ヘルカイザー亮がコロシアムから退場してからも、しばらくの間ブーイングは収まらなかった。
奴隷杯ではデュエルに勝利した男性デュエリストが敗者の女性デュエリストを凌辱するのが暗黙のルールであり、彼はタブーを犯してしまったことになる。
おそらく次戦も観客からヤジや罵倒を受けると思われるが、ヘルカイザー亮という男性を見る限り、その程度のことで動じるようなデュエリストには見えなかった。
『観客の皆様、落ち着いてください。何はともあれ、これにて一回戦の全試合が終了いたしました』
アナウンスと共に二回戦のトーナメント表がコロシアムの巨大モニターに表示される。
インセクト遊羽 -
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セックスデーモン豚島 -
ドラゴンプリンセス麗華 -
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デーモンスレイブ莉子 -
ドメスティックバイオレンス郷田 -
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ファックプラント植木 -
ネグレクト前田 -
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ヘルカイザー亮 -
余興のために用意されていた、やられ役の女たちが退場しただけであり、トーナメントの結果に意外性はない。
ある意味では次の試合からが事実上の初戦と言っても過言ではないだろう。
『それでは選手の皆様お待ちかねの、優勝賞品である高級
このタイミングで優勝者に贈呈される決闘奴隷を開示するあたり、奴隷杯運営はやられ役の女たちを初めから選手としては扱っていない。
トーナメント表が表示されていた巨大モニターの画面が切り替わり、椅子に座ったベージュの髪の女子が映った。
髪型はミディアムヘアであり、上質そうな布地の白いワンピースを着ている。
首には決闘奴隷の証明である首輪。
幼さを残しながらも整った顔立ちの美少女だった。
決闘奴隷の服装はボロ布一枚であることも多いが、流石に高級というだけあって良い洋服を着せられているようだ。
『断言しましょう、今回の奴隷杯に参加した選手の方々は幸運です。高級決闘奴隷は基本的に人権を失ったB区以上の市民とされておりますが、実際9割以上がB区の市民です』
この前置きの時点で運営が何を言いたいのか勘のいい者なら察することができる。
『そんな高級決闘奴隷の中でも激レア、A区の市民、血統書付きの元トップス民こそが、今回の景品である少女なのです!』
会場の観客たちがどよめいた。
奴隷杯の景品である高級決闘奴隷は観客にとっても無関係ではないからだ。
『仮に優勝者が高級決闘奴隷の売却を選択した場合、大会終了後、奴隷杯オークションが開催されます。現時点においてはこの場にいる全ての方々に、血統書付きの元トップス少女を入手する機会があることになります』
実際、遊羽が優勝した場合、高級決闘奴隷は売却されることになる。
それは初めから決めていたことであり、奴隷の少女がトップス市民であるということは一切関係がない。
事実として遊羽はA区の人間、トップスの市民に対して嫌悪感を抱いていなかった。
決闘奴隷の売却は目的達成のために必要であるからするだけのこと。
画面が切り替わって、元トップス市民の少女のプロフィールが表示される。
名前:三条
性別:女
年齢:12歳
出身:ブラックドミノシティA区
経歴:デュエルアカデミア初等部、中途退学
特徴:処女
『高級決闘奴隷は基本的にじっくりと調教してから商品として完成させるのですが、今回に限り処女好きの方に配慮して行っておりません。ですがご安心ください。所有者様が調教済み商品を希望された場合、サービスとして無料で我々が行わせていただきます』
デュエル成金やブルジョアデュエリストたちは、基本的に処女よりも非処女の決闘奴隷を好むのが一般的だという。
性欲処理に使う際、処女では痛がって泣き叫ぶのが面倒であるらしく、サディストやリョナ趣向のデュエリストでもなければ調教済みを欲しがるそうだ。
『そして二回戦からは選手の方々を対象にした賭けが行われます。お客様には入場時に説明があったと思いますが、賭けには原則として奴隷杯専用の金貨が用いられます。交換所にて1枚100万円で購入できます。現金払いだけでなく、銀行振込にも対応しておりますので、まだ持っていないという方はぜひともご購入ください』
敗北した後なら選手も賭けに参加できるとのことだったが、参加費以外の金はデッキ強化のためのカード購入に使ったので、もう100万円も残っていない。
どちらにせよ、この話は遊羽には関係がないことだった。
『二回戦は休憩を挟んで一時間後に開始します。第一試合のオッズはこの場で開示されますので、観客の皆様はぜひとも勝者を予想して賭けに参加してください』
高級決闘奴隷の少女が映っていた画面が切り替わって、二回戦第一試合の選手とオッズの画面が表示される。
インセクト遊羽 10.0(MAX)
セックスデーモン豚島 1.1
勝者を予想しろと言いつつこの倍率、端的に言えば嘗められているのだろう。
奴隷杯運営からすれば、この二回戦第一試合は一回戦の余興の続きのような扱いなのかもしれない。
その認識はおそらく観客たちの大半も同様だ。
「ははは、この試合は豚島一択ですね。十倍につられて女に賭けても金をドブに捨てるだけだ」
「ですが強姦悪魔に賭けたのでは、あまり旨味がありませんな。女相手なら彼が勝つのは当然ですが、もう少し倍率を上げてほしいものだ」
「奴隷杯で女はセックスデーモン豚島には勝てない。この常識があまりにも周知されていますからね」
「それなら投入金を増やせばいいんですよ。僕は経理をしていてね。会社の金を20億拝借しました。明日までに戻せばバレない。2億がノーリスクで手に入ります」
観客たちにとって、セックスデーモン豚島の勝利は決定事項のようだった。
「私は女の方に賭けますよ。幾ら低倍率とはいえ全員が豚島に賭けたのでは、奴隷杯の運営も苦しいでしょうからね」
「自分もこの大会には楽しませてもらってますから。インセクト遊羽に賭けて運営費を布教しようかと思います」
「これからも奴隷杯は続いてほしいですからね。まあセックスデーモン豚島の強姦ショーの見物料として女の方に賭けますよ」
遊羽に賭けると言う観客たちも、豚島の勝利を疑っていない。
『これより試合開始までの間、スタッフが観客席を回ります。一口100万円、奴隷杯金貨1枚から決闘者券を購入できます。購入額が1億を超える場合、金貨を介さず銀行振込で直接購入もできますので、お気軽にお声かけを』
アナウンスと同時に観客席の各入口から数十人の同じスーツを着た奴隷杯スタッフが入ってきた。
「セックスデーモン豚島20枚」
「俺もセックスデーモン豚島を20枚」
「なら自分は豚島25枚」
「やられ役の昆虫女を5枚」
「強姦悪魔を15枚」
さっそく観客たちは決闘者券を購入し始める。
やはり人気なのはセックスデーモン豚島のようだ。
見ればこちらにも決闘者券を持った奴隷杯スタッフが向かってくる。
「インセクト遊羽30枚」
そう言ったのは遊羽の隣に座っていたミカであった。
事前に購入していたであろう奴隷杯金貨を30枚取り出すとスタッフに渡した。
「かつてわしに言ったことが大言壮語でないことを証明しろ」
コインカウンターで枚数の確認を終えた奴隷杯のスタッフから、『インセクト遊羽』の決闘者券30枚がミカに手渡される。
「では私もインセクト遊羽を30枚」
続いて決闘者券を購入したのは大瀧。
「癲狂院遊羽、19歳。君と今後もビジネスパートナーを続けるかどうか、このデュエルで判断させてもらいましょう」
遊羽としても大規模アミューズメントパークのオーナーであるこの男との仕事関係は継続していきたいところだ。
「インセクト遊羽さんを30枚お願いします」
おっとりとした口調で明美が言った。
「正直に言います。一回戦では目隠しをしましたが、女性が凌辱される声を聴いただけでも興奮してしまいました。この性根は簡単には変わらないのだと思います」
本人の意思に関係なく人間の根本的な部分は変わらないという言葉には遊羽も同意する。
「ですが、私は幸ちゃんのためにも変わりたいと思っている。だから私を興奮させないためにも勝ってください」
それは回りくどいようでプレッシャーをかけないように配慮した激励であった。
「インセクト遊羽、54枚」
幸がポーチから50枚を超える奴隷杯金貨を出してスタッフに叩きつけた。
「これが正真正銘、私の全財産よ。地獄姉妹に勝ったあんたが、あんな男に負けるなんて許さない。だから勝ちなさい!」
スタッフが金貨を数えている間、遊羽の正面に来た幸がはっきりとした声色で言った。
「私はプレッシャーをかけない言い回しなんてしない。だってあんたにはそんなの関係ない。そうでしょ」
それは遊羽のデュエリストとしての本質を見抜いた言葉だった。
「……勝てだの、結果を出せだの言うけどさ、そっちが勝手に賭けたんだから私は責任なんてとらないよ」
立ち上がって幸、ミカ、大瀧、明美の四人に視線を向けながら言う。
「私は自分の目的のために勝つ。ただそれだけ」
時間を確認すると試合開始まであと20分ほどだった。
そろそろコロシアムに向かうことにする。
観客席の出口に向かう途中、バンデット・キースがいる席の横を通った時だった。
「インセクト遊羽を1枚」
キースが金貨を親指で弾いてスタッフに渡しているのが目に入り足が止まる。
「セックスデーモン豚島の強姦ショーに料金を払うことにしたの?」
観客の中にそんなことを言っていた奴がいたなと思いながらキースに問いかけた。
「おい、舐めてんのか、癲狂院。俺様が野郎のレイプを見るために金を払うわけがねえだろ」
「そっか」
キースが金に執着しているということは知っている。
「100万。それが今のてめえの値段だ。それ以上の価値があるってんなら、デュエルで証明してみせろ」
それだけ言うとキースはコロシアムの方を向いて、組んだ両足を前の座席に乗せた。
奴隷杯コロシアム。
遊羽が入場した時、既にその場にはセックスデーモン豚島がいた。
「げへへ、レイプ希望者のご入場だ」
こちらに気づいた豚島が下賤な視線を向けてくる。
それを無視して指定の立ち位置についた。
これでいつでも試合を開始することができる。
「いいぞ、豚島、やっちまえ!」
「二回戦でもエンタメレイプで皆を笑顔にしてくれ!」
「強姦悪魔の蹂躙ショーの始まりだ!」
「その女をさっさと犯してくれ!」
案の定、観客は豚島の方を応援し始める。
「「「犯せ! 犯せ! 犯せ! 犯せ!!」」」
そして遊羽を強姦するように促してきた。
「どうだ。わかったか、女。これが奴隷杯だ。言っとくがデュエル中も観客からのレイプコールは続くぜ。この状況でまともなデュエルができる女なんか存在しねえ。言うなればデュエル開始前から発動している、俺専用の破壊不能なフィールド魔法みたいなもんだ」
おそらく一般的な女性に対して、それは有効なデュエルタクティクスであるのだろう。
「だから何?」
けれども遊羽はこれらの観客と豚島に対して、特に何かを感じることはなかった。
おそらくは普通の女性が感じるべきである恐怖、そして例によって嫌悪とかいう感情は微塵たりとも存在しない。
「何だ、理解力が低いのかてめえは! 観客どもはてめえがレイプされることを望んでいる。そしてデュエルに負けた瞬間、てめえは俺に強姦されるんだよ」
遊羽は僅かに首を傾げた。
正直なところ、デュエリストとしての視点から見ると、その二つには何の問題もないように思える。
あまり豚島をイラつかせるのも本意ではないので、今回ははっきりと主張することにした。
「観客がレイプを望むのは自由だけど、それがデュエルと何か関係があるの? どれだけ観客がレイプコールしたところで、私の引くカードが悪くなるわけでもなければ、あんたのドローが良くなるわけでもない」
当然の事ではあるが、観客の声はドローの結果には影響しない。
ましてやレイプコールが原因でプレイングが乱れるなどあり得ないこと。
ならばデュエリストとしての回答は一つだ。
「私からすれば外野の応援も罵倒も、どちらも等しく無意味で無価値」
それはデュエル孤児院にいた頃から変わらない
「あと負けた時に強姦されるって話は更に意味のないこと。だって私はデュエルに負ける気はないから」
敗北時にどのような目にあうとしても、勝利する前提でデュエルするのがデュエリストとして正しい姿勢だ。
とはいえデュエルに絶対はないことも理解している。
実際、
一度目は無力故に。
二度目は甘さ故に。
「でも仮にあんたが勝ったなら強姦でも何でも好きにすればいい。デュエルに敗北したなら、暴行されようが、強姦されようが、殺害されようが受け入れる。それを拒否するのはデュエル軽視だから」
つまるところ豚島が先ほどから言っている強姦云々の話は、遊羽にとって二重の意味で無意味なのだ。
そもそも負ける気はないし、万が一敗北したならデュエルの結果を受け入れる。
「だけど、デュエリストとしてデュエルに負けるのは我慢ならない」
そしてこの会話は観客席にも聞こえている。
「何、強がってんだ、馬鹿虫女!」
観客席にいた若い男性がヤジを飛ばした。
「レイプされるのを恐れてる癖に、虚勢を張っても無駄なんだよ!」
「イキってんじゃねえぞ、昆虫女!」
「内心ブルってるんだから、素直に怯えてればいいんだよ!」
「大口叩いてんじゃねえ! このイキり虫女!」
観客たちは嘲笑しながら遊羽を罵倒する。
しかしセックスデーモン豚島に笑顔はなかった。
「……何だ、てめえは。まさか、本当に……強姦されることを、恐れていないとでも言うつもりか」
成程。セックスデーモン豚島は1000人以上の女性をレイプしてきた、決闘強姦のエキスパートだ。
決闘強姦魔に襲われた際のあらゆる女性デュエリストの反応を見てきたことになる。
だからこそ理解してしまったのだろう。
遊羽の言動に虚勢など一切なく、ただ思ったことを口にしていると。
『時間になりましたので、これより二回戦第一試合を開始します。各選手デュエルディスクを起動してください』
アナウンスが流れて、いよいよ二回戦が開幕する。
「……存在しちゃならねえ」
腹の底から絞り出すような声で豚島が唸った。
「女は男に強姦されるための生き物。そして強姦されることを恐れ、怯えなくちゃならねえ生き物だ! だから、てめえみたいな女は、てめえみたいな人間は存在しちゃならねえ!!」
両者のデュエルディスクのオートシャッフルシステムが起動して互いのデッキが自動でシャッフルされる。
そしてデュエルディスクによって先攻後攻が決定される。
害虫 ―― 癲狂院遊羽 / LP4000
VS
強姦悪魔 ―― 豚島優一郎 / LP4000
「「決闘!!」」