色々と間違ってる異世界サムライ   作:モッチー7

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第10話:次なる合戦

ノノ・メイタperspective

 

僕達は、ツキツバさんの驚愕の過去がロアーヌ様に知られてしまい……と言うか、僕だって驚愕だよ!

まあ、とにかくアイナークにいられなくなった僕達は、ロアーヌ様が指示した運送会社に到着したのですが、

「アポが無い方とは御会いになりません」

そう簡単にはジョナサン社長に会わせて貰えず、セツナさんは目の前の受付嬢に手紙を渡してさっさと次に行こうと言うが、

「それでは、本当にジョナサン殿にその書状が渡ったかが確認できぬ」

ツキツバさんって、変に怖いし変に真面目なんだよねぇ。

やっぱ……まだまだツキツバさんの事が解んないや。

とは言え、ツキツバさんが何と言おうとジョナサン社長に会えない事は決定の様だし―――

「やはりこうなりましたか!?」

誰だろう?この人?

急いでいたのかなぁ?汗だくだ。

そんな心配をよそに、男性は先程の受付嬢に詰め寄り、

「今直ぐツキツバ・ギンコに逢って欲しい!急を要する事なのだ!」

……本当に誰だよ!この人!?

そんな僕の疑問をよそに、受付嬢は僕達と同じ答えを言った。

「アポが無い方―――」

けど、男性は凄い剣幕で自分の意見を押し通そうとする。

「急を要すると言ってるだろ!これは、伯爵様のご指示だ!」

伯爵様!?

もしかして、ロアーヌ様が僕達が受付嬢に追い返される事を見越してこの人を!?

だとしたら……疑ってごめんなさい。

が、ロアーヌ様の使者をもってしてもアポなしでジョナサン社長に会うのは困難な様で、呆れたセツナさんが足早に去ろうとしていたが、ロアーヌ様の使者が慌ててセツナさんを引き留める。

「お待ちください!貴女方が揃ってジョナサンに逢って頂けねば、意味が無いのです!」

意味が無い?

ロアーヌ様はツキツバさんとジョナサン社長に会わせて何をさせたいのだろうか?

が、それがかえってセツナさんの猜疑心を刺激してしまったみたいで……

「……怪しいな……何か隠していないか?」

「いえ、私は伯爵様に急ぎツキツバさんとジョナサンを逢わせろと命じられただけでありまして!」

……と、こんなこんなで揉めている内に、騒ぎを聞きつけた社員が何人か集まり、その中には重役も含まれていた。

「何の騒ぎかね!?」

「おー、天の助け!今直ぐ、ツキツバさんをジョナサンの許へ!」

「君は確かロアーヌ伯爵の許で働いていた!?」

そんなやり取りを視て、セツナさんが更に疑いの目を強くした。

「行くぞツキツバ!この話、かなり怪しいぞ!」

だが、ツキツバさんは片手を上げただけで、セツナさんの焦りに全く動じていませんでした。

「逢わせて頂けるのであれば、是非逢わせて頂こう」

ツキツバさんの宣言に嫌な顔をするセツナさんですが……

セツナさん、今の貴女は過去イチで小物っぽいですよ……

 

セツナperspective

 

ロアーヌ伯爵の使者とこの会社の社員は知り合いだったらしく、そいつらの計らいで応接室に招かれた……

が、正直喜ぶべきなのか……

ツキツバの過去の事もある。難題を押し付けるふりして暗殺って展開もあり得るぞ。

……幸い。目の前のコーヒーに毒は入っていなかった。

「随分変わった茶碗ですな。で、この輪っかは何なのです?」

「それは取っ手と言ってね、こうやって持つの」

コーヒーカップを持ち辛そうにしているツキツバにコーヒーカップの持ち方を説明するノノ。

こっちの気も知らないで!

と叫んでしまいそうだが、下手に慌てて相手の思う壺と言うのも面白くない。

「実はロアーヌ殿から預かっている書状がありまする。ジョナサン殿を呼んできてもらえませぬか」

で、ツキツバは疑う事無くロアーヌ伯爵から渡された封筒を社員に渡した。

「一応ですが確認させていただきます」

彼は隅々まで確認してからツキツバに返した。

「間違いないようですな。では少しお待ちを」

 

ドアがノックされ男性が入室した。

今入ってきた男性は、赤毛の長髪に鼻の下には立派な髭のある、引き締まった中年男性だった。

「私がこの会社の社長を務めているジョナサン・ロックベルだ。君はロアーヌ伯爵の手紙を持っているそうだね。見せてもらえるだろうか」

「こちらです」

ツキツバが差し出した封筒を受け取った彼は、差出人と宛先を確認してから封を切る。

目を通した彼は、内容が面白かったのか僅かに笑みを浮かべた。

「ツキツバ・ギンコだったか、君はずいぶんアイナークで活躍をしたようだな」

「某は某がしたい事をしたまで。恩を受ける様な事は致しておりませぬ」

「ふっ、面白い女だな。伯爵が気に入るのも無理はない」

私は、その会話に恐怖を感じでつい話に割って入ってしまう。

「何?その言い回し?怖いんですけど」

「これにはずいぶんと君を褒め称える言葉が書いてあったぞ」

それが逆に怖いんですけど!

「よろしい、伯爵の要望通りにしよう。なんせ旧友の頼みだ」

「ほう。某はロアーヌ殿には合戦を所望したいと申しましたが、本当に用意して頂けるとは」

「それについては少し時間をくれ。そうだな、明日の夜にまたここへ来てくれるとありがたい」

「承知した」

ツキツバぁーーーーー!

少しは疑えよ!と言うか、訳が解らないぞ!完全に!

内心でモヤモヤしつつ明日の夜に再び来る事にした。

 

月鍔ギンコperspective

 

夜の帳が下りる頃、某達は運送会社の前に来ていた。

そこには一台の牛車が止まっており、まるで某達が来るのを待っているかの様だ。

屋形の戸を開けて出てきたのはジョナサン殿だった。

「よく来たな。とりあえず乗れ」

某達が乗り込もうとするが、どう言う訳かセツナ殿だけが渋っている。

「……本当に乗る心算かお前?」

「どうしたのです?いつものセツナ殿らしくもありませんぞ?」

「いつもって……と言うか、これが罠である可能性も―――」

そう言う事か……本当にらしくもありませんぞ?セツナ殿。

「もしもの時は、その罠ごとジョナサン殿を斃すのみです。それが叶わぬなら、無事に逃げおおせたノノ殿の逃げる背中を眺めながら、潔く討死するまでです」

それを聴いたセツナ殿が自分の顔を叩きました。気合いを入れ直したのでしょう。

「そうだな。氷狼族がこんな事で怯えてる様じゃな」

「待たせてすまなかった。出してくれ」

牛車が出発した途端、ジョナサン殿が神妙な面持ちで口を開いた。

「これから行く場所の事は誰にも言うな」

つまり、ジョナサン殿の御大将の許に向かう事を意味するのですな?

そして、某の予想は的中しておりました。

「ロアーヌの要望とは君をその御方に会わせる事だ。詳しい事情は今は伏せさせてもらうが、決して悪いようにはしない。むしろ必ず大きなプラスとなるだろう」

「某の機嫌の事は気になさるな。某は誉れ高い合戦が出来ればそれで十分です」

で、某達が到着したのは、この世界に来て……いや、某が今まで見た事も聞いた事も無い豪勢で巨大で威厳に満ちた建物だった。

「すげぇ」

「豪華ですね」

ノノ殿もセツナ殿も未経験の事の様です。

そこには、2人の護衛と老年の男性が、まるで本陣で鎮座する総大将の様に座っておりました。

「これは非公開の謁見、表向きでは余は貴公らと会っていない事になっている。そこをよく理解しておくがよい」

……さて、鬼が出るか蛇が出るか……

ま、某はどちらでも構わんですがな。

「さて、今宵訪問を許したのは他でもない。冒険者である貴公にやってもらいたい事があるからだ」

「で、それはつまりこの後に行われる合戦に参加して欲しいと……言う事ですな?」

「うむ、実はこの王都は危機にさらされておる。事態が悪化すればほどなくしてこの国は滅亡するだろう。貴公にはそれを解決してもらいたい」

「つまり、この国は敵国に押されて滅びつつあると?」

そんな某達の会話に不安を感じたノノ殿が口を開く。

「その……ていうか、この国を滅ぼす敵国って、どう言う事?」

老年の男性は、間を置いてからノノ殿の質問に答えました。

「単刀直入に言おう。デスアントの女王を討伐してもらいたい」

敵国の総大将の名を聞き、ノノ殿とセツナ殿が驚き過ぎて逆に無反応になっておりました。

「して、そのですあんととの合戦の日取りは、何時なのですかな?」

なんだ?何で黙るんだ?

ですあんとと合戦すると言っておきながら、何故合戦の日取りを素直に申してくれぬ?

「すでに我が軍は壊滅状態だ。失敗したのだよ」

あ……なるほどね。

既にですあんととの合戦に敗けておったのか。

故にこのままではですあんとにこの国を明け渡さなければならなくなったので、某の様な死に場所になりそうな合戦を探し求める猛者を求めておったと。

とここで、セツナ殿がようやく口を開き申した。

「で、藁にも縋る思いで魔王軍の幹部を2人も殺したツキツバに最後の希望を託したと?」

ま、ノノ殿やセツナ殿が何と言おうと、某の腹は既に決まっておりまする。

「望むところです!」

「おい!デスアントが何者か知ってて言っているのか!?」

目の前の男性だけでなく、護衛やジョナサン殿までもが驚く。

「某が欲するは、某の死に場所に相応しい合戦のみ!それ以外は何も望みませぬ!」

すると再び部屋の中がざわつく。

彼らには某の返答が想定外だったらしい。

が、老年の男性だけは直ぐに口を開いた。

「よかろう。貴公が見事依頼を達成すれば、次の戦いの場に向かう為の旅費を払ってやる」

「いくら出してくれる?」

「3億」

ノノ殿とセツナ殿が再び驚き過ぎて逆に無反応になっておりました。

だが、国の命運が懸かっておるのあれば、救国の英傑に膨大な報酬を与えるのはよくある事です。

「1つ聞くが、貴公は本当に英雄の称号は求めぬのだな?」

「クドイ!某は名声の為に戦っておるのではない!誉高い討死を求め戦っておるのです!」

話は終わり、某はこの国を攻め落とそうとしている『ですあんと』なる軍勢を探し求めてその場を後にした。

 

去り際、後ろから「名前が出なければいいのだな」などと聞こえた……

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