのか。彼の脳はそこで完全に思考を停止させてしまった。

 代わりにトニー隊長が青ざめたまま、その場全員の心境を代弁した。

 

「どうなるというのだ……これから、世界は」

「忙しくなるな、多分」

 

 高重力のせいで食堂の食器が若干棚から落ちる音が聞こえる中、カズイはそう呟くのが精一杯だった。

 

 

 

 

 医療ブロックでは、子供たちがネネに縋りついて泣きながら、重力に耐えていた。

 ネネはそんな子供らの頭を撫でながら、自らも身体に伸しかかってくる空気の重みに耐える。

 患者たちの心情に配慮し、地上を映すモニターは切られていたが、大人たちはとうに状況を理解していた。

 老婆が無言のまま、スズミ女医の白衣の袖を掴む。ミントンで救出され、地球へ帰りたがっていた老婆だ。

 苦労を重ね黒ずんだ皺だらけの目尻から、涙が流れている。スズミはその老婆に何も言えず、黙って手をさすることぐらいしか出来なかった。

 子供たちのすすり泣きは、いつまでも終わらなかった。

 

 

 

 

 その日――地上は怒りの劫火に包まれた。

 それは、ユニウスセブンにおいて一瞬でその命を消された者たちの、魂の嘆きか。

 炎は雲を切り裂き、大地を砕き、海を割り、都市機能を崩壊させていく。

 

 地上の人々の命が奪われていくのも、また一瞬だった。

 震動する天空を見上げ、覚悟を決めた者たち。

 何も分からず、痛みすら殆どなく、天へ昇る者たち。

 泣きじゃくる子供の手をひいたまま、炎に巻かれる親。

 歴史的建築であろうが最先端の超高層ビルだろうが容赦なく破壊し、溶解し、粉砕し、地形さえ変えていく炎弾。

 

 2年前、あらゆる犠牲の上でどうにか守られたはずの大地。

 その多くが今、一瞬で大きくえぐれ、破壊され、消滅していく。

 無数の生命と共に。

 

 

 

 

 そしてチュウザンもまた、例外ではない。

 フレイのアフロディーテからでも、チュウザン方面へ降りゆく岩盤の多さは確認出来た。

 

 

 アフロディーテの左脚部は熱で異音を発していたが、それでもフレイはIWSPのみで機動しつつ、双対の対艦刀を両腕に保持し──

 未だに、破砕作業を続けていた。

 この状況下ではビームライフルやガトリング砲の砲身が熱くなりすぎる為の対艦刀だったが、その動きはさらにアフロディーテに過負荷を強いていく。

 勢いよく降ってきた炎の岩を5度目に叩き割った瞬間、アフロディーテの左脚部が関節から外れ、宙に舞った。

 IWSPで何とか摩擦熱は防いでいるものの、今やアフロディーテは、全ての接合部から悲鳴を上げていた。

 

 

 

 

 アマミキョがその姿を初めて地球上へ現したのは、旧フィリピン海南西部だった。

 オサキの操船技術と各オペレータの緻密な誘導、そしてリンドー副隊長の的確な指示により、予定コースからそれほど外れることなく、チュウザン周辺海域へアマミキョは到達したのだ。

 急速に曇り行く空の向こう、微かに流れ落ち散らばっていく紅い光が見える。

 

 あれが、地を焼く炎か──

 

 クルーたちは久しぶりの海に感嘆する余裕もないまま、茫然と波の荒れる音に耳を澄ませるばかり。

 しかし間もなく、レーザー通信で入ってきた地上のニュース映像が、彼らをさらに愕然とさせる結果になった。

 

 

 チュウザン本土の様子はまだ不明だが、ニュースによればローマ、上海、ケベック、フィラデルフィア、そして大西洋連邦の主だった地域が壊滅的な被害を受けているという。

 さらに、チュウザンと同じ東アジア共和国の北京が消滅したらしいという報道に、アマミキョは重力が再び逆転したような騒ぎになりかけた。

 そんな時だった──

 アフロディーテ、カラミティ、そしてティーダの降下地点が確認されたのは。

 

 

 

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