メンヘラ天使とヤンデレ一番星   作:リララ

20 / 25
私たちの一言で何万人も動くなら同性婚導入の署名書いて貰うことも出来るんじゃないの?

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 トゥエル【Mirastrea】@truEL

 

 どうもトゥエルです。

 すべての事務所との面接が終わって所属も決まった。

 今後の予定を話すから今夜20時に配信来て。

 

 #トゥエル #アイ #Mirastrea

 

「よし」

 

 正式に契約が交わされて、苺プロダクションの所属となった俺は、社長からの許可が下りたことでかねてより決めていた配信で近況報告を行うことになった。

 今回は事務所に入ってから初配信ということで一応許可を伺ったが、別に配信することにいちいち許可をとる必要はないらしい。内部情報とかそういう出回ったら不味い情報さえ言わなければ今まで通り自由にしていいそうだ。

 

「なんか緊張しちゃうね」

「わかる。事務所入っちゃったし、苺プロダクションのMirastreaとしての配信は初めてだから新鮮というか」

「話す内容と言葉は選ばないといけないね。エルに任せてもいい?」

「いいよ。でも応募総数も言わないし、どこから来たとかも一切言わないし、かなりあっさりした内容になりそうだけど」

 

 事務所に入ったからには、発言には気をつけないといけない。今まで通り思ったことをそのまま言うことはできなくなる。だがまぁ…俺たちの場合はこの三年間で〝そういうキャラ(皇帝キャラと天然毒舌キャラ)〟を確立させてきたから、そこまで慎重にならなくても大丈夫だろう。仮に余計なことを言ったとしても、まぁトゥエルだし、アイだし…ってなる。

 

「その辺は大人の事情ってやつだよね」

「そうそう。私たち子供は言われたことだけ言っとけばいいんだーって大人たちからの警告かな」

「なんか楽なようで本当に言いたいことを言えないってのはめんどくさいね」

「これからテレビに出たらもっとそういう場面増えるよ。でも私たちの関係を隠さなくていい…、というか最初からバレてるから普段通り引っついていられるのは控えめに言って最高」

「それな!」

 

 俺たちの関係は初配信の時点で大っぴらに見せびらかしてたし、ファンもそれを受け入れてくれている。フォロワーや登録者の数も桁違いだから隠しても無駄だし、やっぱり動画や配信で下地(ベース)を作って正解だった。もしこれが事務所からスタートだったら俺とアイの関係も隠さなければならなかったと思うとね。

 どうせデビューするならお互い自分の気持ちに嘘偽りなく活動したいし、それがモチベーションの向上にも繋がる。そこを抑制されたらたぶん、秒で辞める自信がある。だって好きな人がとなりにいるのにイチャつけないんだぜ?自分を押し殺して、あくまでお互いに幼馴染みだけどビジネスパートナーで恋愛感情はありません、なんて装わないといけないし、何より人目につく外でアイとキスすらできなくなるのだ。そんなの耐えられない苦痛だ。どんな拷問よりも俺に効く。

 もしかしたら俺たちの関係性は、テレビでは少々刺激が強いかもしれないが。別にキスくらいは問題ないよな?同性だし。

 

「ねぇエル」

「んー?」

「小学校卒業するまでここに残るって言った本当の理由って…」

 

 アイの表情と声色から、この子の中で答えが分かりきっているのは明らかだった。やっぱりアイに隠し事は通用しない。ただ、この事に関しては俺も分かりやすかったかもしれない。

 

「…あぁ、それならアイが思ってる通りだよ」

「やっぱりエルもここが気に入ってるんだね」

 

 以前アイに言われたことがある──俺は考えていることが顔に出やすいんだと。

 最初はそんなはずはないと否定した。だって〝(トゥエル)〟は常に無表情で、感情を露にすることも、ましてや言葉に抑揚が生まれたことすら一度もなかった。常に心を凪いでいる彼女の思考が顔に出るなんて、()()()()()()()()んだ。

 当然〝トゥエル()〟もそうだと思っていた。さすがに抑揚はあるけど。

 だけど、それを伝えた後のアイの発言は俺の斜め上をいくもので、どうやらアイだけが気づけるくらいの極々微細なレベルで俺の表情は変化しているらしい。それは四六時中俺と一緒にいて、俺が唯一何の抵抗もなく本心をさらけ出せるアイだからこそ判るというレベルであって、私以外には絶対に判らないだろうって、誇らしげに語っていたんだ。

 

「居心地が良いんだよね。職員もまぁ、悪い人ではないからね」

「…ツンデレ」

 

 アイいわく、ミリ単位で俺の表情筋は動いているそうで、よく見ると分かりやすいとのこと。

 ずっととなりで俺を視てきたアイだからこそなのだろう。それを聞いたときは、そこまで俺のことを視てくれているということが純粋に嬉しかった。

 きっと俺が本物のトゥエルじゃない(俺という不純物が入ってしまった)からなのだろう。()()だったら、他人に表情の変化を悟られるなんてことは絶対にあり得ないことだから…。

 

「アイもそうでしょ?」

「まぁね。ここの人には感謝してるよ?だって私を見つけてここに連れてきたおかげで私はエルに出逢えたんだもん」

「それは私も同じだよ」

 

 以前の俺なら〝トゥエルらしく振る舞えない(憧れから遠ざかっている)〟ことに悲観的になっていたことだろう。けど今は。

 

 ──今のエルの方が〝人間味〟があってイイと思うよ。

 ──私にだけは、本当のあなたでいてほしい。

 

 アイが求める〝俺〟でいられることが、とても幸せ。

 

 それ以降、俺はずいぶんと〝表情と感情が一致する(人間らしい顔ができる)〟ようになったらしい。

 

「素直に施設が気に入ってるって言えばよかったのに」

「あの場には職員もいたし恥ずかしくて言えなかった…。だから学校生活を理由に断ったの」

 

 前にも話したが、俺とアイには二つの選択肢があった。一つは今まで通り施設で暮らすこと。もう一つが後見人になる社長の借りてるマンションの一室に引っ越すこと。後者の場合ここを出ることになるから、引っ越しや転校の手続きをしなければならない。

 今アイが言ったように俺は施設での暮らしが気に入ってしまっている。マンションに引っ越せば自由時間が増えるし、移動時間の大幅な短縮という大きなメリットはあるが、それを蹴ってでも今はここにいたいと思うほど、存外俺はここが好きみたいだ。

 

「あれ聞いてエルさすがだなって思った」

「でしょ」

 

 マンション住まいも魅力的だが今はまだここに居たい。でも正直に理由を話すのも恥ずかしい。俺はアイ以外にはトゥエルムーブをしたいのだ。その方がかっこいいからね。

 そこで俺はスマートに誘いを断るために、自分たちが多感な小学生であることを理由にした。具体的には、俺たちはまだ小学生で、元々学校でも見た目のせいで浮いている。最近になってようやく人間関係も落ち着いてきたのに、ここで転校したらまたそれを一から作らないといけない。俺もアイもお互いしか見えていないからそれは極めて難しい上に、相手も中学生や高校生ならともかくまだまだ子供だから俺たちの関係性も理解しないで無遠慮に突っ掛かってくるだろうから、それが大きなストレスになるだろう…という感じに。

 その時に社長から、浮いてるのは見た目のせい()()じゃないだろ…と残念なものを見るような目で言われたのは遺憾の意だけど。

 実際それで察しの良い彼らは納得してくれた。俺たちが周りの存在を石ころ程度にしか認識していないことも含めて。失敬な、それはアイだけだ。俺はちゃんと人として認識してるぞ。アイ以外のクラスメイトの名前誰も知らないし覚える気もないけど。

 

 そういうところだぞ…と脳内で斉藤社長の声が聞こえたような気がした。

 

 ◆◇◆◇

 

 時刻は19時45分。この日は学校が終わって真っ直ぐ帰宅して、早めの晩御飯とお風呂を済ませた。普段はこの時間にお風呂なのだが、配信があるからと特別に早めに入らせて貰った。ちなみにいつもぐったりして疲れちゃうから、今日は()()()()()()()()()()()()

 

 既に待機人数は一万人を超えていて、チャット欄は大いに盛り上がっている。最終的にどこまで伸びるか楽しみだ。

 Twitterの方も確認してみると、朝の固定ツイートは拡散希望のタグを付けていないにも関わらず、RTが30万、いいねが100万を超えていた。前世ではフォロワートップクラスの有名人でもなかなかお目にかかれない数だ。海外勢のフォロワーも多いとはいえやっぱりトゥエルすげーな。

 

「すごい人数」

「過去最高いきそう?」

「いくと思う。色んなところで話題になってるっぽい」

 

 今回からSNSで宣伝をしたことによって俺たちを知らない人たちにも目が行き届くようになった。知らなくてもこれだけ話題になってたら興味本位で観てみようって人がいるものと思われる。

 

「てか佐藤社長からLINE来てるじゃん」

「ほんとだ。ミヤコさんからも来てた」

 

 彼らの連絡先は契約したその日に交換した。基本的に業務連絡しかしないため、手っ取り早く伝えるために4人グループを作っている。

 社長からは『お前らの一言一句で何万人もの人間に影響を与えることを忘れるなよ』、ミヤコさんは俺宛に『観てるから!頑張って』と絵文字付きで送られてきた。それぞれにスタンプで返事をすると、すぐに既読がついた。

 

 時間を見る。19時55分だ。

 そろそろ準備するか。

 

 ◆◇◆◇

 

「こんばんは。トゥエルです。名字はありません」

「アイです。将来の夢はエルに名字をあげることです」

 

『始まった!』『こんばんは』『こんばんは』『初見』『え、かわゆ』『うおおおおおお』『きたああああああああ』『かわいいいいい』『かわいい!!』『かわいい』『かわいい』『初見、なんだこの天使は』『Twitter見て来ました!2人ともめちゃかわですね』『初見』『かわいすぎる』『相変わらずかわいいなー』『こんな可愛い子が二人も…』『画面内が幸せだ』『顔面偏差値たか』『世界一可愛い』『顔 面 国 宝』『全人類を公開処刑する女』『かわいいいいいいいいいいい』『二人もかわいい』『すげ…天使が二人もいる』『こんなかわいい子達が今まで無名だったとか』『初見です』『Twitterみたよー』『事務所決まったと聞いて』『面接おつかれさまー!』『あああ一週間ぶりの生トゥエル癒されるんじゃあああ』『うわめっちゃきれーな子』『やっぱり二人ともかわいーなー』『すげーかわいい』『アイちゃんLOVE~』『Twitterみた!一目惚れしました!』『待ってたよ。トゥエル姫』『トゥエルやっぱり世界一かわいいな』『これがトゥエル……なんて美しいんだ』『トゥエルって名前だけは知ってたけど実物初めて見た。想像の100万倍可愛かった』『今日もアイの瞳は星が咲いてるね』『トゥエル……女神だ……跪きたい』『トゥエルまじ天使』『初見、2人とも瞳すっげー綺麗』『虹色の瞳初めて見た』『目が綺麗すぎる特にトゥエル』『銀河の妖精と一番星の生まれ変わり』『世界に一つだけの瞳』『この2人と同じ時代に生まれたことに感謝してる』『初見ですこんばんは』『かわいい』『はーかっわいいなあ』『2人とも顔ちっちゃい』『国宝級美少女が2人も…』『俺のPCの画面過去一幸せなことになってる』『この時を待ってた』『誰も言ってないけど面接お疲れさま!』『この流れなら言える。毎日トゥエルをペロペロする妄想してる』『かわいい!』『こんばんはー』『このために仕事部下に押し付けて来たわ』『この子たちどちらか一人でも天下獲れそうなのに二人もいるとか何なん』『バイト休んでやったぜ』『この二人の代わりは金輪際現れないよなぁ』『うわぁこんな綺麗な子初めて見た』『めっちゃ可愛い』『2人とも可愛い』『おい変態いたぞ』

 

 配信が始まり俺たちの顔がカメラに写ると滝のように流れるコメント欄。視聴者数は何と既に25万人を超えている。急に増えすぎだろさっきまで一万ちょっとだったのに。まだ挨拶しただけだぞ。

 アイは気付いているのかな。伝えてみようか。

 

「ねぇ見て、もう20万超えてる」

「えっ?…ほんと!やばっ」

「まだ一分も経ってないのに」

「本当に君たちはエルが好きだねぇ」

 

『もっと拡散して人増やそう!』『RTしました!』『30万くらい行くんじゃない?』『アイちゃんも大好きですっ!!』『アイも好き』『アイ可愛いな』『好きですッ!』『だいしゅき』『当然だろぉ!』『しゅき』『すここここ』『当たり前だよなぁ』『当たり前なんだよなあ』『好き』『アイすき』『2人とも好き』『エルもアイもどっちも好き』『俺は2人とも好きだぞ』『どっちかなんて選べないから両方愛でる』『二人のお兄ちゃんになりたい人生だった』『だいすきでーす』『あーなんで俺は施設暮らしじゃないんだ』『姫は拡散希望ですか?』『どんどん人増えてる』『すき!』『好きだよトゥエル』『アイちゃん好き』『初見です!』『初見クソ可愛い!こんなかわいい子たちを知らなかったとか今まで人生損してたわ』『今日初見多いね』『Twitter効果すげぇな』『RT30万とか初めて見たかも』『すごいたくさんの人が見てる』『俺は3年前から観てるぜ』『一本目の動画から観てる』『古参ですこんばんは』『こんばんはー2人ともすっごく可愛いですね!』『顔面国宝ってこういう顔をいうのか』『うわあああああ始まってた最初の二人の挨拶聞きそびれたあああああ』『トゥエルの顔面偏差値は駿台基準で100だわ』『Twitterから』『初見』『まだ始まって5分くらいなのにもう25万超えてる』『日に日に綺麗になってる』『これでまだ10歳ということに驚きを隠せない』『世界一美しい顔と聞いて』『挨拶聞きそびれたからもう一回やってほしいです…』

 

 相変わらず追いきれないけど、だいたい顔のこと言われてるんだろうなってのはわかる。

 あと、所々で初見というコメントも見える。今日は普段よりかなり初見が多いみたいだ。今まで配信は突発的に行ってたし特に宣伝も始まってからしたり、そもそもしてなかったけど、今回初めて始まる前から宣伝したらご覧の有り様だ。しかもRT30万だからな。

 

「コメント見てると今日初見多いね。前もって宣伝したからかな」

「だろうねー。RT30万だったし」

「いいね、どんどん私たちのこと知ってもらおうよ!」

 

 アイもやっぱり初見が多いことに気付いてたみたいだった。

 初見多いし、コメントでも目についたし冒頭の挨拶もう一回やっておくか。

 

「アイ、もう一回挨拶やっとこ」

「ん?おっけー」

「じゃあ改めて──どうも。トゥエルです。名字はありません」

「アイです。将来の夢はエルに名字をあげることです」

 

『百合最高』『例のやつ』『ありがとおおおおおお』『やったああああ』『やったー!』『うおおおおおおお!!!!』『挨拶ありがとう!』『尊いが溢れてる』『初見だけど挨拶最高』『すげぇ』『生放送で2回も挨拶聞けるなんて』『おおおおおお』『尊い』『尊い』『てぇてぇ』『これが例の挨拶…最高かよ』『最高』『一日二回も聞けるとか幸せ』『百合だ…』『百合』『百合最高』『うわなにその挨拶めっちゃ好き』『壮大な伏線回収になる予定』『アイちゃんの夢を全力で応援してます』『いいなぁ』『画面の中が百合空間になってる』『百合最高』『将来トゥエルがアイの姓を名乗って自己紹介するまで死ねない』『今日は歌枠ある?』

 

 なんか知らないけどこの挨拶すごい需要あるらしいんだよな。理由はまぁ何となく解る。

 アイもよく俺に合わせて考えてくれたと思う。俺からは本当に何も言ってない。ある日の撮影の時にアイがサプライズで披露してくれたものだ。あの時は色々込み上げてきて情緒がぐちゃぐちゃになったけど、総じて言うとすごく嬉しかった。コメントでも指摘されてるが将来的に俺のこの挨拶は変わるからな。

 

「まぁ早ければ六年後には挨拶変わるかな?」

「16歳になったら法律上は結婚できるからね~」

「どうする?16になったら結婚する?」

「する♡今度指輪買いに行こ♡」

「おお!いこいこ♡てか早くペアリング欲しい。成長早く止まらないかな」

 

 ペアリングの話は三年前から出ていたが、俺たちの年齢を鑑みると成長につれて指輪のサイズが合わなくなることを懸念してなかなか買うに至れないのだ。その度に買い換えればいいじゃんと思うかもしれないが、お金がかかる。理由は海外ブランドで買いたいから。前世から好きだったフランスのブランドで欲しいものがあるのだ。

 ちなみにエンゲージリングはハリー・ウィンストンで買いたい。前世では憧れはあったけど──相手もいなかったし──手が出なかったから。

 それか自作する。ペアリングも自作するか?

 

『尊い』『尊み』『キマシタワー』『ありがとうございます!』『ああ~美少女同士の百合はイイゾ~』『百合!最高!』『キマシ』『結婚するのか…俺以外のやつと』『俺と結婚してトゥエル』『ばか俺とだよ』『16歳で人妻か』『人妻トゥエル…ウッ』『その…下品なのですが…』『トゥエル人妻ってマ?』『16歳の母』『トゥエルからバブみを感じる時が来るってこと?』『なにそれ最高』『16歳のトゥエル想像を絶する美少女なんだろうな』『お前ら全員トゥエルがママ役なの異論なくて草』『当たり前のようにメスガキ堕ちしてるトゥエル』『トゥエルママ!』『トゥエルが授乳……ふぅ』『ふぅ』『ふぅ…』『ふぅ』『変態ばっかで可哀想』『さすがにキモいぞ』『トゥエルの子供になっておっぱい吸いたい』『人妻トゥエル想像したら……ふぅ』『お前ら最低だな』『精神的に成熟してるとはいえ2人ともまだ10歳なんだが』『自重しろよゴミカスども』『子供は精子提供でいけるな』『これを見せられてる2人が可哀想』『姫がママですか。アリですね』『てか同性同士だから無理じゃね』『日本はそういうの遅れてるからなあ』『普通にセクハラだぞこれ』『お前らこれセクハラだからな?わかってる?』『小学生相手にきもいわ』

 

「コメントさぁ…私たちまだ小学4年生なんですけど。そういうのは控えてくれない?」

「私のエルをそういう目で見るの、マジでやめてくれない?」

 

 俺だけじゃなくてアイも見てるんだぞ。自重しろクソコメントども。アイも引いてるし。何よりアイの見てる前で俺にクソセクハラしてくるとはこいつら…。

 静かに覇気を乗せて威圧する。すると前回同様一瞬で静かになった。直後にごめんなさい系のコメントで画面が埋め尽くされた。

 

「今度からド直球なのはやめてくれ」

「ぶっちゃけキモい。エルにセクハラしていいのは私だけだから」

 

 まったくコメント欄も困ったものだ。この時代はまだセクハラの基準も緩かったからなぁ。俺のところは比較的民度が高い──覇気で物理的に黙らせてるのもあるが──けど実際は割と無法地帯だからなぁ。

 それはそうと、いい加減話を戻すがこの時代はまだ女性は16で結婚できる。これが2020年代になると女性も18からに引き上げられる。確かこれらの背景には男女間の格差を無くそうとか、心身の成熟やら経済力の有無などが取り上げられていたはず。それに確か同時期に18歳で成人と見なす改定がされたから親の同意もいらなくなったんだっけか。まぁ俺たちは親族いないから関係ない……あれ?その場合どうなるんだ?

 

「ねぇねぇ聞きたいんだけどさ。親のいない未成年同士って結婚するとき代理人とか後見人の同意いるの?」

 

 どうやらアイも同じことを思ったようで俺よりも先にコメント欄に質問を投げ掛けていた。

 

『わからん』『わかんない』『確かにどうなんだろ』『いらないんじゃね?結婚って本人の意思で決めることだし』『ごめんわからない』『あーどうだったっけな』『いらない』『いらなかったはず』『知らない』『経済力的に不安定だし必要そう』『いらないって』『調べたけど必要ないらしい』『いらないらしい』『結婚に関してはできるだけ当事者の自由な意思を尊重すべきとの考えから、父母に代わる者の同意までは要求しない取扱いとなっている……だってさ』『へーいらないのか』『勉強になる』『結婚するのか…俺以外のやつと』『なるほどつまり俺とトゥエルは問題なく結婚できると』『良かったね2人とも』『早くアイドルとして成功してお金貯めないとな』『ぶっちゃけこのままYouTuberしてた方が良くない?』

 

 なるほど結婚できるのか。確かに言われてみれば結婚って最終的には当人たちの意思だもんな。親がいない場合は親に代わるものの同意までは要求しないよね。経済力に不安がある場合はともかく、俺たちはお金だけなら既にサラリーマンの生涯賃金の数倍稼いだしな。仮に今この瞬間YouTubeが倒産しても俺とアイの二人なら食い繋いでいける。

 

「え、やったあ!結婚できるってエルぅ♡」

「やったーやったーやったーやったー!やったったーのたー!」

 

 コメントを見たアイが嬉しそうに抱きついてくる。俺としてもそれは素直に嬉しい。当人たちの意思も経済力もクリアしてる。唯一問題があるとすれば事務所が許してくれるかどうか。

 ちなみに普通アイドルの交際や結婚はファン的にNGの場合がほとんどだろうけど、それは異性間の恋愛だからだ。俺たちは同性だし最初から百合全開でやってきたからファンからすれば異性の影がまったくないことの証明にもなって安心できる。しかも俺らレベルの美少女なら三次元の百合でも余裕で許される。楽勝だな。顔面国宝最高!百合最高!

 

『かわいい』『かわいい』『よかったやん』『はーかわいい』『かわいい』『2人ともかわいい』『喜んでるの可愛すぎる』『くっあざとい…でもかわいい』『なにそれかわいい』『2人ともすごい嬉しそう』『めっちゃかわいい』『姫ご乱心かな?』『やったったーのたー!←クッソかわいい』『やったったーかわいい』『あざとかわいい』『トゥエルお前キャラ壊れてるぞ』

 

「いやーよかったよかった」

「よかった~」

「まぁ日本の法律的にどうなるか分からないけど、とりあえず結婚できるのが分かっただけでも大きいわ」

「外国ならいけるんだっけ?」

「んーどうだったかな。ヨーロッパはいけるか?それか最悪弁護士立てて裁判起こして無理やり認めさせるか?」

「それだと荒れそうじゃない?負ける可能性もあるし」

「だよねぇ。できればスマートに結婚まで漕ぎ着けたいが、日本の法律がそれを許さない」

「私たちは生まれる国を間違えた…」

 

『ヨーロッパは比較的整備進んでるね。アメリカも○。アジアは全部ダメ』『憲法改正するしかないな』『トゥエルが改正しよう』『戸籍法いじればワンちゃんある』『同性婚認めてる国でも憲法改正はしてないみたい』『民法変えたりして対応してるっぽい』『日本でも推進派はいるけど憲法改正を推奨はしてないみたい』『デリケートな問題だし難しいと思う』『それでも俺は2人を応援してるよ』『2人がどういう関係になろうと一生推す』『結婚は難しいけどパートナーならだめかな?』『きっと2人とも時代を先取りしてるんだよ』『そのうち時代が二人に追い付く』『がんばれ』『アイちゃんめっちゃ落ち込んでて草』『トゥエル元気出せ。結婚がすべてじゃない』『可哀想に…』『いつかは分からないけどパートナーシップ制度ってのが導入されて、それが結婚関係と同等の保証が受けられるようになるらしい』『日本は先進国の中でもこういうところは遅れてるからな』

 

「そうだな…。結婚しなくてもパートナーであることには変わりないし…、もしかしたら今後法律が変わるかもしれないしな」

「将来的にはエルと結婚したいけど、どうしてもダメそうならまた別に考えるよ」

「うん。とりあえずこの話は一端保留かな」

 

 前世では、いわゆる性的マイノリティは世間的にもかなり受け入れられるようになってきてはいたし、メディアでもそういう人が出演したり、芸能人でカミングアウトする人も増えてきていた。だけど日本では俺が生きていた間には終に同性婚に関する法律が整備されることはなかった。代わりに自治体ごとにパートナーシップ制度が導入されていた。あの頃はどうでもよかったが、まさか今世の自分にそれが重くのし掛かることになるとは…。ほんと人生何が起こるかわからないな。最終手段で思想思念で法律を弄るか強制的に同性婚を認めさせるというやり方もあるにはあるが…。

 

 ん?グループLINEにメッセージ?

 

 斉藤壱護『そろそろ本題に入れ』

 

 そう言えばそうだったな。話が思いの外弾んで脱線しまくっていた。

 隣に座って神妙な面持ちで同性婚について考えているであろうアイの肩をちょんちょんとつつき、こちらを見た所でLINEの画面を見せた。

 

「…りょーかい」

 

 話は一段落ついたと言わんばかりにアイ共々画面に向き直して告げる。

 

「話が脱線した。そろそろ本題に移る」

 

 俺がそう言うと、未だに同性婚や法律の話か爆速で流れているコメント欄が少しずつその流れを緩めていく。俺たちの配信は人数も桁違いに多いからどんな話題でもものすごい人数が食い付いて結果とんでもない盛り上りを魅せるのだ。まさに数の暴力。この人数ならおそらくどんな話題でも誰かしらが拾ってくれるだろう。

 

『wktk』『待ってました』『楽しみ』『事務所の件か?』『事務所発表?』『今後の活動拠点が決まったんだっけ』『何話すんだろ』『面接お疲れ様』『結局どれくらい受けたの?』『俺らが確認できただけでも30社はあったはず』『実際はトゥエルに個人的にオファー送ってるところもあるだろうしその倍はみていいと思う』『面接全部受けたんでしょ?すごすぎ』『就活生並みだな』『仮に50受けてたら普通に就活生と同等かそれ以上だぞ』『芸能プロダクションの人って腹黒そう』『大丈夫だった?』『もう終わった後だけど、ヤのつく連中と繋がってるところもあるし気を付けろよ』『うちはフラれてしまった』『そもそも芸能事務所なんて大半が繋がってるぞ』『トゥエルの目利きを信じるしかない』『虹色の瞳で心のうちまで見透かしてそう』『トゥエルって小難しいところあるから考えすぎちゃってないか心配』『意外とこういうのはアイの方が目利き上手そう』『わかるアイの方が直感とか鋭そう』『オファー何件来たのか気になる』『何社受けた?』『どういう話したの?』『面接に来た人にあの挨拶したのか気になる』

 

 こいつら何でわかるんだよ。そんなにわかりやすいのか俺は。

 

「結論から言うとお前らの予想通り事務所に所属した。面接は全て受けたが数は公表しない。お前らの想像に任せる」

「アハハ!みんなよくわかってるじゃん」

「面接内容も覚えてるが言わないぞ。事務所に所属した以上、私たちはもう素人ではないから、同業他社の情報を流すことはしない。信用に関わるからな。それは解ってくれ」

「お口にチャック、だよ!」

 

『おお!おめでとう!』『おめでとう』『アイかわいい』『おめでとう!』『おめ』『おめでとー!』『おk』『了解です』『しっかりしてるなあ』『社会人になったのか』『すごい』『そうだよね、人の信用は簡単には作れないもんね』『偉いなあ』『アイちゃんかわゆ』『本当にしっかりしてる』『事務所の公表はするの?』『アイかわええ』『やっぱりアイがキーになったか』『アイちゃんファインプレー?』『トゥエルがんばれ』『アイに感謝しろよトゥエル』『下手な大人よりしっかりしてるわ』『本当この二人相性いいな』『お互いに補完しあってるね』『2人揃えばまさに最強で無敵のアイドルだな』『お互いが弱点補完し合ってるってのが最高にエモい』

 

「事務所の公表は今はしない。でも隠すつもりはないから気になる人は探してみてくれ」

「当たったらすごいよ」

「うん。これわかったらすごいわ」

「まだホームページにも私たちのことは載ってないし」

 

『まじか』『当たったらすごいってことは大手じゃない?』『えー教えてほしかった』『そこは教えて欲しいゾ』『特定班はよ』『特定班出動しろ』『大手じゃない?』『弱小?』『けっこう小さめのとこか?』『芸能プロダクションって結構あるんだなあ』『フリーの劇団とかの可能性もあるか』『フリーのとこもオファー出すことは出来るからな』『それだと軽く三桁はあるよな』

 

「さあな。私たちからは何も言わないよ」

 

『大手蹴ったのか』『人柄で選んだっぽいね』『有名どころ結構来てたでしょ』『○○とかな』『◇◇もあっただろ』『そこら辺蹴るとかさすがトゥエル』『そこに痺れる憧れる』『やっぱトゥエルかっけーわ』『トゥエル△』『本人たちが何も言わない以上まだ蹴ったと決まったわけじゃないだろ』『これマジでフリーの劇団説あるぞ』『人柄で選んだなら無名も十分ありえるってかむしろそっちの可能性のが高いまである』

 

 頃合いか。だんだん温まって来たところに燃料投下するかな。

 アイに目配せすると、こくんと頷いてくれた。最近アイコンタクトだけで意思の疎通できるようになったんだよな。言葉にしなくてもお互いの考えてることややりたいことがわかるようになってきた。とても素晴らしいことだ。

 

「焦って探さなくても近いうちに公表するよ。一ヶ月後、私たちの初ライブを開くからそこで」

「今日の本題はね?その会場をどこにしようかってことなんだ」

 

 俺たちがそう告げると、それまで特定に勤しんでいたコメント欄が爆発的勢いで沸き立った。




【天使】
俺がツンデレ?むしろクーデレじゃね。残念、クールキャラ保ててると思ってるのは君だけです。
事務所に所属後としては初配信。今回初めて事前にSNSで宣伝したら前世でも見たこと無いような人数にリツイートされてびっくり。この言い方するとアイに怒られるけどやっぱりトゥエルってすげー。登録者1000万行きたいなあ。それはそうと百合を隠さなくていいのは精神的に楽。やっぱりありのままの自分で伸び伸びできる環境が一番いいんだよね。
16歳になったらアイと結婚したいけど、現実的な話難しいよなあ。法律変えるか?日本じゃ2023年でも同性婚導入されてないよな。前世の知識からパートナーシップが導入されることで今後一生同性婚導入されないんじゃね?と危機感を募らせている。維持でも婚姻結んで挙式だけは何としても挙げたいから最悪その時だけ外国飛ぶことも検討中。
あとこんな話したからペアリング欲しい欲が急速に強まった。自分の最終的な身長は知ってるけどアイがどこまで伸びるかわからないからなぁ。二人とも150cmになったら買おうかな。
そしてセクハラコメントするやつに一言言いたい。…なんで満場一致で俺が母親役なんだよ!!

【一番星】
エルと結婚したい。何なら16歳まで待たないですぐにでも結婚して正式に自分のものにしたい。実は閉じ込めて置きたい願望もある。ヤンデレの片鱗が出てきた?今後どうなっちゃうかは誰も知らない。
やっぱり結婚には憧れがある。素敵なウェディング着たいし、エルにも着せたい。式を挙げるときは新郎新婦役交代で2回行う予定。ブライダルリングは欲しいけど値段は気にしてない。ブランドもよく分からないけど、エルがくれるものなら何でも嬉しい。ペアリング→エンゲージリング→マリッジリングの順で着けたい。16歳で結婚するならあと6年しかないから早くペアリング着けたいな…。実は今までエルに何回かペアリングの話持ちかけてるけど成長期を理由に断られている。正直悲しかったけど、エルの言うことも理解できるから我慢している。エルも本気で早く欲しいと思ってることを知ってるからまだ平気。でもそのうち限界超えてエルを強制連行するかもね。
あとエルにセクハラコメントしたやつはブラックリフトぶちこみたい。でも授乳してるエルを想像したら…アハッ♡
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