色々と間違ってる異世界サムライ   作:モッチー7

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第39話:遠ざかるフォーメリア

めぐみんperspective

 

我が名はめぐみん!アークウィザードを生業とし最強の攻撃魔法・爆裂魔法を操る者!

我々は爆裂魔法の偉大さを知らしめるべく、魔族の支配する暗黒領域へと足を踏み入れた!

……のですが……

「普通というか、のどかですね」

「暗黒って言うからとんでもない場所かと思ってたわ」

「敵国の領地だからそう呼んでいるだけなのでしょう。それだけの話です」

多分、ツキツバの言ってる事が正解なのだろう……

砦から続く道は草原を横切るようにあり、時折蝶々を見る事ができる。

目が痛いほどの青空にぬるい風が吹いて気持ちが良い。

暗黒領域――名前は不気味だが、実際はただ単にヒューマンが支配をしていない土地の総称である。

そこでは魔族がそれぞれの国を創り、ヒューマンと変わらない生活を営んでいる。

「して、ふぉーめりあはいずこに有るのか?」

その言葉は、グレイフィールド国王の助言によるもので、

「暗黒領域に入った際は、フォーメリア国を訪ねると良い。そこの魔族なら金次第で魔王城へ案内してくれる筈だ」

それを聴いたセツナは驚いていたが、政治家には政治的な旨味を得る為ならどんなズルもする者です。

グレイフィールドとフォーメリアが秘密裏に裏取引しているのは、政治的な旨味が有るからなのでしょう。

ただ……

「今は魔王の出現で交流は途切れているがな」

と、残念がっておりました。

軍人に国王をやらせてはいけないの好例になる事でしょう。

 

で、ここで切実な問題に直面します。

それは、『コーゲハイン』と言う町に到着した時に起きました。

「あ」

「どうしたんだ?ツキツバ?」

「ふぉーめりあに往く為の路銀が有りませぬ」

最近は金の心配をしなくて良いので、すっかり気が緩んでいました。

よくよく考えてみれば魔族側の金を持っていない。これじゃあ何も買えないではないか。

さて弱りました。

「ん?」

「え!?まだ問題があるのか!?」

セツナが完全に怯えています。

が、寧ろこちら側の方が優位な事でした。

看板には『30分耐えられた者には100万進呈』と書かれていました。

「ひーーーーー!」

「フシャー」

「出してくれぇー!リタイヤする!」

魔族の男が悲鳴をあげて檻から飛び出した。

中には5mほどのソードキャットがいた。

ソードキャットは確か、暗黒領域にのみ生息する強い魔物―――

「あれをやってみましょう!」

出た。

ツキツバのいつもの癖。

「誰か挑戦しないのか。参加料は後払いでもいいぞ」

「たのもー!」

セツナやエドンは嫌がるだろうが、今は少しでも金が欲しい。

それに、私にとってもこの「ごたごたの元」は好都合です!

「あんなに喧嘩を楽しみにされては、止めるのも気が引けます」

「とか言って、爆裂魔法が撃ちたいだけでしょ?」

まあそうなんですが、だがそれだけではあるまい。

ツキツバは騒ぎを起こす事で魔王リサにその存在を知らせ、あわよくば襲ってこさせようと目論んでいるのではないのか?

想像の範疇でしかありませんが。

 

月鍔ギンコperspective

 

5分間この檻の中に入れは100万貰えるそうです。

で、その5分とはどのくらいの長さなのでしょうか?

ま、迷っても仕方が有りません。ふぉーめりあへの路銀を稼ぐ為にも、某は檻の中に入らせていただきます。

……なるほど。

この巨大な虎が怖くて、誰もがこの檻から出ていくのですな?

「無駄無駄。ウチの猫に5分以上耐えられた奴はいないんだよ」

言ってくれますな。望むところです!

さあ来い!

その牙と爪を某に―――

「が!?……ガルガルガルガルー!」

……某の望みに反して、巨大な虎は臆して檻を駆け登ろうとしました。

少し怖がらせ過ぎた様です。

「なんだとっ!?」

外がざわつき、店主も驚いて檻にしがみついています。

ですが、某にとっては興醒めですし、めぐみん殿も期待していた物とは違うと言った表情をしています。

そんな中、逃げられないと悟った虎は、まるで刀の様な尻尾を某に突き刺そうとしましたので、某はその尻尾を右へと払い流したのですが、虎の方は未だに逃走を諦めておらぬ様で……

「100万やるから帰ってくれ!」

え!?

もう終わりなのですか……

 

めぐみん殿が残念そうに皮肉を言いました。

「残念でしたな。あいつらをおびき寄せる程のごたごたが起きなくて」

つまり、めぐみん殿はここで騒ぎを起こしてセイン殿や毒婦リサをおびき寄せようと考えていると勘違いしておる様です。

実際は違いますが……

 

が、めぐみん殿の目論見が完全に失敗したと言う訳でもなく、

「先ほどのソードキャットへの挑戦、見させて貰ったよ。もしよければ我が屋敷で話を聞いてもらえないかな」

「話?某にですか?」

「率直に言えば依頼だよ。少々困った事になっていてね」

 

セツナperspective

 

怪しまれては……いない。

恐らく相手は魔族側の貴族。下手な発言はできない。

魔族の屋敷はヒューマンと大して変わらない様だった。

「さっそくだけど、君達は水源についてもう耳にしたかな」

「いや、詳しく聞かせてくれ」

「この街は山から下りてくる川を生活水として使用していて、ここ最近その川の水源がとある魔物によって塞がれてしまったんだ。おかげで川は干上がり始め、危機的状況になりつつある」

水源を塞ぐ魔物、だとするとかなりデカくて重量があるんだろうな。

水は生きるのに必要不可欠な物だ。

となると、ツキツバの答えは、

「兵糧攻めとは何たる卑劣!その者、某が叩き斬ってくれよう!」

……増えゆくごたごた。

……遠ざかるフォーメリア。

どうなるんだ私達……

「自己紹介が遅れた。ボクはこの地を治めているピオーネ侯爵だ」

「某は月鍔ギンコ!侍です!」

ピオーネとツキツバが握手を交わす中、私はフォーメリアからどんどん遠ざかる私達に呆れていた……

 

と言う訳で(どう言う訳だ?)、私達は水源を塞いでいると言う……

「聞き忘れてたんだけど、その魔物って何?」

「ポイズンスライム。それもキングサイズの」

「うげっ」

思わず声が漏れ出てしまった。

キングサイズのスライムは、冒険者が手を出してはいけないリストに記載されている存在だ。

物理攻撃は当然のごとく効かず、魔法攻撃も圧倒的質量に効果なし、おまけに食欲旺盛で近づく生物を手当たり次第に捕まえては、強力な消化液で溶かしてしまう。

しかも今回はより厄介な毒持ちのポイズンスライム。

……私達……生きてフォーメリアに辿り着けるの?

しかも、

「待って、みんな速いよ……」

ピオーネの足が物凄く遅い!

単に山に慣れていないだけなのかとも思ったが、様子を見る限り基礎的な体力が低い様だった。

「ピオーネのレベルはいくつなんだ」

「7だよ」

え……

7!?

ノノの奴に出遭う前の私とあまり変わらないじゃん……

魔族の貴族と言うから、相当に腕が立つ人物と思っていたのだが……

「ははは、低すぎて驚くよね。実際名ばかりの領主なんだ。亡くなった父が優秀だった事もあって、なんとか今も街の皆に従ってもらってるけど……あ、これ内緒だからね」

「そんな事を某にに言って良いと思っておるのか?」

「こうみえて人を見る目だけは良いんだ。ツキツバ達はきっと良い人だよ」

ピオーネは品の良さそうな微笑みを浮かべる。

魔族の箱入り息子。そんな印象を抱いた。

そんなピオーネに対し、ツキツバは一喝する。

「油断召されるな!壁に耳あり障子に目ありと言います!どこで誰が聞いているか、解りませぬぞ!」

「え?……ごめんなさい……」

そこで私は考えた。

「乗れ」

「へ」

「そんなんじゃ、何時まで経っても辿り着けない!」

しゃがんで背中に乗れと言ってやる。ピオーネは少し躊躇ってからおずおずと体を預けた。

「ひゃぁ!?」

一気に加速したので、背中のピオーネが女の子みたいな声を出している。

心なしか背中に当たる胸がやけに大きく柔らかい気がした。

……まさかね。

「あれだよ」

ピオーネが指差した先には、濃い緑色のスライムがいた。

ただし、サイズは10mを超える。

あれこそが通称キングスライムだ。

今もどっかり水源に居座っているらしく、水の流れた跡は見受けられるが、肝心の水はどこにもない。

「勝てそう?」

私は氷狼族。戦闘の際は巨大な氷で形成された爪を両手に纏い敵を引き裂く。

そこに聖武具の効果を加えれば、氷の硬度では対処出来ない程の守備力を持つ敵とも戦える様になった!……筈……

……うん……

私……有頂天になってたわ。

一瞬、凍ったかと思ったが、中心まで完全に凍らせる事は出来なかったらしく、直ぐに表面の薄氷を割って動き出す。

ツキツバの剣で真っ二つにしても良いが、それだと真下の水源に衝撃を与えそうだ。

しかし、どうしたものか。

「ふふん、こんな時こそフラウの出番ね」

「あそこから動かせるのか」

「妖精の粉よ。粉を振りかけてやれば、浮かんで嫌でも動くでしょ」

ふわりと浮き上がるキングスライム。

だが、宙に浮いたスライムが消化液を吐き出し始めた。

よりにもよって、一番厄介な攻撃を浮いている時にするなんて最悪だ。

「うわぁぁあああっ!」

「ピオーネ!?」

消化液が彼の潜んでいた茂みに直撃したらしく、慌ててピオーネが飛び出してくる。

「ツキツバ!」

「大丈夫か!?ピオーネ……ど……の……」

液によって服が溶かされ裸の状態だった。

「やはりお前!女だったのか!?」

って、何言ってんだ私はぁー!?

 

ノノ・メイタperspective

 

……駄目下でツキツバさん達について行って、ピオーネさんと言う魔族の貴族に仕事を依頼され、ピオーネさんが実は女で……

何が何だか訳が解りません。

「えっと、悪気があった訳じゃないんだ」

ツキツバさんがピオーネさんの行動の訳を語ってくれました。

「貴方方の家系に嫡男と成るべき男士に恵まれず、そこで仕方なく性別を偽って家名を継ぎ、家の衰退を防ぐべく奮戦したと?」

「え!?納得したの!?」

ピオーネさんが白状しなければならない事実をツキツバさんに先に言われて驚くピオーネさんでしたが、ツキツバさんは性別を気にする性格ではない様で、

「名家を存続させる為に様々な手を労する。よくある事です」

納得が早い!

改めて……どんな人生を送って来たの!?

それに……

ショックだったのは、ツキツバさんもフラウさんも気が付いていた点である。

2人によればどう見ても女の子にしか見えないらしい。

僕は全く分かりませんでした……

「お願い!この事は誰にも言わないで!なんでもするから!」

「……何でも……ですか……」

ツキツバさんの言葉に、ピオーネさんはぴくりと反応する。

ツキツバさん……いったい何を始める御心算で……

 

茂みに隠れて先を覗く。

そこにはゴブリンの集団がいた。

ゴブリン、ゴブリンウォーリア、ゴブリンライダー、ゴブリンシャーマンなどなど。

中にはゴブリンの上位であるホブゴブリンまでみかける。

「い、いくよ」

「ああ」

「いくからね」

「ああ」

「よーし、いくぞ」

「そろそろ頼む」

つまり……ツキツバさんは僕達の経験値稼ぎにピオーネさんを巻き込んだ訳なのですが……

もうかれこれ30分近くこの調子なんだ。

お陰で、ピオーネさんがレベル7なのに今まで生き延びてきた理由が解りました。

この人、臆病なんだ。

と言う訳で……僕達はいったん引き返しました。

「はぁぁ、ボクってほんと駄目な奴だ」

その悔しさ……僕は良く解る!

僕も勇者セイン様のお役に立とうと色々と努力するけど、レベルの上限が3しかないせいで何やってもダメ……

悔しいよね!

辛いよね!

「剣が駄目なら!爆裂魔法にしなさい!」

「ボク、魔法使えないんだ」

「弓とかどうなの」

「的に一度も当たった事が無くてさ」

「ツキツバ……この話は無かった事にすべきでは?」

ピオーネさんがセツナさんの無慈悲な言葉にショックを受け、無言になる。

でも、ツキツバさんは頑固に僕達の経験値稼ぎにピオーネさんを巻き込み続けた。

「剣の稽古をしていたとおっしゃってましたな?槍は如何ですかな?」

「うん、それなりに指導は受けてるよ」

「……しばし待たれよ」

ツキツバさんは、デスアントを討伐する時に作ったダンジョンのマイルームへと移動した。

「これを御使いくだされ」

「槍?それより今、どこに行ってたの!?消えたけど!」

「お気に召さるな」

「気にするよ!」

……ですよねぇー。

 

ピオーネさんの槍がゴブリンの心臓を突く。

ホブゴブリンの振るった斧を素早く躱し、石突きを鳩尾に抉る様にめり込ませた。

「はぁっ!」

数分でゴブリンは全滅。

槍を構えたピオーネさんは、荒々しく肩で呼吸をしていた。

結果を言えば成功した。

1度目の戦闘では、槍でなんとか敵を突き殺した。

2度目の戦闘で体の固さがとれ、スムーズに戦いを行えるようになる。

3度目が先ほどの戦い。普通に戦闘を行えていた。

「ふへぇぇええ」

ぐにゃり、足から力が抜けたピオーネさんが座り込む。

僕達は駆け寄って成功を祝った。

「やれば出来るではありませんか!」

「うん、ボクには槍が向いていたみたいだね」

「レベルも上がったんじゃないのか」

「えーと、84になってる」

ピオーネは微笑んで頷く。

「ボクが、レベル84……はぁぁ」

彼女はうっとりとした顔でステータスを眺め続ける。

……ちょっと気味悪いな……

それに引き換え……僕は相変わらずのレベル3!

僕のスキルである『経験値倍加・全体【Lv50】』と『レベル上限40倍・他者【Lv50】』は、相変わらず他者の経験値稼ぎには役立つけど……

なんで僕のレベル上限は3しかないんだよぉーーーーー!

しかも……

「伝令!フォーメリア、魔王に加担した勇者の襲撃を受け敗北!」

……は?

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