色々と間違ってる異世界サムライ   作:モッチー7

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第12話:嫉妬の影

ノノ・メイタperspective

 

ずらりと騎士が並ぶ謁見の間。

騎士の背後には貴族が正装をして並んでいる。その中にはロアーヌ様の姿もあった。

最奥の玉座にはアルマン国の王が座っている。

僕はは一瞬で空気に飲まれた。

田舎の小さな村で生まれ、平凡な両親に平凡に育てられた僕は、このような場所を、光景を知らない。

あぁ……お腹が痛い。

「ツキツバ・ギンコ。ノノ・メイタ。セツナ。皆前へ」

指示に従い国王陛下の前で片膝を突く。

事前に受けた指導では、王様の声がかかるまで顔を上げてはいけないらしい。

ジョナサンさんによると今日は公式の謁見だそうだ。無礼があれば即牢屋行き。国を救った英雄から一気に転落だ。

あぁ……本当にお腹が痛い……

「この度のデスアントの女王の討伐、まことに見事だった。すでに大部分を軍が討伐していたとは言え、巣穴に籠もったアレを仕留めるのはさぞ苦労したことであろう」

王様の言葉に対し、ツキツバさんは冷静に答える。

「いえ、寧ろ貴重な経験が出来て光栄でした。ただ、敵総大将の歯応えが無かったのが少々残念でした」

「そ……そうであったか。我が軍は非常に優秀だが、今回はあと一歩及ばなかった。もし貴公がいなければこの王都はどうなっていたか。全ての民に代わり礼を言う」

「光栄至極にございます」

ツキツバさんが意外と敬語を言い慣れているお陰で、どうにか無礼無く話は進んではいるが……やはりお腹が痛い!

僕達は立ち上がることを許され、すぐに目の前に台車が運び込まれた。

台車の上には山積みとなった白金貨が輝いている。

「そこに7億ある」

「なっ!?」

セツナさんが驚きのあまり王様を直視してしまった。

だってさ、約束は3億だっただろ。なんで4億も増えてるんだよ。

「この金は余からの気持ちだ。遠慮せず受けとるがよい」

「あ……ありがとう……ございます」

セツナさんが完全に圧倒されている……気持ちは解るし……あぁ……お腹が痛い。

「それとツキツバよ、もう1つある」

え?……『もう1つ』ってどう言う意味?

「余は貴公の率いる『サムライ』に英雄の称号を授けようと思っている」

謁見の間がどよめいた。

当然だ。パーティーに称号を与えるなんて。普通は個人に与えるでしょ!

「余は常々思っていたのだよ、なぜ個人に称号を与えなければならないのか。複数いようが英雄に匹敵する強さを誇るのなら、その団体はもはや英雄ではないか。一体どこに不都合がある」

大ありだと思います!同じパーティーでも主要メンバーが替われば実力だって大きく変わる。昔は強くても未来も強いとは限らない。

王様は足を組んでさらに笑みを深める。

「英雄の称号は剥奪できるのだ。役に立たなくなれば捨てれば良い。それが嫌なら後継を必死で育てればいいだけだ。なぁ、ツキツバよ」

王様の言葉は貴族達を納得させたようだった。というか強引に説得したって感じだ。

でも、ツキツバさんだけは冷静にかつ無礼無く受け答えた。

「謹んで、お受けいたします」

と言うか……改めてツキツバさんがスゲェ!

こうしてツキツバさんは王様より『英雄の称号』と名の付いた腕輪を賜った。

 

月鍔ギンコperspective

 

ジョナサン殿に案内され、某の新たなる家を訪れました。

「ここなら好きなだけ使ってくれていい」

「遠慮は無用と言う訳ですな」

やはり、この世界の家はどこまで言っても変わっております。

とは言え、どの道次の合戦を探しに旅立つのだ。この家に長居する事はあるまい。

ノノ殿が荷物から変わった茶碗を取り出し、台所へと向かって行きました。

「ジョナサンさんもコーヒー如何です?先程の緊張がほぐれますよ」

どうやら、ノノ殿は目上との会話になれておられぬご様子です。

「私は遠慮するよ。すぐに帰るつもりだ」

と言っておきながら、ジョナサン殿は某の方を振り返りました。

「そうそう、言っておかないといけないな」

「……何を?」

セツナ殿が未だに警戒心が強い様です。歴史を紐解けば、猜疑心に足元を掬われた者は数多くいると言うのですが……

「あの手紙にはロアーヌから陛下ヘの要望が書かれていた。君を是非この国の英雄にしてもらいたい、と」

「だからアントの件をやらせたのか?」

「そうだ。英雄には相応の成果がなければならない。いくら奴が私と陛下と親しい間柄だとしても、簡単に与えることはできないのだ」

「ふーん。なるほどな。やけにすんなりと話が進むなと思っていたんだ」

つまり、ですあんととの合戦は全てロアーヌ殿の策によって動いていた事になります。そして、そうとは知らずにですあんとはこの国を攻めてしまったのでしょう。

でも、セツナ殿はまだまだ多くの疑問を抱えている様です。

「王様は私達に称号を与えたわけだけど、やっぱり国を離れちゃ不味いか?」

「好きにすればいい。英雄とは必要な時にそこにいればいいんだ。活動する街のギルドに報告さえしてくれればどこにだって行って構わない」

それならよかった。この家から出てはいけないなどと言われたら、某達の腕が鈍ってしまいますから。

「あともう1つ。ロアーヌからツキツバに伝えて欲しい言葉を託されている」

「何でしょう?」

「負けるなよ」

負けるな?

某は誉高い戦死を求めているとお伝えした筈ですが。

「この先、ツキツバの事を大義無く悪逆非道な殺人鬼と呼び、ツキツバの名誉を私欲の為に傷つける者との戦いが待っているだろう。だが、その様な無礼者の言葉に惑わされる事無く、ツキツバ殿はこれからも自分の信じた道を堂々と進まれよ!……これか、ロアーヌがツキツバに最後に伝える言葉だそうだ」

ジョナサン殿は言うべき事は言ったとばかりに玄関から出て行きました。

「ツキツバ」

「ん?如何なされた?セツナ殿」

「その『私欲の為にツキツバを悪者扱いする輩』って誰だよ?」

「某も詳しい事は解りませぬが、ただ、目星は付いております」

「……誰?」

「某達をあいなーくから追放した者」

「あー。言われてみれば、ロアーヌの奴、『気に入らん!』だの『礼儀を知らんのか!?』だのと言ってたな」

「恐らく、ロアーヌ殿は某とその者が名声を奪い合う激闘を行うと予想しておるのでしょう」

ま、誉高い戦死を求める某にとっては願ったりかなったり。で、その者が強ければなお良しです!

さあ来い!英雄の証であるこの腕輪を奪いに来てくれ!合戦をしよう!

 

セインperspective

 

「ヘックシュン!」

「大丈夫ですか?」

「大丈夫だよ。さ、取り敢えず勇者デビューに相応しい仕事を貰いに行こうか」

王都に到着した僕らは、すぐに冒険者ギルドへと赴いた。

「やぁ、『白ノ牙(ホワイトファング)』なんだけど、割の良い仕事とかないかな」

僕はギルドのカウンターで職員に声をかける。

できるだけ爽やかにさりげなくパーティー名を知らせてやった。

冒険者なら僕が勇者であることは把握しているだろう。

名前を聞くだけで震え上がり腰を抜かすに違いない。ククク。

ほら、早く驚けよお前ら。僕を楽しませろ。

「お仕事なら掲示板で探してください。皆様そうしておりますので」

「……もしかして僕が誰だか分かってないのかな?」

「?」

「Sランクパーティーのセインだ! 勇者に選ばれた男だよ!」

「それが何か?」

職員の反応が恐ろしく鈍い。

祖国であるバルセイユでは、僕の名を聞くだけでギルド内がざわつくというのに。

当然、扱いだって特別だ。一言言えばギルドマスターが飛んできて、お茶を飲みながら割の良い高額依頼を受け取ることができる。

何度かここへは来たことがあるが、こんなにも雑な扱いだっただろうか。

あの時はまだ勇者じゃなかったが、それでもここまで冷たくなかったような。

「Sランクだか勇者だか知らないが、この国でデカい顔するなら、名前を上げてからにするんだな。ま、サムライほどデカくはなれねぇだろうがな」

「だはははっ、いえてら! そりゃ無理ってもんだな!」

昼間から酒を飲む冒険者共にやじられる。

頭に血が上り激しい怒りが腹の底からこみ上げた。

同時に羞恥で耳が熱くなった。

勇者であり全てが完璧なこの僕を馬鹿にしたな。

ぶっ殺してやる。

気が付けば足は勝手に動き出し、冒険者共の顔面に拳をめり込ませていた。

男は背中から壁に叩きつけられずるりと落ちる。

「こいついきなり殴りかかってきやがったぞ! ふざけやがって!」

「お前らが僕を特別扱いしないから悪いんだぞ! 僕は勇者だ! 魔王を倒し世界を救う選ばれし者なんだ!」

「何が勇者だ! 理不尽に暴力振るう奴が言う台詞じゃねぇな!」

「五月蠅い! 五月蠅い五月蠅い五月蠅い!!」

数十人の冒険者と僕は取っ組み合いを始める。

戦力差は端から明らかだった。

僕はレベル60台。一方、奴らはせいぜい30~40。

1人、また1人と殴り飛ばしてのしてゆく。

「セイン、もうやめてください!」

「ちっ、邪魔するなソアラ」

「これ以上は死者が出ます!」

胸ぐらを掴んで持ち上げている男は血まみれだ。

……確かにギルド内で殺しは不味い。良くて除名処分、最悪牢屋行きだ。

ここで止めればただのいざこざで片付く。

ふん、命拾いしたなクズ共。

男を投げ捨てる。

聖職者であるソアラは、回復のスキルで怪我人の治療を行い始めた。

「おい」

「は、はい!」

呆然とする職員の女に声をかける。

「そのサムライってのはなんなんだ」

だが、職員が続けた言葉に絶句する。

「新人冒険家ツキツバ・ギンコ様が率いるBランクのパーティーです。軍ですらなしえなかったデスアントの女王を見事討伐し、史上初となるパーティーに英雄の称号を授けられた方々です。ギルドとしては実質Sランクパーティーとみなしております」

な、んだと……個人ではなく団体が英雄だと?

あの凶悪大量殺人鬼め。何時の間にそれの程の凄腕を集めた!?

言ってみれば英雄が複数いるようなもの。しかも終わりがない。たとえツキツバ・ギンコを豚箱に放り込んでも称号を引き継ぐ事ができる。

剥奪されない限り永久にあの憎き凶悪大量殺人鬼に関わる奴らは英雄扱いだ。

僕ですら英雄の称号を授かっていないんだぞ。

これでは存在がかすんでしまう。

勇者である僕の存在が脇に追いやられてしまう。

最高のスタートを切る筈が……歓声と賞賛に包まれる筈だった僕の栄光の道が……

「ご、ごきぶんがすぐれないようですね」

「そうだよ。最悪の気分だ」

凶悪大量殺人鬼ツキツバ・ギンコ。

貴様は僕を激しく怒らせた。

やってしまった過ちには相応の代価を支払ってもらわないとな。

 

ノノ・メイタperspective

 

玄関が叩かれる。

「はーい」

僕がドアを開けると、そこにいたのはロアーヌ様だった。

「ここにいると聞いてね。顔を出させてもらった」

「どうぞ中へ」

テーブルを挟んで対面に座ったロアーヌ様を見て、ツキツバさんが不思議そうにしている。

「まさかまたこうして顔を合わせて話す日が()ようとは」

どうやら、この前の別世界で多くの人を殺した事がバレた事をまだ根に持っている様だ。

「はははっ、そのように申されては敵わないな。だが、私も娘を救ってくれた君に最大限の礼をしようとずいぶんと頭を悩ませたんだ」

「あれだけの話をしてまだ某を信じてくれるとはな……それで、ここへ来たのはロアーヌ殿1人ですかな?」

確かに、言われてみればマリアンヌ様とかがいらっしゃらない。これはどう言う事だろう?

「今回は屋敷に置いてきた。君達に会いたいとずいぶんとだだをこねられたがね」

マリアンヌ様は現在、花嫁修業の真っ最中だそうだ。

「ところで、オークションと言うものは知っているかね?」

「おーくしょん?」

「明日の夜に開催するそうだから行ってみるといい。面白い物が手に入るかもしれないぞ」

「面白い物?」

ロアーヌ様は席を立つ。

「それは行ってみれば分かることだ。では失礼」

静かに玄関のドアが閉まった。

 

って、あれ?

「ねぇ、ツキツバさん」

「どうなさった?ノノ殿」

「あの話は訊かなくて良いの?」

僕がそう言うと、ツキツバさんは優しく僕の頭を撫でた。

「気にする必要はございません。それが本当に某の事が嫌いであれば、いずれ必ず対峙する日が来ましょう。その時に理由を当人に訊ねれば良いのです」

改めてツキツバさんは変だし豪快だなぁ……

流石はレベル300。

普通なら、それほどの怖い相手に狙われていると聴けば、怖くて怯えて慌てる筈なんだけど。

色々な意味で強いなぁ……

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