切り札はゴキボール   作:白銀蟷螂

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余興

 電光掲示板に映るトーナメント表を見て遊羽は僅かに目を細めた。

 その表は明らかにセックスデーモン豚島の思惑が反映されていると思われるものだった。

 だが、そんなことはどうでもいい。

 ブラックドミノシティ決闘強姦数No1のレジェンド級|決闘強姦魔(デュエルレイパー)であろうが、遊羽にとっては一人のデュエリストでしかない。

 向こうがこちらをご指名なら、正面から受けて立つだけのこと。

 

 トーナメント表によれば遊羽の初試合はこの後すぐのようだ。

 電光掲示板に一回戦第一試合の選手はコロシアムへ向かうように表示される。

 対戦相手である新井洋子という女は既に移動を開始していた。

 遊羽もその後に続いてコロシアムへと向かう。

 

 コロシアムへと続く薄暗い廊下を歩く間、お互いに会話はなかった。

 新井洋子に視線を向けると彼女は安心したような顔つきをしている。

 奴隷杯の前情報が正しければ、その表情の理由も推測することはできた。

 おそらく男性のデュエリストではなく女性である遊羽が対戦相手だったから安堵しているのだろう。

 それが一般的な女性の感覚であることは理解できるし否定はしない。

 

 開けた場所に出ると視界が一気に明るくなった。

 奴隷杯デュエルコロシアム。

 古代ローマのコロッセオのようなその場所で選手たちのデュエルが行われる。

 観客席に目を向けてミカと大瀧、それから地獄姉妹を探すと4人は右上の観客席のあたりにいた。

 地獄姉妹は別の場所にいるかと思ったが、4人で一緒に試合を見ることにしたようだ。

 

 そして4人から少し上の観客席ところにバンデット・キースの姿もあった。

 キースは組んだ足を前の座席に乗せてどっかりと座っている。

 

『これより奴隷杯、一回戦、第一試合を開始いたします。選手は位置についてください』

 

 互いに指定位置に移動したことによって試合の準備が整った。

 

『それではデュエル開始!』

 

 アナウンスが流れたので遊羽はデュエルディスクをかまえた。

 奴隷杯のルールに従って、現在のデュエルディスクのセイフティモードの設定はオフにしてある。

 観客たちはデュエリストが痛みを伴い、派手に吹っ飛ばされるデュエルを望んでいるのだろう。

 デュエルディスクのオートシャッフルシステムが起動してデッキがシャッフルされた後、先攻後攻が自動的に決定される。

 

 

 害虫 ―― 癲狂院遊羽 /  LP4000

 

         VS

 

       新井洋子 / LP4000

 

 

「「決闘!!」」

 

 

 先攻は新井洋子だった。

 

「私のターン。モンスターを召喚」

 

 《ドリアード》

 星4 地属性 魔法使い族

 攻撃力1200 守備力1400

 

「ターン終了」

 

 攻撃力1200の通常モンスターを一体出しただけで、伏せカードもなしにエンド宣言。

 とても5000万円払って裏の大会に出場したデュエリストとは思えないプレイングだった。

 奴隷杯における一回戦の情報が事実だったと確信するが、だからといって手を緩める気はない。

 デュエリストである以上、デュエルするなら常に全力で。

 少なくともデュエルをしている間は、対戦相手のみを見るのがデュエリストとしては正しい行動だ。

 

「私のターン、ドロー」

 

 引いたカードを遊羽は即座に場に出す。

 

甲虫装甲騎士(インセクトナイト)を攻撃表示!」

 

 《甲虫装甲騎士》

 星4 地属性 昆虫族

 攻撃力1900 守備力1500

 

 セレブリティライン基準を持つインセクトカード。

 この奴隷杯に出場するにあたって購入したレアカードの一枚だ。

 

「バトル! 甲虫装甲騎士でドリアードに攻撃」

 

 《甲虫装甲騎士》が手に持っていた剣で《ドリアード》を切り裂く。

 

 新井洋子 LP3300

 

「カードを一枚伏せてターンエンド」

 

 伏せたカードは《ライヤー・ワイヤー》。

 墓地の昆虫族を除外して相手のモンスターを破壊する罠カード。

 

「私のターン。モンスターを召喚」

 

 カードを引いた後、特に迷うことなく新井洋子はモンスターを場に出す。

 

 《エンシェント・エルフ》

 星4 光属性 魔法使い族

 攻撃力1450 守備力1200

 

「ターン終了」

 

 《甲虫装甲騎士》に攻撃力で劣る《エンシェント・エルフ》を攻撃表示で場に出して、またしても伏せカードもなくターン終了を宣言する。

 

「私のターン。ドロー。ドラゴンフライを召喚」

 

 《ドラゴンフライ》

 星4 風属性 昆虫族

 攻撃力1400 守備力900

 

 アカデミア時代から遊羽を長く支えてきた戦闘破壊トリガーのリクルーター《ドラゴンフライ》だ。

 

「甲虫装甲騎士でエンシェント・エルフに攻撃!」

 

 《甲虫装甲騎士》の剣が再び振るわれ、新井洋子のモンスターを両断した。

 

 新井洋子 LP2850

 

「ドラゴンフライでダイレクトアタック」

 

 リアルソリッドビジョンの衝撃によって新井洋子が数歩後退した。

 

 新井洋子 LP1450

 

「私はこれでターンエンド」

 

 追い詰められているというのに新井洋子に慌てた様子はない。

 

「私のターン。モンスターを召喚」

 

 またしても新井洋子は引いたカードをそのまま攻撃表示で出した。

 

 《ホーリー・エルフ》

 星4 光属性 魔法使い族

 攻撃力800 守備力2000

 

「ターン終了」

 

 今度は守備力2000のモンスターを攻撃表示で出して、そのままエンド宣言をする。

 通常なら不気味に思って警戒するところだが、奴隷杯においては杞憂となる。

 本当に何の戦略もなく新井洋子はモンスターを攻撃表示で出し続けているだけだ。

 それが奴隷杯一回戦における彼女の役割。

 

「私のターン、ドロー」

 

 だとしても遊羽のすることは変わらない。

 デュエルをしている間はデュエリストとして相手をする。

 

「プレイング・マンティスを攻撃表示」

 

 《プレイング・マンティス》

 星4 風属性 昆虫族

 攻撃力1500 守備力1200

 

 複数の特殊能力を持った蟷螂のモンスターを召喚する。

 もっとも、このデュエルで《プレイング・マンティス》の真価が発揮されることはないだろうが。

 

「ドラゴンフライでホーリー・エルフを攻撃」

 

 新井洋子 LP850

 

「甲虫装甲騎士でダイレクトアタック!」

 

 リアルソリッドビジョンの衝撃に耐え切れず、新井洋子が地面に倒れた。

 

 新井洋子 LP0

 

 

『これにて決着です。奴隷杯一回戦第一試合を制したのは、インセクト遊羽選手だ!』

 

 特に苦戦することもなく、一方的なワンサイドゲームでの決着となった。

 会場も盛り上がることなく、観客たちの反応も薄い。

 奴隷杯一回戦における観客たちの目当てはデュエルではないのだろう。

 

 遊羽はそのままコロシアムを後にした。

 奴隷杯では試合を終えた勝者は次の試合まで自由に行動することができる。

 選手控室のモニターでも試合の様子は見れるとのことだったが、やはり観客席で直に見る方がいい。

 とりあえずミカたちと合流して残りの一回戦の試合を観戦することにした。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 観客席。

 

「癲狂院遊羽、19歳。一回戦突破、おめでとう」

 

 観客席で最初に声をかけてきたのは大瀧だった。

 

「はぁ? 奴隷杯の一回戦なんて勝って当然でしょ」

 

 即座に指摘を入れたのは幸だ。

 

「どういうことです」

「あんたこれまで奴隷杯を見たことがないの?」

 

 どうやら幸は以前に奴隷杯を観戦したことがあるらしい。

 

「今行われているデュエルが終わればわかるじゃろう。奴隷杯のスターとやらの試合がのう」

 

 コロシアムに目を向けたままミカが言った。

 現在行われているのは一回戦第二試合、セックスデーモン豚島と鈴木三佐枝のデュエルだ。

 ミカの隣の席に腰かけながら、遊羽も試合に目を向ける。

 

『ぐへへ、もうすぐ生贄の羊の処理が終わるぜ』

 

 拡張されたセックスデーモン豚島の声が観客席に響いた。

 奴隷杯では選手同士の会話が小型ドローンのマイクで拾われ、観客にも聞こえるようになっている。

 

「お前の男らしいデュエルはやっぱり最高だ!」

「男に無抵抗でなぶられる女はいつ見ても笑えるぜ」

「デュエルの後にも期待してるぞ、豚島!」

 

 観客たちの声援で会場が盛り上がる。

 第一試合で遊羽がデュエルした時とはえらい違いだった。

 

 現在の試合状況、セックスデーモン豚島のライフポイントが4000であるのに対して、鈴木三佐枝のライフは既に1000であり、彼女の場にはモンスターもいない。

 一方でセックスデーモン豚島の場には上級モンスター《デーモンの召喚》がいた。

 

 《デーモンの召喚》

 星6 闇属性 悪魔族

 攻撃力2500 守備力1200

 

 リリース一体で召喚できるモンスターの中でも2500という高い攻撃力を持つウルトラレアカードだ。

 

 セックスデーモン豚島については奴隷杯の常連優勝者ということもあり、事前に詳しいプロフィールを調べてある。

 本名は豚島優一郎。彼は元々E区を中心に活動していた決闘強姦魔(デュエルレイパー)だ。

 エースモンスターは《デーモンの召喚》。下層区では破格のレアカードであり、召喚されればE区のデュエリストでは太刀打ちできないだろう。

 

 ましてや豚島がターゲットにするのは若い女性のデュエリストだ。

 一般的な女性は夜道で決闘強姦魔から強制デュエルを仕掛けられて、敗北すると強姦される状況でデュエルを行うと、普段のプレイングができなくなるらしい。

 それらの事情もあって、豚島は当時から女性のデュエリスト相手には常勝だったそうだ。

 

 そんな豚島が奴隷杯に出場するきっかけになったのは、彼が行っていた決闘強姦をE区に訪れていたデュエル貧民撮影系のDチューバ―が撮影してDチューブにアップしたことだという。

 この動画は決闘強姦系の動画の中でもバズり、結果として奴隷杯を運営していたデュエル成金の目にもとまることになった。

 そして豚島はデュエル成金からの援助を受けて奴隷杯に出場したそうだ。

 その際、参加費はもちろん、多数のレアカードを渡されたらしい。

 そこで優勝して大量のファンを獲得した豚島は《強姦悪魔(セックスデーモン)》の異名を持つようになった。

 

 現在では多くのパトロンからレアカードの支援を受けており、エクストラデッキのカードまで所持しているとのことだ。

 エクストラデッキのカードとは融合、シンクロ、エクシーズ、リンクモンスター等であり、下層区の市民がまともな労働しても生涯入手することはできないと言われているレアカードである。

 

 そんなエクストラデッキのカードをセックスデーモン豚島は複数枚所持している。

 うらやましい限りだが、おそらく遊羽が優勝したとしても豚島と同じ数のファンは獲得できないだろう。

 彼の奴隷杯における人気の理由はデュエルだけではない。

 

 閑話休題。

 試合の決着がもうすぐつきそうだ。

 

『モンスターを攻撃表示』

 

 《ハープの精》

 星4 光属性 天使族

 攻撃力800 守備力2000

 

『ターン終了です』

 

 攻撃力2500の《デーモンの召喚》がセックスデーモン豚島の場にいるにもかかわらず、鈴木三佐枝は攻撃力800の《ハープの精》を攻撃表示で召喚した上で、伏せカードもなくエンド宣言した。

 既知感のあるプレイングだが、当然そんなことをすればどうなるかは目に見えている。

 

『俺のターン。げへへ、バトル。デーモンの召喚、攻撃! 魔降雷!!』

 

 《デーモンの召喚》の攻撃によって《ハープの精》が破壊され、鈴木三佐枝のライフポイントが0になった。

 リアルソリッドビジョンの衝撃によって鈴木三佐枝が地面に倒れる。

 

『試合終了! 勝者は当然、我らがスター、セックスデーモン豚島だぁ!』

 

 デュエル終了のアナウンスが鳴り響く。

 ここまでの流れは遊羽の第一試合と同じだ。

 

『それじゃあお待ちかね、最高のエンタメショーを始めるぜ』

 

 観客に向けてそう宣言したセックスデーモン豚島は突如としてジーパンとパンツを脱いで下半身を露出させる。

 そのまま鈴木三佐枝に近づくと衣服を乱暴に脱がせて全裸にした。

 

「いいぞ、豚島! 今日も最高のエンタメレイプを見せてくれ!」

「あんたの男らしい強姦で女をわからせてやるんだ!」

「強姦悪魔のエンタメショーで会場のみんなを笑顔にしてくれ!」

 

 観客たちの声援が会場に響いた。

 それに応えるようにセックスデーモン豚島が下半身の肉棒を鈴木三佐枝の女性器にぶち込んだ。

 一見すればセキュリティ沙汰にも見えるが、奴隷杯の出場者はこれらの行為に同意の署名した上で大会に参加している。

 奴隷杯では『勝者は敗者を殺害、不具者にする以外のあらゆる凌辱行為を行うことができる』という取り決めの元にデュエルが行われている。

 凌辱の範囲は敗者の肉体に対してなので、カードを奪ったり、破ったりはできないが、性的凌辱であれば、ほぼ無制限である。

 

「……お前と違ってあの男、随分と人気者じゃな」

 

 ミカがどこか不機嫌そうな口調で言った。

 やはりこれは一般的な女性が見ていて不快と感じる光景なのだろう。

 別に遊羽としても、この決闘強姦を見ていて楽しいとは思わないが。

 

「幸ちゃん、お願いね」

「わかってるわ」

 

 幸がポーチから黒い布を取り出すと姉、明美に目隠しをする。

 確か明美は『自分たち以外の女が凌辱されるのを見るのは尊い』とか言ってたはずだが、何かしらの心境の変化があったのかもしれない。

 

 そして大瀧はというと、あまり楽しそうな顔をしていなかった。

 

「はん! 意外ね、おっさん。あんたなら、こういう強姦ショーを見て喜びそうだと思ったけど」

 

 幸の言葉に大瀧は複雑そうな表情を見せる。

 

「……かつての私ならそうだったかもしれません。ですが自分の店を持ちペンギンに囲まれて過ごすうちに思ったんですよ。女性が本当に嫌がるような行為はしてはいけないと」

「アニマルセラピー……今度試してみようかしら」

 

 大瀧の言葉を聞いて、幸は何かを思いついたようだった。

 

『げははははは、たとえ40枚のデッキとデュエルディスクを持っていても女はデュエリストにはなれねえ。男だけがデュエリストになる資格を持っている!』

 

 鈴木三佐枝を強姦しながら、セックスデーモン豚島が身勝手な持論をのたまう。

 

『そしてより多くの女を強姦した者こそが真のデュエリストになる。つまり、この街で1000人以上の女を強姦したこの俺こそが真のデュエリストだ!!』

 

 一見すれば、それは滅茶苦茶な暴論。

 

「そうだ、お前こそ真のデュエリストだ!」

「強姦悪魔のエンタメレイプはいつ見ても最高だぜ!」

「真のデュエリストに相応しい見事な決闘強姦だ!」

 

 だが観客たちは豚島に同調する。

 この奴隷杯という舞台において、セックスデーモン豚島は確かにスターであった。

 

「おいおい、そろそろやめないとあの女、デュエリストとして再起不能になるんじゃないのか。少なくとも男相手にはまともなデュエルができなくなる」

「別にいいだろ。目を潰したり、指を切断する行為は禁止されてるが、レイプでデュエル廃人なっても、外見に大きな損傷がなければ不具者には該当しないからな」

「ははは、じゃあ三佐枝ちゃんも見納めかもな。もう少しで借金を完済できるところだったのに、セックスデーモン豚島にあたるとは運がねえな」

 

 観客たちの会話で事前に調べた情報の裏付けがとれる。

 奴隷杯一回戦の参加者の半分は運営が事前に用意した女性デュエリストであり、彼女たちは『借金の返済』や『デュエルドラッグの提供』と引き換えに『わざと負けるデュエル』を行っている。

 そして負けた後、男性デュエリストに凌辱されるまでが彼女たちの役割だ。

 

 つまるところ奴隷杯一回戦とは、観客たちを楽しませる余興の場であった。

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