俺たちのアイドルとしてのグループ名を決めてから半年が経過した。
この頃にはアイも俺と遜色ないレベルの豊富な音源知識に加え、簡単な作曲までこなせるようになっていた。
となればあとはひたすら実技あるのみということで、俺たちは喉を酷使しない程度にほぼ毎日歌っていた。というのも俺は肉体的に最強だからどれだけ歌い続けてもまったく疲れないが、アイはそんな俺に合わせて歌い続けた結果、なんと喉が掠れて血痰が出てしまったのだ。これには俺たちも大慌てで、すぐに俺は天使の力でアイを治療した。アイはまだ声帯も未発達だし肉体的に負担をかけさせるわけにはいかない。というか大切で大事な俺の最アイが傷つくところなんて絶対に見たくない。俺の精神が磨り減る。
だからその日から俺たちはトレーニングメニューを分けて、それぞれが無理をしないように余力を残したペース配分へと変えた。その時のアイはとても悔しそうにしていたから心が痛んだけど、たとえ練習でも大切なアイが傷つく姿を見たくないと言ったら納得してくれた。それに成長期の肉体に過度なメニューは危険だからな…。
何はともあれ、それ以降は特に事件もなく、俺たちは順調に練習を重ねていった。やはりアイは練習すればするほど上達していって、そのスピードも目を見張るものがある。さすが天才と言わざるを得ない。
そうして本格的に歌の練習に入ってからさらに三ヶ月が過ぎた。
「La La La~♪」
「La La La~♪」
今、俺たちは最高に気分良く歌っていた。アイと俺のデビュー曲──まだ決まったわけじゃないけど──の収録だ。まぁ今すぐ世に出すつもりはないけどな。
え?
何でそんなに気分が良いのかって?
ああ、それはな──
当たったんだよっ!!
パソコンが!!
しかもこの時代の最新のハイグレードモデルが二台も!!
俺とアイで一台ずつ使えるだろ!!
これでテンションがあがらないわけがない。
つまりどういうことかと言うと、俺たちはある日の放課後、ふらっと電車を乗り継いで大型家電量販店に行ったんだ。今はまだ見るだけだけど、パソコンとか周辺機器とかカメラとかを探しに。
前世でも動画投稿や配信はよく観てたし、いずれは俺たちがそうなるのだからと、機材はどんな物が流行ってるのか、どういう物があるのを見に行こうと思ってな。この世界は前世と比べて少しだけ発展しているから、90年代でも大手動画投稿サイトなどでは普通に生配信が行われているし、それらで生計を立てている人もちらほらいるし。
俺たちは今はお金はないから買えないけど、見る分には自由だからな。
そしたらたまたま行った先が創業うん十年だかで、記念の福引きをやってたんだ。それもかなり大規模なものらしく、その景品のラインナップもめちゃくちゃ豪華だった。普通に大型液晶テレビとかエアコンとかもあったし──さすがに一点限りではあったけど──な。で、特等がなんとPCで、しかもデスクトップとノート両方だ。この時点で破格なのに現行のPCの中でも最高のグレードと来たもんだ。
もうね…。
やるしかないよね。
──
うん、ごめん、悪気しかなかった。だって今これを逃したらもうこの先手に入るのは何年後とかになりそうなんだもん!これも俺たちが世界へ羽ばたくための布石なのだ。
どうやら今回のイベントは特等を初め、一点ものの景品は頭に数字の0がいくつも付くような、渡す気ねぇだろってくらいの確率らしく、俺が特等を出した時は店内はちょっとした──いや大々的な騒ぎになった。
お店の人ですら小声で「ほんとにあったんだ…」とか言ってたしな。周りの騒ぎで掻き消されるほどのトーンだったが俺はバッチリ聞こえましたよ。たぶん店舗によって入ってたり入ってなかったりするんだろう。まぁ俺にかかれば一発で特等引き当てられるんですけどね?
しかも当てたのが顔面国宝級の超絶美少女──しかも片方は金髪虹眼──二人組と来たからな。SNSにでも載せるのか携帯で俺たちのことを勝手に撮る輩も大勢いたし、拡散されちゃうかもな。仮に拡散されたら、多少なりとも話題にはなるだろうし、その方が俺たちにとっても都合がいいし、別にいいけど。ただ俺たちの肖像権はどこへ行った?ってのは思うが。
しかしまぁ予想通りだが、受け取るときに保護者の有無とか聞かれたし、俺たちはまだ小学生低学年だからか、重たいもの持てる?とか色々あったけど全部俺が「大丈夫です」で片付けた。
トゥエルの身体能力を持つ俺からしたらこの程度の重量など全く問題にならない。
アイはさすがに無理そうだけど、ノートPCの方をそっちは私が持つ!って言ったから初めは断ったけど、エルにばかり重たいもの持たせられない!って言う彼女の好意を受け取って渡した。もちろんその際に疲れたら私が持つから無理しないでね?と言った。アイは俺が人外の身体能力を持つことを知ってるはずなんだけど…まぁそういうものなのだろう。俺がアイの立場でもきっと同じことを言うから。それに、そう言われた時は嬉しかったのも事実だし。
「よいしょ…」
「アイ、重たくない?私が持とうか?」
「ううん、大丈夫っ!」
「きつかったら言うんだよ」
「うん、ありがとうエル。でも本当に大丈夫だからね?」
俺もアイもまだ140センチにも満たない。そんな小さな幼女二人が自分の体の半分以上はある荷物を抱えていたら当然目立つ。特に俺の方はデスクトップだし、抱えると大きな紙袋で前が見えないから、周りから見たら危なっかしいことこの上ないのだろう。特に駅の階段の登り降りとかな。杖ついたおばあちゃんにまで心配そうに声をかけられたことから、よほど俺たちは異様に映っていたのだろう。
結局俺たちは周りの親切な大人が声をかけて来たから、無碍にする必要もないかとアイの時同様に彼らの好意に甘えることにしたのだった。別にエスカレーターでもエレベーターでも良かったんだけどな。
そして施設に帰ってきて、職員たちに事情を説明して俺とアイの部屋に二台のPCを設置してもらったのだ。
その際に彼らに〝おねだり〟してカメラと機材も購入してもらった。別に能力は使ってないよ?普通にお願いしただけ。ここはそんなに大きな施設ではないからこそ、職員と児童の距離が近い。だから職員の間でも俺のファンは多いらしく、将来アイドルを目指すこと、その下地として動画投稿サイトにオリジナルの楽曲を投稿して知名度をあげることなどを話した。その結果、普段全く我が儘を言わない上に誰にも頼ることのなかった俺がめずらしく〝おねだり〟したということで、彼らのやる気が上がったようで二つ返事で用意してくれたのだ。
ちょろ──…普通に良い人たちだな。
あ、余談だけど特等の色は俺の目と同じ虹色だった。俺の瞳の方が断然綺麗だけど。
ということがあって、ついに機材一式を揃えた俺は、アカシックレコードに接続して編集や編曲の知識をインストール。
あとは実際に音源の収録だけとなり、アイ同伴のもとで収録を始めたのだった。
そして何曲か歌ったあと、アイの希望でデュエットすることになり、冒頭へ戻るのだ。
「~~♪……ふー」
「~~♪……よし」
アイとのデュエット曲を歌い終えて収録を切る。
「おつかれ、アイ」
「おつエル~」
こうしてアイと本格的にデュエットしたのは始めてだ。
相変わらずこの子、歌が上手い。まだアイと出逢って一年も経たないが、アイが音を外したところを聴いたことがない。しかもアイは俺とトレーニングをしてから早い段階で音の聞き分けも出来ていた。アイの歌声は女児特有の高音ソプラノだが、とてもはっきり聞き取れる上に耳に残る深みがある。各音の強弱もテンポも『歌う』ことにおいては既にプロの領域に片足どころか両足突っ込んでると思う。
どんなに一流でもプロですらミスをすることはある。7歳の子がここまで美しく繊細に歌えるのは正に天才としか言いようがない。
俺?俺はまぁ…トゥエルだし超越種だし…。ぶっちゃけ現時点で世界トップクラスじゃないの。
「いやぁ…やっとアイと歌えたね」
「ね~!ずっとエルと歌いたかったから、今すごく嬉しい」
「私も~」
自然と笑みがこぼれる。大好きなアイと大好きな歌を歌えることがこんなに嬉しいなんて。
あ~幸せだなぁ。
「いよいよ投稿するよ…」
「うんうん…!」
「緊張するね…」
「まぁ最初はエルのソロ曲だもんね」
「初っぱなから顔出ししてるし」
そう、結局俺は顔出しで歌うことにしたのだ。その方がより目立つからということで。アイにも訊いてみたけど、エルは世界一の美少女なんだから自信もって顔出しして良いよ!むしろ顔出しすべき!エルの顔面国宝が世界に発信されないのは人類史上最大の損失だよ!と、とても7歳の小学一年生の語彙力とは思えないほど力強く力説されてしまった。こんなに語彙力のある小学一年生はアイと某頭脳は大人の名探偵くらいだろう。まぁ俺が世界一の美少女で顔面国宝なのは俺自身分かりきってることだしな。
「ついに私だけが知ってるエルの顔面国宝っぷりが全世界に流れてしまうのか~」
「ふふ、アイもすぐそうなるから」
「うっ…エルの隣だと私引き立て役にしかならなそう…」
「いやいや、それは絶対にあり得ないから安心して?」
「えーそうかなぁ…?」
「アイ、私から見て世界で二番目に可愛いから。アイより可愛い子なんてそれこそ私くらいだよ」
「あはは、なにそれ!てかそこは認めるんだ」
「そこはね?」
なんてったってトゥエルちゃんですから!
胸を張ってドヤ顔で決めた俺をアイが可愛いジト目で見ていた。
よせやい照れるだろ。
◆◇◆◇
【投稿完了しました】の画面が流れたのを見て、ふぅっと息を吐いた。
ついに発信してしまった。
この世界に前世の曲がないのはアカシックレコードにて確認済みだ。だから著作権とか盗作とかは心配ない。
問題は俺の歌が世間に通用するかだ。自分が今どのレベルにいるのかが分からないのだ。クソ叩かれたらどうしよう…!容姿にはこの世界で俺を超える者は存在しないと断言できるが、歌に関しては別だ。ここばかりはトゥエルちゃんのスペックを信じるしかない。たぶん、おそらく、いや確実に杞憂に終わるんだろうけど、実際の評価を見るまでは不安になるというもの。他人からの評価を気にして拗らせちゃう系ガールだからな俺は。精神は小市民なのだ。
「エル、緊張してる?」
「うん…心臓ばくばく」
「……ほんとだ」
俺の緊張はアイにも伝わったらしい。正直に答えると、アイは俺の胸に手を当てて確認する。
「下手くそって言われたらやだなぁ」
「それはないでしょ。私からしたらテレビに出てる人たちよりもエルの方が上手だと思うよ?」
「…そーお?」
「うん、それにエルの見た目なら少しくらい下手だったとしても許されるでしょ」
「まぁ、それは…」
「………」
俺が違和感に気づいたのはその時だ。
さっきからアイはずっと俺の胸に手を当てたままだ。どうかしたのだろうか?
「……アイ?」
「ん?なに?」
「いや、ずっと胸さわってるからどうしたのかなって」
「あぁ、これね…」
ぼんやり呟くと、アイはTシャツ越しに俺の胸を撫で始めた。
ん?
「アイ?」
何してるんだろうこの子。
俺が不思議そうな顔をしているのを見て、アイは俺の胸を撫でたまま俺にこう答えた。
「エル、もうおっぱいあるんだなぁって」
「……えっ?」
その瞬間、自分の顔が熱を帯び始めたことを自覚した。
「やわらかぁい」
今俺が着ているのは薄手のTシャツと、上に羽織っているシャツだけだ。
下着はまだ着けていない。
「ブラしてないの?」
「え?あ…、まだいいかなって」
「ダメだよ。エルおっぱい出てきたんだから、ちゃんと着けないと」
まてアイさんよ。おっぱい出てきた、は別の意味に聞こえるんだ。
「そうなの?でも普段から2枚着てるし、おっぱい浮いたことないよ?」
「それはそうだけど、エルは抜けてるところがあるからなぁ。何かの拍子に男子たちにも見られちゃうよ?」
アイの言うことは最もだ。俺は比較的緩い服を好むから、屈んだりしたら見えてしまう可能性があることはわかっていた。夏場は特にそう。アイ以外に見られるのは死んでも嫌だね。でも下着はまださすがに早い気がする。
「それはやだな…」
「でしょ?今度買いに行こ」
それはちょっと色々と問題があるし、何よりも──
「えーめんどくさい」
「エル?」
「ア、ハイ、カイニイコ」
有無を言わせないアイの圧力に俺は屈した。
そんなこと言われたって、全世男だったからよく分からないんだよ!
女の子ってどのタイミングで下着着けるんだ?あと下着じゃないとダメなのか?カップついたキャミソールとかもあるだろ?それでもよくね?てかほんとに着けなきゃダメ?俺まだ肉体的には7~8歳なんだが…。
「………」
「んっ…ちょ、アイ?」
俺が色々考えを張り巡らせていると、無言になったアイが俺の胸を揉み始めた。俺の膨らみ始めたおっぱいに興味があるのか?
幼女同士の乳繰りは大歓迎だがくすぐったい。決してイヤではないけど。
「手入れていい?」
「ハァ…ン…え?なんて?」
「入れちゃうね」
「え──ひゃあッ!?」
俺の敏感な体は、俺の胸をまさぐるアイの拙い手つきにも過剰に反応してしまい、くすぐったさに意識を持っていかれてアイが何を言ったのか聞き逃したから聞き返そうとしたら、勢いよくTシャツに手を突っ込まれた。
いきなりの出来事に俺が驚いて固まっている間に、アイは直に俺の僅かに膨らんだ胸をガシッと掴んだ。
「アッ、だめ──あんッ!」
「エルは敏感だねぇ♡カワイイ♡」
俺の胸にアイのひんやりした指が触れて、びくんっと身体が震えた。やっぱり敏感だわこの体。将来アイとそういうことをする時に色々と苦労しそうだ…。俺は肉体は女の子だけど前世は男だったし、それが色濃く残っているからヤられるよりヤりたいのだ。
「は…ン…ア、アイ、なにして…」
「なんだろうね~♡」
丁寧に優しく…まだしこりの残る俺の胸を下から持ち上げるように寄せて揉まれてしまう。
痛みはまったくないどころか、敏感な体はアイの小さな指先が俺の胸を押し込むごとに反応してしまう。じんわり拡がる快感に、呼吸が乱れて身体も熱くなり汗と湿り気を帯びていく。
「うふふ♡エルのココ硬くなってきてるよ♡」
「ッ!?ひンッ!?♡」
「~ッ♡やば♡カワイイ声出ちゃってる♡」
アイは人差し指で俺の胸の突起をツン、とつついてニヤニヤしながら言葉攻めのようなことをしてきた。
俺が抑えきれずに嬌声をあげると、それに気を良くしたアイは指の腹で俺の突起を押し潰しながら円を描くように擦りすり。
うそっ!ま、まって!そんなことされたら俺の体は──やっ、それっ、やばぁっ…すっごぃ…、きもちいい…っ♡
「アッ♡アッ♡や、やめっ♡」
「やだ♡」
「ああぁぁ♡しょンッ、にゃあ♡」
なにその声!?自分の口からこんなイヤラシイ声が出てるなんて信じられない…!
からだがあつい。
あぁ、やばい…っ、きもちよくて…、
なにも…かんがえられなくなるぅ…♡
「ハァ、ハァ♡やばい…エル超かわいい♡」
「んっ!ちゅ…ふァイ♡」
俺の恥態にアイも興奮してるのか、普段のトレーニング後のように息を荒くさせている。
俺の半開きの口を塞ぐようにキスしたかと思ったら、アイはすぐに舌を入れてきて、前回の時のようにくちゅくちゅと音を立てながら俺の口内を荒らし回る。口内で舌を旋回させる動きはまるで俺の舌を探すようで、反射的に舌を引っ込めようとするけど、狭い口内じゃ逃げ場なんてなくて、あっという間に捕まりアイに絡め取られてしまった。そのまま俺の舌を満遍なく舐め回していく。
「はむっ♡ぢゅぱっ♡ぢゅるるるっ♡」
「んんん~~~っっっ♡♡♡」
歯茎の裏まで舐められて、ひとしきり俺の口内を味わったアイは、今度はパクッと俺の舌を咥えると、俺に聞かせるようにわざといやらしい音を立てて舌を吸い始めた。全身に電流が迸るような感覚に、身体がびくびく震える。
ただでさえ胸だけでこんなに感じてるのに、キスまでされたらおかしくなる…!
なけなしの理性が残っていた俺は、アイを突き放して──なんて出来るはずもなく、俺自身が後ろへ退くことでアイから離れようとした。
「んちゅ…ぴちゃ…♡にげるなぁ♡」
が、すぐにそれは阻止される。アイは俺が離れようと体を引いた瞬間に、それまで俺のTシャツに突っ込んで胸を揉んでいた手の片方だけを抜いて、俺の後頭部を押さえ付けた。
「ンンっ♡ひぅ♡ちゅぱ…やらぁ♡」
「ちゅぷ…ちゅ…んふふ♡」
アイは俺の後頭部を抑えたままジリジリと迫ってくる。アイが一歩迫るごとに、俺も一歩後退する。もちろん俺たちはキスもしている状態だ。
「ぇぅ!…っ!?」
気づけばベッドまで追い込まれていたらしい。俺はバランスを崩してベッドに仰向けで倒れてしまった。
完全に背中から倒れ込む前に、俺の後頭部を押さえていたアイの腕が背中を支えてくれた。ぼふっ、と優しくベッドに俺を倒すアイ。
ようやく離れた口の端からはまたもお互いの唾液が繋がっていてアーチのように垂れていた。
「ぷあっ♡はぁ…はぁ…」
「ぷハァッ♡…もう逃げられないね?♡」
息も絶え絶えな俺の上に乗って、アイ子供ながらに色気たっぷりな笑みを浮かべ──
「いただきます♡」
「アッ──♡」
この日、俺とアイは一線を越えた。
◆◇◆◇
私の隣でスヤスヤ可愛い寝息を立てるエルを眺める。
「うふふ…♡」
あぁ、ニヤつきが治まらない。
やっと、
やっとだ。
やっとエルのぜんぶを手に入れた。
心も、体も、ぜんぶ。
きっかけは些細なことだが、結果はご覧の通り。
エルも途中で理性が吹っ切れたのか、声を我慢することなく積極的に私にねだってきた。
あの時のエルの顔、かわいかったなあ。
あのエルが、普段の凛々しい表情や凛とした立ち振舞いからは想像できないほど、どろどろに蕩けきって私を求めてくるのだ。
一緒に住んでいた女の人がそういう仕事をしていたから、知識だけはあった。
まさかハジメテが女の子になるとは思わなかったけど。
日に日にエルに堕ちていっている。エルもそうだ。高貴で高尚で孤高の天使さまが、私という人間の女の子と禁断の恋に落ちる。なんて背徳的で、なんて甘美な味なのだろう。
一度
未だ眠る天使に問う。
「これはイケナイコト?私はワルイコ?」
神聖で不可侵の存在を堕としてしまった。
何という冒涜か。
「ううん。いけないことでも悪い子でもないよ」
「ッ!?エルっ!…起きてたの?」
「ん。今起きた」
ふわぁ…と欠伸をして瞼を擦りながらエルは答えてくれた。
「おはよう、アイ」
「おはよう、エル」
静寂が私たちを包む。それがさっきまで浮かれていた私の熱を急激に冷やしていく。
どうしよう、気まずい…。
別に死ぬことは怖くない。それよりも私は、エルの記憶の中の私が強姦魔で終わることの方が、よっぽど怖い。私にとってエルに嫌われるのは、死ぬことよりもつらいことだから。
だけど、そんな酷い自己嫌悪に陥った私を救い上げてくれるのもまたエルで──
「あー…アイ」
「ん!な、なに!」
「まずは顔をあげて?」
「う、うん…」
恐る恐る顔を上げると、私の顔をじっと見ていたエルと目が合った。その表情からは特に怒っているようには感じられない。エルは少し頬を赤く染めながら困ったような、どこか恥じらいのある笑みを浮かべていた。他人の感情の変化に人一倍敏い私でも、この時のエルの感情を読み取ることはできなかった。
しばらくお互いに見つめ合っていたが、その実恐怖と緊張で視線を逸らすことができないだけの私に代わって、エルの方から切り出してくれた。
「昨日のことだけど…」
「ご、ごめんなさい!」
「えっ?」
エルが何かを言う前に。咄嗟に謝ってしまった。
あぁ失敗した…。反射的に言ってしまった。これじゃあ自分が悪いことをして後悔してますって言ってるようなものだ。いや、実際その通りなんだけど、それなら最初からするなよって話になるわけで……。
でも、それでも──
「嫌いにならないで…!」
「アイ?」
「無理やり…しちゃったのは謝るから!き、嫌いにだけはならないでぇ…!」
「アイ…」
私の目から涙が零れる。
エルの顔を見ていられなくて、俯いてしまう。
暖かい羽毛と、お花の香りが私を包み込んだ。
「バカだなぁ」
何が?なんて訊かなくても解る。
「私がアイを嫌いになるわけないじゃん」
知ってる。
「私の愛が失くなるわけじゃん」
それも知ってる。
「私の愛がそんなに軽いとでも?」
ううん、重い…です。
「私の愛は伝わってなかった?」
そんなことない。
「ならどうしてそう思ったの?」
それは…私が、無理やり…
「それは違うよ」
でも、エルがあんなふうになってるのをいいことに…
「アイだからだよ」
…私、だから?
「アイだから私のすべてをさらけ出したんだよ」
エル…
「信じて?私のこと」
うん…。
「自分のことを嫌いにならないで」
……。
「不安になるなら何度だって伝える。何度だって言ってあげる。いつだってそばに居てあげる。私が大好きなアイのことを、アイ自身が嫌いにならないで」
…………。
「ダメそう?」
「……ううん」
「好きになれなくてもいい。でも、嫌いにはならないでほしい。アイ…忘れないで。
「いつも明るいアイが好き。笑顔が可愛いアイが好き。私にひっついて幸せそうにしてるアイが好き。私以外眼中にないアイが好き。焼きもちやきなアイが好き。私と一緒にいたいって言ってくれるアイが好き。私と離れられなくてアイドルになろうとするアイが好き。歌の上手なアイが好き。ちゃんと真面目に音楽の勉強するアイが好き。ちょっとエッチなアイが好き。自分のこと可愛いって思ってるアイが好き。本当は自分に自信がないアイが好き。自分のことを嫌いだって思ってるアイが好き。私のことを愛してくれるアイが好き」
「アイという
「あなたは私の最愛の子。あなたが罪を犯したと言うなら、それは私が赦す。無常天の支配者たるこのトゥエルが赦そう。愛してる、アイ。だからどうか…私が大好きなあなたを…あなた自身が傷つけないで…」
羽ばたく音。
白くて柔らかくて、色とりどりのお花が咲き誇っている。
エルが翼を出して私を包み込んでくれた。
心が洗われていくのがわかる。
私に巣くう歪な部分を優しく浄化してくれているんだって。
エルは私を赦してくれた…。
エルを無理やり襲っちゃった、私のことを…。
──もう、だめ。
そんなふうに優しくされたら、私はもう──
「あ……う、うぅ…うあ…あああああああああっっっ!!!」
「よしよし。イイコ、イイコ。たくさん泣いて、涙と一緒に洗い流してしまいましょう」
たくさん泣いた。
今、私の心はとても晴れやかだ。
あの時と同じ…いや、それ以上に。
ねぇ、エル…。
私はいつもあなたに助けられてばかりだね。
私さ、自分のこと好きになれるかは分からない。
でも、エルがそんな私のことも好きって言うなら、私も好きになる努力くらいはしてみようかな。
エル。
私の天使。
私の運命。
私にとっての星乙女。
私が挫けそうになって空を見上げれば、あなたはいつも私の手を取って引っ張ってくれる。
まだまだ私はあなたのとなりに立つには力不足だけど、
もっともっと頑張るよ。
いつかあなたが堕ちてしまいそうになったら、そのときは私が手を引いてあげられるように。
エル。
私の最愛。
いつもあなたのことを考えてる。
好きで好きでたまらないの。
だから今日も伝えるんだ。
心からの言葉を。
「愛してるよ、エル」
あなたに〝愛してる〟って伝える度に心がぽかぽかする。
とても暖かくて、優しい気持ちが胸いっぱいに広がっていくの。
これからもずっと一緒にいよう。
あぁ、早くエルと結婚したいなあ。
──あなたと〝永遠〟を共にしたい。
◆◇◆◇
そして──
「もう大丈夫?」
「うん!」
「よかった。良い顔になったね。かわいい」
「またエルに泣かされちゃった…♪」
「あれ?ちょっと嬉しそうじゃない?」
「うん、だって…」
「だって?」
「泣いたらその度に心が洗われていく感覚なんだもん!そしてエルともっと心の距離?が近くなってるような気がするの」
「そうだね…。まぁでも?それはそうとして私は私にどろどろな執着心を持ってるアイのことも大好きだけどね」
「エル…。前から思ってたけど、エルもこんな状態の私をずっとそばに置いてくれるあたり、だいぶ執着心あるよね?」
「当たり前じゃん。死んでも離すものか。アイ、お前は未来永劫私のモノだ。その体もその心も、髪の毛一本に至るまですべて私のモノだ。私以外に明け渡すな。そして私もアイのモノだ。体も、心も…すべてな」
「……アハッ♡うれしい♡そんなこと言われたら──我慢できなくなっちゃうよ♡」
「そうそう、二人きりの時は我慢も禁止な?──おいで、アイ」
「────エルぅっっっ♡♡♡」
この後あとめちゃくちゃ──
◆◇◆◇
さらにその後──
「エル、私のこと大好きじゃん♡」
「なにを今さら」
「さっきの私の好きなとこたくさん言ってくれたやつ」
「あー…まぁアレはね…?確認みたいなものだから」
「私も言っていい?」
「……私の好きなとこ?」
「うん!」
「嬉しいけどちょっと恥ずかしいな…」
「なら言い合いっこしよ!私もまた聞きたいし…」
「ん、それならまぁ…。どっちかが恥ずかしくなったらやめよう」
「はーい♡」
その後、アイの怒涛の褒め殺しという名の私の好きなとこの羅列に速攻で恥ずかしくなり根をあげた俺がいた…。
もしかして俺って…チョロイン属性ある!?
【天使】
最新モデルのパソコン二台GET!テンションうきうき。動画投稿ぽち。
え?不正?やだなぁそういう星の下に生まれてるだけだよ(因果律操作から目を反らしながら)
ズルをしたのでアイに美味しくいただかれました。
今後も調子に乗る度にお仕置きセッ…される。
アイ専属心理カウンセラーに就任した。
哀しみは涙と共に洗い流し、花びらと共に風に乗せましょう。
【一番星】
ごちそうさまでした♡
エルを抱き潰したあと罪悪感でヘラっちゃう系彼女。
体だけでなく心もエルの隣に在りたい。
大丈夫。天使はあなたを見守っている。
心が浄化された。
ところでおかわりはありますか?
…浄化された?