色々と間違ってる異世界サムライ   作:モッチー7

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第21話:勇者の計算外その4

セインperspective

 

聖剣を抜けなかった僕は、祖国バルセイユへと戻った。

静まりかえる謁見の間。

僕は頭を垂れたまま悔しさに歯噛みする。

「もう一度聞く。其方は聖武具を抜けなかったと申すのか」

「はい。残念ながら」

「それもアルマンの聖武具を何者かに先に取られ、何一つ成果も出さずおめおめとこの国へ舞い戻ってきたと?」

「…………はい」

大きな溜め息が聞こえた。

失望が多分に含まれているのは明白。

期待が大きかっただけに国王の落胆は大きい。

怒りで体が震える。

こうなったのは手柄を横取りし続けたツキツバ・ギンコが原因だ。

本来なら飽きるほど賞賛を浴びている筈だった。

だが、現実はこうだ。

僕は下げたくもない頭を弱くて愚かなクソ共に下げている。

できるなら今すぐ目の前にいる奴らを殺したい。

「陛下、もう一度だけチャンスをいただけませんか。もしかするとグリジットの聖武具とは相性が悪かっただけかもしれません」

「ふむ、それはあり得るだろうな。過去にも聖剣を抜けなかった者が別の場所の聖剣を抜いたことがある。よかろう、貴公には別の聖剣を手に入れてもらう。最も近いのは……宰相」

「は、ノーザスタルでございます」

それを聞いて顔が引きつる。

ノーザスタルと言えば、ここよりも気温と湿度が高いど田舎の小国じゃないか。

おまけにバルセイユと反目する大国の傘下にある。

今は魔王が出現して協力的ではあるが、恐らくいい顔はしないだろう。

しかし、この話を蹴るわけにはいかない。

王室からの信頼が揺らいでいる現在、まずやるべきなのは挽回する事だ。

なにがなんでも聖剣を手に入れ勇者として箔を付ける。

ここで挽回しなければ史上最も役に立たない勇者となってしまう。

そうなれば魔王を倒しても、手に入るものはごく僅かとなるだろう。

「加えて其方にはしっかり活躍してもらわねばならん。聞くところによるとそこでは魔族が潜伏して手を焼いているそうだ。貴公にはその討伐も命じる」

「かしこまりました」

僕は大人しく了承するしかなかった。

 

ごとごと馬車が揺れる。

バルセイユを南下。

ようやくノーザスタルへと到着した。

「あづい、セインあづいよ」

「五月蠅いな。そんな事分かりきってるだろ」

「バルセイユと比べて薄着の方が多いですね」

「あそこでセインが聖剣を抜けてればよかったのよ。はぁ」

リサの溜め息交じりの発言にこめかみがピクピクした。

我が儘ばかりの女共にストレスが膨らむばかり。

最近はイライラしすぎてまともに抱くこともできていない。

「おい御者、神殿まではどのくらいだ」

「あと少しってところでしょうか」

長い。これなら歩いた方が早いじゃないか。

誰だ馬車で行こうと言い出した奴は?

くそ!僕だった。

「お客さん、街に入りますが買う物はありますかい?」

「ちょうどいいじゃん! 飯にしようぜ!」

大食らいのネイが復活して騒ぎ出す。

ぎゃーぎゃー五月蠅い女だ。

近くにいるだけで気が滅入る。

 

「はぁ!?デルベンブロが討伐された!??」

僕はこの街の町長から話を聞いて愕然とする。

まただ、また先を越された。

始まりは魔王軍幹部を退治された時からだ。

あそこから僕の歯車が空回りし始めた。

もっと言えば、ツキツバに聖剣を奪われたあの時からだ。

おかげで僕の人生設計が粉々だよ。

勇者になって、女共を侍らせて、地位や名声や金をほしいままにし、ゆくゆくはバルセイユの姫君と結婚して国を乗っ取るつもりだったのに。

あの小さな村からここまで来るのに、どれだけ苦労したと思っているんだ。

何がいけなかった。

何をしくじった。

何で失敗した。

分からない。

原因がまるで思い浮かばない。

僕は人目もはばからず両膝を屈した。

だが、僕にはまだ聖剣がある!

だからこそ確認しておかねばならない事がある!

「そのツキツバ・ギンコはどこに?」

「既にノーザスタルを出られたとは存じております。噂ではバルセイユに向かったとだけ」

つまり、もうノーザスタルにはいないと言う事だな。

流石に聖剣を2本も3本も要らないか……

……取り敢えず腹ごしらえだ。

「あそことか美味そうじゃん!」

「どうするセイン?」

「別にいいんじゃないかな。腹に入ればどれでも同じだろうし」

「あら、変った匂いの店ですね」

食事処に入り注文する。

テーブルに並んだのは見たこともない料理ばかりだった。

油で揚げられた虫。

鋭い牙を生やした川魚。

三本指の何かの腕の丸焼き。

赤いスープに浮いた目玉。

こ、これが、ノーザスタルの料理なのか?

「意外にいけるじゃん。この虫さくさくしてる」

「うえぇ」

ネイは何でも食う奴だったな。

虫をむしゃむしゃする姿を見ると、もう抱ける気がしない。

こいつは近いうちに捨てよう。決めた。

ソアラとリサはパンとサラダを食っている。

僕も無難にそっちにすれば良かった。

「なんだよセイン、自分で頼んでおいて食わないのかよ」

「うぐっ」

し、しかたがない、ここは我慢をして食ってやろう。

僕は歴史に名を刻む勇者だ。

この程度で物怖じなどするはずがない。

「あれがノーザスタルの神殿ね」

「まだ聖剣はあるでしょうか」

「ふぅうう、ふぅううう」

「どうしたんだセイン?」

「……今は話しかけるな」

先ほどから腹がぎゅぎゅるしている。

気を抜けば全てが一気に飛び出してしまいそうだ。

だが、ここで用を足しに行く訳には行かない。

ようやくここまで来たんだ。すぐに確認したい。

僕が聖剣を抜けるかどうか。

いや、抜ける筈だ!

今回はそんな気がするのだ!

扉を開けるために手を突く。 

…………。

「どうしたのセイン?」

「早く開けましょう」

「なんかぷるぷるしてね」

静かにしろ。

僕は今、精神を集中しているんだ。

力の配分を誤れば大惨事となる。

よし、これだ。

お尻に七割、両手で三割でいこう。

ゴゴゴゴゴゴ。

無事に扉は開く。

力の配分も正解だった。

「ふぅううううううっ」

いける、このままいけるぞ。

とにかく聖剣を抜いたら即離脱だ。 

通路を進み部屋へと出る。

そこには台座に刺さった聖剣が……

「ない!ないないない!聖剣が無い!」

神殿へ入った僕は、台座にあるはずの聖剣が無い事に気が付き狼狽する。

確かにここにあるはずなのだ。

聖武具を所持していた者が死ねば、自動的にここに戻ってくる。

そして、前の所持者の死亡はきっちり記録されている。

だからあるハズなんだ。ここに。

「っつ!?」

やばい、怒りに身を任せた事で力みやすくなった。

これでは九割の力がお尻に持って行かれる。

油断すると出てしまいそうだ。

耐えろ。勇者である僕が漏らす訳にはいかない。

とにかく即離脱だ!あと少しだけ耐えればこの苦しみから解放される……

……の……筈だったが、足がもつれて倒れそうになった僕をネイが支えたが、その時にネイが僕のお腹を押してしまい……

「あ……」

聖剣は抜けなかったが大量の何かが抜け出ていった。

この瞬間だけは最高に気持ちが良い。

頭が真っ白になる。

ああああああああああああ。

 

フラウperspective

 

やって来ましたバルセイユ。

この国で、セインに遭わずにセインの事を調査すると言う……私も何を言っているのか解らない事をします。

で……

「いいかノノ!此処で聞いた事をちゃんと正しく受け止め、正しい判断の上で現実を受け入れるんだぞ!」

「セツナさんこそ!ツキツバさんやセツナさんが白ノ牙(ホワイトファング)の仲間入りする事が―――」

「それが最悪の事態だって言ってるの!ノノ!アンタは本当に―――」

「本当なら、こんな時間すらまったくの無駄なんだから、さっさと白ノ牙(ホワイトファング)と合流して下さい!」

とまぁ……こんな感じでノノとセツナの口喧嘩は平行線のまま終わりが視えません……

勇者セインに妄信するノノもノノだけど、いくら狡賢いヒューマンが相手だからって会ってもいない人物をそこまでぐちゃぐちゃ言えるアンタも大概よセツナ。

で、2人の喧嘩に飽き飽きしているツキツバ様が咳払いをすると、2人はお互いプイっとしながら2人並んでバルセイユに入国していったわ……仲が良いんだか悪いんだか……

ま、兎も角鬼が出るか蛇が出るか。このバルセイユでの情報収集でこの2人の喧嘩が止めば御の字だけどもね。

「それはさておき……私は何時爆裂魔法を撃てるんですか?」

めぐみんさん……アンタもセツナとは別の意味で怖いんですけど!

 

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