色々と間違ってる異世界サムライ   作:モッチー7

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第42話:勇者の計算外その9

セインperspective

 

「ぐはっ!?」

僕は蹴り飛ばされて地面を転がった。

「どうした勇者。まだ前勇者と前々勇者の方がしぶとかったぞ」

「このクソジジイ、ぶっ殺してやる」

「殺せるものならばな。ほれ、はよ来い」

鎧の力を使ってレベルを315にまで引き上げる。

渾身の力で切り下ろすが、ムゲンはするりと躱して見せ、すかさず炎の斬撃を飛ばす。

直撃した僕は大木に背中から叩きつけられ、血を吐いた。

こいつ、レアジョブの魔剣士か!

「しかし、お前さんは剣と言う物を全く知らん様だな?力任せに剣を振り回すだけの馬鹿か?」

「黙れ!僕は勇者だぞ!」

「よく言うわ。剣の何たるかを知らぬ馬鹿など、文字通り左手だけで十分じゃわ」

この糞爺ぃー!

この僕を誰だと思っているうぅーーーーー!?

「おじいちゃん、持ってきたよ」

「うむ、これで1つ厄介な武器を封じる事が出来る」

「なにを……」

ムゲンは男装をした美しい女性からスクロールを受け取る。

きひっ、良いね好みだ。

どうせ勝てないならあの女だけでもいただくとしよう。

「解!」

「!?」

スクロールから光が放たれ、僕の目に直撃する。

 

《報告:誘惑の魔眼はスキル封じによって封じられました》

 

な、んだとっ!?

「ツキツバに頼まれていたのだ。魔眼を封じて欲しいとな」

「よくも、よくも僕の目を!」

ツゥウウウキィイイイツゥウウウバァアアア!

また僕の邪魔をするのかぁぁああ!

「ほれほれ、お前の連れてきた兵が撤退して行くぞ」

振り返れば、ワイバーン部隊が続々とこの地を離れようとしていた。

ちっ、想定以上に守りが厚かったか。

これでは外の兵を引き込む事が出来ない。

ここは退くしかないだろう。

「ジジイ、覚えていろ!」

「年寄りなんで忘れてるだろうな」

「おじいちゃん変な恨み買わないでよ」

「向こうが売ってきたんだ」

バーズウェルに飛び乗り、飛び立つ。

ここにツキツバが来たのか。

それだけでも収穫はあった。

ひとまずリサの元に戻るとしよう。

 

ツキツバがアスモデウを通過した事を報告すると、僕はいきなり顔面を殴られた。

「使えない男!自分が何をしくじったか解らないの!?」

「どうして殴るんだ。僕が間違った事を?」

「大間違いよウンコグズ!アスモデウには、この魔王城と繋がる緊急用の転移魔法陣があるのよ!つまりツキツバ達はもう真下に来てるわ!」

馬鹿な。真下だと。

だったら直ぐにでも向かわないと。

今こそツキツバを始末してやる。

「あー、アスモデウを先に攻めさせるべきだったわぁ。計算外。他の2ヵ国はヒューマンと取引してるから絶対立ち寄ると思ってたのに」

「もう終わったことだろ。それよりもトールを片付けないと」

「……そうね。考えてみればトールは勇者のジョブを持っていないのだから、恐れる必要はなかったわ。どうして警戒なんてしてたんでしょ」

リサはがらりと、憤怒の表情から笑顔へと切り替える。

彼女は僕の前にしゃがみ込んで優しく頬を撫でた。

「ごめんなさいセイン。つい貴方にイライラをぶつけてしまったわ」

「気持ちは分かるさ。僕もトールは目障りだからさ」

「やっぱり貴方は優しいのね。だから大好きよ。一緒に私達の覇道を邪魔する者達を消しましょ」

「リサ」

僕達は口づけを交わす。

……馬鹿な女だ。

今はまだ逆らえないが、いずれレベル差が埋まった時、また今までの様に足下に這いつくばらせてやる。

僕こそが勇者。僕こそが正義。僕こそが世界の王だ。

誘惑の魔眼を失ったくらい、ほんの些細なこと。

ツキツバさえ始末出来れば、後はどうだって出来る。

あいつさえいなくなれば、僕は自由なんだ。

「ツキツバを片付けてくるよ」

「気をつけてセイン」

僕は颯爽と城の地下へと向かった。

 

セツナperspective

 

アスモデウの都は壁に形成された街だ。

その壁の中では迷路のように通路が張り巡らされ、店や住居が無数に点在している。

更にその奥には、冒険者しか立ち入らないエリアが存在していた。

通称、遺跡エリアである。

内部は非常に広大かつ複雑であり、未探索エリアが今もなお複数存在している。

その一画に、魔王城への転移魔法陣は存在していた。

「無理だと判断したら戻ってこい。恐らくその心配はないだろうが」

「気をつけてね。無事に魔王の元へたどり着けることを祈ってるから」

ムゲンとピオーネの言葉に頷く。

目の前には大きな魔法陣が輝いている。

魔王リサの足下と繋がっていると思うと、どうしても緊張してしまう。

果たして勝てるだろうか。

やはり不安はある。

「そうでした。ピオーネ殿にはこれを御渡ししておきます」

ツキツバは懐からスキル封じのスクロールを取り出す。

それをピオーネに渡した。

「そんな貴重な物、貰えないよ!」

「受け取ってくだされ。セインは誘惑の魔眼を所有している。ピオーネ殿は別嬪故、もしかすると魔眼で取り込もうとするかもしれませぬ」

「別嬪だなんて、恥ずかしいよツキツバ」

「……なんで照れてるんだ?」

ピオーネは顔を押さえて耳を赤く染めていた。

代わりにムゲンが受け取りニヤリとする。

「碌でもない勇者だとは知っていたが、そこまで救いがたい相手だったか。よかろう。わしらの前に現れた際は、遠慮なくこのスクロールを使わせてもらう」

哀れだな。ウンコセイン。

これで後顧の憂え無く、戦いに身を投じる事が出来る。

頼むぜ!

ムゲン!ピオーネ!

「では……参りましょう!敵城へ!」

「やるわよ主様」

「楽しみですな。心置きなく爆裂魔法を使える」

ツキツバ、フラウ、めぐみん。

そして、エドンにユーミルが待っていた。

いざ、魔王城へ。

サムライの出撃だ。

私達は魔法陣へと飛び込む……

 

月鍔ギンコperspective

 

「っと」

無事に向こう側に到着。

浮かび上がるのは冷たい空気に満ちた石の大広間。

無数の柱が並び、嫌なほど静か。

「言ってた通り、迷子になりそうな場所ね」

フラウ殿の言う通り、この場所は油断出来ませぬ。

「敵は?」

「スカルドラゴンだけ」

扉の前には白骨化した龍が横たわっていた。

闇に満ちた眼窩に、赤い光がぼんやりと宿る。

「グォオオオオオオッ!」

スカルドラゴンと呼ばれる者の遠吠えと共に、エドン殿とユーミル殿が武器を抜いて某の前に立ちました。

「ここは我々が何とかする!その隙に前へ!」

エドン殿は己を盾にして某を護ろうとするのですが、空気を読まぬフラウ殿が、

「ブレイクハンマー!」

「グォホォ!?」

まだ、立ち上がってもいなかったのだが。

すまぬ、スカルドラゴン。

今度まみえた時はちゃんと御相手させていただきます。

 

その後もムゲン殿から預かった地図を頼りに長い階段を駆け上りつつ、立ちふさがる者達を斬り伏せていきます。

セツナ殿の見立てでは全体的にレベルが高く厄介な奴らが多いとの事です。

とは言え、心身ともに疲れはない。

このまま一気に地上を目指したいところですが、どこにいても腹は減るものです。

ここでいったん飯にしましょう。

……エドン殿がしょげてる様ですし……

「……エドン殿?」

どうやら、この戦いに役に立てない事を悔いてる様です。

ほとんどの敵は某かフラウ殿かセツナ殿が倒してしまうので、はっきり言ってエドン殿の出番はありません。

でも、

「ただ戦う事だけが戦働きではありませぬ」

某のこの言葉にエドン殿がきょとんとしています。

「え?……違うの?」

「そう。エドン殿やノノ殿にやっていただきたい事は戦う事ではありませぬ」

「……ではなんだ?」

「つまり、見届けて欲しいのです。某の生き様を」

「見届ける……生き証人と言う事か!?」

「そう言う事です。某の人生は戦いばかり故、何時死ぬか解りませぬ。故に、某の代わりに某の生き様を語る者が欲しいのです」

その途端、エドン殿の目に光が宿ります。

「……解りました……見届けましょう!」

 

地下一階層に到達。すると大きな扉を開いた。

「待っていたよ、ツキツバ」

地上に通じる階段がある大広間。

そこでは百を越える魔族が待ち構えていた。

そして、ニヤニヤしたセイン殿が腕を組んで某を見ている。

邪な甲冑を身に纏いながら。

いくら戦場で目立つ為に立物にこだわるとは言え……この様な悪しき者に間違われ易い甲冑を好んで着るとは……

「今の僕は以前とは違う。圧倒的力を手に入れた。もう、お前なんか足下にも及ばないんだよ」

「僕?僕達の間違いではないのか?」

「保険さ。僕はお前を侮り過ぎていた。まさかお荷物がここまで急成長を遂げるなんて考えもしなかったからね。だから今度は全力で相手して……はぁ!?レベル300!?」

セイン殿は後ずさりする。

「お前達、しばらく足止めしろ!倒した者は将軍にしてやる!」

……意味が解らぬが、セイン殿の根は蛮勇とは程遠い臆病なのだろう。

とは言え、臆病でありながら蛮勇の者を騙ったセイン殿のせいで、ノノ殿がどれだけ苦しんだか……

逃がさぬ!

 

セインperspective

 

馬鹿な!

ツキツバのレベルが300って!?

しかも、聖剣を2本も持ってる!

つまり、本気になればレベル540……

僕はまだレベル150で、剣と鎧の力を使ってもレベル315しかないのに……

屈辱だが、今は逃げるしかない!

あんな化け物とまともに戦う訳にはいかない!

その間も、僕の足止めの為に戦ってる魔族達の断末魔が響き渡る。

振り返るな!

僕は勇者だ!あんな死に様をしていい人間じゃない!

急いでリサの許に戻らねば!

重厚な扉を開き、ようやく謁見の間へと至る。

「セイン。調子に乗らないでね、貴方は始末も出来ずおめおめと逃げて来たんだから」

「逃げたんじゃない、こちらへ誘導したんだ。リサがいれば僕も安心して戦えるからね。あんな兵士達じゃ、背中は任せられない」

「さすがは役立たずの勇者ね。言い訳だけは一人前だわ」

「くっ……」

今は耐える!

変なプライドは捨てろ!

今は確実にツキツバを殺す事だけを考えろ!

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