色々と間違ってる異世界サムライ   作:モッチー7

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第26話:選択

月鍔ギンコperspective

 

「ノノを返却しに来た?」

「はい」

「どう言う事だ?あの子は『経験値倍加・全体』を持っとる筈」

「もしかして、この前の鬼退治の事をまだ恩に持っておるのか?」

その様な事を気にする事はございません。

某が勝手に戦っただけの話なのですから。

故に……

「あの時お主が来なければ、この村はお終いだった」

「あれは、借りや恩を作りたくて行った事ではございません。某はただ戦いから戦ったのみです」

「……」

「……」

しばらくの沈黙ののち、村長が重々しく口を開きました。

「ノノを連れて行けない理由は?」

流石は年の功。ノノ殿がこの村に戻った理由に何かを感じた様ですな。

「某はこれから……勇者セイン殿と戦う」

「そうですか……で?」

『で?』が出てくるとは……某の予想とは大違いでした。

「てっきり……ノノ殿の様に勇者セイン殿への攻撃を猛反対するかと思っておりましたが」

ですが、この村の長はそうは思っておらぬ様です。

「ですから、何故ノノを返却しようとしているのかをお尋ねしているのです」

やはりそう言う事か……

流石は年の功。セインめから何かを感じて拒絶しておったのだな?

「……ノノ殿は信じております。勇者セイン殿が魔王を倒してこの世界を救うと。で、ノノ殿はそんなセイン殿を支えたいと願っております」

そこへ、別の殿方がやって来て、

「ツキツバさん、そのセインには近づかない方が身の為です。既にレベル300の貴女様には無用の長物でしょうが」

「この方は?」

「この村1番の鑑定士ですじゃ。この者が貴女の経験値貯蓄と言う寄生虫の様なスキルを治すにはノノの力が必要だと言ったのです」

この世界の鑑定士は人も鑑定するのか?改めてこの世界は某がいた世界とは全く違うのですな。

「して、その鑑定士からの助言とは?」

「そのセインとやら、貴女がこの村を救ったのちにこの村にやって来たのですが、どうも何かを隠している様なのです」

隠している!?

それがあの女戦士の尊厳と生き様を汚した忌まわしき呪いか!?

「そのくそ……んんー!セイン殿が―――」

「無理はなさらない方が良いですぞ。本当はセインに良い印象は持っておらぬのでしょ?」

気取られましたか?流石鑑定士、某も修行不足と言う訳か?

そこへ村の長がセインについて語り始めた。

「それに、この村に来る順番も影響しているのかも知れませんが、セインはこの村に対して何もしませんでした」

某は……某の想いを素直に話しました。

「某は異様な呪いで神聖な戦を汚す不届き者のセインを討ち取りたい!そうせねば!セインに戦士としての尊厳を汚される呪いをかけられ、某に討ち取られたあの女子が浮かばれぬ!」

それを聴いた鑑定士が、某にある可能性について語ってくれました。

「なるほど……それってつまり『洗脳』だね」

「解るのか!?」

「状態異常が出るくらい短期間で洗脳する方法は限られてる。1つ目は禁忌指定されている催眠魔法、2つ目は洗脳薬でこっちも禁忌指定されている、3つ目はスキルの誘惑の魔眼だね」

それらがあの女を長年苦しめていた呪い!神聖な戦を汚す呪いか!?

「魔法と薬はどこの国も取り締まりが厳しいから基本的に使えない。残るは誘惑の魔眼だが、こっちは発現するのは極めて希でね、複数の条件はあるがクリアすると、簡単に異性を支配する事が出来る」

「その……誘惑のマガンと言う妖術を使う所を他の者に見られたら、目撃した者はどうなります?」

「目撃者は急ぎ衛兵の許に駆け込むべきでしょうね。誘惑の魔眼を所有している事が明るみになれば、必ず監獄か処刑でしょう。昔、スキルを持っていた奴が好き放題したことがあって、それ以来所持者は漏れなく重罪人扱いになってる」

某は漸く解りました……

セツナ殿がノノ殿をあの下郎に近付く事を禁じた理由を!

許すまじ!下衆セイン!

 

セツナperspective

 

ツキツバがこの私を問い詰めようとしているが、その理由が物凄かった。

「セツナ殿!何故誘惑のマガンの事を教えて下さらなかった!?」

はあぁ!?

誘惑の魔眼だと!?

あのウンコセインめ!そこまで堕ちたか!?

ただ……

「私は知らないよ!私がウンコセインを嫌ったのは、単なる野性の勘の様なものだったんだよ!」

そう……少なくともベルディアの一件が無ければ気付かなかった事だ。

そんな私をツキツバが睨む。

この私が誘惑の魔眼の事を隠していたと言うのか?

そんな危ない物を持ってるって知っていたら……ツキツバが殺したあの女をもっと早く救えた……かも知れない。

「……すまない。某とした事が気が立っていた」

「……あ……ああ。どうも」

……我ながら、何だこの会話?

そこへ、フラウがツキツバに質問する。

「で、ツキツバ様はこのままノノをこの村に置いて行く御心算で?」

が、ツキツバは困った顔をしながら首を横に振った。

「それなのですが、この村の長に1週間待って欲しいと頼まれたのです」

「……説得する気か?ノノを」

……いや……その前にこの村はツキツバの相棒としてノノを選んだ理由だ。

「……まさか……この村はノノのスキルを知っていたのか?」

「それが如何いたしましたか?」

「いや、ノノのスキルを本当に知っている奴が、そう簡単にノノを手放すかなとね」

「それなのですが、この村の長は、どう言う訳か某に恩義を感じておる様で―――」

ツキツバが改めてこの世界に到着してからこの私に出逢うまでの出来事を語った。

そのお陰で、ノノがツキツバの隣にいた理由に辻褄が合った。

「で、その借りを返す為にノノをアンタの許にと言う訳ね」

そして、この村がノノの説得に必死になっている理由も。

だが……

「ですが、恐らくノノ殿への説得は失敗するでしょう」

恐らく、ウンコセインの事だろう。

ノノはこれだけの事をされても……いや、本当に信じているのか?

ウンコセインと共に魔王を倒す。

ベルディアの一件をもってしても、本当にその考えは捻じ曲がらないか……

「ツキツバ、ノノは本当にウンコセインを信用しているのか?」

それに対し、ツキツバは即正論を吐いた。

「それはノノ殿が決める事です」

ですよねぇー。

……頼むぜノノ!自分の人生に恥を掻かせるなよ!

 

ノノ・メイタperspective

 

僕には解らなかった……

「ノノよ、お前は何故―――」

村長は怒っていた様だが、今の僕はそんな事はどうでも良かった。

僕はただ、完全に下衆で屑と化したセツナから、魔王討伐と言う気高い使命を持つ勇者セイン様を護るかだ。

「よいかノノ!ツキツバ殿には1週間程待って貰っている!それまでにちゃんとツキツバ殿に謝罪するのだぞ!」

今のツキツバさんを信用して良いのか!?

あの人は屑セツナに騙されて勇者セイン様に刃を向けようとしているんだよ?

勇者セイン様が死んだら、誰が魔王から世界を護るの?

なら……僕のすべき事は、理由も無いのにツキツバさんに謝る事じゃない!

勇者セイン様に逢って全てを話そう!

そして、クズセツナも勇者セイン様に成敗して貰おう!

まだ残ってる聖剣はオーサム!

そこで勇者セイン様に逢って全てを話すべきだ!

例え……ツキツバさんを敵に回す事になっても……

 

 

月鍔ギンコperspective

 

「おい!?どう言う事だ!?」

「ノノが、ノノがいない!」

「あの馬鹿ガキ!どんだけツキツバへの恩を仇で返す気だ!?」

どうやら、ノノ殿は自分の成すべき事を見つけてそれに従う事を選んだ様です。

「黙れぇーい!」

村人全員に聞こえる様に叫びました。

「そなたらは何故にノノ殿を捕らえんとする!?」

それに対する答えは……どれもノノ殿の決断を無下にする者ばかりだった。

「それが本当にノノ殿の為になるか!?ノノ殿の遺志に報いる行いか!?」

そして……某は改めてノノ殿と戦う事を選びました。

「ノノ殿は勇者セインが魔王を倒して世界を救うと信じている」

「だがよ―――」

「セツナ殿!某はそう言う事を言っているのではないのです!」

「……どう言う事?」

「ノノ殿は、自分の命を賭けるに足る道を見つけたのです。そして、その道を辿る為の覚悟を決めたのです」

「いや……だから―――」

「そこに常識や道理はありません。あるのは己の志への信義のみ」

皆、某の……いや……ノノ殿の選択の覚悟を知って遂に押し黙った様です。

「後の残るは志同士のぶつかり合い。ノノ殿は志の為に死ぬ覚悟は決めた。後はノノ殿を止める者達の志がノノ殿の志に勝っているか?つまりそう言う事なのです」

そこまで聞いて、フラウ殿が沈黙を破る様に某に訊ねました。

「……ツキツバ様は、ノノの奴をどうするの」

……フラウ殿?某の話を聴いておりましたか?

「……どうもしません。ただ、ノノ殿の志にとって某が邪魔だと言うのであれば、ノノ殿の志に立ち向かう敵として、ノノ殿が越えるべき壁として戦います」

それに対し、セツナ殿が少し引いている様です。

「ソレ……本気で言っているのか?」

「本気です。ノノ殿の今回の脱走に、それほどの覚悟を感じました」

「……ノノめ!恩知らずな事を―――」

まだまだウジウジ言っている者がおったので、某が柄にもなくまた説教を垂れました。

「ノノ殿の頭は、邪魔者に媚を売る程軽くはありません……もしノノ殿の志にとって某が邪魔なら、ノノ殿は平気で某を殺すでしょう!出来るか否かは度外視した上で」

そんな中、今まで呪文の鍛錬をしていただけのめぐみんがようやく口を開きました。

「だとすると、ノノが往くのはオーサムだ」

それを聴いたセツナ殿が少し青くなっておりました。

「オーサム……まさか、ツキツバがウンコセインを殺そうとしている事をチクる気か!?」

某は……某の手を引っ張ろうとするセツナ殿の手を撥ね退けました。

「そう言うセツナ殿こそ、セインと戦う上でノノ殿の志と渡り合える程の志をお持ちか?」

「それは……」

「見損ないましたぞセツナ殿。ま、どの道某もセインは許せぬ故戦いますがな」

そんなグダグダな形でオーサムへと出発した某達ですが、果たして、この様な体たらくで精神的な意味でノノ殿と戦えるか……正直不安です。

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