切り札はゴキボール   作:白銀蟷螂

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襲来、決闘淫魔

 遊羽の返答を受けて決闘修道女アメリアは嘲るような笑顔を浮かべた。

 

「真のデュエリストに興味がない? やはり闇のゲームの経験がないニセモノは意識が低いわね。それならこのターンでデュエルを終わらせてあげる!」

 

 セックスデーモン豚島の三倍の実力を有するという決闘修道女のワンターンキル宣言。

 

「ミカエリスのエクシーズ素材を一つ取り除いて《エクソシスター・パークス》を手札に加えてライフを800払い発動」

 

 アメリア LP3200

 

「エクソシスター・ステラを手札に加えてから特殊召喚!」

 

 《エクソシスター・ステラ》

 星4 光属性 魔法使い族

 攻撃力300 守備力800

 

「更にステラの効果でイレーヌを特殊召喚!」

 

 《エクソシスター・イレーヌ》

 星4 光属性 魔法使い族

 攻撃力400 守備力800

 

「レベル4のエクソシスター・ステラとレベル4のエクソシスター・イレーヌをオーバーレイ。二体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築」

 

 二体目のエクシーズモンスターを呼び出す準備を整えてきた。

 

「全能なる主よ、今ここに御光を。

 修道女の祈りを束ね、迷える魂を導き給え。

 エクシーズ召喚!

 降り立て、ランク4。

 エクソシスター・カスピテル!!」

 

 《エクソシスター・カスピテル》

 ランク4 光属性 魔法使い族

 攻撃力2300 守備力800

 

「カスピテルのエクシーズ素材を一つ取り除きエクソシスター・ソフィアを手札に。更に魔法カード《サンダー・ボルト》!」

 

 雷撃により《インセクトモンスタートークン》が一瞬で消し炭になった。

 

「これで終わりよ。やはり闇のゲーム未経験者はニセモノ! 裏のデュエリスト程度ではホンモノである決闘修道女の相手にはならなかった! エクソシスター・ミカエリス、攻撃!!」

 

 遊羽の場にはモンスターがおらず、決闘修道女アメリアの場のエクソシスターの総攻撃力は4000を超えている。

 このままダイレクトアタックが成立すればワンキルは達成されるだろう。

 

「かかった!」

 

 だが、この修道女が見落としているものが一つある。

 

「ここで場に伏せていたリバースカードを発動する」

「何ですって?」

 

 遊羽の場のモンスターゾーンはがら空きだが、魔法、罠ゾーンにはカードが一枚あったのだ。

 

「私がセットしていたカード、それは《聖なるバリア -ミラーフォース-》!!」

 

 攻撃が反射されたことにより《エクソシスター・ミカエリス》は四肢を失い首がへし折れて絶命!

 更に攻撃の余波によって《エクソシスター・カスピテル》の上半身と下半身が真っ二つに引き裂かれ臓物を撒き散らしながら破壊される。

 

「……驚いた。まさか《聖なるバリア -ミラーフォース-》なんていうクソカードを使うなんて」

 

 その光景を見た決闘修道女アメリアの反応は嘲笑。

 

「フリーチェーンで発動できないウスノロの攻撃反応罠。しかも耐性によって防がれやすい破壊効果。いくら闇のゲーム未経験のニセモノでも、こんなゴミみたいなクソカードを使うのは逆に盲点だったわ」

 

 二体のエクシーズモンスターを失ったにもかかわらず、その態度は堂々としたるもの。

 

「私はまだこのターン、通常召喚を行っていない。エクソシスター・ソフィアを召喚」

 

 《エクソシスター・ソフィア》

 星4 光属性 魔法使い族

 攻撃力100 守備力800

 

「魔法カード《死者蘇生》により墓地のイレーヌを特殊召喚」

 

 《エクソシスター・イレーヌ》

 星4 光属性 魔法使い族

 攻撃力400 守備力800

 

「ソフィアの効果でカードをドローしてライフを800回復」

 

 アメリア LP4000

 

「レベル4のエクソシスター・ソフィアとレベル4のエクソシスター・イレーヌをオーバーレイ。二体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築」

 

 呼び出されるのはこのターン三体目となるエクソシスターエクシーズモンスター。

 

「修道女の誓約は聖印となり、墓地に手を伸ばす異端を拒む。

 主の御名の下、死者の安寧を乱す罪を裁け。

 エクシーズ召喚!

 降り立て、ランク4。

 エクソシスター・ジブリーヌ!!」

 

 《エクソシスター・ジブリーヌ》

 ランク4 光属性 魔法使い族

 攻撃力1400 守備力2800

 

「カードを一枚セットしてターンエンド」

「私のターン、ドロー。まずは《強欲で貪欲な壺》を発動! デッキの上から十枚除外して二枚ドローする」

 

 現在の遊羽の場には何のカードもない状態。

 だがそんな状況だからこそ発動できるカードもある。

 

「魔法カード《ライトニング・ストーム》発動! あんたの場の魔法、罠カードを全て破壊する!」

 

 自分フィールドに表側表示のカードがないことによって《ライトニング・ストーム》の発動状況は満たされる。

 

「つくづくニセモノのプレイングは浅いわね。さっきの話を聞いてなかったの? 闇ゲーム経験者、ホンモノのデュエリストは攻撃反応罠のようなクソカードは使わない。速攻魔法発動《エクソシスター・パークス》!」

 

 アメリア LP3200

 

「800ポイントライフを払うことでデッキからエクソシスター・マルファを手札に加えるわ」

 

 《ライトニング・ストーム》を躱しながら次のターンに備えてモンスターを補充してくる。

 

「それなら私はゴキボールを召喚!」

 

 《ゴキボール》

 星4 地属性 昆虫族

 攻撃力1200 守備力1400

 

「ゴキボールに装備魔法《月鏡の盾》を装備してバトル! エクソシスター・ジブリーヌを攻撃!《月鏡の盾》の効果によりゴキボールの攻撃力はアップする」

 

 《ゴキボール》

 攻撃力1200→2900

 

 ゴロゴロと転がるゴキブリの体当たりによって修道女の四肢が弾け飛んで爆散した。

 

「でも私のライフにダメージはない。そして次のターン、再びミカエリスを呼び出す準備は整っている。所詮ニセモノではホンモノには勝てないのよ!」

「何か勘違いしてるみたいだけど、まだ私のバトルフェイズは終わってない」

「馬鹿なことを! あなたのモンスターは攻撃を終えているでしょう」

「速攻魔法《超進化の繭》を発動! 装備カードが装備された昆虫族をリリースしてデッキから新たな昆虫族モンスターを呼び出す」

 

 《月鏡の盾》を装備した《ゴキボール》が黄金の繭に包まれる。

 

「地べた這いずる虫けらも

 ――羽虫となって(ソラ)を舞う」

 

 黄金の繭から新たな巨大な蛾のモンスターが姿を現した。

 

「究極完全態・グレート・モスを特殊召喚!」

 

 《究極完全態・グレート・モス》

 星8 地属性 昆虫族

 攻撃力3500 守備力3000

 

「ありえない! 闇のゲームを経験してデュエリストとしての高みに上り詰めた決闘修道女、その筆頭である私が裏のデュエリスト程度のニセモノに!」

「究極完全態・グレート・モスでプレイヤーにダイレクトアタック! モスパーフェクトハリケーン!!」

 

 衝撃増幅装置によってブーストされたリアルソリッドビジョンによって決闘修道女アメリアの身体が宙を舞った。

 

「ぐえええええええええええええええええええええええええええええええええ!!」

 

 悲鳴をあげながら聖母像に激突して教会の床に落下。

 

 アメリア LP0

 

 決着はついた。

 

「……認めない。ミラフォなんていうクソカードを使うニセモノ、闇のゲーム未経験者に真のデュリスト、ホンモノである私が負けたなんて」

「言葉を慎みなさい、シスターアメリア」

 

 赤毛の決闘修道女アメリアを修道院長マリア・クラウスが咎める。

 

「デュエルは結果が全て。クソカードが用いられたとしても実力を示した相手に敬意を払えないようではデュリスト失格ですよ」

「くっ!」

 

 改めて敗北を突き付けられたアメリアが床に拳を叩きつけた。

 

「アメリアの非礼を詫びます。ですが私は見定める必要がありました。貴方たちが聖痕を宿すに値するデュエリストか。決闘淫魔と戦うだけの力を有しているかを」

 

 故に決闘修道女アメリアとのデュエルを止めなかったと言外に含ませている。

 

「ミラーフォースというクソカードを使用してアメリアを倒した技量は認めます。ですが決闘淫魔とデュエルするならそのクソカードはデッキから抜いた方がいい。先ほども言いましたが我々決闘修道女は貴方達への支援を惜しまない。どうぞ、レアカードで好きなだけデッキを強化してください」

 

 聖書型カードファイルを差し出しながら修道院長マリアは穏やかな口調で言った。

 

「生憎だけどデッキに入れるカードは私自身が決める」

 

 くれると言うなら報酬としてレアカードは受け取る。

 だがそれをデッキに投入するかは別の話。

 ましてや今使っているカードをデッキから抜けという指図を受ける筋合いはない。

 

「そうですか。それもまた良いでしょう。決闘淫魔との闇のゲームによって貴方達がデュエリストとして更なる高みに到達できることを祈っていますよ」

 

 この時、マリア・クラウスは修道院長らしからぬ淫靡な笑顔を浮かべた。

 

「ふん、私はこのニセモノたちに闇のゲームというホンモノのデュエルが務まるとは思いませんね」

 

 不機嫌そうな鼻を鳴らしながら決闘修道女アメリアが吐き捨てるように言う。

 

「貴様、いい加減に」

 

 一向に態度を改めないアメリアにセレナがキレかけたその時だった。

 

「「「っ……!!」」」

 

 全身を覆うのは肌を刺すようなプレッシャーとそれと相反するような甘ったるい匂い。

 それを感じているのは遊羽だけでなく、色音やセレナ、ヘルカイザー亮も同様だった。

 

「嘘でしょ、まさか教会の結界が破られたというの!?」

 

 狼狽した様子で叫ぶアメリア。

 

「……気配は四つ。決闘淫魔です」

 

 修道院長マリアが険しい表情で断言した。

 

「だとしたら飛んで火にいる夏の虫ね。今、この教会には私と修道院長を含めて十四人の決闘修道女がいる。既に十二人が迎撃に出ているはずよ」

 

 頬に汗を伝わせながらもアメリアは自信ありげな口調で続ける。

 

「残念だけどあんた達ニセモノの出番はなさそうね。決闘淫魔と言えど決闘修道女の敵じゃない。今頃、ワンターンスリーキルで決着がついてるんじゃないかしら」

 

 決闘修道女アメリアは笑顔で言った。

 

「言葉を慎めと言ったはずです。我々も向かいますよ。そして貴方達にも同行していただきたい」

 

 まだ仕事を引き受けると言った覚えはないが、ここで待っている理由もない。

 甘ったるい気配は教会の入口から漂ってきており、帰るにしても決闘淫魔とやらを素通りすることはできないだろう。

 もっとも十二人の決闘修道女がデュエルに勝利していればそれで済む話ではあるが。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 現場に到着した時、既にデュエルの勝敗は決していた。

 

「そんな、嘘でしょ」

 

 信じられないという表情のアメリア。

 地面に倒れ伏すのは十二人の決闘修道女。

 その正面にいるのは黒い外套を着てフードで顔を隠した四人の女たち。

 

「ワンターンスリーキルゥ……」

 

 倒れた決闘修道女の一人が絞り出すような声で言った。

 ある意味ではアメリアの予想は当たったことになる。

 ワンターンスリーキルされたのが決闘修道女であるという点を除けばだが。

 

「あんた達、無事で済むと思わないことよ!」

 

 怒りのままにアメリアがデュエルディスクを起動、白い十字架型カードプレートが展開される。

 

「やめなさい、シスターアメリア! 分からないのですか! この決闘淫魔たちはこれまで除霊してきた悪霊付きデュエリストとは格が違う。決闘修道女の手に負える相手ではない!!」

「そんな……」

 

 修道院長マリアの言葉に絶望して膝をつくアメリア。

 黒い外套の女たちはそれぞれ三枚ずつ白紙のカードを取り出すと投擲。

 倒れた決闘修道女にそれが刺さると同時に身体が崩れてカードの中に吸い込まれていく。

 

「これが闇のゲームだというのか」

 

 驚愕の表情を見せるセレナ。

 もっとも驚いているのは色音やヘルカイザー亮、そして遊羽自身も同様だ。

 白紙だったカードには決闘修道女の絵柄が浮かび上がり、それらのカードは黒い外套の女たちの手元に戻っていく。

 

「ざぁこ、ざぁこ。決闘修道女なんてざぁこのデュエリスト」

 

 黒い外套の女たちの中で一番小柄な女がカード化された決闘修道女を嘲りながら外套を脱ぎ捨てる。

 その姿は女というより娘、端的に言ってしまえばメスガキだった。

 服装はピンク色のフリル。緑色の髪の赤い瞳、それだけであれば人間の容姿の範囲内。

 だが背中には蝙蝠のような羽を生やし、お尻からはハートマークを逆向きにしたような尻尾。

 

 決闘修道女はセックスデーモン豚島の三倍の実力を有していたという。

 それなら彼女たちをワンターンスリーキルしたこの娘はセックスデーモン豚島の九倍の実力があるというのか。

 それは断じて否だと遊羽のデュリストとしての感覚が警鐘を鳴らす。

 

 セックスデーモン豚島程度では九倍どころか、九十倍、九百倍、九千倍、九万倍、たとえ九億人の豚島を集めても、この四人の内一人の小指の爪の先にも及ばないと感じさせる程の圧倒的プレッシャー。

 

「ざぁこデュリストの皆さん、ごきげんよう」

 

 それが闇のゲームの使い手、淫邪神リリアの先兵、決闘淫魔(デュエルサキュバス)だった。

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