色々と間違ってる異世界サムライ   作:モッチー7

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第4話:勇者の計算外その1

セインperspective

 

ギシギシとベッドがきしむ。

僕は魔法使いのリサを抱いていた。

近くには格闘家のネイと聖職者のソアラが転がっている。

「もうダメ!限界!」

「何だよ、もうへばったのか?」

失神したリサを放り出し僕はベッドの端に腰掛けた。

白い肌を露にした3人を眺めてから鼻で笑う。

 

ハッキリ言おう。僕は誰よりも優秀だ。

身体、知能、性格、能力、あらゆる面で非の打ち所が無い男。

しかも、僕は勇者だ。

勇者である僕は、魔王と戦う運命を背負わされている。

僕は大陸に存在するいずれかの聖武具を手にし、魔王との戦いに勝利しなければならない。

非常に面倒ではあるが、その分手にする名声と金は膨大だ。

既に取り入ろうとする貴族が声を掛けて来ている。

 

そんな僕は最高のスキルを手に入れた。

 

誘惑の魔眼:異性を所にするレアスキルだ。

 

これを発現した時、僕は心の底から歓喜した。

上手く運べば手の届かなかった令嬢を食い放題となるだろう。それどころかこの国の王女だって。

 

まったく僕の人生は最高だな。

 

あはははははっ。

 

「魔王軍の幹部が……死んだ?」

僕はリビアの領地にある聖武具の神殿に向かう途中に絡んで来た奇妙な村長から話を聞いて愕然とする。

聖武具を手に入れ次第討伐する筈だった魔王軍の幹部が勝手に死んだのだ。話が違うじゃないか。

 

「変わった服を着た少女が突然急に現れてくれて、見慣れぬ剣を持ってわしや村の者達を老若男女問わず犯した魔族の男共をバッタバッタと粉々に斬って下さったんじゃ」

嬉々として語る村長の話を聞きながら静かに歯軋りする。内心で憤怒の炎が燃え盛っていた。

 

聖武具を手に入れ次第、その魔王軍の幹部退治で僕は華々しく勇者としてデビューする筈だったんだ。

 

……いや……本当にそうか?

そういう予定だったか?

違うな、これは魔王軍の幹部がこの村の近くにいる事を教えなかった国の責任だ。

 

とは言え、どこの誰かは知らないが、ふざけた真似をしてくれたな。

 

村長と適当に雑談を交わしてから村を出ようとしたが、

「ところで、そこの屑の山、いかに処分する?」

「あ!どうしよう重くて運べないぞ」

「ここで焼いちゃう?」

僕はリサに命じた。

「やれ」

すると、僕の到着を待たずにくたばりやがった変態魔族共が炎に包まれた。

まるで僕の憤怒の炎の様に。

僕の獲物を横取りしやがってーーーーー。

どんなバカだ!?

 

「セイン、機嫌が悪いの?」

「そんな事無いよ」

「なぁ、魔族なんかほっておいて宿で気持ち良い事しようぜ」

「ネイは黙ってくれるかな」

「それにしても誰があの魔族を全て倒したのでしょうか。普通の冒険家では手も足も出ない相手なのですが」

「まぁいいじゃないか。これで村は平和になったんだし。ちょっぴり残念だったけど、気持ちを切り替えて次に行こう」

そうだ、次こそは素晴らしい結果を残す事となるだろう。

なにせ勇者の証たる聖剣を手に入れるのだから。

既に僕に聖武具を手に入れる資格が有る事はハッキリしている。

わざわざ魔族を倒さなくても、聖剣を手に入れれば世界に勇者が現れたとアピールする事が出来るだろう。

 

あくまでも魔王軍幹部は予定外。

真の目的はリビアの領地にある聖武具の神殿だ。

 

「……無い……」

神殿に入った僕は、台座にある筈の聖剣が無い事に気が付き呆然とする。

「無い無い無い無い無い無い!なあぁーーーーーい!」

確かにここにある筈なのだ。

聖武具を所持していた者が死ねば、自動的にここに戻って来る。

そして、前の所持者の死亡はきっちり記録されている。

だからある筈なんだ。ここに。

恐らく誰かが一足早くここに来て持ち出したんだ。

「落ち着いてセイン」

「五月蠅い雌豚!」

リサを振り払う。

床に転んだ彼女の顔を踏みつけた。

「いちいちべたついて来るな!殺すぞ!」

「ご、ごめんなさい」

イライラが止まらない。

なぜ上手くいかないんだ。

 

まさか……あの村を襲った変態魔族共を粉々にした謎の女がここの聖剣を……

だとしたら、出会ったら犯して殺す。

聖剣は勇者である僕の物なんだ。

 

ノノ・メイタperspective

 

ギンコさんが魔物の事を全く知らなかったので……と言うか、どうなってんの?……取り敢えず僕が知っている魔物の事をギンコさんに教えたのですが……

「ワハハハハ!」

え!?何で!?

「どうして笑ってるの?ギンコさん」

「嬉しいのです!」

え?アレ?

魔物は狂暴で残酷な厄災って説明した気が……

「武士として強者と求めたが巡り合わず、辻斬りの真似事をし、絶望の果てに悟りを求めて仏門に帰依までした某が……凶暴な怪物達。その怪物を統治すると言う、魔王と言う大大名。これが笑わずにいられますか!この世界は溢れている!まだ見ぬ希望が!」

「え?」

希望?

僕はまだ勇者セイン様の事を説明してないのに?

「ああ早く戦いたい!もっと早く来れば良かった。異世界万歳!」

ギンコさんってやっぱり……変!

「で、その魔王殿とやらはどこにいるのですかな?」

サムライ怖い……

 

それに、その前に!

「だったら魔物を何体か斃して魔王に知られたらどう?」

「つまり、某に興味を持ってもらうと言う訳ですか?」

「そー!そう言う事!」

勿論これは全部嘘だ。

なぜなら、その魔王は勇者セイン様が斃すからだ。

だから急がなくちゃ!早く僕のレベル上限を激増させて勇者セイン様が率いる[[rb:白ノ牙 > ホワイトファング]]の一員にならなくっちゃ!

「そこで、これから僕達はルンタッタと言う町に往く事にしました」

「そのるんたったって町に何が有るのです?」

「あそこには難易度高めの未踏破ダンジョンが有るのです」

「だんじょん?」

「冒険者達は秘境、遺跡、廃墟などへと潜り、倒した魔物の素材や落ちている装備やアイテムを拾って生計を立ててるんだ」

「ほー」

「で、僕達が今から往くルンタッタにあるダンジョンは未踏破だから、内部の全てを知っている人はいないんだ」

で、ダンジョンの最下層には核石と言う物が存在する。

核石は到達者にクリア報酬を与える事で有名だ。

何が貰えるかは到達してみないと解らない。と言う事は、核石が僕のレベル上限を激増させる可能性が有るって事だ!

はあぁ……

 

「ダンジョン?そんな細腕で?」

道を尋ねた冒険者が見下した顔で返答する。

随分と無礼な答えだ。

「ダンジョンを踏破してレベルを上げないと勇者セイン様の仲間になれないもん!」

「なれねぇよ。お嬢ちゃんじゃ」

「おじょ……!?」

く……悔しい……

僕は男なのに……僕はレベル上限を激増させて[[rb:白ノ牙 > ホワイトファング]]の一員になるのに!

そんな僕の悔しみを察したのか、ツキツバさんが僕の前に躍り出る。

「そう言うそなたはどうなんだ?他者の[[rb:力量 > うで]]の細い太いを比べる程なのだから……」

「ん?何だ?この娘みたいな小男は?」

え?

ツキツバさんが小男?ツキツバさんは女の子じゃないの?

が、ツキツバさんは横柄な冒険家の台詞を全く気にしていない。

「そなたの[[rb:力量 > うで]]……確かなのだろうな?」

え!?

戦うの!?

一方の横柄な冒険家も売り言葉に買い言葉を言わんばかりに手をポキポキと鳴らす。

「良いぜ坊主、お前が本当に男か、この俺が確かめてやるぜ!」

が、気付いた時には横柄な冒険家の方が既に倒れており、ツキツバさんが手に入れたばかりの聖剣を振り上げた。

「何か言い残す事は?」

すると、何時の間にかツキツバさんに敗けた冒険家が、今までの横柄な態度が一変して命乞いを始めていた。

「つおっと待て!まさか本気か?今のは軽い喧嘩だろ?命まで奪う事は無いだろう!?」

その言葉に、ツキツバさんはつまらなそうに聖剣を鞘にしまう。

「戦いに生きる者でありながら、潔い討ち死により敗走させられて生き恥を晒す事を望むとは……白けてしまいました」

ツキツバさんがそう言うと、そのまま歩き始めた。

……初めて出会った時、村を襲った魔族達やトレントを斃したから強いのは解ってたけど……

いくらなんでも強過ぎるよ!ツキツバさん!

サムライって……なんなの!?

「む?」

ツキツバさんが後ろを振り向くと、先程の冒険家が慌てて逃げていたけど……

僕の気のせいか……冒険家の手にナイフが握りしめられていた気が……

気のせいですよね。

それより……ダンジョンは何処?

 




本作にようやく本格登場した、経験値貯蓄でのんびり傷心旅行のもう1人の主人公にしてメインヴィランであるウンコセインさん。
本作では異世界サムライの月鍔ギンコとの対比となっており、

武士道を重んじ、誉れ高い戦死を好む月鍔ギンコ。

名声欲と出世欲に溺れて人道からかけ離れて行くウンコセイン。

この真逆同士がどう言う経緯で対立していくのかが本作のメインと言って良いでしょう。

ま、ウンコセインの場合は、主人公に手柄を盗られるまでがワンセットみたいなキャラなので……
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