アビドス編開始となります。
「アビドス?」
「はい!アビドス高等学校からお手紙が届いてます。今どき手紙なんて珍しいですね」
先生なら知っているものかと思ったが、どうやら知らないみたいだ。
とある日の昼前時、私はそんな先生に手紙を渡す。
実はちょっと前から、シャーレに届く郵便物等の確認は私の仕事として任してもらっているのだ。
スケジュール調整とかその他諸々はアロナ先輩、それ以外の細々とした雑用なんかを私の仕事。といった感じの役割分担になっている。
肩書き負けしないうにこれでも日々精進しているのだ。
最近は電子化が進んでるのか、紙の書類なんかも少なくはなってきているみたいだけど、お役者仕事だからなのか、シャーレや連邦生徒会ではまだまだ現役だ。
何処ぞのセミナーの会計さんが手伝いに来てくれる時は「紙だってコストな訳で・・・会計としては・・・」とか何とかブツブツ文句を言っているのをこの前聞いた。
とはいえ、流石に紙の手紙なんてのは珍しい。
「シャーレに関する噂も結構広まってきていて、噂を聞いた生徒さん達からのお便りですかね?
良い兆候です!私たちの活躍が始まるという事ですから!」
「最近は街に出てシャーレの噂話をしてる子なんかも見かけますからねぇ」
そんなこんなで、我が事の様に喜ぶ私達を見て微笑みながら、先生は手紙を読み始めた。
■
「ええ!?それは一大事じゃないですか!」
余りにもビックリな内容だったので声を上げてしまった。
要約すると、アビドス高等学校は今現在、校舎を狙う暴力組織に襲われているいう事らしい。
そして、シャーレに救援を求める手紙であった。
「アビドス高等学校ですか・・・昔はとても大きい自治区でしたけど、気候の変化で街が厳しい状況になっていると聞きました。どれくらい大きいかと言うと、街のど真ん中で遭難する人が居る位だそうですよ」
「それ本当に街です・・・?」
地図とか無いのだろうか・・・
住民とか生徒が困りそうなものだけど。
「さすがに遭難はちょっとした誇張でしょうけどね。
それよりも、学校が暴力組織に襲われているなんてただ事ではなさそうですが・・・」
「先生、どうしますか?」
私としては勿論今すぐ助けに行くべきだと思う。連邦生徒会の手が間に合ってない以上、シャーレが動くべきだ。
ただ、シャーレとして動くかどうかは先生次第な訳だけど・・・
「よし。アロナ、スイ」
明言するまでもなく声色と表情からその意思は雄弁に伝わる。
ま、先生なら行くって言うに決まってるからね!
「スケジュールは問題無いですよ!先生!」
「当番の子達や、各所へ出張の連絡をしておきますね!」
そんな、当然そう言いますよね!とばかりに先回りした返事をする自慢の生徒達を見て、先生は少し苦笑いをした。
「よし!じゃあ行こうか、アビドスへ!」
・・・と、意気揚々とアビドスへとやってきたシャーレ一行だったが・・・
「お腹空きました・・・」
「まさかここら一帯の建物が全部もぬけの殻とはね・・・」
結論から言うと私達は遭難した。
駅に着いた時点で、圧倒的人通りの無さを疑問に思うべきだった。
まさかアロナ先輩の言ってた事が盛大なフラグになるなんて・・・
「お店もやってないですし、助けを求めようにも人の気配は全く無いし・・・」
「電波も圏外だね・・・」
「どどどどうしましょう先生ッ!このままじゃ私達、乾涸びちゃいますよ!!」
流石にこんなエンディングはゴメンだ。
食べ物や飲み物は現地で買えば良いと考え、持ってこなかったのが裏目に出てしまった。
でもこんなゴーストタウンだとは思わないじゃない・・・
悲壮感を漂わせ始めた私を見て流石に不味いと思ったらしく、先生が外套のポケットを漁り出した。
「流石に仕方ないか・・・・・・アロナ、起きてる?」
「はい、先生!おはようございます!」
「うん、おはよう。早速で悪いんだけど、ここら辺に人の反応はあるかな?
どうやら迷ってしまったみたいでね」
「少々お待ちくださいね。うーん、えーと、あ、丁度こちらの方に近付いてる方が居るみたいです!なのでその場に居れば会えると思います!」
「そっか、それは良かった。アロナ、ありがとう」
「いえいえ、また何時でも呼んでください!」
「よし、聞いてたと思うけど、行ってみようか」
ボーッとやり取りを見てしまったが、声をかけられ、我に返る。
「って先生!アロナ先輩と話せたんですか?ならもっと早くアロナ先輩を頼れば良かったんじゃあ・・・」
「そこまでじゃないと思ってんだだけど、少し見込みが甘くてごめんね。シャーレ外だと、あまりアロナは長時間動けないんだよ。だから、用が無い時は休んでもらってるんだ」
なるほど・・・?便利な様でいてそういう訳でもないらしい。詳しい事は分からないが、先生が言うならそうなんだろう。
他の生徒にはアロナ先輩は見えないらしいし、まだまだアロナ先輩や先生には不思議な事が多い。
ま、今考えても仕方ないか。
「あ!先生!本当に誰か来ましたよ!」
「ビックリしました・・・シロコ先輩が今度は人を攫って来たのかと・・・」
「ん・・・流石の私も誘拐はしない」
「誘拐以外もダメだからね!?」
彼女達は和気藹々と話をしている。
とても仲が良さそうだし、実際良いのだろう。
案内してもらう途中、多くの砂に埋もれた建物が見えた。
それらは、この
「それでは、改めまして。シャーレの先生です。よろしくね」
「秘書をやらせてもらってます。篠崎スイです!よろしくお願いします!」
改まった私達の挨拶にアビドスの面々も自己紹介をしてくれた。
「以上私達4人と、今居ない委員長を含めた5人が「アビドス廃校対策委員会」の全メンバーになります。」
「ホシノ先輩、何処に行ったんでしょうねぇ」
「どうせどっかで昼寝してるんじゃないの?」
「でも何時もの場所には居なかった」
やっと受理された救援要請に加え、「大人」の存在に安心したのか、弛緩した空気が彼女らに流れる。
「よし、じゃあ持ってきた物資の確認をしてもらえるかな?」
「あっはい!ありがとうございます!」
「私も手伝いますね~」
「私達は委員長を探しに行こう。久々のお客さんなのに格好付かないし」
「ん、わかった」
私はどうしようか。
本来なら先生について行くとこだが、物資周りの用意をしたのは先生だから、自分が変に口出すよりも任せた方が良いだろう。
ならば・・・とセリカとシロコに声を掛ける。
■
「スイさん・・・でいいんだよね?先生について行かなくて良かったの?」
「私が居てもあんまり役に立たないと思うので・・・」
既にそこそこ話をしたシロコと違い、セリカとはさっき自己紹介したばかりなので、是非この機に仲良くなりたい。
それに、どんな些細な事から自分の記憶の手がかりが得られるか分からないしね。
2人に連れられ、通された部屋から校舎を見て回る。
少し離れただけで有様は打って変わった。
先程見えた範囲では、それなりの清掃と手入れが行き届いている様に見えたのだが、今見える場所は所々砂が入り込み、窓は割れ、隙間風を響く酷い様だ。
曰くここは旧校舎で、本校舎は別にあるらしい。
初めに外から見た時はこの旧校舎でさえかなりの大きさだった。
全盛期は相当な規模の学校だったのだろう。
「ホシノせんぱーい!うーん、どこ行ったのかなぁ」
「もしかしたら普通に出掛けてるのかも」
「今色々と危ないから、あんまり1人で出歩いて欲しくは無いんだけど・・・」
「ん、ホシノ先輩なら平気。そのうち戻ってくるだろうし無理に探す必要は無いかも」
出てきたはいいが、別に急ぐ必要も無いとシロコは思い直したらしい。
「それに、先生は暫く滞在すると言ってた。会う機会はいくらでもある」
「そうだけど・・・よりによって最初から委員長が不在っていうのは格好がつかないじゃない?全く・・・委員長としての自覚が足り無いんだから・・・」
大きなため息をセリカ吐く。
ホシノという人物はどうやら大分マイペースな人物みたいだ。
暫く見て回ったが、ホシノは見つからない。
「はぁ、キリないし、一旦戻ろっか」
セリカは大きく伸びをしながらため息をついた。
どうやら戻る流れになりそうだ。よし・・・
「あのー、私、もう少し校舎を見て回ってもいいですか?」
「構わないけど・・・別に特別見るような物なんて残って無いわよ?」
訝しむ様な目でセリカが見てくる。
「えーと、私散歩が趣味でして、折角初めてのアビドスなので」
ちょっと苦しいかな?
セリカは数瞬迷った顔をしていたが、隣に居るシロコの様子を見て平気と判断した様だ。助かった。
「そう?案内は必要?」
「いえ、大丈夫です、お気遣いありがとうございます」
「スイ、もしまた迷子になったら呼んで」
「流石に平気だと思いますけどね、シロコさんもありがとう!」
■
さて、多少不自然にはなってしまったが、1人になれた。
散歩が趣味も嘘では無いが・・・わざわざ2人と別れたのにも理由が実はあるのだ。
シャーレにアビドスからの手紙が来る数日前、実は私宛に1つのメールが届いていた。
『始まりはアビドスに』
差出人は不明、フリーアドレスだろう。
最初はイタズラかと思い放置していたのだが、その数日後に件の手紙が来た。
アビドスに何かあるのを匂わせるメールが来た直後に、アビドスにある学校が助けを求める手紙が身の回りに届く。
考えるまでもなく不自然だ。
最初はアビドスの生徒が何か企んだのかと考えていた。
でも、そもそもこのアドレスは先生やシャーレの活動で親しくなった数人にしか教えていないアドレスだ。
仮にハッキングかその他何か不正な手段だとしても、そもそもメールの内容が抽象的過ぎて意図が分からない。
シャーレがアビドスに来る様仕向ける為?
ならもっと脅迫じみた文にも出来た筈だ。
ここまでが私がアビドスに来るまでに考えていた推測。
ただ実際アビドスに来て、その推測が恐らく間違いである事に気付いた。
アヤネの反応を見る限り、シャーレが本当に救援に来てくれるかどうかは半信半疑だったみたいだが、そんな藁にもすがる様な思いのアビドスが、わざわざ怪しまれる様なメールを送る理由が無い。真摯に手紙で訴えるだけで十分だし、逆効果になってしまうだろう。
それに・・・
アビドスの面々はその様な事をする人達では無いと思った。
短い時間しか接していないが、それくらいは分かるつもりだ。
では、残る仮説は恐らくこれだけ。
私の記憶に関連する事だ。
勿論ただの悪戯な説が無くなった訳ではないが、どちらにせよ大した手がかりも無く、手詰まりに近い現状だ。
しばらくこれをあしがかりにでもして調べてみようと思う。
「よし、じゃあ何処から行こうかな」
今までの災害の中で、多くの生徒がアビドスを去ったという。
先程は会えなかったが、ホシノ委員長なら、もしかしたら自分の事を知っているかもしれない。
その時だった。
ダダダダダッ
「銃声?」
誰かの誤射?
いや、違う。これは恐らく・・・
気付いた瞬間私は走り出していた。
俄に外が騒がしくなってくる。
様子からして恐らくかなりの数だ。
「早く先生の所に戻らないとっ」
まさか手紙にあった武装勢力とやらにこんなにも早く遭遇するなんて・・・
先生も居るし、アロナ先輩も居る。
アビドスの人達だって強い。
きっと無事だろうけど、心配は心配だ。
来た道を戻るようにかけていたが、距離は遠いが
ヘルメットを被った何人かが、校舎内に入ってきていた。
まだ気付かれてはいないが、声が聞こえる位は近い。
「今日は軒並み借り出して気合入ってるな」
「依頼主から最近かなり急かされているらしい。ボスも焦ってんだろうさ」
迂回・・・は出来なさそうだなぁ。数は2人か。一人で行けるだろうか?その前に話し合い?流石に無理だよねぇ・・・うーん。
まあ悩んでも仕方ない。先生の指揮無しでの戦闘は初めてだが、そもそも単独行動してる私が悪い訳だし。
「よしっ!」
そこからの行動は我ながら早かった。
物陰から飛び出し、威嚇射撃をしながら懐に飛び込む。
「なっ!?」
「敵っ!?」
大きく足払いをし、2人を転倒させる。
すかさず片方の頭部を蹴り抜き、もう片方を銃で撃ち昏倒させた。
「ふぅ・・・」
飛び込んだのには、射撃に自信が無いので、なるべく近くで撃ちたいという理由もあったのだが、結果上手くいってよかった。
「多対戦で懐に飛び込むのは基本」とはちょこちょこシャーレに遊びに来るネル先輩の弁だ。状況次第で先生の事を守らなくちゃいけない事を考えればそれなりに戦闘訓練は積むべきだと思ったので、最近は快く複数の生徒に射撃や格闘術を習っているのだ。早速実践で役に立てて良かった。
さて、余韻に浸る暇はあんまりない。早く行かなければ。
そう思った直後に、
「動くな」
(油断したっ)
チラリと目を横にやると、自分にアサルトライフルを突きつけるヘルメットが見える。
どうやら、2人とは早とちりで、別行動の3人目が居たらしい。
ちょっと自惚れたらこれだ・・・
人数の確認を、もう少し慎重にしていれば防げただろうに・・・
ここにネル先輩がいれば頭をはたかれていたに違いない。
って反省より先にここをどう切り抜けるかを考えなければ
正直あまり思いつかないし、もう被弾覚悟で飛び込混んでしまおうか?
外もどんどん騒がしくなっているし、応援でも呼ばれたら堪らない。
もうなんか面倒だし突っ込もうかと思ったその時だった。
ダァンッ!!
派手な音と共に、何かが自分の横を過ぎ去って壁にぶつかる音がした。
視界の先には壁に派手にぶつかり気絶しているヘルメットの生徒。
そして先程その生徒が立っていた場所には
硝煙をあげるショットガン
もう片方の手にはその体躯に見合わぬ盾
そして、その小柄で可愛らしい外見からは想像もつかないような、ピリピリとした冷ややかな雰囲気を纏っていた。
「君、迷子?危ないよーこんな所一人でいちゃあ」
アビドス対策委員会委員長、小鳥遊ホシノその人だった。
薄暗いビルのとあるオフィスに在る二つの人影。
「ええ、簡単な話です。暁のホルス、貴方が私の元に来る。
それだけでアビドス高等学校の存続は確約しましょう」
響く男の声に色は無かった。
「・・・私に何をさせようって言うのさ」
響く少女の声は猜疑の色だった。
「キヴォトス随一の神秘を持つ、貴方の力が欲しいのですよ」
「・・・帰る」
少女の返答は男の予想通りだ。だが、結論は見えている。
「今すぐ決めろとは言いません。良い返事、お待ちしていますよ」
選択肢等、とうに無くなっているのだから。
少女が立ち去ると、まるで初めから何も無かったかの様に場は静寂になる。
「さあ先生、貴方はその爆弾を抱えながらどの様にするのでしょうか」
連邦捜査部シャーレの先生、その人物の事を思うと男は歓喜の色に満ちる。
彼の人と共に歩めば、我々は必ず、神秘の最奥に辿り着ける、そう確信している。
連邦生徒会長の
当然、傍に居る少女についても。
来訪者・・・とでも言うべきか、異質な存在。
キヴォトスの生徒は須らくヘイローを所持している。
そして、ヘイローとは神秘の象徴だ。
しかし、件の少女、何故か
一体何を依代にしたのやら。
「ククク・・・私としたことが、独り言が多くていけませんね」
灯りの無い窓からは夜空の
「先生、お会い出来るのを楽しみにしていますよ」
あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いします。
昨年度、奮い立って始めたこのお話。
だいぶ不甲斐ない速度ではありましたが、まあ続ける事に意味がある精神で頑張っていこうと思います。
本家ブルーアーカイブの方でも、ゆるキャンが始まったりと楽しく可愛らしい始まりでしたね。
今年は3周年。
私事ではありますが、今年はブルアカフェス現地に行く事になってまして、今からとても楽しみです。
以下本編について。
アビドス編スタートです。
基本本編準拠と前もって言っていた通り、本編そのままの描写になるであろうかつ、あえて書かなくても良い描写はカットしています。
最初は書いていたんですけど、「これじゃあただのコピペ傘増しでは??」となってやめました。
大事なシーンとかは書くでしょうけど、基本こうしてカットしつつになると思います。
(シロコ初邂逅からのセクハラの流れは入れるか迷いました。スイのリアクションとかも考えれば入れても良かったかも・・・?今後修正するかもです)
アビドスの面々は逞しく助け合い、懸命に自らの居場所を守ろうとしています。そんな清らかな面々に囲まれたからこそ、シロコはちょっと銀行強盗を企てる事が趣味の可愛らしい女の子になったんですねぇ。
ホシノについて
小鳥遊ホシノはアビドス編においてのキーパーソンです。
唯一の3年生、委員長、責任、etc.
その小さな肩には様々なものがのしかかっています。
彼女が道行がこれからどうなるか。
ブルーアーカイブ公式本編がこれから楽しみですね。
謎のメール、先生、ホシノ、アロナ、黒服。
スイは一体何者なのか。一応オチは決めてあるので頑張って書いていこうと思います。
どんな物が道を阻んでも、届かない星に「それでも!」と手を伸ばす。
そうしてハッピーエンドに辿り着く。
ブルーアーカイブはそんな素敵な物語なのです。